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2015年5月の30件の記事

2015年5月31日 (日)

【続】道を踏み違えた日弁連  『盗聴法拡大強化・司法取引支持』の会長声明の撤回求める

専門分化が進み、かつ、資本の要求によって、何より迅速さな決断が求められる中で、、現代の組織は、どこも一部の者による決定が全体の名によって正当化されていく傾向がある。
端的に、これは、民主主義の危機である。


一部の者による専横の構造は、日弁連も確実にむしばんでいる。

会員弁護士の多くが決して望んでいなかった、司法試験合格者3000人とする弁護士大増員決議を組織動員によって、強行採決した2001年臨時総会を画期として、専横の体制は確実に強化されてきた。


そして今回、それは、ついに「盗聴法拡大強化」、「司法取引導入」という人権弾圧立法の早期成立を求める会長声明という、極めてグロテスクな形で、あらわになった。
民間の職業で、憲法に登場するのは、弁護士だけである。
それは、基本的人権の擁護者としてとくに重大な使命が弁護士に課されていることを端的に示す。
その使命に忠実であろうとする主張が、日弁連会長の『基本姿勢』にいう『井戸やコップの中のような議論に基づく自分たちだけの「正義」』であるというのであれば、なにをか況んやである。。
強制加入団体である日弁連が、人権弾圧立法のお先棒を担ぐ。
今回の声明に関与した日弁連執行部の汚名は、歴史に残るだろう。


弁護士会費は、月額5万円から10万円近くに及ぶ。
この高い会費は、確実に、多くの弁護士事務所の事務所経営を圧迫している。
大半の会員が、今や高すぎるという思いを抱きながらも、人権の擁護というお題目によって支払をやむなくされているものだ。


日弁連会長の『基本姿勢』がいう、『会内論争に終始しばらばらで相手にされない日弁連』ではなく、『社会に向けて一致して発信し行動する力強い日弁連』(3 日弁連と弁護士会の結束を大切にする)なるものが、武本夕香子氏が述べるような、異論を封殺し、『経緯と情勢そして現実を冷静に見極め、』
時局・官僚に迎合し、やすやすと人権を投げ捨てる会長声明を出すのを黙認せよとするのであれば、もはや日弁連の存在価値はないだろう。
日弁連が強制的に徴収する会費は、まるで「オレオレ詐欺」によるかっぱらい同然である。


刑事訴訟法改正に関する中日新聞の論調は、一貫して盗聴法の拡大強化や、司法取引導入に反対するものだったと記憶する。
『日弁連として、ぶれない一貫性』をいうのであれば、かくあるべきである。
念のため最近の『特報』記事を貼り付ける。
安全保障法制から盗聴法、マイナンバーまで一括法が孕む民主主義に関する問題を的確に指摘している。


Chuunichi150528


(刑事訴訟法制度改悪法案の)早期成立を求める日弁連会長声明がいう「有識者委員が参加した法制審議会…で約3年間の議論を経て全会一致で取りまとめられた答申…にも述べられているとおり、複数の制度が一体となって新たな刑事司法制度として作り上げられているものである。」などとする主張は、何の反論にもなっていない。
法制審議会が苦労してまとめ上げたから、「国権の最高機関」も、おとなしく言うことを聞けなどという論法は、まるきり官僚の言いぐさである。
安全保障法制の一括法案の反民主性も、この立場では批判できぬだろう。



確か、共産党の方々も刑事弁護委員会や理事者には少なからずおられ、議論をリードしてきた経緯がある。
裁判員裁判制度の導入をめぐっては、これに対して反対を表明したところ、裁判員裁判制度導入によって証拠開示手続という成果を得たことをどう考えるのかという、反論をしてきたのも共産党系の方であった。


刑事訴訟法制改正問題では一貫してぶれない主張を続けている、赤旗の報道も合わせて引用しておきたい。
共産党の見解にしたがって、悪法推進を謳う、会長声明を撤回させることこそ共産党系の方々の使命ではないか。
盗聴・たれ込みや「共犯者の自白」(司法取引)は、戦争に反対し続けてきた勢力にも用いられてきた卑劣なえん罪製造、弾圧法規だったではないか。



いうまでもないことであるが、安全保障法制と政治的弾圧手段の整備は、一体のものとして進められる。
安倍政権が、法制審議会での議論経過で官僚が約束した内容を遵守すると素朴に信頼するほどに、共産党の方々はバカなのですかと、言いたい。
弁護士増員論では、共産党の方々のおおかたが推進にまわったことは認識しているが、今回の件は国民の基本的人権に直接関係する重大な法改正であり、歴史をも左右しかねぬ法改正である。
日弁連執行部に対し、会長声明の撤回を求めて断固として闘うことを強く求める。


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2015年3月14日(土)

盗聴法拡大を閣議決定

「可視化」は2% 「司法取引」導入も

 政府は13日、他人の罪を証言すれば見返りを得られる「証言買収型司法取引」の導入や、警察による盗聴範囲の拡大と要件緩和を柱とした、刑事訴訟法などの改悪案を閣議決定しました。


 政府が導入を狙う「証言買収型司法取引」は、他人の犯罪を証言すれば不起訴や軽い求刑を行うことを、検察官が容疑者や被告との間で合意できる制度です。

 対象は、汚職や横領、組織的詐欺、独禁法違反などの財政経済事件と薬物・銃器犯罪としています。

 この制度は、刑事責任の免除をエサに“密告”を促すものであり、警察や検察に迎合した虚偽の証言が他人を陥れる危険をはらんでいます。「取引」を制度化することは、新たな冤罪(えんざい)の温床づくりになりかねません。

 盗聴法(通信傍受法)については、現行の薬物・銃器などの組織犯罪の4犯種に加え、窃盗や詐欺などの一般犯罪9種類を対象に加えました。

 現行では、通信事業者の立ち会い(監視)を必要としていますが、法案はこれを不要とし、警察施設内で警察だけの盗聴を認めるものとなっています。

 政府は、同法案について容疑者の取り調べ全過程の録音・録画を義務づける「可視化」を目玉にしています。しかし、実際には殺人や強盗致傷といった裁判員裁判対象事件と特捜部などの検察独自捜査に限られ、全事件の約2%でしかありません。

 わずかばかりの“可視化”を口実に、盗聴法拡大や冤罪の温床となる「証言買収型司法取引」の導入は認められません。


2015年5月16日(土)

通信の秘密侵害増す

仁比氏 「メール傍受は危険」

 
写真

(写真)質問する仁比聡平議員=14日、参院法務委

 日本共産党の仁比聡平議員は14日の参院法務委員会で、警察による電子メールの通信傍受の実態を問いただし、「犯罪と関係のない人のプライバシー情報も丸ごと蓄積されて、解析、漏洩されない保障はどこにもない」と指摘しました。

 仁比氏は、メールの傍受にあたって、通信事業者のサーバーなど伝送路からメールを捕捉する警察庁の方式は盗聴法案強行の際の政府答弁と異なること を指摘しました。当時、政府は「特定のメールボックスが受信したメールを自動的に転送するような設定を用いて傍受を実施することは技術的に十分可能」「傍 受の方法としては適当」(1999年、法務省刑事局長答弁)だとしていました。

 法務省の林眞琴刑事局長は「(当時の答弁は)その後の技術の発展により、法的に許される範囲で技術的に可能な方法が他にあれば、それを否定する趣旨ではない」と答弁。警察による開発次第で「通信の秘密」がいっそう侵される危険性が浮き彫りになりました。

 質疑のなかで警察庁の露木康浩審議官は、音声傍受装置について2000年度に62式、01年度8式、04年7式、09年度57式、15年度22式 を整備し、メール傍受装置に関しては01年度に16式、03年度2式を整備し、15年度に1式を整備予定だと明らかにしました。

2015年5月20日(水)
監視・密告で冤罪生む 刑事訴訟法等改定案審議入り
盗聴・司法取引は危険


 盗聴拡大と密告型「司法取引」を盛り込んだ刑事訴訟法等の改定案が19日の衆院本会議で審議入りしました。日本共産党の清水忠史議員が質問に立ち、「刑事司法改革の契機は次々と明らかになった冤罪(えんざい)事件の根絶だったはずだ。捜査機関の権限拡大は改革の目的とは正反対で、新たな冤罪を生み出す危険がある」と指摘しました。
写真

(写真)質問する清水忠史議員=19日、衆院本会議
衆院本会議で清水議員

 同法案は、盗聴対象を組織的犯罪から窃盗など一般の刑法犯罪にも拡大するとともに、通信傍受の際の通信事業者の常時立ち会いをなくし、「密告」することで自らの罪を軽くする日本版「司法取引」を導入することなどを柱にしています。清水氏は「わが国を監視、密告社会につくりかえることになり、断じて認められない」と厳しく批判しました。

 このなかで清水氏は、盗聴は「通信の秘密」を定めた憲法21条に反する人権侵害だと指摘。法案に関して「盗聴を日常的な捜査手法とし、大規模な盗聴に道を開くものだ」「政府は(盗聴対象を)拡大した犯罪についても『組織性』を要件にしているというが、法案では2人の共犯であっても、あらかじめ役割の分担について意思を通じるなら、盗聴対象になるのではないか」と問いただしました。

 これに対して上川陽子法相は「要件の上からは、2人の共犯事件が傍受(盗聴)の対象となることもありえる」と明言しました。

 清水氏は、日本共産党・緒方靖夫国際部長宅盗聴事件(1986年)で、謝罪どころか事実さえ認めない警察の姿勢をあらためて糾弾し、「これ以上の盗聴の自由を与えることは危険だ」と警鐘を鳴らしました。また密告型「司法取引」に関しても「自らの罪を軽くしたいとの心理から、無実の他人を引き込む危険が極めて大きく、新たな冤罪を引き起こす」と批判しました。


2015年5月25日(月)

可視化は骨抜きに 密室で盗聴し放題

刑訴法等改定案 捜査機関のお手盛り


 盗聴拡大と密告型「司法取引」を盛り込んだ刑事訴訟法等の改定案が、衆院法務委員会で審議入りしました。一部報道が「可視化義務づけ法案」と呼ぶ 同法案ですが、条文を読んでみると、可視化の“義務づけ”どころか、抜け穴だらけで骨抜き。さらに、警察の盗聴も野放しにするものとなっており、捜査機関 のお手盛りぶりが浮き彫りになっています。(矢野昌弘)


 同法案では取り調べの様子が録画・録音されるのは、裁判員裁判の対象事件や検察が独自に捜査する事件だけで、全事件のわずか2%でしかありません。

例外だらけ

 その2%すら、捜査機関の思惑で、録画したりしなかったりができる内容です。

 刑事訴訟法の改定案(301条の2)では、録画しなくてもよい“例外”を設けています。

 一つ目は、取り調べを録画すると、被疑者が“十分な”供述をしないと、警察・検察の取調官が判断した場合です。

 何をもって“十分な”供述をしないと見なすのか、判断するのは捜査機関。被疑者が否認することが予想される取り調べを、記録しない危険があります。

 二つ目は、被疑者の供述などが“明らかになった場合”、被疑者やその親族が困惑する恐れがあると、取調官が判断した場合としています。

 法案の提出経緯に詳しい小池振一郎弁護士は「“明らか”になると、困惑する恐れというが、録画したものを明らかにしなければいいだけの話。録画しないでいい理由にならない」と批判します。

 また、法案(322条の1)は、自白調書とセットで、その調書作成時の取り調べ映像を裁判に提出しなければならないとしています。

 小池弁護士は「裁判に出る映像は、自白した回の取り調べだけ。それまで脅しすかして、自白を迫る映像はなく、『観念しました』という自白映像だけ が使われるおそれがある。捜査機関のメリット、デメリットで可視化する、しないが決められる。法案が可視化を前進させるとはとても言えません」と指摘しま す。

 盗聴(通信傍受)法の拡大法案は、盗聴対象の大幅拡大と通信事業者の立ち会いがなくなることが大きな柱となっています。(図参照)

盗聴一般化

 盗聴法に詳しい岩田研二郎弁護士は「今までは通信事業者が立ち会うため、東京の施設でしか行えなかったものが、立ち会いをなくすために各道府県警本部でいつでも、容易に盗聴できるようになるので、盗聴が一般的な捜査手法になる」と強調します。

図


空き家だけじゃないぞ インフラ腐朽

空き家対策がマスコミで騒がれている。


問題は空き家だけではないだろう。


4月12日、山手線が9時間ストップ。
同月29日、東北新幹線がパンタグラフ事故で4時間以上ストップ。
5月22日にはJR九州で危うく正面衝突寸前の事故。
大惨事寸前の事故が多発している。
示し合わせるかのように、マスコミは瞬間早業続報遮断術を発動。
数年前ならもっと真剣に議論されたはずの事故が、あたかもなかったような扱いである。


昨日、東京からの帰途、新幹線のテロップに「高山線 上麻生駅と下麻生駅の間で路線点検のため運転見合わせ中」とにわかに事態を理解しがたいアナウンスが流れていた。そういえば高山線はよく揺れるなあと思い起こした。


しばらく前にあれほど騒がれた水道菅の途方もない老朽化問題はまるで解決したかのようにサッパリと忘れられている。
これも汚染水と同じで完全にブロックされ、アンダーコントロールされたのだろう。まこと目出度い限りである(おつむの中が)。

やれオリンピックだリニア新幹線だとかカジノ資本主義を支えるための刹那の宴に浮かれている内に足下が危うくなっている気がしてならない。


戦争中毒の総理をよく日本国民は支持していると感心するが、まともな神経を取り戻さないと、この国は10年どころかオリンピックまで持たないのではないかと、突き放した諦めに似た心情にとらわれかねない昨今ではある。

重大事故に至らないアクシデントをインシデントと言ったよなと調べてみれば、インシデントには事変や軍事衝突との意味もあるそうな。


南シナ海゙border incident゙=南シナ海事変=南シナ海軍事衝突


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2015年5月30日 (土)

ISD ローファームが食い物にする世界 不正義から利得する  ”Profiting from Injustice” 韓国抄訳の翻訳

 『Profiting from Injustice』が、ずっと気になっている。
韓国語の記事を翻訳していたサイトを見つけたので、貼り付けておく。
これだけでも読むのに骨が折れるが、英語の原文は、さらにずっと長文である。
しかし、紹介記事でも、あるのとないとでは、原文に対する見晴らしがずっと変わるので、貼り付けしておく。
欲にまみれた、ごく限られた一部のビジネスロイヤーたちが、ぐるになって、この世界(「グローバル」であるから「地球」といった方がよいのだろうか)を私物化し、食い物にしていることが、よくわかる。
ついでに加えれば、日弁連も、どちらかというと、この仲間入りがしたい派にみえるが、すでにシェアができているので、新規参入は容易ではないと書いてある。


ISDが必要な理由として、かつては、途上国の裁判制度の未整備が主張されていた。
これも、実は先進国目線の途上国(もとともは後進国とか、もっというと、野蛮国とか呼ばれていた)差別であったが、どう見ても裁判制度が成熟している先進国間でのISDが展開するようになると、投資先の国(「ホスト国」という)の国内裁判所より、海外の裁判の方が、中立的な判断がされ、公正であると言われるようになった。
実態は、このように優れて、えげつないのである。


英語が読める方には、「Corporate Europe Observatory」のサイトは断然お勧めである。
ここの国際取引のリンクを開けば、おもしろい情報がいっぱいある。
TPPの条文よりは、ずいぶんと読みやすいが、私には日本語に直すのは不可能である。
英語の教材にしようかと思っている。

なお、韓国バージョンでも、ISDに固定した裁判所があるかのような説明になっているのは、完全な誤解である。

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どうもうまく貼り付けられないので、PDF版 をリンクしておきます。

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2013227日水曜日

ISD条項に関する韓国情報活動家の記事1

日本でもTPPがらみでISDの問題が注目されるようになって、ISDについて知られるようになってきた。韓国では、韓米FTAISDが問題になって、今でも議論は続いているのだけれど、Redianという韓国のオンラインニュースサイトに情報共有連帯という市民団体の人がISDに関する記事を書いていて、面白かったのでざっと翻訳してみた。

内容的には201211月にヨーロッパのCorporate Europe Observatory and the Transnational InstituteというNGOが作成した"Profiting from injustice" という報告書がベースで、これまで韓米FTAについて提起されてきた問題を加えて再構成したものといえる。とにかく、こういうのを読むと、日本でもTPP 参加の議論で大きな焦点になっているISD条項は、相当問題が多いなと思わざるを得ない。もっとも、韓米FTAのようなグローバル協定に反対する立場から の解説なので、問題が多いということを言いたいわけなんだろうし、ぼくもTPPに反対する立場から面白いと思って紹介する次第。

なお、この記事は連載の1回目で、この後もISDに関する数本の記事が続いている。後続の記事についても翻訳して紹介したいと思う。

不当なことで利益を得る(1)

災難の怪物ISDの実体について

[情報共有と知的財産権]さらに多くの戦争、さらに多くの危機、さらに多くのISD

Byクォン・ミラン/情報共有連帯IPLeft/2013123日、6:16 PM

 

敗訴しないことを望んだ空しい期待

昨年、ローンスターは結局ISD(投資家国家訴訟)を提起した。韓米FTAかっぱらい批准ほどではなくても、私は恐くてどきどきしながら韓国政府が敗訴しないことを見守っていた。

そして最近では医薬品特許をめぐりISDが提起された。昨年11月、超国籍製薬会社のリリーはカナダの特許適格性(patentability)の 基準により、自社の注意欠如多動性障害(ADHD)治療剤のストラテラ(Strattera)の使用方法特許(methodof use patent)が無効と決定されたことで、最低1億カナダドル(CDN)にあたる損害を受けたと主張して、NAFTA協定11(投資)により、カナダ政 府に仲裁意向書を通知した。

リリーは19961月にストラテラの特許を申請し、20161月に満了する予定だった。リリーが獲得した特許(735 patent)は化合物アトモキセチンを成人と子供の注意欠如多動性障害(ADHD)の治療のために使用(use)することについてのものだ。そして 200412月にカナダで販売許可を受け、商業的に成功したという。

ジェネリック(複製薬)を作る製薬メーカーのノボファーム(Novopharm)が特許無効訴訟を提起し、これにより20109月に連邦裁判所は 無益(inutility)等の理由で特許無効と判決した。リリーは連邦裁判所の決定に控訴し、その結果、20117月に連邦抗訴法院はこれを棄却し た。リリーは大法院に上告申請したが201112月に棄却された。

WTO加入国に対し、知的財産権保護の最低の基準を強制するトリップス(TRIPS)協定は、特許適格性の基準として新規性(new)、進歩性 (inventive step)、産業適用可能性(capable of industrial application)を要求する。

つまり、既存のものとは違う新し、さらに良い発明でなければならず、その発明を発明者一人が利用するのではなく、産業的に利用する可能性があれば特許権を与えられる。

だがこの三つ基準の概念について、トリップス協定は具体的に定義していないため、国家ごとに解釈が違う。これはトリップス協定が認める数少ない柔軟性(flexibility)あるいは主権の領域の一つだ。

だがリリーは、カナダのすべての司法的手続きを取って特許無効判決を受けたが、これこそNAFTA協定11(投資)の収用条項、最低基準待遇条 項、内国民待遇条項違反だと主張した。リリーはカナダ裁判所がストラテラの特許を無効化したのは直接受け入れに該当して、これによってストラテラを製造、 販売する排他的権利に関する価値(value)を破壊する効果をあげたとし、これを間接収用と見た。

実際、投資条項は投資家の解釈次第で司法権を侵害する。そして保健、環境、労働などの目的による国家の政策や制度もISDを避けられない。

だがNAFTA協定はISDを認めているので、もう元に戻すことはできない。私はカナダ政府が敗訴しないことを願っていた。ところが昨年11月に発 表された研究報告書「不当なことで利益を得る-ローファーム、仲裁者、金融業者が投資仲裁ブームを煽る方法(Profiting from injustice. How law firmsarbitrators and financiers are fueling an investment arbitration boom)」を読んで、私の期待が空しいことこの上ないことを知った。

http://www.redian.org/wp-content/uploads/2013/01/isd%EB%AF%BC%EB%B3%80-e1358932275721.jpg
民主弁護士会のISD関連記者会見資料写真(写真は民主弁護士会)

 

「投資仲裁産業(arbitration industry)」の成長

2011年末までにISDを含む協定は3000本を越える。主に二国間投資協定(BIT)で、FTAに含まれる投資部門、そしてエネルギー憲章条約(Energy Charter Treaty)のような多国間協定がある。

世界銀行傘下にICSID(国際投資紛争解決センター)ができてから30年経った1996年まで、38件のISD提訴しかなかった。だが90年代後 半から訴訟が急速に増えた。2011年末までにわかっているISDだけで450件あった。主に南半球の政府を対象にするものだ。だがほとんどの訴訟が秘密 裏に行われたため、実際の訴訟件数ははるかに多いだろう。

2011年にアメリカの弁護士雑誌(American Lawyer magazine)の報告によれば、最低1億ドルになる非公開の投資仲裁訴訟は151件だった。

一般的に投資仲裁手続きは、投資家が政府に仲裁意向書を通知すると、投資家と政府は仲裁裁判所を選び、それぞれ1人ずつの仲裁者を選んで共に議長を選択し、仲裁判定部が構成される。

秘密裏に本訴訟が進められ、3人の仲裁者が被害の類型とその規模、賠償金を決める。政府が賠償金の支払いを拒否すれば、政府の財産を差し押さえることができる。

一番よく選ばれる仲裁裁判所はワシントンにある世界銀行傘下の国際投資紛争解決センター(ICSID)、二番目は国連国際貿易法委員会 (UNCITRAL)だ。この他にハーグにある常設仲裁裁判所(PCA)、ロンドン国際仲裁裁判所(LCIA)があり、パリの国際商業裁判所(ICC)と ストックホルム商業裁判所(SCC)はビジネス機構での投資紛争を扱う。これらは「投資紛争産業」になった。

賠償金額だけでなく、仲裁者、証人、専門家、弁護士に支払う法務、行政費用そのものがとても高い。OECDは情報が伝えられている事件の法務費用が平均800万ドルを越え、場合によっては3000万ドルを越える場合もあることを確認した。

フィリピン政府はドイツ航空会社のFraportが提起した2つのISDを防御するために5800万ドルを使った。これは12500人の教師1年分の賃金にあたり、380万人の子供に結核、ジフテリア、ポリオなどの予防ワクチン接種費用で、2つの空港を作れる金額だ。

ある仲裁産業内部の者は、法務費用の80%以上を諮問に使っていると推測する。仲裁弁護士は勝訴せず、有利な合意を引き出しただけでも相当な手数料を受け取る。上位20の仲裁ローファームのパートナー弁護士は、時間当り1000ドル受け取る。

米国のローファームKing&Spaldingは、ある訴訟で依頼人に賠償金13300万ドルの80%以上を要求したと伝えられる。仲裁 者もまた一日の手当て3000ドルに加え、移動、居住費を受け取る。訴訟で負けた側がいつも相手側の法務費用を払うわけではない。両者に裁判、行政費用を それぞれ支払えという仲裁判定が行われるケースが一番多い。この話は政府が訴訟で勝っても納税者は金を払わなければならないということだ。

Plasma Consortiumのブルガリアに対する訴訟で、ブルガリアは結局詐欺だという判決になったこの訴訟を防御するために約1300万ドルの法務費用を使っ た。だが仲裁判定部はPlasma Consortiumにブルガリアの法務費用のうち700万ドルだけを支払うよう命令した(ブルガリアはこれさえ全額を回収できなかった)。当時、ブルガ リアは看護師の不足による保健医療危機を解決しようと努力していた。その金があれば、1796人以上の看護師の賃金を支払うことができた。

しかし財政的な負担は始まりでしかない。こうした訴訟ブームから利益を得る法的産業がある。この報告書は「投資仲裁産業」の主な行為者であるロー ファーム(仲裁弁護士)、仲裁者、金融業者(資本家)の行為とネットワークの実状を見せ、これにより国際投資体制がいかに維持され、拡大しているかを見せ る。

投資仲裁産業は、単なる国際投資法の受動的な受恵者ではなく、とても積極的な行為者だ。彼らは超国籍企業と強い個人的、商業的なきずなを持ち、国際投資体制を活発に防御する学界で顕著な役割を果たす。

政府を訴訟にかけるすべての機会を追うだけでなく、国際投資体制のいかなる改正にも反対する成功的かつ強力なキャンペーンを行なっている。政府(あるいは納税者)が敗訴しなくても損害で、敗訴すればなおさら損害だ。

地球的、国家的危機はISDの機会

国連は、ISDが財政、経済危機に対処する政府の能力を深刻に阻害することを認めた(UNCTAD. 2011)。アルゼンチンが2001年に経済危機に対処するための経済改革プログラムを行ったところ、40件以上の訴訟を受けた。2008年末までに12 件のISDについての判定を受けた結果、アルゼンチンが支払う賠償金は115千万ドルにのぼった(Luke Eric Peterson. 2008)。これはアルゼンチンの15万人の教師、または10万人の医師の年間平均賃金にあたる。

ギリシャが財政危機を迎えると、仲裁弁護士は企業にISDをけしかけた。ドイツのローファーム、Lutherは、依頼人に借金を返すことを敬遠する 国家では国際投資協定を基盤として訴訟をすることができると話した。そして「ギリシャの淫らな財政的処身(Greese's grubby financial behaviour)」は、気分を害した投資家に賠償金を要求する確実な理由を提供すると提案した。

米国のローファーム、K&L Gates201110月依頼人のための要約報告書でアルゼンチンに対する仲裁訴訟の一つを分析し、次のように書いた。投資協定仲裁は、「政府の債務 不履行による投資損失の被害を回復させられる」、「現在の財政危機が世界的になれば、債務機関による構造調整により損害を受ける投資家に希望を提供しなけ ればならない」。このローファームはギリシャを投資協定により、投資家の投資を保護できるかどうかを調べなければならない国家だと認識している。

また、ローファームは依頼人が政府との負債構造調整交渉で「交渉の道具」としてISDを利用し、政府を威嚇するべきだと提案した。米国のローファー ムMilbank、オランダのローファームDe Brauw、英国のローファームLinklatersはすべて同様の方針を持っている。2011年にMilbankのパートナー弁護士の収益は250万ド ルまで上がったが、ギリシャの25歳以下の労働者の一か月の最低賃金は510ユーロ(660ドル)だった。_ 20123月にEUとギリシャに金を貸した銀行、ファンド、保険者は、長い交渉の末にほとんどが償還期間を緩和することに決めた。しかしすぐいくつかの ローファームが債務スワップを受け入れることを拒否し、融資機関の代わりに数百万ドルの損害賠償を要求すると発表した。

ギリシャの負債危機に対する訴訟は、非常に収益性が高い投資仲裁ビジネスの一例でしかない。2011年にリビアに内戦が発生した時、ローファームは超国籍コミュニティに対し、リビアでの彼らの利益を守る方法についての広告を出した。

英国のローファームFreshfieldsは「設備と個人の安全と保安に関して」リビア政府が約束を守れなかったことについての金銭的補償を請求す るために投資協定を利用することができると提案した。米国のローファームKing&Spaldingも、20115月に「リビアの危機:石油会 社とガス会社に有効な法的選択肢は何か(Crisis in Libya:What legal options are available tooil and gas companies?)」というの題名の『依頼人警報(client alert)』を発行し、リビアの石油、ガス会社にISDへの関心を高めた。

保健、社会安全、環境、労働政策は高価なビジネスチャンス

仲裁弁護士にとって、公衆保健、社会安全、環境、人権を保護する政府の規制は収益性の高いビジネス機会だった。ドイツのローファームLutherは 「助けて。収用される!(helpI am being expropreated!)」というの題名のブローシャーで、投資仲裁の機会として新しい税金、新しく導入された環境法、政府規制により下げされた価格 などのシナリオを広報した。

ハンガリーが2011年に莫大な公的負債を減らすために収益性が高い企業に税金を導入すると、米国のローファームK&L Gatesは企業が選択できる投資仲裁を提案した。インドが20123月に抗ガン剤のネクサバールの薬価があまりにも高いため、強制実施を発動すると、 米国のローファームWhite&Caseは特許権を持つ超国籍企業に「BIT下で安息所を見つけるだろう」といった。

スウェーデンのエネルギー企業、バッテンフォール(Vattenfall)がドイツ政府に訴訟をしたのも同じだ。2012年の福島原発事故の後、ドイツ政府が原子力エネルギーを段階的に廃止することに決めると、37億ユーロ(46億ドル)を要求してISDを提起した。

ドイツのアンゲラ・メルケル政府は2010年に原発の段階的廃棄方針を変更し、古い原発の運転期間を814年延長した。バッテンフォールはドイツ政府の当時の決定を見た後、ドイツ、ハンブルグ付近の原発に7億ユーロを投資した。

しかし、メルケル総理は20113月、日本で福島原発事態が起きると既存の政策をひっくり返し、二つの原発を含む8つの原発を直ちに閉鎖し、2022年までにドイツ内の原発をすべて閉鎖することにした。

これに対し、バッテンフォールは自分たちの投資がすべて吹き飛んだと主張してISDを提起したのだ。バッテンフォールは、エネルギー憲章条約 (Energy Charter Treaty)の「国家は投資家に対し公正で公平な待遇をしなければならない」という条項を今回の原発訴訟の根拠とした。これは、韓米FTAにも含まれて いる。

バッテンフォールは2009年にもハンブルグ・モーアブルクの石炭火力発電所に対するドイツ政府の環境規制に対し、14億ユーロ(19億ドル)の賠償金を要求し、エネルギー憲章条約を根拠としてICSIDに提起し、2010年にドイツ政府の賠償を受け取ったことがある。

オーストラリア政府は世界保健機構(WHO)の勧告を受け入れ、タバコの箱にブランドごとにデザイン、色、ロゴを表記せず、薄緑の箱 (generic olive green packets)に製造会社・商標名を小さな文字で表記し、口腔癌、視力を失った眼球のように喫煙関連の病気の写真と共に警告の文句を大きな文字で表記さ せる法律を制定した。

http://www.redian.org/wp-content/uploads/2013/01/%ED%98%B8%EC%A3%BC-%EB%8B%B4%EB%B0%B0.jpg
オーストラリア議会の禁煙法決定で推進されたタバコの外箱の模型。これにタバコ会社は訴訟で対応した

 

201111月にこの法案が通過すると、香港のフィリップ・モリス・アジアは香港オーストラリア投資協定(BIT)を通じてISDを提起した。そ して201112月にはフィリップ・モリス、ブリティッシュアメリカ・タバコ(BAT)、ジャパン・タバコ、インペリアル・タバコの4社が、オーストラ リア政府の措置は知的財産権(商標権)を侵害し、違憲の可能性があるとし、オーストラリア高等法院に訴訟を提起した。2012815日、オーストラリ ア大法院は合憲と判決した。だがISDは進行中だ。フィリップ・モリスはカナダのタバコ規制政策に対してISDを提起すると威嚇し、カナダのタバコ規制政 策を無力化させている。

南アフリカ共和国の長い間の人種差別制度による不平等を是正するために、20041月、大統領は黒人経済育成法(Black Economic empowerment Act)に署名した。黒人が経済活動に参加する機会と恩恵を保障するため、企業に対し黒人管理者の割合、黒人の所有限度、黒人労働者の割合などを基準とし て点数を付け、政府の入札や銀行融資を優先的に支援する制度を用意した。

これに対して2007年にイタリアの鉱山会社Piero Forestiをはじめ、多くの企業が南ア・イタリアBIT、南ア・ルクセンブルクBITを通じ、ISDを提起した。南ア共和国の政府がこれらの企業に新 しいライセンスを与えることで合意した後、20108月に仲裁が終了した。

このように、ローファームは国家に対して訴訟をするあらゆる機会を探す。企業に対し、訴訟の機会についての情報を絶えず知らせることは、仲裁弁護士にとっては一番基本的な仕事だ。戦争や経済危機のような地球的、国家的な危機状況は、仲裁弁護士が利益をあげる機会になる。

そして、保健、環境、労働政策さえISDを避けられないのではなく、むしろこうした公共政策が仲裁弁護士にとってはIDSの最優先の対象だ。だが投 資家がISDを提起した時、勝算があるか、少なくともISDを提起することが利益につながる構造があるからこそ、「投資仲裁産業」がこのように成長できた のだろう。なぜ可能なのだろうか?

原文(レディアン)

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投稿者 yu 時刻: 1:52 

 

2013228日木曜日

ISD条項に関する韓国情報活動家の記事 2

不当なことで利益を得る(2)

仲裁専門ローファーム、「彼らだけのリーグ」

[情報共有と知的財産権]「ISD提起の威嚇」だけで政府の政策が挫折

Byクォン・ミラン/情報共有連帯IPLeft/ 201324日、11:35 AM

 

昨年、ローンスターがISDにより韓国政府に約24千億ウォンの損害賠償金を請求したという。このとてつもない訴訟を代理するローファームが選定 された。 ローンスターと韓国政府(法務部)は、国内の法務法人としてそれぞれ世宗(セジョン)と太平洋(テピョンヤン)を選定し、海外のローファームとしては米国 のローファームのシドリー・オースティン(Sidley Austin)とアーノルド・アンド・ポーター(Arnold&Porter)を選定したという。

シドリー・オースティンとアーノルド・アンド・ポーターは、2011年に一番多くのISDを手がけた投資仲裁専門ローファーム上位20位の5位と6 位を占めた(下表参照)。今回は、これらのローファームが投資仲裁産業の成長のために何をしているのかを調べてみよう。研究報告書「不当なことで利益を得 る-ローファーム、仲裁者、金融業者らが投資仲裁ブームをあおる方法(Profiting from injustice. How law firmsarbitrators and financiers are fueling an investment arbitration boom)」によれば、次のように要約できる。

  • 他の仲裁専門弁護士、仲裁者、資金提供者、学者と友人になれ
  • 政府公務員をスカウトしろ
  • 仲裁者になれ
  • ビジネスを創り出せ。戦争、経済危機、政治的変化に注目しろ。多国籍の依頼人にISDはそうした激変で金を稼げることを納得させろ。 
  • 「投資協定ショッピング(BIT-shopping)」をして、同じような事件で併行訴訟を追求しろ。
  • 政府を脅せ。訴訟の威嚇は政府が進んで諦めたり合意させる。
  • タダで貧しい政府の力量を強化させろ。みんな潜在的な依頼人だ。
  • 投資協定の改革に反対してロビーをしろ。
  • 投資仲裁システムを保護しろ。 

こうしたローファームの行為をこの報告書は「救急車を追いかける弁護士(ambulance chaser)」に例える。これは19世紀末に(交通)会社と被害者に訴訟を誘導し、金を稼いだことから出てきた表現だ。今日、これはグローバルだ。 カナダのヨーク大学(York University)のオズグッド・ホール・ロースクール(Osgoode Hall Law School)のグス・ヴァン・ハートン(Gus Van Harten)副教授は、「仲裁専門弁護士は、単に救急車を追う追撃者ではなく、仲裁者を兼ねて事件を作り出す」と話した。

緊密なコミュニティ、巨大なビジニーズ

国際的には3つのローファームが投資仲裁ビジネスを主導している。英国のフレッシュフィールズ(Freshfields Bruckhaus Deringer)、米国のホワイト・アンド・ケース(White&Case)とキング・アンド・スパルディング (King&Spalding)だ。 Freshfieldsは今までに165件以上のISDを担当した。2011年には3つのローファームが130件のISDを担当した。新規ローファームの 進入は難しい市場だ。

ある弁護士は、ICSID(国際投資紛争解決センター)に提起された30件の訴訟のうち25件がヘビー級に行くと推測している。投資家から訴訟を受ける国家、つまり非西欧国家のローファームにはほとんど参加する機会もない。

仲裁専門弁護士は投資仲裁コミュニティの「門番」になって、緊密にコミュニティを維持している。この小さな弁護士グループは、仲裁者とコンサルタン ト、専門家、証人を行き来して、さまざまな役割を果たす。この小さなグループの中で、仲裁判定部は仲裁専門弁護士を知り、弁護士は仲裁判定部を知る。

仲裁者と弁護士を兼ねることは何回も問題になったが、相変らず認められている。仲裁者となる25人の弁護士がいるFreshfieldsは、この市場を主導している。 また、仲裁専門弁護士はコンサルタントとしても大活躍をしている。

ゲームの不文律を知る者は別にいる

ローンスターが勝つか、韓国政府が勝つか。その答はしばしば仲裁者になってきた英国のローファーム、Herbert Smith FreehillsMatthew Weinigerに関する大学の講義から知ることができる。彼は国際商業裁判所(ICC)が作った薄い小冊子と英国の法廷規則の2冊を比較して「成文化さ れていない内容がこれほど多い。 この内容を知っているのが仲裁専門弁護士だ」と学生に説明した。

私たちが仲裁判定の結果が正しいかどうかを確かめる基準になりそうなものは存在しない。数千億ウォンから数兆ウォンにのぼる賠償金がかかる訴訟を全的に仲裁専門弁護士に依存しなければならず、彼らが多額の受託料を受け取るのは当然ではないだろうか?

降参しろと脅すこと

ISDは投資家にとって政治的な武器だ。バッテンフォールとドイツのISDに関与したローファームのLutherは、「すぐありそうな投資協定訴訟 の影の下では、解決に到達するのはやさしい」と言う。ISDを提起するという脅しや仲裁意向書を通知するだけで、政府の保健、環境政策などを挫折させた事 例は多い。

代表的な例が超国籍タバコ会社からの脅迫で、カナダ政府が進んで禁煙政策を放棄したことだ。NAFTA協定の発表から5年経った時、カナダのある元 公務員は「この5年間、新しい環境規制と提案をすると、ニューヨークのローファームから手紙が送られてきた。農薬、医薬品、特許法、ドライクリーニングの 化学薬品に関するものだった。事実上、すべての新しい試みがターゲットにされ、ほとんどは陽の目を見なかった」と話した。こうした「予防戦争(pre- emptive strike)」はますます増えるだろう。

BIT(二国間投資協定)ショッピング

仲裁専門弁護士は、最も投資家親和的な協定を選ぶ。別名『二国間投資協定ショッピング(BIT shopping)』だ。超国籍企業は同じ事件に対し、さまざまな投資協定を利用して、同じ政府を相手に何回も訴訟をすることができる。

最も有名な事件の一つが米国の化粧品会社、エスティ・ローダー(Estee lauder)の相続者であるRonald Lauderが米チェコBITとオランダ・チェコBITを利用し、立て続けにISDを提起したことだ。前者は棄却されたが、後者ではチェコは利子とともに 保健予算総額にあたる27千万ドルを支払うよう命令された。

特にオランダは多くの投資協定を締結しており、「協定ショッピングの出入口(gateway for treaty-shopping)」として有名だ。アムステルダムに基盤をおくローファームのDe Brauwは、オランダを「通じて」、開発途上国とエネルギーが豊富なところに投資しろと国際的に広告を出す。米国のローファーム、Baker McKenzieはオランダにある仲介会社を通じ、中国に投資をしろと依頼人に広告をする。

なぜなら米中投資協定はないが、オランダ・中国の投資協定があるためだ。 オーストラリア政府が20114月、今後の協定にはISDを入れないと発表すると、英国のローファーム、Clifford Chanceはまだ外国政府に訴訟をしたがるオーストラリアの企業に「とても人気がある選択」としてオランダを提案した。

増える新しい依頼人、政府を教える

仲裁専門ローファームは、政府が投資協定の交渉をして協定草案を作る時にコンサルティングをして、政策を実行するにあたり、投資訴訟の危険の処理についてもコンサルティングをして、ISDについて教育をする役割もする。

スイスのローファーム、Laliveは、開発途上国の力量強化のための国連機構UNITARのために、投資仲裁について定期的なオンライン教育コー スを運営している。貧しい国家の公務員はスカラーシップにより無料で教育を受ける代わりに、ローファームのLaliveは潜在的な新しい依頼人リストを得 るわけだ。201111月にカナ、ザンビア、リベリア、南アフリカ共和国、ウガンダ、エジプトから来た12人の政府側弁護士が、投資法と仲裁について一 週間の訓練を受けた。 この訓練は、SalansHogan LovellsVolterra FiettaAllen&Overyなどの国際的な大型ローファームがトレーナーを提供し、後援した。

投資協定と仲裁システムの変化を防ぐ

200912月、リスボン条約の発効後に、ヨーロッパはいつよりも投資協定に対して論争が続いている。その理由は、まず、リスボン条約が発効する とFTABITなど、すべての貿易協定は個別会員国が批准せず、ヨーロッパ議会の批准手続きだけ通れば発効するためだ。二番目は、EUの排他的権限領域 がサービス、知的財産権と海外直接投資(FDI)にまで拡大したためだ。

特に、投資部門をEUの排他的権限としたことで、今後EU次元の投資協定を締結する法的装置ができたが、投資政策についてのEU次元の排他的管轄権 が完全に確定したわけではない。これによりEUは、共同の投資政策が必要な状況になり、会員国はすでに締結した、あるいは会員国の間で締結されたBITと の関係をどうするのかを決定しなければならなくなった。

20107月にヨーロッパ執行委員会は、共同投資規定を立案するための方向を提示する報告書「包括的な国際投資政策の方向(Towards a comprehensive European international investment policy)」で、すでに締結された個別のBITとの過渡的な両立を認める暫定的措置についての規定を提出した。

暫定的措置の内容は、会員国が第三国と締結したBITと、会員国間で締結したBITを存続させるが、EUの法律と合わせて再協議をしなければならず、現在進行中のBIT交渉を続けるということだ。

ヨーロッパの労組と市民社会グループは、長い間、会員国のBITについて整備を要求してきた。具体的にはISDをなくし、投資家に義務を賦課して、さらに正確かつ制約的な表現で投資家の権利を明確にし、政府の統制権をはっきりさせることなどだ。

ヨーロッパ議会が20114月に発表した「未来の国際投資政策(Future European international investment policy)」という題名の決議では「投資」、「外国投資家」の概念と範囲を明確に定義し、国家安全、環境、保健、労働者および消費者の権利、文化多様 性の領域で政府統制権を保護することを要求した。ヨーロッパ執行委員会は、20126月にISD規定案も提出した。

こうした論争に影響を与えるため、国際的な大手ローファームのHogan LovellsHerbert Smith FreehillsBaker McKenzieは、EUの政策マンを招請して超国籍企業との非公式の論争を行った。ここにはISDを提起したことがあるDeutsche Bankとエネルギー企業のShellも参加した。

そして有名な仲裁者で米国のローファーム、Shearman&Sterlingの弁護士のEmmanuel Gaillardは、EU会員国間のBITを段階的に廃止しようとするヨーロッパ執行委員会の提案について、「惨めな経済的な結果」を招くと憂慮した。彼 は最低3件のEU会員国間のBIT訴訟を仲裁してきた事実から、なぜ彼がこの協定を維持しようとしているのかが分かる。

オランダのローファーム、De Brauwは、ヨーロッパ議会の議員に対して既存のBITと高い投資家保護基準を維持すべきであり、特にISDは維持するべきだという内容の書簡を送っ た。投資保護を労働や環境基準と関連させるなという内容も含まれていた。De Brauwは、オランダ・スロバキアのBITを利用して、スロバキア政府に14200万ドルを要求したオランダの保険会社Eurekoを代理している。 スロバキア政府は以前、行政府の医療民営化政策をひっくり返し、保険者に非営利目的の基盤で運営するよう要求したことによる。

回転ドア、政府から出たり入ったり

NAFTA協定の交渉家とコンサルタントの何人かは、投資仲裁産業では誰もが知る名前になった。FreshfieldsJan PaulssonKing&SpaldingGuillermo Alvarez Aguilarはメキシコ政府のコンサルタントをし、Daniel Priceは米政府側で交渉した。NAFTAが署名された瞬間、これらの弁護士は企業に対し、政府に訴訟をしろとけしかけた。Jan PaulssonDaniel Priceは有名な仲裁者でもあり、次回でも議論されるだろう。

仲裁回転ドアに属する多くの人、特に米国では政府と国際機構にバックを持っている。以前は米政府の内部にいて、現在ではローファームのWell, Gotshal&Mangesで働くTheodore Posnerは、そんな人たちが「政府の公務員が交渉する方法と問題を分析する方法を知っている」と話した。

フランスのローファーム、SalansBarton Legumは、2000年から2004年に米国の国務省で投資家の紛争から米国を防御する代表諮問委員として、新しい投資協定を発展させる支援をした。現 在はその時に得た洞察力を利用して金を稼いでいる。NAFTA協定を使い、最低52千万ドルの賠償金を米政府に要求したカナダの製薬会社Apotexを 代理している。

Legumは有名な仲裁者でもある。米国のローファーム、Greenberg TraurigRegina Vargoは、30年以上、米政府でCAFTA-DR(米国と中米6か国間の自由貿易協定)のようなFTAと、投資協定での主な交渉家として活動した。 CAFTA-DRの下で初めて提起されたISDで、Vargoは米国の鉄道投資家の代理としてグアテマラ政府から約1200万ドルの賠償金を受け取った。ある同僚によれば、Vargoよりも「CAFTAに密接で、特別な人はいない」と言う。

Anna Joubin-Bret15年間、開発途上国に投資協定問題についてコンサルティングし、国連貿易開発会議(UNCTAD)にいた。開発途上国を交渉家 で埋まった部屋に誘い、結局、数十の投資協定調印国にさせたUNCTADの悪名高い署名パーティーの代表組織者だった。現在は米国のローファーム Foley Hoagで政府側を代理して協定草案についてコンサルティングをしている。

上位20位の投資仲裁専門ローファーム

この報告書は、2011年に担当したISD件数について、上位20位のローファームを選定した。ローファームが自ら提供した情報で付けた順位だ。こ れらの情報は外部的に確認できず、情報を提供しないローファームもあるため、このリストにない国際的な巨大ローファームも投資仲裁産業で、重要な行為者が あるかもしれないということを見過ごしてはいけない。

3位になった米国のローファーム、King&Spaldindの履歴を見よう。このローファームには、ワシントン、ニューヨーク、パリ、ロ ンドン、シンガポールといった主要投資仲裁中心地で活動する50人の仲裁専門弁護士がいる。このローファームの弁護士の何人かは仲裁者としてICC(国際 商業裁判所)と仲裁機構にいる。ICSID(国際投資紛争解決センター)の最高重役だったMargrete Stevensは、17ICSIDに在籍した後、このローファームに移った。前述のように、Guillermo Aguilar-AlvarezNAFTA交渉ではメキシコ政府のために法的諮問をしていた。このローファームが20123月の時点でウェブサイトに 公開した37件 のISDのうち35件が投資家を代理した事件だ。

このローファームの成功の鍵は、アルゼンチン政府に対するICSID訴訟での勝利だった。このローファームは20122月まで、アルゼンチン政府 に対して提起された49件のICSID訴訟のうち、最低15件の訴訟で投資家を代理した。このローファームで国際仲裁グループの共同代表であるDoak Bishopは「アルゼンチンのペソ危機で発生した訴訟について諮問を求める弁護士」と認められている人だ。 彼はアジュリ(Azurix)がアルゼンチンにICSIDを提起した訴訟でアジュリを代理し、18500万ドルの賠償金の判定を受け取った。

アジュリは米国のエンロン(Enron)から分社した水企業で、ブエノスアイレスで民営化された上下水システムを買収したが、2000年に深刻な藻 類の発生などで、水質に問題が起きた。これについて地方政府が責任を問うたことに対し、ISDを提起した。このローファームの二番目の特徴は、巨大ガス、 精油会社のために活動したことだ。90年代中盤に米国の巨大精油会社テキサコ(Texaco)の訴訟を担当し始め、現在はテキサコを買収したシェブロン (Chevron)を代理している。 シェブロンはアマゾンの熱帯雨林で油田掘削による汚染を除去するため180億ドルを支払えというエクアドル裁判所の命令を避けるためにISDを提起した。

乱暴に言えば、投資協定文を作った人とISDの判定をする人と訴訟を代理する人が同じ人だったり、互いに友人になって投資家の利益を保護するシステムを拡大し、そのシステムを利用してISD件数を増やしているのだ。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       
   

ローファーム

   
   

2011
   ISD

   
   

2011
   
収入

   
   

2011
   
パートナー弁護士
   
収益

   
   

政府側 /    
   
投資者側

   
   

有名な仲裁者

   
   

備考

   
 

Freshfields Bruckhaus
  Deringer
  (
英国)

 
 

71

 
 

$1.82 billion

 
 

$2.07 million

 
 

双方。主に投資家を代理

 
 

Jan Paulsson,
  Noah Rubins,
  Lucy Reed,
  Nigel Blackaby

 
 

10年間支配的な投資仲裁専門ローファーム

 
 

White & Case
  (
米国)

 
 

32

 
 

$1.33 billion

 
 

$1.47 million

 
 

双方
 
恐らく政府側活動が多い

 
 

Carolyn Lamm, Charles Brower
  (2005
年まで),
  Horacio Grigera
  Naóon (2004
年まで)

 
 

2001年金融危機を迎えたアルゼンチンにイタリア債権所有者を代理して数十億ドルISD提起

 
 

King & Spalding
  (
米国)

 
 

27

 
 

$781
  million

 
 

$1.93
  million

 
 

ほとんど投資家のために活動

 
 

Doak Bishop,
  Guillermo
  Aguilar-
  Alvarez,
  Eric Schwartz,
  John Savage

 
 

米国石油会社Chevronを代理してエクアドルにISD提起
 
米国企業Rencoを代理しペルーに8億ドルを要求してISD提起

 
 

Curtis
  Mallet-Prevost, Colt & Mosle
  (
米国)

 
 

20

 
 

$165
  million

 
 

$1.54
  million

 
 

政府

 
 

ベネズエラ、カザフスタン、トルクメニスタンなどの政府を代理、20012012年に収益が50%増加

 
 

Sidley
  Austin
  (
米国)

 
 

18

 
 

$1.41
  million

 
 

$1.60
  million

 
 

双方
 
恐らく企業側の活動が多い

 
 

Stanimir
  Alexandrow,
  Daniel Price
  (until 2011)

 
 

ウルグアイにISDを提起したフィリップ・モリスを代理

 
 

Arnold
  & Porter
  (
米国)

 
 

17

 
 

$639
  million

 
 

$1.40
  million

 
 

双方
 
恐らく政府側活動が多い

 
 

Jean Kalicki,
  Whitney
  Debevoise

 
 

カナダにISDを提起した米国製紙会社Abitibi-Bowaterを代理。この会社の工場閉鎖に、カナダ地方政府が伐採権と採取権を撤回したことにISDを提起。その結果カナダはNAFTAでのISD中でこれまで最高の賠償金の13千万ドルを支払った。  

 
 

Crowell
  & Moring
  (
米国)

 
 

13

 
 

$329
  million

 
 

$845
  thousand

 
 

ほとんど投資家のために活動

 
 

エルサルバドルが金採堀権を認めず、エルサルバドルGDPの約1%を要求して訴訟したカナダの鉱山会社Pacific Rimを代理

 
 

K&L Gates
  (
米国)

 
 

13

 
 

$1.06
  billion

 
 

$890
  thousand

 
 

双方

 
 

Sabine Konrad

 
 

バッテンフォールとドイツとの訴訟でSabine Konradがドイツ政府諮問  

 
 

Shearman
  & Sterling
  (
米国)

 
 

12

 
 

$750
  million

 
 

$1.56
  million

 
 

双方
 
ほとんどの訴訟で投資家の諮問

 
 

Emmanuel
  Gaillard,
  Philippe
  Pinsolle,
  Fernando
  Mantilla-
  Serrano,
  Yas Banifatemi

 
 

仲裁者Emmanuel Gaillardはこのローファームの最高位者で、投資法と仲裁に対する学問的、政治的論争に絶えず介入  

 
 

DLA Piper
  (
米国)

 
 

11

 
 

$2.24
  billion

 
 

$1.22
  million

 
 

双方

 
 

Pedro
  Martinez-Fraga

 
 

世界2位ローファーム。ベネズエラを相手にICSIDに提起された何人のISDで投資家を代理

 
 

Chadbourne & Parke
  (
米国)

 
 

$306
  million

 
 

$1.31
  million

 
 

投資家

 
 

不透明な投資仲裁の代表的な例。2011年に11件のISDに介入したがウェブサイトに何も公開していない

 
 

Cleary
  Gottlieb
  Steen &
  Hamilton
  (
米国)

 
 

$1.12
  million

 
 

$2.69
  million

 
 

双方

 
 

Telecom Italiaを代理。Telecom Italiaの少ない投資と欠陥サービスにより、ボリビアがEntelを国有化したためISD提起。その結果ボリビアは1億ドルを支払った

 
 

Appleton
  & Associates
  (
カナダ)

 
 

$
  million

 
 

$
  million

 
 

投資家

 
 

NAFTA発効後、初めてカナダに対するISDを提起。精油会社Ethylとカナダの訴訟で1300万ドルの賠償判定を受ける。このローファームは今も定期的にカナダ政府に訴訟を提起

 
 

Foley
  Hoag
  (
米国)

 
 

$149
  million

 
 

$1
  million

 
 

政府

 
 

Mark Clodfelter

 
 

主に政府のために活動。数人の弁護士が政府にバックグラウンドを持つ

 
 

Latham &
  Watkins
  (
米国)

 
 

$2.15
  billion

 
 

$2.27
  million

 
 

双方

 
 

Robert Volterra
  (2011
年まで)

 
 

世界4位ローファーム。アラブの春の後、エジプトの裁判所がムバラク政権下で取得した繊維工場を返還しろとIndoramaに命令したことにISDを提起。
  Indorama
を代理

 
 

Hogan
  Lovells
  (
米国/英国)

 
 

$1.66
  billion

 
 

$1.16
  million

 
 

双方
 
恐らく政府側活動が多い

 
 

インドネシアの裁判所がボルネオで英国のChurchillの炭鉱業許可が偽造されたと判決。許可を取り消されたChurchill20億ドルを要求しISDを提起。Churchillを代理

 
 

Clyde & Co
  (
英国)

 
 

$460
  million

 
 

$915
  thousand

 
 

双方
 
恐らく企業側の活動が多い

 
 

リビアのカダフィ政権退陣後に初めてリビアで開業した外国ローファーム

 
 

Norton Rose
  (
英国)

 
 

$1.32
  billion

 
 

$620
  thousand

 
 

投資家のために活動する傾向

 
 

Yves Fortier
  (2011
年まで)
  MichaelLee
  (2001
年まで)

 
 

カナダへのISDで投資家を代理してきたカナダのローファームOgilvy Renault2011年に合併。
  Yves Fortier
2011年まで50年以上このローファームで働く。  

 
 

Salans
  (
フランス)

 
 

$260
  million

 
 

$725
  thousand

 
 

双方
 
恐らく投資家側の活動が多い

 
 

Bart Legum,
  Jeffrey Hertzfeld,
  Hamid Gharavi
  (2008
年まで)

 
 

Barton Legumは米政府弁護士でいくつかのNAFTA紛争で米国を防御。現在は米国に訴訟をしたカナダ製薬会社Apotexを代理

 
 

Debevoise
  & Plimpton
  (
米国)

 
 

$675
  million

 
 

$2.07
  million

 
 

ほぼ100%投資家を代理

 
 

Donald Francis
  Donovan

 
 

最大の賠償金判定を受けたICSID紛争で投資家を代理。米国精油会社Occidental Petroleumが環境汚染によりアマゾンでオイル生産を中断させられたことでエクアドルに訴訟をして、賠償金176千万ドルの判決を勝ち取る

 

前の記事: ISD条項に関する韓国情報活動家の記事 「不当なことで利益を得る(1)

原文(レディアン)

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投稿者 yu 時刻: 1:47 

2013316日土曜日

ISD条項に関する韓国情報活動家の記事 3

不当なことで利益を得る(3)

ISDの守護者、仲裁者クラブ

By クォン・ミラン/情報共有連帯IPLeft / 2013220日、4:32 PM

最近、ローンスターと韓国政府が仲裁者を選任した。ローンスターが仲裁者に指名したチャールズ・ブロワー(Charles Brower)は、2005年までの37年間、米国のローファーム、ホワイト・アンド・ケース(White&Case)に在籍し、この報告書が選 定した国際仲裁市場を牛耳る仲裁者の2位に選ばれた人物だ。

ブロワーは、これまで知られている450件のISDのうち33回仲裁人に指名され、このうち94%は投資家により指名された。続けて韓国政府も仲裁者にブ リジット・スターン(Brigitte Stern)を選任したという。ブリジット・スターンは、この報告書が選定した仲裁者の1位だ。この報告書は仲裁者が決して中立的でないどころか、企業に 好意的な投資仲裁システムを作るパワーのある行為者になる理由を暴露している。

仲裁「マフィア」

仲裁者たちは、あまり世の中に知られていない。だが仲裁者は互いをよく知っている。学界とジャーナリスト、そして内部の人たちは、彼らを「小さくて、秘 密っぽく、クラブ風の」、「インナーサークル(inner circle)」あるいは「仲裁『マフィア』」と描写している。クラブを小さく維持することは、仲裁者が投資仲裁システムをしっかり捉えていることを意味 する。

匿名の国際法研究者によれば、似た価値、似た教育、似た観点でまとまった小さなコミュニティが維持されるため、投資仲裁システムが見えないという。彼によ れば、仲裁システムの動き方についての仲裁者間の一貫した観点は、仲裁システムの生存に必須だと彼は主張する。だから仲裁者たちは「そのシステムを守る役 割を果たす」のである。

この報告書では、これまでに知られている450件のISDを担当した仲裁者が誰なのか、投資家が要求した賠償金額がいくらなのかを調査した(最終的に判定 された賠償金額は分からないことが多い)。仲裁をした件数が多い順に15人のエリート仲裁者を選定した(下表参照)。単に15人の仲裁者が今までに知られ ている450件のISDのうち247(55%)を担当した。圧倒的に集中している。

そして、2003年から2010年に提起されたISDのうち、投資家が請求した賠償金額が1億ドル以上の事件を調査して順位を付けた。2010年までの ISDで、一番高額な賠償金を請求したのは、エネルギー会社のYukosHulleyVeteran Petroleumがロシアを訴えた訴訟だ。1036億ドルを請求した。次はConocoPhillipsがベネズエラに300億ドルを請求した。

15人のエリート仲裁者たちは、1億ドル以上の賠償金が請求されたISD 123件のうち79(64%)を担当し、40億ドル以上の賠償金が請求されたISD 16件のうち12(75%)を担当した。賠償金が大きいISDほど、15人のエリート仲裁者に集中していることが分かる。

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投資仲裁システムの生存は、相互にとても強い凝集力でつながった小さな仲裁者クラブ次第だと言える。15人のエリート仲裁者たちは、皆少なくとも1回は同 じ訴訟で他のエリート仲裁者と共に仲裁判定部を引き受けた。15人のエリート仲裁者が共に仲裁判定部を担当したISD69件あった。

Marc LalondeFrancisco Orrego Vicunna5回、同じ仲裁判定部を引き受け、L Yves FortierStephen M. Schwebel5回同じ仲裁判定部を引き受けた。Brigitte SternMarc LalondeGabrielle Kaufmann-Kohlerとそれぞれ5回ずつ同じ訴訟で仲裁判定部を引き受けた。その上、ローンスターと韓国政府が選任した仲裁者のCharles BrowerBrigitte Sternは、4件のISDを共に引き受けた。場合によっては3人の仲裁判定部を15人のエリート仲裁者に入る人が引き受けた。こうしたケースは15件も あった。

このうち、3人の仲裁判定部とどちらかの代理人が15人の仲裁者に入っているケースは7件ある。代表的な例としては、歴代最高の賠償金1036億ドルを要 求したYukosHulleyVeteran Petroleumとロシアとの訴訟で、仲裁者パネルはYves FortierDaniel PriceStephen M. Schwebelだ。Emmanul Gaillardは投資家を代理した。

ロシアは2002年までエネルギー産業民営化を推進し、20035月に「ロシア エネルギー戦略:2020年まで」を発表し、エネルギー産業に対する国家統制を強化して、大企業形態の国営エネルギー会社の育成計画の下で、2004年か ら民間企業による運送パイプライン建設を禁じ、外国系会社の持分を49%までに制限した。

こうしたロシアのエネルギー戦略の実行の過程で、2003年に当時ロシアで1位のエネルギー企業だったYukosの会長が、脱税や横領で拘束され、2004年には未納税額のためにYukosの資産が押収されて競売が行われた。

これに対し、Yukosの株式を持っていた3つの企業は2005年、ロシアを相手にエネルギー憲章条約を利用してISDを提起した。3つの企業を代理した ローファームのShearman &Sterlingが発表した依頼人機関誌「ユーコス:エネルギー憲章条約に対する歴史的な決定(Yukos:landmark decision on the energy charter treaty)」によれば、ロシアは1994年にエネルギー憲章条約に署名したが国内批准をしておらず、20098月にエネルギー憲章条約の会員国にな らないと発表した。しかし仲裁判定部は20091130日、Yukosなどがエネルギー憲章条約を利用してISDを提起することを認めると判定した。

同じISDで、仲裁と代理を同じローファームが担当したケースもある。特に、このような場合はISD制度の公正性を問うこと自体が無意味だ。 Bayindir Insaat Turizm Ticaret Ve Sanayi A.S.とパキスタンとの訴訟で、Essex Court Chambersに所属するStephen M. Schwebelが企業側を代理し、同じ所属のKarl H Bockstiegel3人の仲裁判定部の1人になった。同時に所属が同じ2人の弁護士が、パキスタン政府を代理した。

Chambersはローファームではなく、いわゆる自営業者弁護士の「職務共同体(office community)」と言えるので問題にはならないと主張するが、HEPとスロベニアとの訴訟で国際投資紛争解決センター(ICSID)の仲裁判定部 は、仲裁判定部議長のDavid A.R. Williamsと、スロベニアが代理人に選定したDavid MildonEssex Court Chambersに所属しているため、スロベニア政府はDavid Mildonに弁護を任せられないと決めた。

仲裁者の多くの地位

仲裁者は、弁護士、あるいは専門家として、証人としてISDに直接参加したり、政府の代表者や諮問を引き受けて政策に影響を与え、学界で問題を提起し、企 業の代わりにロビイストとして活動したり、企業の理事会に参加する。これにより彼らは投資仲裁システムを維持し、利益を得る。こうしたことは、仲裁者に とっては平凡なことだ。

ローンスターと韓国のケースも同じだ。韓国政府の代理をしたアーノルド・アンド・ポーターのジーン・カリッチ(Jean Kalicki)とローンスターを代理したシドリー・オースティンのスタニミール・アレクサンドロウ(Stanimir Alexandrow)は、有名な仲裁者でもある。

この分野でとても華麗な履歴を持つ人を紹介しよう。ダニエル・プライス(Daniel Price)だ。プライスは典型的な投資仲裁チャンピオンではないが、一番多くの地位についた仲裁者を選べと言えば、当然プライスが1位だ。

投資協定交渉家、ISDを擁護する企業ロビイスト、企業の利益を防御するコンサルタント、新自由主義を促進するメディア解説者、仲裁者、これらはすべて彼 の履歴だ。プライスは過去20年間、何回も回転ドア人事を経験した。プライスは、自分が交渉を促進した投資協定の受恵者だ。米貿易代表部の責任法務諮問委 員になり、米露BIT(1992年署名)の交渉をした。彼はもまたNAFTAの投資保護条項について交渉した。彼は投資家-国家訴訟条項を考案し、企業に この条項を利用して政府に対する訴訟を要求した初の米国弁護士の1人として知られている。

1992年、彼は初めて政府の要職から離れた。彼は投資仲裁産業に無限の利益を創出する可能性を見つけ、その産業を発展させることにした。2002年から 2006年に、彼はメキシコ政府を相手にアリアンツ(Fireman's fund insurance)の代理となった。訴訟の間、アリアンツのためにホワイトハウス、米貿易代表部、国務省、商務省にロビーを行った。

また、モンサント、国際投資機構、米国の製薬会社と生命工学会社のためのロビイストとしても活動した。Yukosなどがロシアを相手にISDを提起した2005年から、ホワイトハウスの招請を受ける2007年まで、Yukosが指名する仲裁者だった。

プライスは米国のローファーム、Sidley Austinで国際投資紛争解決担当部で議長として4年間活動した後、2007年にジョージ・ブッシュ大統領の高位級の経済諮問を担当し、また米政府に戻った。

2008年に国際経済危機が頂点に達した時、彼は解決の方向性についての論争に影響を与える位置にあった。彼はG8(東京)でブッシュの特別代表を引き受 け、2008年にワシントンで開かれた初めてのG20首脳会談を陣頭指揮した。G20は「私的財産の尊重、貿易と投資開放、競争的市場を含む自由市場の原 則について約束すれば、われわれはこの改革が成功するだろうということを認める。開発途上国を含み、われわれは経済的成長に害を与え、資本の流れを悪化さ せる規制を避けなければならない」と話した。まさにプライスが支持してきた措置だ。

彼は2009年にローファームのSidley Austinに戻り、2011年にまた辞めた。彼はビジネスコンサルタント会社のRock Creek Global Advisorsと独立の法律業務の両方を始め、企業との関係を振興させる計画だ。彼は自分を中立的仲裁者と言い、企業に対し政府の規制を避ける方法につ いてコンサルティングをする。

投資協定に署名すること

誰もがご存知の通り、投資協定のISDでは、政府に訴訟をすることができるのは企業だけだ。仲裁専門弁護士や仲裁者にとって、この言葉は投資協定がなけれ ば訴訟もなく、訴訟がなければ仲裁者や代理人には選任されないということを意味する。したがって、投資仲裁産業を成長させるには投資協定の締結を要求する ことが必須だ。

1990年代にJan PaulssonNAFTA協定11(投資保護)の交渉でメキシコ政府の諮問をした。そして彼は企業がメキシコ政府に提起した2件のISDで、仲裁判 定部を引き受けた。Emmanuel Gaillardは政府の諮問は引き受けなかったが、2010年にモーリシャスで開かれた公開カンファレンスを活用して、モーリシャス政府が投資協定に署 名するように奨励した。米政府を代表して、NAFTA11(投資保護)の交渉を率いたDaniel Priceは、当時メキシコ政府がISDを受け入れるように積極的に圧力を加えた。その結果、メキシコ政府は別名Calboドクトリンと言われる原則-国 内裁判所だけが外国人投資家が提起した訴訟の司法権を持つ-を捨てた。Calboドクトリンは、メキシコ憲法の一部だった。その後、プライスは米国企業の Tate&Lyle Ingredients AmericasFireman's fund insurance(アリアンツ)がメキシコ政府に対して訴訟をした時、これらの企業の代理をした。

曖昧な規則、さらに多くの訴訟

前編で言及したように、仲裁機構は特別な仲裁基準や規則は持っていない。投資協定文だけが根拠だ。したがって、投資協定の条項が曖昧であるほど、正確性が低いほど、企業が訴訟をする機会が多くなる。

国連国際貿易法委員会(UNCTAD)は「国際投資協定の条項は、厳密に表現されていない」と指摘した。その結果、投資協定の曖昧な規則を仲裁者がいかに解釈するかに全てがかかっている(UNCTAD 2011)。規則が曖昧なほど、仲裁者の役割が重要になる。

投資家にとって、公正かつ平等な待遇を提供する政府の義務(fair and equitable treatment、公正衡平待遇と呼ばれるようになる)ISDの重要な理由として登場した。

国連国際貿易法委員会(UNCTAD)によれば「投資家が訴訟を提起するとき一番よく依存し、最も成功的な根拠になっている」この条項は、一番質が低く、 不明確な条項の一つだ。また、仲裁者が「公正で平等な待遇の概念を広く解釈してきた」と指摘し、「結論は、限りなく不均衡的な接近になる。投資家の利害を 擁護し過ぎている」と結論した(UNCTAD 2012)

20105月までに結果が公開されている140件のISDについての統計研究(2012)で、Gus Van Harten教授は仲裁者たちが投資概念、法人投資家、少数株主権、併行訴訟といった問題について、請求人(投資家)に都合がいいように拡大解釈する傾向 が強いことを確認した。また仲裁判定では、投資家の国籍が強く作用する傾向を確認した。投資家が米国、英国、フランス、ドイツ国籍であれば、仲裁者は拡大 解釈する傾向を見せた。

仲裁者が投資家の代理になる時も同じだ。NAFTA協定によるFireman's fund(アリアンツ)とメキシコの訴訟で、投資家はメキシコ政府が財政的投資を収用したと主張した。これは、メキシコ政府が1997年の金融危機の時に 取ったエネルギー措置の結果だった。この訴訟の判定では、NAFTA協定受け入れ条項の解釈が決定的だった。噂によれば、投資家の代理をしたDaniel PriceStephen M. Schwebelは「収用」が財産権の没収概念より広い方式で解釈されるように主張する82ページの報告書を提出した。

しかし仲裁者たちは、人権と社会権についての国際法の接近は制限的だ。20125月にヨーロッパ憲法と人権センター(ECCHR)は、ジンバブエに対し て提起された2件のISDについて仲裁判定部に声明書(法廷助言)を提出しようとした。木材農場に関する訴訟だったが、ヨーロッパ憲法と人権センター (ECCHR)は紛争中の農場は先住民の先祖が住んでいた区域にあるとし、裁判の結果が土地に対する土着共同体の権利に影響すると主張した。

Yves Fortierが議長になった仲裁判定部はこうした憂慮を聞くことも拒否した。国際司法裁判所判事のBruno Simmaは、「経済的、社会的権利を考慮することは、投資家国家仲裁では例外」だと指摘した。

投資協定の改革を防ぐこと

ローンスターが選任した仲裁者のCharles Browerが「国際仲裁の基本的な要素を変えるいかなる提案も、仲裁機構には受け入れられない攻撃になる。反対に、こうした基本的な要素を強化する提案 は、注意深く考慮されるべきだ」と言う程、投資仲裁システムの変化に反対する。

前編で、リスボン条約の発効後、ヨーロッパの投資政策について仲裁専門ローファームと有名な仲裁者が影響を及ぼす方法について言及したが、米国でも似たようなことがあった。

NAFTA協定の下でカナダの企業から、何回も訴訟にあった米政府が、2004年に1994 BITモデルを修正し、新しいBITモデルを導入した。2004 BITモデルは、米政府が特に保健と環境の領域で統制権を発揮できる政策空間が若干導入されたが、期待できるようなものではなかった。

米政府で要職に付き、20年間国際司法裁判所の裁判官を歴任した有名な仲裁者のStephen M. Schwebelは、こうしたささいな変化さえ非難した。米国を代表して投資協定の交渉をしたDaniel Priceも反対した。最も有名な仲裁者のひとりであるWilliam W. Parkは「こうした政策の変化は問題が多く、海外の米国投資家に相当な被害を引き起こすだろう」と話した。

そして2009年にオバマは大統領候補として、労働と環境に対する義務を強めるために2004モデルを再検討することを約束した。だが2012年に出され た新しいBITモデルは、実質的な変化はなかった。201258日のTPP(環太平洋経済パートナー協定)交渉のために時を合わせて発表されたものだ という。

主な変化は、これまでのISDに対する批判を反映させ、投資により「労働と環境」を傷つけないようにすること、「将来は控訴制を導入」してISDの透明性 と公正性を強化することだ。だが3人の仲裁者が下した決定により、政府が損害賠償をする構造には変わりはなく、投資家が損害を受けないように国家主導経済 を制限したため、実効性については批判的がある。当時、米国政府の諮問委員会の一員だったStephen M. Schwebelは、1994年モデルに戻すことを支持した。

最近では南米国家連合(UNASUR)が、国際投資紛争解決センター(ICSID)に代わる仲裁センターの建設を議論している。エクアドルのコリア大統領 は、南米が自主的に紛争解決機構を創立することを提案し、ベネズエラのチャベス大統領もエクアドルの提案を支持している。チリ出身の有名な仲裁者、 Francisco Orrego-Vicunaは、「非常に投資家親和的と見なされるICSIDのような機構を代替するという提案は良いアイディアではないと思う。なぜな ら、そんな機構はほぼ確実に非常に政府親和的と認識されるだろうし、投資家は満足しないだろう」と主張した。

一方、投資仲裁システムに対する批判が強まっていることで、エリート仲裁者たちは現システムの基本には触れず、妥協する方案を探している。例えば William W. Parkは、政府の統制がきく政策空間を回復させる立場をある程度受け入れ、「さもなくば投資家国家仲裁は投資家の勝利に反発する大衆的な圧力の犠牲にな りかねない」と指摘した。

Honatiauはもっと直接的だ。彼は仲裁システムのすべての参加者の役割を再検討し、システムの作動方式の変化を受け入れる必要性を認め、「こうした 代価を払うことによってのみ、数十年間、仲裁者は国際的な取り引きの「天賦の裁判官(natural judge)」として残ることができる」と話した。

Jan Paulssonは仲裁機関がさらなる透明性を持つために、紛争当事者が仲裁者を選任せず、仲裁判定部全体を選任するべきだと提案したが、仲裁システムの 投資家に親和的な偏向については触れない。彼は国連の国際貿易法委員会(UNCITRAL)の規則に透明性の条項を入れる試みを阻止しようとするバーレー ン代表を防御した。Charles Browerは仲裁コミュニティが「システム全体の根本的な再設計を要求しない」程度の大きさの改革だけしか受け入れる準備ができていないと指摘する。つ まり、小さな改正を受け入れることで仲裁システムの構造的な変化を未然に防ぐのである。

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原文(レディアン) 

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投稿者 yu 時刻: 16:51 

 

 

 

 

2015年5月28日 (木)

道を踏み違えた日弁連  『日弁連問題』の勃発

武本夕香子弁護士の論考で初めて日弁連会長の会務執行方針の「基本姿勢」を読んだ。
これほどひどいとは正直、思わなかった。
人権の砦であるべき日弁連は、すでに過去のものになりつつある。

 

「基本姿勢」中、とくに強い違和感を覚えるのは、

「すべての判断基準は、市民の利益に叶いその理解と信頼を得ることができるか否かにあります。」

「 日弁連の主張を最大限実現するためには、孤立を回避することが不可欠であり、独りよがりや原理主義と批判されるような言動は排さなければなりません。
司法と日弁連の歴史に思いをいたし、経緯と情勢そして現実を冷静に見極め、説得力のある最善の主張を展開することにより多くの人々の理解を得、力を合わせて改革を着実に前進させることが大切です。」

との部分であり、現実迎合の姿勢があらわである。
日弁連は、政党と異なって、政権獲得を目的とする団体ではないのであるから、かような遠慮が無用なことは武本夕香子弁護士の説くとおりである。

 

一体、ここにいう理解を得、利益を叶えるべき「市民」とはだれなのか。
「孤立を回避することが不可欠」で「独りよがりや原理主義」と批判されてはならない」相手は誰を想定しているのか。
刑事司法改革に関する会長声明をご覧いただきたい。

 

取調べの可視化の義務付け等を含む「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」の早期成立を求める会長声明

被疑者取調べの全過程の録音・録画の義務付けをはじめとする刑事訴訟法等の一部を改正する法律案は、2015年5月19日、衆議院で審議入りした。

有識者委員が参加した法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」で約3年間の議論を経て全会一致で取りまとめられた答申に基づく本法律案は、被疑者取調べの録画の対象範囲が裁判員裁判対象事件及び検察独自捜査事件に限定されているものの、対象事件については全過程の録画を義務付けるものである。さらに、本法律案には、被疑者国選弁護制度の勾留段階全件への拡大、証拠リストの交付等の証拠開示の拡大、裁量保釈の判断に当たっての考慮事情の明確化、犯罪被害者等及び証人の保護措置の創設等の改正が含まれている。

また、本法律案には、通信傍受の拡大捜査・公判協力型協議・合意制度のいわゆる司法取引制度の導入など、証拠収集手段の多様化も盛り込まれた。当連合会は、通信傍受制度の安易な拡大に反対してきたところであるが、補充性・組織性の要件が厳格に解釈運用されているかどうかを厳しく注視し、人権侵害や制度の濫用がないように対処していく。いわゆる司法取引についても、引き込みの危険等に留意しつつ、新たな制度が誤判原因とならないように慎重に対応する。

本法律案については、多くの制度がひとつの法案に盛り込まれていることに批判もあるが、答申にも述べられているとおり、複数の制度が一体となって新たな刑事司法制度として作り上げられているものである。

当連合会は、長年にわたり、刑事司法改革を訴え、全件全過程の被疑者取調べの可視化に取り組んできたが、この刑事訴訟法改正により、複数の重要な制度改正とともに供述調書に過度に依存せず、取調べの適正な実施に資する制度が本格的に導入されることで、全体として刑事司法改革が確実に一歩前進するものと評価している。本法律案が、充実した審議の上、国会の総意で早期に成立することを強く希望する。

えん罪を生まない刑事司法制度の確立は当連合会の真に求めるものである。その実現には、理念に則った弁護実践とともに、制度の適切な運用と不断の見直しが不可欠となる。当連合会は、市民・関係者、全ての弁護士、弁護士会とともに、改革をさらに前進させるために全力を尽くす決意である。

    2015年(平成27年)5月22日

日本弁護士連合会      

 会長 村 越   進 

 

盗聴範囲の拡大は公権力による国民の監視やプライバシー侵害の問題がある。
司法取引の導入はえん罪の温床となる危険が大きい。
目的の異なる制度改正を一本の法律で行うことは、民意を損ねる。
このブログに来られる方は、多分、今般の刑事訴訟法等の「改正案」に反対の方がほとんどであろう。

 

いやしくも日弁連様であるから、そんなことは百も承知の上で、
「すべての判断基準は、市民の利益に叶いその理解と信頼を得ることができるか否かにあります。」
「 日弁連の主張を最大限実現するためには、孤立を回避することが不可欠であり、独りよがりや原理主義と批判されるような言動は排さなければなりません。
司法と日弁連の歴史に思いをいたし、経緯と情勢そして現実を冷静に見極め、説得力のある最善の主張を展開することにより多くの人々の理解を得、力を合わせて改革を着実に前進させることが大切です。」
との基本姿勢を適用すると、猛毒を含んだ法改正の「早期成立を強く望みます」となるのだ。

野党の立場に立ってみる。
一括法を示されたにも関わらず、頼みの日弁連からは早期成立を希望される。
野党にしてみれば、法案成立に協力せよと言われたようなものである。
司法官僚にいいようにあしらわれる日弁連のさまは、米議会演説の栄光を得るためにポチダヨ宣言した総理より、さらに卑屈にすら見える。

 

この延長には、幅広く臣民の理解が得られるよう心がけ、孤立を恐れる、戦前の日弁連の姿が待っている(つうか、それまでに日弁連はつぶれますが)。

 

大日本辯護士會聯合會憲法改正案

天皇制ハ之ヲ存続シポツダム宣言ノ趣旨ニ従ヒ民意ヲ基礎トシテ大権ヲ行使セラルルカ為メ且天皇ト国民トヲ直結シ従来軍閥官僚等カ袞竜ノ袖ニ隠レ跋扈跳梁シタル弊習ヲ芟除セムカ為帝国憲法ノ条章ニ次ノ如キ改正ヲ行ハルルヲ適当ト認ム

第一 国民投票制ノ採用
最モ重要ナル国務ヲ決定スルカ為必要アリト認ムルトキハ天皇ノ発議ニ依り国民ノ直接投票(レフエレンダム)ニ諮フノ途ヲ啓クト共ニ議会モ亦第七十三条第二項及第三項ノ特別決議ニ依り之ヲ要請シ得ルモノトスルコト

第二 立法ニ対スル議会権限ノ拡張
法律ノ制定ハ裁可ヲ要セス帝国議会ノ議決ヲ以テ足ルコトトシテ天皇ノ裁可権ヲ拒否権ニ改ムル為第五条第六条及第三十七条ヲ改正シ猶憲法ノ改正ニ付テモ議会ニ発案権ヲ認ムルカ為第七十三条等ヲ改ムルコト

第三 天皇ノ大権ニ対スル制限
(イ)議会大権ニ関シ議会ノ両院ヨリモ臨時議会ノ召集ヲ要求シ得ル様第七条ニ規定スルコト
(ロ)命令大権ニ関シ第八条ノ緊急命令ハ之ヲ廃止スルト共ニ第九条中「及臣民ノ幸福ヲ増進スル為」ノ所謂助長命令モ之ヲ削除スルコト
(ハ)外交大権ニ付テハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ之ヲ行フヘク第十三条ヲ改正スルコト
(ニ)統帥大権及軍政大権ニ関スル第十一条及第十二条ヲ削除スルコト

第四 臣民ニ対スル保障
第十九条乃至第二十九条及第三十一条ノ規定ヲ整備シ日本臣民ハ社会上政治上及経済上平等ナル原則ヲ明記スルト共ニ総括的ニ臣民ノ自由ヲ制限スルニハ法律ノ規定ニ依ルヘキ旨ヲ定メ憲法ニハ法律ヲ以テモ仍制限スヘカラサル自由ニ付テノミ保障規定ヲ置クコト

第五 貴族院ノ改組
貴族院ノ名称ヲ改メ職域代表者及勲労ニ因り勅任セラレタル者(華族制度ヲ存置スル場合ニハ其ノ代表者ヲモ加フ)ヲ以テ之ヲ組織スルコトトシ其ノ選定方法ハ法律ヲ以テ之ヲ定ムル様第三十三条第三十四条等ヲ改正スルコト

第六 常置委員ノ設置
議会閉会中其ノ権限ヲ代行セシムルカ為議会ニ常置委員ヲ設置スルコト

第七 内閣制度ノ確立
内閣制度ニ付憲法ニ明定シ行政権ハ内閣総理大臣及各省大臣ヲ以テ組織スル内閣ニ於テ之ヲ掌理スルト共ニ内閣ハ議会ニ対シテモ責任ヲ負フヘキ旨ヲ定メ内閣総理大臣ノ任免ニ付テハ議会ヨリ推薦スルノ途ヲ啓キ更ニ内閣総理大臣及各省大臣ハ当然国務大臣タルコトヲ規定スルコト

第八 枢密顧問ノ廃止
枢密顧問ヲ廃止スル為第五十六条ヲ削除スルコト

第九 司法裁判権ノ拡張
行政官庁ノ違法処分ニ因リ権利ヲ傷害セラレタル場合ニハ広ク行政訴訟ヲ提起シ得ルコトトスルト共ニ其ノ裁判権ヲ司法裁判所ノ管轄トシ行政裁判所ヲ廃止スヘク第六十一条ヲ改ムルコト
尚官吏ノ違法行為ニ因ル損害ニ付テハ国家ニ賠償責任アリトスルコト

第十 譲位ト華族
皇室典範ヲ改正シ譲位ノ途ヲ啓クト共ニ華族令ヲ廃止シ又ハ一代華族制度ニ改ムルコト

 

ポツダム宣言の受諾を受け、おそらく占領軍が憲法改正案を所望していることを聞きつけて、大日本弁護士会連合会は、臣民の理解を広く得るべく天皇大権は存続させて(結果、天皇は国会の制定した法律の拒否権を持つ)、臣民の自由は原則として、法律の範囲内についてのみ認めるのを原則とする改憲案を立案したのだ。
かかる微温的な改正しか提言する能力がなかったのが、時局迎合した戦前の大日本弁護士会連合会のなれの果てである。

 

日弁連は今、その道に踏み込んでいる。
マスコミや、大学の批判をしていて足下の日弁連がむちゃくちゃにされていることに気づかなかった。
日弁連問題が勃発していることに気づかなかった不明を恥じる。

 

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追記
日弁連会長が基本姿勢として「日弁連の歴史に思いをいたし、経緯と情勢そして現実を冷静に見極め」などとのたもうておられるのは、この大日本弁護士会連合会の現実的な姿勢であるのかもしれない。
だとすれば、日弁連執行部とは、戦前へ回帰しようとする現政権といくばくの違いもない。
「多くの人々の理解を得」というのも、現政権周辺の「多くの人々」ということのようにも見える。
日弁連会員の多く、日弁連は強制加入団体であるから、つまりは弁護士の多くは、「盗聴法の強化・拡大」や「司法取引」に反対のはずだ(と信じたい)。
会員の総意に背くなら、弁護士業を続ける限り強制的に徴収される、日弁連の高い会費は、まるで「オレオレ詐欺」並の、ぼったくりと言わざるを得ない。

日弁連の会務執行方針に対する兵庫県弁護士会武本夕香子氏による批判

長文になりますが、弁護士増員論の日弁連執行部と反執行部派の立ち位置の違いがよくわかると思いますので、推定的承諾のもと、転載させていただきます。
色づけは、マチベンによる。
青は日弁連会長のお言葉、赤は武本氏の意見で、マチベンが好みで色づけした。
文中、司法改革とは、弁護士の大増員を中核とし、法科大学院の創設や、司法修習の簡略化や貸し金修習制度の創設等の法曹養成制度を含む。

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週刊 法律新聞平成27(2015)年5月23日 第2094号

寄 稿 「日弁連の2015年会務執行方針に物申す」
武本 夕香子 弁護士(兵庫県弁護士会)

2015年の日弁連会務執行方針が日弁連のホームページで公表されています
   (マチベン注:末尾に同サイトの総論部分を貼り付けておきます)

 多くの人があまりの内容に驚いたことでしょう。
心ある人は、言わずとも分かっておられるでしょうが、私は、批判すべきは正面から批判することが会員の務めであり、3万6000名余りの日本弁護士会会員に対する理事としての誠意ある処し方であると考え、筆を執ることにしました。

 述べたいことは、たくさんありますが、「基本姿勢」の分に重点を置いて検討したいと思います。

第1 基本姿勢について

 まず、「基本姿勢」の導入部分は、「分け入っても分け入っても青い山(山頭火)」という、よく引用される名句で始まります。
謙虚な姿勢を示していると取れなくもありません。 

 ところが、次の段落「基本姿勢」の冒頭で「1万1676名もの会員の皆さんが投票用紙に「村越進」と記載してくださり、51弁護士会において最多得票を獲得させていただいたことの重みを、あらためてしっかりと受け止め」「山積する諸課題に全力で取り組む所存です。」と記載されています。 

 これは、村越会長の自慢と取られたり、「自分は最多得票数を取り、ほとんどの単位会で多くの票を獲得したのだから、自分のいうことに逆らうべからず」と取られたりしかねませんから、適切な表現ではなかったと思います。 

 この後者の解釈を、勘ぐり過ぎと言うことはできないでしょう。
 その後の「基本姿勢」も

「独りよがりや原理主義と批判されるような言動は排さなければなりません。」 

「日弁連として、ぶれない一貫性、ころころと変わらない継続性、そして責任
感が必要です。」

「会員と弁護士会の心と力を一つに合わせる必要があります。」

「誰かのせいにして嘆いたり批判ばかりするのではなく、力を合わせて」
などという、「執行部に反対するな」とも取れる文言に終始しているからです

 山頭火の句を冒頭に掲げ、謙虚な姿勢を打ち出されるおつもりであれば、前回の会長選挙の時点では、現在の全会員3万6000人余りから2000人会員が少なかったとしても3万4000人強の会員がおられましたから、村越会長の名を投票用紙に書いたのが会員の三分の一に過ぎないこと、投票率が最も低かったこと(46・62%)を強調すべきだったでしょう。

1「1 幅広い市民の理解と信頼を得ることを基本とする」について 

 「基本姿勢」第1項において
「日弁連は、井戸やコップの中のような議論に基づく自分たちだけの「正義」を、声高に主張すればそれでよいというものではありません。すべての判断基準は、市民の利益にかないその理解と信頼を得ることができるか否かにあります。」
と記載されています。

 この部分の問題点は、意味が不明確で、全体として誹謗中傷と変わらないものになっている点です。

 何が「井戸やコップの中のような議論」で、何が正しい議論でしょうか。
何が、『自分たちだけの「正義」』で何が真正の正義でしょうか。
議論や正義に、正邪を区別しようというのは、それほど簡単なことではありません。
その判断基準として「市民の利益にかないその理解と信頼を得ることができるか否か」が挙げられていますが、あまりよく考えられた基準とは言えないと思います。
「利益」の意味によっては「市民の利益」にかなわない正義もありそうですし、市民の「理解と信頼を得る」ことができない正義など、たくさんあるからです。

 そもそも弁護士の使命は、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現」すること
です。
弁護士法第1条にそう書いてあるのです。

従って、弁護士は、「正義」を声高に主張しなければなりません。
その弁護士の団体である日弁連が、「市民の理解と信頼を得ることができそうもない」と他人の顔色を見て「正義」を引っ込めるのでしょうか。
日弁連は、当面は理解が得られなくとも、それが「正義」であるなら弁護士の先頭に立って市民を説得すべきだと思います。

 司法は、立法や行政といった多数決支配から零れ落ちたマイノリティの人権を擁護するためのシステムです。
その意味で司法は、多数決支配から最も遠い存在であるべきなのです。仮に、司法が「市民からの理解と信頼を得られない」と言って「正義」を声高に叫ぶことをやめてしまえば、司法が司法としての機能を果たすことはできません。
多数派の声は、もともと立法や行政により反映され得ます。
三権分立により、司法には、多数派支配の立法・行政に対して抑止的効果を働かせることが期待されています。
にもかかわらず、司法までもが市民からの批判を恐れて多数派支配の結論に迎合的になってしまえば、司法が司法機関としての役割と三権分立の機能を果たせなくなってしまいます。

 司法というのは、社会正義と基本的人権の擁護のみを声高に主張し、その結果、多数派支配から孤高する存在となったとしても、また、いかなる批判に晒されたとしても、社会正義の実現と基本的人権を擁護するための最後の砦としての役目を果たさねばなりません。

 仮に、努力しても「正義」と「市民の理解」の二兎をどうしても追えない場合、司法制度の役割からして、弁護士会にとっては、「正義」を追求することの方が大事です。
つまらない右顧左眄は、日弁連と弁護士の存在意義をなくしてしまうでしょう。

 このように第1項は、正面から議論しても、全く納得のできない方針なのですが、さらに問題と思われるのは、誹謗中傷とも受け取れる内容を同項が含意することです。

 議論の中に、「井戸やコップの中のような議論」と、そうでない正しい議論の区別を持ち込む。正義に、『自分たちだけの「正義」』とそうでない本当の正義の区別を持ち込む。
そうした場合、誰がこの区別をするのでしょうか。
1万1676名もの票数を獲得した人であれば、その区別ができると言いたげな内容です。
こういう曖昧な区別は、恣意的に使用して相手を指弾できる点で便利ではありますが、非常に危険な考えと言わざるを得ません。
「井戸やコップの中のような議論」や『自分たちだけの「正義」』という誹謗中傷のレッテル貼りに利用できるからです。

 また、そもそも、「井戸やコップの中のような議論」、『自分たちだけの「正義」』などということを日弁連の会長が書くことは適切ではないと思います。
それでは、村越会長が、どこかに「井戸やコップの中のような議論」をする会員や『自分たちだけの「正義」』を声高に叫ぶ会員がいると考えていると受け取られても仕方ないからです。

 私は、皆さん正当な議論であるとの信念を持って発言され、市民のためを思って「正義」を訴えておられると思います。
村越会長もこの考えにご賛同いただきたいと考えます。
弁護士会の会長が、「井戸やコップの中のような議論」と書くことは、当然議論の抑制につながり、この方針の「おわりに」第1項で書かれている理事会における議論の充実の妨げになります。
また、日弁連の会長が、『自分たちだけの「正義」』を声高に主張すればよいというものではないと書けば、それは日弁連の行動を越えて全ての弁護士の「正義」の主張に抑制的に働きかねないと思います。

2「2 現実を踏まえて着実な改革を進める」について

 会務執行方針「基本姿勢」第2項では、
「日弁連は数多くのプレイヤーの1人に過ぎません。
日弁連の見解が常に正しいものとして受け入れられるわけではありません。
少数意見にとどまることの方がはるかに多いのです。
そうした中で日弁連の主張を最大限実現するためには、孤立を回避することが不
可欠であり、独りよがりや原理主義と批判されるような言動は排さなければなり
ません。」

と記載されていますが、前述したとおり、この会務執行方針には賛同できません。

 また、
「日弁連は数多くのプレーヤーの1人に過ぎない」とのことですが、日弁連の発言力は大きいものがあります。
だからこそ司法改革により、弁護士自治と弁護士制度の弱体化があらゆる側面から画策されたのです。

日弁連の発言力が大きいからこそ、政府の審議会の委員に日弁連以外の委員をして多数を占めさせ、日弁連の発言を可能な限り封じようとしているのです。
日弁連の発言や行動に対し快く思っておらず、従って、日弁連の発言力を過小評価したい勢力が存在することは確かでしょう。
しかし、だからといって、日弁連自身が「常に正しいものとして受け入れられるわけではありません。」
などと卑屈になるべきではありません。

 また、日弁連の発言力が大きいか否かとは関係なく、日弁連は、「正義」に叶った日弁連の見解が正しいものとして受け入れられるように努力し続けるべきです。

 すでに論じたように、日弁連が主張する「正義」が、市民に受け入れられないことを理由に弁護士会が「正義」を叫ぶことを止めるわけにはいかないのです。
日弁連の見解が市民に受け入れられないからと言って間違った政策に一旦賛成してしまえば、なかなか反対の方向に舵を切ることができなくなってしまいます。
今の日弁連が過去の歴史にこだわり、司法改革を抜本的に是正することができなくなってしまっているようにです。

 弁護士会が弁護士としての社会的使命を果たすためには「独りよがりや原理主義と批判される」といった評価を恐れて弁護士が言うべきことを止めるのではなく、弁護士が「正義」と信じて主張している内容について「独りよがりや原理主義と批判」されないように市民の理解や信頼を獲得すべく、あるいは、誤解を正すべく努力し続けるのが本来あるべき姿なのではないでしょうか。

 第2項には、引き続いて
「司法と日弁連の歴史に思いをいたし、経緯と情勢そして現実を冷静に見極め、説得力のある最善の主張を展開することにより多くの人々の理解を得、力を合わせて改革を着実に前進させることが大切です。」
と記載されています。

 この部分にも賛同できません。
まず、「日弁連の歴史に思いをいたし、経緯と情勢そして現実を冷静に見極め」ていたのでは、過去の司法改革の失敗を上塗りすることになってしまうからです。
日弁連が司法改革を先頭に立って旗を振ってきた過去がある以上、日弁連の過去の歴史にとらわれていたのでは、抜本的な見直しなど実践できるはずがありません。
情勢と現実にとらわれていたのでは、日弁連が司法改悪を正すことに躊躇を覚えるだけで、とても見直しなどできません。

 弁護士会にとって重要なのは、監督官庁を持たない唯一の民間法律専門家集団として、基本的人権を擁護し、社会正義を実現する使命を負う法曹として、司法制度をあるべき姿にし、市民の利益や幸福を目指して発言し行動することです。
日弁連が他者から見てどのように見えるかとか、日弁連の過去の歴史などは、日弁連が行動を決める上では、最も劣後する価値基準なのです。

 もっとも村越会長は、この文章の結語に「力を合わせて(司法)改革を着実に前進させることが大切です」と記載しているのですから、この期に及んでも司法改革を進め、司法改革の見直しや是正など考えていないのかもしれません。

 つまり、第2項は、「司法と日弁連の歴史」や「経緯」があるし、多数派の顔色も見なければならないという「情勢」や「現実」もあるから、正しく議論して理論的・実証的に説得することはできないけれど、ともかく執行部の意見に賛成しろという意味にとられかねないと思います。
理論的・実証的に議論して勝てれば、歴史や経緯などは問題にならないからです。
このように受け取られる表現は避けるべきであったと思います。

 付言すれば、「司法と日弁連の歴史」や「経緯」などを斟酌するというのは、市民には全く関心の外であり、典型的な「井戸やコップの中のような議論」で『自分たちだけの「正義」』というべきものでしょう。

 更に、この部分にも、第1項と同じ含意として不適切な部分があります。
当然ですが、「独りよがりや原理主義と批判されるような言動は排さなければなりません。」の部分です。
批判としては、前項と全く同じ議論になりますが、同じ間違いを何度もするというのはそれだけ問題が根深いということでしょうから、私も繰り返し批判したと思います。

 まず、「独りよがりや原理主義と批判されるような言動は排さなければなりません。」が日弁連の行動原理として誤りであることは、既に述べたとおりです。
しかし、この部分は、村越会長が、「独りよがりな言動をする会員がいる」、「原理主義的な会員がいる」と考えていると取られるおそれがあります。
日弁連の会長が、このような発言をするのは不適切です。
会長がこのように考えるかもしれないと表明すれば、当然理事会の議論には抑制がかかるでしょう。

 そもそも、何らかの言動に対して、「独りよがり」だとか「原理主義的」だとかいうレッテル貼りをして、葬り去ろうというのは感心できません。
言動に対する評価は、あくまで論理性と実証性に照らして行うべきです。
それを「独りよがり」とか「原理主義的」とかいう、内容不明瞭な形容詞でレッテルを張るなど、あってはならないと思います。

 また、「排さなければなりません」という言い方も問題が多いでしょう。これほど、対話拒否、議論拒否の姿勢が明瞭な用語もありません。誰かが、「独りよがり」とか「原理主義的」とか判断すれば、「排される」のですから、会内民主主義の観点からして不適切な表現であると言わざるを得ません。

3 「3 日弁連と弁護士会の結束を大切にする」について

 第3項では、
「日弁連内には、様々な問題について異なる意見が存在します。」
「相違や対立を克服し、『会内論争に終始しばらばらで相手にされない日弁連』ではなく、『社会に向けて一致して発信し行動する力強い日弁連』を目指します。
日弁連としてぶれない一貫性、ころころと変わらない継続性、そして責任感が必要です。」
と記載されています。

 前段は、会内論争に終始しているわけにはいかない、会内の意見を一致させ、弁護士会が一丸となって発言し行動すべきとの主張で、それ自体は必ずしも間違っているわけではないと思います。
問題は、会内での議論が鋭く分かれる時、誰の意見を通し、誰の意見を譲歩させるべきかであると思います。

 この問いに対する村越会長の意見は、後段の「ぶれない一貫性、ころころと変わらない継続性」との記載に鮮明に表れています。
すなわち、村越会長は、司法改革を進めてきた日弁連が司法改革に対して立ち止まるべきではなく、従って、司法改革を進める人たちの意見を通すべきで、司法改革に反対する人たちの意見をこそ譲歩させるべきであるということが言いたいのでしょう。

 

 しかし、司法改革が始まってから15年が経ちます。その間、法曹志願者は激減し、法科大学院は学生募集停止校が相次いでいます。
弁護士の就職難は解消されるどころか悪くなる一方であり、弁護士の不祥事も多発し、増加傾向が見受けられます。
裁判所の新受事件数は、家事事件以外ほぼ右肩下がりで減少し続け、弁護士の登録抹消件数も増えており、弁護士登録してまもなく登録抹消する人の数も増えています。
弁護士の活動領域の拡大は遅々として進んでいません。
司法改革による社会的弊害は深刻になる一方です。

 

 このような現実を前にしてもなお、司法改革による社会的弊害に目をつぶり司法改革を進めると言うのは、市民の利益にならず、社会正義に反すると思います。

 にもかかわらず、司法改革を進めたのが日弁連だからといって日弁連としての「ぶれない一貫性、ころころと変わらない継続性」といった日弁連の体裁を取り繕うことに腐心するのは間違っています。
基本姿勢であるのに、同じことが何度も言われるので、私も同じことを繰り返します。
日弁連が「ぶれない一貫性」や「ころころと変わらない継続性」を誇ろうと、そんなことは市民の利益には無関係です。市民の関心の外です。
市民の目からは、典型的な「井戸やコップの中のような議論」で『自分たちだけの「正義」』というべきものでしょう。

 「責任感が必要です」とも書かれていますが、司法制度を担う法律専門家集団としての責任感は、体裁を取り繕うために「一貫性」や「継続性」を目指すのではなく、他者からどのように見られようとも司法改革による社会的弊害を是正すべく日弁連が立ち上がることで示されねばなりません。
その時が今なのです。
いや、今でさえ遅すぎると言えます。

4 「4 社会に向けた実践活動を」について

 第4項では、
「事態を一歩でも二歩でも前に進めたい、改善したいと本当に願うのであれば、社会の理解と支持獲得のための実践活動にこそ、日弁連と弁護士会の持てる全ての力を投入しなければなりません。
そのために、会員と弁護士会の心と力を一つに合わせる必要があります。」

と記載されています。

 この記載からは、自分たちは、「事態を一歩でも二歩でも前に進めたい、改善したいと本当に願う」が、自分とは異なる主張をする人たちは、「事態を一歩でも二歩でも前に進めたい、改善したい」とは望んでいないことが当然の前提とされているように読めます。
しかし、実際のところは、皆「事態を一歩でも二歩でも前に進めたい、改善したいと本当に願」っているのです。
だからこそ、引けないのです。
法曹のトップが、たとえ含意としてでも異なる意見の者を根拠なく「事態を前に進める気がない者」のように誹謗したととられかねない方針には、賛成できるものではありません。

 それに続く
「社会の理解と支持獲得のための実践活動にこそ、日弁連と弁護士会の持てる全ての力を投入しなければなりません。そのために、会員と弁護士会の心と力を一つに合わせる必要があります。」
の部分は、「会員と弁護士会の心と力を一つにして実践活動に全ての力を投入しなければならない」ということですので、「もう議論はするな、執行部の意見に賛成して実働だけしていればいいんだ」と読めます。
この基本姿勢で再三主張されてきた、つまりは、この基本姿勢の更に基本姿勢ともいうべき「議論の封殺」が、また主張されているようです。
「議論の封殺」を意図していると取れる文言が、こう頻出しては、それを曲解だとか、勘ぐりだとか、考え過ぎだとか言っても、それが説得力を持つことはないでしょう。
「理事会における議論の充実」を執行方針に掲げている村越会長の基本姿勢としては、不適切であると思います。

 また、最後の「会員と弁護士会の心と力を一つに合わせる必要があります」との部分ですが、総論的には正しいとしても、各論的には、司法改革を進める方向で「心と力を一つに合わせる」と言うのであれば、賛成できません。
これほどまでに司法改革の社会的弊害が出ているにもかかわらず、未だ司法改革を進めようとするのは、市民の利益には叶わないと考えるからです。

5 「5 司法と弁護士の未来を切り拓く」について

 表題は、前向きで明るいものになっています。

 しかし、第5項の内容は、
「司法の容量と役割を大きくすることを大命題とし、そのために、司法基盤の整備、司法アクセスの改善、活動領域の拡大、国際活動の強化、法曹養成制度改革」
(中略)「弁護士自治の強化に、一体のものとして総力で取り組みます。
下を向いてうなだれるのではなく、誰かのせいにして嘆いたり批判ばかりするのではなく、力を合わせて、私たちの手で司法と弁護士の未来を切り拓きましょう。」

と記載されています。

 前段は、司法制度改革審議会の意見書の焼き直しで、ここでも司法改革を進めることがあらためて確認されています。
しかし、司法改革を進めてきた結果、弁護士自治は弱体化させられています。
司法改革を進めつつ「弁護士自治の強化」を図ることは極めて困難であることが既に実証されています。

 

 また、市民の利益を第一に考えるのであれば、「司法の容量と役割」は小さく済むようにする方が良いというのは、私が年来主張してきたことです。無用に事件が多い社会、不必要な裁判が多い社会が、市民の利益にならないのは当然でしょう。
それだけではなく、必要性がないのに、どの場面でも弁護士が出てくる社会も、市民の利益にはなりません。
本来は、市民が司法にかかわる必要がなく、安心して暮らせる社会を目指すべきです。

この議論の詳細を説明することはしませんが、第1項に記載されている「市民の利益」は、私には非常に難しい概念に思われます。

 後段の「下を向いてうなだれるのではなく、誰かのせいにして嘆いたり批判ばかりするのではなく」との部分も、特定の第三者に対する誹謗中傷のように受け取られます。

 また、司法改革により弁護士の未来が失われ、活動領域の拡大は見込めず、就職先はなく、弁護士の経済的基盤が失われ、法曹志願者が激減し続けている現実を前にして、司法改革を進めながら、いかにして「司法と弁護士の未来を切り拓」いていけるというのでしょうか。
第5項は、表題と中身が合致していません。

第2 各論について

 各論については、「司法試験合格者の1500名への減員」の政策の取り扱われ方について指摘させていただきます。

 法曹人口問題は、司法制度、弁護士制度の根幹をなす政策です。

 法曹人口を何名とするかにより、その後の司法制度や弁護士制度のあり方が決まると言っても過言ではないでしょう。
法曹人口の数により法曹養成制度のあり方も異なってきます。

 

 ところが、この会務執行方針の各論では、法曹人口問題は法曹養成制度改革の中の1項目としてしか扱われていません。
前述したとおり、法曹人口問題の方が、むしろ法曹養成制度を包摂する関係に立つにもかかわらずです。
法曹養成制度改革の中に司法試験合格者数の政策が含まれるとの包摂関係には、一定の意図が含まれていると受け取られかねません。
なぜなら、司法試験合格者数が法曹養成制度改革の中で扱われる時、司法試験合格者数は、法科大学院存続のために何名が望ましいかとの文脈で語られることが多いからです。

 ちなみに、各項目の表題を並べると、いかに司法試験合格者数、法曹人口問題が極小化して扱われているかがわかります。

 会務執行方針は、
「第1 身近で使いやすい司法の実現」
「1 司法基盤の整備」
「2 司法アクセスの改善」
「3 広報活動の強化」とし、
「第2 活動領域の拡大」
「1 高齢者・障がい者のある人などへの支援及び福祉分野」
「2中小企業支援」
「3 海外展開の推進」
「4 行政連携の強化」
「5 組織内弁護士の採用拡大」
「6 隣接士業問題への的確な対応」とし、
「第3 法曹養成制度改革」
「1 法科大学院の改革」
「2 司法試験の改革」
「3 司法試験合格者の1500名への減員」
「4 司法修習の充実」といった具合に項目立てされています。

 この項目立てを一覧するだけでも2015年の日弁連の会務執行方針が司法改革による弊害を無視して司法改革を進める方向であるかがよくわかります。

 今日弁連に必要なことは、平成12年11月1日、日弁連臨時総会でいわゆる3000人決議が可決されて以降、この15年間、司法改革を進めてきた結果、司法と弁護士の未来が失われてきた結果を真摯に受け止めることです。
そして、法曹としての責任感を持ち、司法改革による社会的弊害を取り除くべく努力をし続けることだと思います。
司法改革を進めても社会的弊害が増大するばかりであること、日弁連が司法改革の抜本的な是正を始める以外に司法と弁護士の未来を切り拓く道はないことは既に実証されているのですから。

 論語で孔子も言っているではないですか。

 「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」

 一刻の猶予もありません。

 明日からでも、否、今日からでも180度舵を逆の方向に切り、日弁連が一丸となり司法と弁護士の未来を切り拓いていくべき時が来ています。

 「過ちては則ち改めるに憚ること勿れ」

 日弁連の会務執行方針を改めるに憚る必要はないと思います。

  以上

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日弁連サイトから

基本姿勢
「分け入っても分け入っても青い山」(山頭火)
会長に就任して2年目に入りました。2015年度は、私の任期の後半戦になります。

1万1676名もの会員の皆さんが投票用紙に「村越進」と記載してくださり、51弁護士会において最多得票を獲得させていただいたことの重みを、あらためてしっかりと受け止め、「社会と会員の期待に応える実現力のある日弁連を築く」という初心を忘れることなく、13名の新副会長と力を合わせ、山積する諸課題に全力で取り組む所存です。よろしくお願い申し上げます。

 

2015年度会務執行に臨む基本的な考え方は、以下のとおりです。

 

1 幅広い市民の理解と信頼を得ることを基本とする
日弁連のすべての活動そして弁護士自治は、幅広い市民の理解と信頼に支えられていることを、常に肝に銘じなければなりません。日弁連は、井戸やコップの中のような議論に基づく自分たちだけの「正義」を、声高に主張すればそれで良いというものではありません。すべての判断基準は、市民の利益に叶いその理解と信頼を得ることができるか否かにあります。

 

2 現実を踏まえ着実な改革を進める
社会には、異なる立場、異なる見解のプレイヤーがたくさんいることは当然であり、日弁連は数多くのプレイヤーの1人に過ぎません。日弁連の見解が常に正しいものとして受け入れられるわけではありません。少数意見にとどまることの方がはるかに多いのです。そうした中で日弁連の主張を最大限実現するためには、孤立を回避することが不可欠であり、独りよがりや原理主義と批判されるような言動は排さなければなりません。

司法と日弁連の歴史に思いをいたし、経緯と情勢そして現実を冷静に見極め、説得力のある最善の主張を展開することにより多くの人々の理解を得、力を合わせて改革を着実に前進させることが大切です。

 

3 日弁連と弁護士会の結束を大切にする
日弁連内には、様々な問題について異なる意見が存在します。可能な限り情報と認識の共有化を図りながら、全弁護士会の代表者で構成される理事会を中核として丁寧な会内議論を行い、会内合意の形成を追求します。相違や対立を克服し、「会内論争に終始しばらばらで相手にされない日弁連」ではなく、「社会に向けて一致して発信し行動する力強い日弁連」を目指します。日弁連として、ぶれない一貫性、ころころと変わらない継続性、そして責任感が必要です。

 

4 社会に向けた実践活動を
事態を一歩でも二歩でも前に進めたい、改善したいと本当に願うのであれば、社会の理解と支持獲得のための実践活動にこそ、日弁連と弁護士会の持てるすべての力を投入しなければなりません。そのために、会員と弁護士会の心と力を一つに合わせる必要があります。

 

5 司法と弁護士の未来を切り拓く
司法の容量と役割を大きくすることを大命題とし、そのために、司法基盤の整備、司法アクセスの改善、活動領域の拡大、国際活動の強化、法曹養成制度改革、若手会員の支援、人権擁護活動、東日本大震災・福島第一原子力発電所事故の被災者・被害者支援、民事・刑事の司法改革、弁護士自治の強化に、一体のものとして総力で取り組みます。下を向いてうなだれるのではなく、誰かのせいにして嘆いたり批判ばかりするのではなく、力を合わせて、私たちの手で司法と弁護士の未来を切り拓きましょう。

2015年5月27日 (水)

あまりに犯罪的な  文部官僚の日本人愚鈍化計画

日本の高等教育改革と称するものが、これほど愚かなものであったとは、昨日、2105年5月26日の中日新聞夕刊の「論壇時評」を見るまで、知らなかった。

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知らなかったのが恥じなのではなく、普通の神経、普通の考え方では、あり得ないことがなされようとしているから、想像すらつかなかったということだ。


記事中の中嶋哲彦氏の論考は、尊敬できる学者なので、雑誌「世界」の論考は読んで、高等教育機関を産業のための品質管理・選別機関にしてしまうということは承知していた。
(たいていの学者は、僕が突飛なことを言うと、なぜか鼻先であしらってまともに相手にしてくれない。まれに少なくとも疑問として受け入れようとされる方がおられる。で、ほぼ全ての問題は数年以上のスパンで見れば、僕の突飛説が正しかったことが実証されてきた。現実が逆の方向に行きすぎることもあり、本意なばかりではないが、ま、僕が正しかったことの方が圧倒的に多い。という訳で、中嶋哲彦氏は僕のすっとんきょうな議論をまともに受け止めてくださった数少ない学者の先生です)


しかし、苅谷剛彦氏の論考は、全く知らなかった。

昨日の中日新聞掲載の論文も、よく知られた格差から始まっているし、記事の見出しもおかしい。


この記事の要は
「文科省は十年後に5割超の学部授業を英語で実施することを期待しており」、各大学(東京大学を除く)が、これに素直にしたがって(若干のサボタージュを示しながらも)、「構想調書」を文科省に提出しているということだ。

 

見出しを打つなら、
「日本人米国民化計画」
「日本人愚鈍化計画」

とでもすべきだろう。

朝鮮総督府が、植民地である朝鮮に対して行った「皇民化計画」の走りを思わせる。
あれは帝国の出先機関が行ったことだ。
これは、少なくとも法的には純粋の日本の機関である、文科省が行っていることだ。
ここまで日本を根こそぎに蹂躙するほどに、日本官僚は保身のために日本を捨てるほどに腐敗しきっている。
(その文科省にあごで使われる法科大学利権と結託した日弁連執行部はさながら、奴隷である)


日本のインテリが英語を話せないことは、おおかたの外国の人には、まず驚きをもって受け止められる。
そして、日本のインテリは、英語が話せないことにコンプレックスを持ってきた。
しかし、そうではない。
日本語だけで、完璧に高等教育まで実施でき、世界水準の成果を次々と生むほどに、日本の先人は、海外の最高水準の知的蓄積を咀嚼し、日本化して、国民が広く共有できるレベルにしてきたことの現れが海外では珍しい英語の話せいない日本のインテリなのだ。


あるのかないのか、よくわからないが、
少なくともよほど特殊な例外を除けば、
母国語による思考を超える思考を外国語で行うことはできない。
高等教育を外国語で行うということは、教育水準と、思索する力の水準を著しく低下させる狙いだ。
文科省の役人には当然、そんなことはわかっているはずだ。


日本破壊計画とすら呼びたくなる。
これは、1945年の敗戦以上の屈辱的敗戦である。
早期英語教育で、米国人が指示しやすい日本人を大量に生産するとともに、知識層も米国を超えることは絶対に許さない、というのだ。


官僚組織が、今や、ごく一握りの良心のある人を除けば、ただ保身のために、アメリカ帝国の出先機関になりはてた様子は、さすがに田舎者にも徐々にわかってきた。


しかし、なぜ大学人まで、唯々諾々と、従うのか。
京都大学は、かつて滝川事件が起きたときに、教授陣が総辞職してまで、抵抗した、抵抗の拠点だったのではないか。

 

日弁連が、深部で米国に乗っ取られているのと、同じ構造が、大学の隅々まで行き渡っているのか。
多数決の体裁をとりながら、実質は少数による専横の構造が、大学の隅々まで行き渡っているのか。


腐敗の体制には吐き気を覚える。


わずかに明治以来の日本人の血のにじむような努力を踏まえた矜持を掲げる東京大学の英語化お断りの「構想調書」を書き起こしておく。


『東京大学は、多民族国家アメリカやイギリスとは異なった社会環境と日本語という国語をベースに高い教育研究水準を達成してきた日本の国立大学である。教育・研究・運営のほとんどすべてが英語だけで行われる、英米の有力大学と同じグローバルキャンパスモデルをそのまま採用することはできない』


当たり前のことを言っているだけではないか。
大学人は矜持を取り戻せ。
東大を孤立させてはならない。
日本民族を奴隷にしてはいけない。


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世紀の愚策 世界一うまくいっている日本の教育を壊す大学入試改革に反対する(2014年12月23日)を改めて確認して欲しい。
この、おそらくは江戸期までさかのぼる成果を今、日本は捨て去ろうとしている。

2015年5月26日 (火)

犯罪的ではないか日弁連執行部   「裁判官の独立」画餅化工作実行中

「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」 日本国憲法76条3項


弁護士大増員の弁護士窮乏化路線が、一業界だけの話で止まれば、商売の才覚のない弁護士は、ひっそりと消え去ればすむだけのことであるかもしれない。
しかし、弁護士の窮乏化は、司法の独立を侵す。


裁判官には、国民の適正な裁判を受ける権利(憲法32条)を実現するとともに、最高裁に収斂されるとはいえ、違憲立法審査権も付与されている(憲法81条)。
立法府や行政府が憲法に反する立法や政策・行政などを実行したとき、国民の立場から、これを憲法違反と断じて暴政を止めさせる憲法の番人としての権限が与えられている。


憲法が目指す理想通りにはいかないことは周知のところであり、日本の裁判所は憲法問題に踏み込むのを極端に嫌う。
お上の意向を窺う「ヒラメ裁判官」との謂いが一時期はやったゆえんである。


しかし、中には、国家の方針に反してでも、憲法を擁護しようとし、「裁判官の良心」に忠実であろうとする裁判官も少数ではあっても存在したし、現在も存在し続けている。
激変しているこの時代ほど、「裁判官の良心」や司法の独立が果たすべき役割は大きい。


しかし、日弁連執行部が進める、弁護士窮乏化路線は、確実に「司法の独立」を掘り崩す。


権力に抗して、勇気ある裁判をするとき、司法官僚制の中にある裁判官は、裁判官としての職を賭す覚悟をしている。
辞表を忍ばせて、違憲判決に望む裁判官もいたのだ。


その最後のよりどころを、弁護士窮乏化政策は、絶つ。


かつて、食えない弁護士というのは、想像もつかなかった。
裁判官が職を賭して良心を貫こうと決意する場合、裁判官を辞しても、弁護士として少なくとも最低限の安定した生活は保障されていた。


いかに良心的であろうとも、裁判官も人である以上、生活は先立つ。
裁判官を辞した後の生活の保障が何もないとしたら、勇気を振り絞った判決が書けるだろうか。
良心をかけて歴史に残る違憲判決を出した末、組織で冷遇され、昨今の政治情勢では、国会の弾劾裁判にかけられる可能性すら否定できないのである。


繰り返すが裁判官も人であり、家族もあり、子どももある。
裁判官を辞した後の長い人生が日々の生活にあえぐ、貧困弁護士でしかないとしたなら、どうやって「裁判官としての良心」に忠実であろうとする、勇気ある決断ができるというのか。


「司法の独立」あるいは「裁判官の独立」という理念は、実は、弁護士になれば少なくとも食べていくことはできるという、実に現世的な経済基盤に支えられていたのである。


今、日弁連執行部がやっているのは、政府と結託して「裁判官の独立」、「司法の独立」の現実的な基盤を掘り崩し、これを文字通り「画に描いた餅」にする策動である。


日弁連執行部が、基本的人権の擁護を弁護士の使命とし、憲法の擁護を叫ぶのであれば、直ちに、弁護士窮乏化路線を転換し、司法試験合格者1000人以下の目標を掲げなければならない。
司法試験合格者1000人以下としても、この10年余で倍増して全国3万5000人に及んだ弁護士人口は、なお当分の間、増加し続けるのである。


国民は、弁護士が事件を漁るような、トラブルが多発する社会は望んでいない。
基本的人権と平和を基本的価値とする憲法の実現をこそ望んでいるのだ。
はき違えてはいけない。

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バカじゃなかろか“弁護士急増”  対米隷属の法科大学院利権グループと結託して弁護士基盤掘り崩し作戦実行中の日弁連執行部

法律実務家(弁護士、裁判官、検察官)になるためには司法試験を受けなければならず、司法試験の受験資格を得るためには法科大学院(2年~3年)を卒業しなければならないとされている。
その法科大学院の受験資格を得るための最初の関門が法科大学院の適性試験である。
したがって、この数は、法律実務家を志す者の数の推移ということになる。

 

もともと、法律実務家になるためには、大学教養学部(2年生)修了の素養が認められれば、誰でも受けられる一発試験に合格すれば、良かった。
今から見れば、大変に公平で、合理的な制度である。
3万人から4万人程度の人数が受験して、500人程度が合格するという時代が長く続いた。

 

これに米国から横やりが入った(年次改革要望書)。
弁護士を大増員させろという横やりである。
日弁連執行部は早々と対日要求に従属する道を選択しようとした。
そんな頃、弁護士の大義を知っている弁護士グループは「弁護士を増やすと戦争になる」と、実にまあ、先見の明のある反対をしていた。
今から見れば、大当たりであるが、先見の明がありすぎて、ほとんど誰も真に受けないほどの、先見の明であった。

 

日弁連ではすったもんだが続いたが、キャスティングボートを握った(僕も加入している)某左翼グループが一斉に、大増員賛成に走り、日弁連臨時総会に大動員をかけた結果、司法試験合格者3000人を目指すという政府方針が決まった。
名古屋の某弁護士は、議事打ち切り動議を阻止すべく、壇上に駆け上がったが、動員された多数派に排除された上、その後、弁護士としての品位を欠くとして、懲戒請求まで受けるはめになった。

 

折から、弁護士大増員のタイミングを見計らったかのように、最高裁が、過払い金(『かっぱらい金』ともいう)回収マニュアルのような判決を連発し、過払い金ブーム(知能はあるから、弁護士は誰もがバブルだと知っていた。知っていたが、なれの果てがどれほど悲惨かは誰も予測できなかった)を起こし、弁護士業界は、しばらく麻酔状態に陥った。

 

気づいた果てが、末尾記事のごとき、悲惨な台所事情である。
若者よ、貧者になりたくなければ、弁護士を目指すなと、言いたいところだが、賢明にも弁護士を目指す若者は激減している。

 

繰り返すが、かつては、おおむね3万人から多い年には5万人もの人が法律実務家を目指し、司法試験に挑戦していたのである。
これが以下のとおりである。
2015年は速報値は出ているが、まだ公表されていないとのことだ。
2014年より、さらに減ったことだけは間違いない。


法科大学院全国統一適性試験の志願者延べ人数(全2回)の推移
2011年 13,332人(5,946+7,386)
2012年 11,152人(5,185+5,967)16.4%減
2013年  9,351人(4,387+4,964)16.1%減
2014年  7,669人(3,599+4,070)18.0%減

 

この人数は、延べ人数である。
2回受けられるから、同じ人が2回受験することもある。
したがって、実人数は、相当減少する。
この問題を追跡している弁護士は、計算の仕方を把握しているだろうが、僕は知らない。
この統計の最初の数字である2011年で実人数は1万人程度なのだろう。
もともと司法試験受験者は実数で少なくても3万人、多い年には5万人もいたのである。
(話がややこしくなるから、予備試験の話は省くが)
2011年で法科大学院を目指す志願者の実数が1万人、2014年は多分実数で6000人程度、おそらく今年の実数は5000人前後になるのではないだろうか。

 

志願者数5000人で、全国の法科大学院の入学定員は約3000人、政府の計画ではもともと司法試験合格者3000人を目指すという話だったから、法科大学院に入学できれば、全員合格となる。
結果より教育過程が大事という、触れ込みであったから、目標達成バンザイのはずだが、さすがにそれでは質が保てぬ、1500人まで合格者を「減らす」という。
『減らす』と言っているように見える。
しかし、3000人などという数字は、一度も達成したことがない架空の数字にしかすぎなかったのだ。
最高実績で合格者は、2000人プラスアルファなのである。
表面は、減らすと言っているが、自然現象に任せれば、志願者はどんどん減るから、自然に1000人割れが見えている。
それなのに、1500人というのである。
これは合格者を減らすように見せかけて、実は、最低限度の目標を設定して、1500人は確保すると言っているのだ。
増員派は、基本、市場主義者であるのに、ここでは俄然、管理主義になるのである。

誰のため? 法科大学院の利権のためである。
なんとささやかで、いじましい利権のために、われわれは犠牲になるのだろう。
かくして、米国が年次改革要求に込めた、弁護士攻撃の狙いは達成されていくのである。

先日、日弁連からお触れが回った。
過払い金ブームに乗ってコマーシャルを打ちまくって儲けたはずの某個人事務所(と思われる)の弁護士が破産申立をして弁護士資格を失ったので、某弁護士の全国に散らばっている依頼者から相談があった場合は、献身的に対応するようにとの全国3万5000人の弁護士に対する、お達しである。
実は、この種のお触れは以前から度々ある。
たいていは、不祥事で弁護士資格を失ったために、全国に散らばった依頼者に不便をかけないようにとの趣旨のお達しだ(早い話が、着手金や実費は取るなということである)。

 

しかし、全国に依頼者網を持った稼ぎ上手の弁護士が不祥事ではなく、破産で資格を失ったから献身せよとのお達しは、僕の知る限り、初めてである。

いまだに政府の弁護士激増政策に同調して、いまだに『法科大学院ステキ!!大好き!』で合格者1500人の旗を振っている、日弁連執行部は正真正銘のおバカさんグループだということである。
弱者の味方といいながら、僕のような弁護士弱者を救済する抜本的対策は掃き捨てる神経だから、TPPのような野放図な大企業優位のルールが日本国憲法を蹂躙しようとしているのに、日弁連は、国際室やらADR(裁判外紛争解決制度)部会やらに任せて、そっぽなのである。
弁護士増員対策のために日弁連が何をしているかというと、各地の自治体の任期付き公務員だとか、企業の法務部門だとかのおこぼれ仕事を乞いまくるという哀れである。
『在野の精神』などという崇高な言葉は今や、古語辞典入りである。

 

法科大学院のせいだけではないだろうが、公法学者(憲法、行政法、国際公法など)の劣化はすさまじい(と思われる)。
いまだに公法系の学者から、TPPに対する批判的な法的見解が出ないのはどうしたことだろう。
ロースクール詐欺商法に利権を見いだした法学部と、TPPの利権形成システムは相性がいいのかもしれないと思わせるほど、公法学者は無言である。
利権、利権で何が悪い、と開き直るのが、まさにグローバル経済法の構造そのものなのである。

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追記 ちなみに、民法系学者は、尊敬に値する。
トップリーダーはあっち系に行ってしまったようだが、被害者の立場に立とうとする学者が層として、存在し続けていることはすばらしいことだ。

福島原発事故賠償の研究

福島原発事故賠償の研究
淡路 剛久(編)/ 吉村 良一(編)/ 除本 理史(編)

追記2 
ここに断言しておこう。
日弁連執行部が、このまま利権グループや米国に隷属する日本完了と結託して、弁護士窮乏化計画を推進し続けるなら、5年以内には、日弁連組織全体を揺るがす事態が生じる。
日弁連執行部は、自ら日弁連解体作業を行っていることを自覚すべきである。
一方で、地方単位会からは、せめて司法試験合格者を1000人以下にするよう提言する活動が活発化している。
このせめぎ合いで、日本弁護士の歴史が決まる。
地方単位会の声に向き合おうとしなければ、現在の日弁連執行部は、多少なりとも権力に抗する勢力であった弁護士を壊滅させた戦犯として、後世の歴史に汚名を残すことになるだろう。

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Business Journal
ブラック企業アナリスト・新田龍「あの企業の裏側」(5月25日)
年収百万円台…食えない弁護士急増 借金&高額費用かけ超難関試験合格も仕事なし


「ブラック企業アナリスト」として、テレビ番組『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)、「週刊SPA!」(扶桑社)などでもお馴染みの新田龍氏。計100社以上の人事/採用戦略に携わり、数多くの企業の裏側を知り尽くした新田氏が、ほかでは書けない「あの企業の裏側」を暴きます。

 「弁護士」という職業について、どんなイメージを思い浮かべるだろうか。
 高学歴で高収入のエリート――という印象は根強い。実際、「合コンしたい憧れの職業TOP10」(2014年「R25」調べ)では5位、「女子が食いついちゃうのは? 合コンにきたら『ちょっとテンションが上がる男性の職業10』」(14年「マイナビウーマン」調べ)では2位、また「子どもになってほしい職業ランキング」(07年「gooランキング」調べ)では3位、「今からでもなれるとしたらなってみたい職業ランキング」(06年「gooランキング」調べ)では3位と、常に医師と並んで人気の職業であることがうかがえる。
 また、収入も確かに高い印象を受ける。日本弁護士連合会(日弁連)が10年に一度実施している「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査」によると、10年度の弁護士収入・所得の平均(全体の総合計金額を有効回答数で割った値)は3264万円に上る。一般サラリーマンの平均年収が413万円(14年度)であることを考えると、約8倍にもなるリッチな職業のようだ。
 しかし昨今、その様子が明らかに変わってきている。きっかけは、06年からスタートした「新司法試験」である。これまでのように誰でも受けられるわけではなくなり、法科大学院(ロースクール)修了が受験の前提条件となった。合格者も急増した結果、若手弁護士が就職先探しに苦労する事態となっているのだ。
 内容が異なるため一概に比較することはできないが、旧司法試験の合格率は昭和40年代以降、ほぼ1~3%台という難関であったことと比べると、新司法試験の平均合格率は約30%。合格者数でみても、旧試験ではほぼ3ケタだったものが、新試験では毎年のように2000人を超えている。14年4月1日時点で弁護士総数は3万5109人だが、00年の1万7126人から倍になっており、急激な勢いで増えているのだ。

二極化進む弁護士業界

 一方で、彼らの主な仕事である裁判の件数をみてみよう。00年の新受件数(すべての裁判所で新たに受理された訴訟件数)が553万7154件だったものが、13年には361万4242件と、なんと200万件も減少している。仕事が減れば就職も厳しくなり、それは当然収入にも跳ね返ってくることになる。
 イソ弁、ノキ弁、タク弁、さらにはケー弁といった言葉をご存じだろうか。司法試験合格後、弁護士事務所に就職できた新人はイソ弁(居候弁護士)と呼ばれ、給料をもらいながらキャリアを積むことができる。昨今、このイソ弁の労働条件はどの事務所でも悪化していると聞くが、まだ固定収入があるだけ恵まれているほうなのだ。
 固定給はなく、ボスとなる弁護士(ボス弁)の事務所スペースを借りて開業し、おこぼれ仕事にあずかる弁護士がノキ弁(軒先弁護士)で、軒先を貸してくれる事務所すら見つからない弁護士はやむを得ず自宅で開業することになり、タク弁(自宅弁護士)と呼ばれる。さらには、その事務所を借りるお金すらない弁護士は、携帯電話だけで仕事をするケー弁(携帯弁護士)となるわけだ。弁護士業界も格差社会なのである。
 実際、弁護士の収入分布は広がりを見せており、平均値が高いのは一部の超高額収入者の存在によって押し上げられているからと見る向きがある。
 国税庁の12年度の調査によると、年収100~150万円の弁護士は585人、150~200万円が594人、200~250万円が651人、250~300万円が708人、300~400万円が1619人という具合に、サラリーマンの平均年収を下回る水準の弁護士も非常に多いことがわかる。また、所得が1000万円以上だった弁護士は5年前から15%減少。逆に200~600万円の人が20%ほど増加しているのだ。

収入は減り、支出は増える一方

 弁護士は、なるまでにも、なった後にもお金がかかる。まず、法科大学院の平均的な初年度学費は100~140万円。しかし、そこでは司法試験の要である論文試験対策は行われない。「予備校的だから」という理由で、法科大学院で教えることはご法度とされているためだ。したがって、論文対策として別途予備校に通う人もいる。大手法曹予備校の授業料もまた、年間100万円を超える高額なものだ。
 しかも、司法試験合格者が受ける司法修習の期間に支給されていた毎月20万円の給与が11年以降はなくなり、無給状態で1年間すごさなければならなくなった。法科大学院卒業までの多額の授業料を借金や貸付奨学金などでまかなっている人も多く、その費用返済と相まって、司法修習生の7割が経済的な不安を抱えているという調査結果もある。
 また弁護士登録後は、所属する地方の弁護士会へ会費を毎月支払わなければならない。金額は地域によって異なるが、年額で50~100万円といわれており、いずれにしても高額である。
 難関試験を突破するために多くの時間とお金を費やしたにもかかわらず、仕事は減り収入は安定せず、逆に出費はかさむ一方。そのような状態では、さらなる出費を要する営業活動にいそしむこともできず、経験や人脈がないまま仕事を進めていかざるを得ない。必然的に、弁護士の質の低下という事象になって現れることになる。
 司法制度の改革は、国民生活の向上に資することを目的としていたはずだが、それが実現できているかは疑問である。
(文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト)

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2015年5月24日 (日)

ポチダヨ(「ポチ」だよ)宣言全文

お尋ねのポツダム宣言ですね、ポツダム宣言はつまびらかにしておりませんが、ポチダヨ宣言なら昭和天皇誕生日に帝国議会で行ってまいりました。

先の大戦は「痛切な反省」をですね、しているわけです。誤解のないように申し上げますが、『先の大戦』というのはですね、1941年12月8日にですね、真珠湾を攻撃してですねアメリカ帝国をですね怒らせたということは『痛切な反省』をしたということをですね、したわけでありまして、その前のシナとの戦争とかですね、韓国の併合とかを間違ってもですね、反省するわけではなくてですね、ここは未来志向でいこうじゃないかと、こう申し上げた訳であります。

したがってですね、そのためには、アメリカ帝国の傭兵としてですね「我が軍」をですね、使っていただきたいと、とくにアメリカ帝国がですね、大変気にかけておられるホルムズ海峡の奥ですね、ここはぜひとも「我が軍」にですね任せていただきたいと、こう申し上げた訳であります。

それからですね、本当は東シナ海が気になるわけでありますが、南の方がお気に召すのであれば、似たようなものでありますからね、南に「我が軍」を派遣してですね、シナと対決をも辞さないと、こういう訳であります。

それからですね、コメの関税ですが、直ちにとは言いませんが、緩やかにですね、将来的には撤廃いたしますと、その場合にですね、枯れ葉剤を蒔いても枯れない遺伝子組み換えコメを開発していただければ、強靭な国土を作るという観点からもですね、是非、輸入させていただきたいと、美しい国をですね、作って参りたいと、アメリカ帝国の議会がTPPの大統領権限を認めるためには協力いたしますとね、大統領には申し上げた訳であります。

聖域なき関税撤廃ではないということでしたから、アメリカ帝国のですね、両院議員の前でですよ、日本の総理としてですね、初めて演説をするというわけですからね、申し上げた訳であります。

TPPはですね、安全保障と一体ですからね、こう妥結も辞さないということを申し上げた訳であります。

それからですね、危なくてアメリカ国民の上を飛ばすことができないオスプレイといいますか、これを首都圏にも受け入れましょうと、我が軍にも言い値で買い取らせていただきたいと、まあ、そう申し上げた訳であります。

わが国の安全のためにはグァムまで引くとは言わずにですね、移転費用は好きなだけ持ちますからね、140年にわたってですね、わが国が占領している沖縄にですね、ぜひ止まっていただきたいと、そのためには沖縄県民の理解を得たわけでありますからですね、辺野古にですね、ぜひ新基地をですね、沖縄県民の負担軽減のためにもですね、作らせていただきたいと、こう申し上げた訳でありまして、ですからね、アメリカ帝国の議会もですね、我が軍の集団的自衛権をですね、法律的にですね、認めていただきたいと、まあ、そのように申し上げた訳であります。

私がですね、アメリカ帝国議会でですね、日本国の総理としてですね、初めて日本国のためにですね、演説するという、いわば国益をですね、はかるためにですね、そのためにはですね、未来志向で近隣諸国と付き合って参るためにも、他にもいろいろ約束して参りましたが、ポチダヨ宣言をして参った訳であります。

 

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2015年5月22日 (金)

革命さもなくばクーデター? 米国国防権限法が集団的自衛権行使を決める?

米国発で日本の政策が決定されるということは、もはや周知の事実であるが、米国議会の定める法律が日本の方針を決定するかのごとき現象は、僕が知る限り、今回が初めてではないかと思う。


議会権限に属する国防事項に関して、大統領の政策評価という性格のある可能性を含む、国防権限法についての報道の仕方が悪いのかも知れないが、
まるで米国の内政の一部に日本が組み込まれたように見える。
つらつら考えるに、わが国の「国権の最高機関」は無視された訳であり、これは一種の日本国政に関する最高権力の奪取であるから、革命である。
まことにめでたい。
これも総理様のありがたい日本史上初の米議会上下院合同会議演説のおかげであり、外務官僚の努力のたまものであろう。


ほとんど新聞を読むいとまもなく過ごしているので、すでに知られた話なのかどうか、自分では不明であるが、記事を貼り付けておく。

 

集団的自衛権行使容認、米が国防権限法に盛る

読売新聞2015年05月16日 19時56分

【ワシントン=今井隆】米下院は15日の本会議で、2016会計年度(15年10月~16年9月)の国防予算の支出に必要な国防権限法案を賛成多数で可決した。

 法案では日米同盟について記述し、「米国は集団的自衛権の行使容認を含む日本の防衛政策の変更を支持する」と盛り込み、安全保障関連法案の成立を目指す安倍政権を後押しした。

 法案ではまた、沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を「唯一の選択肢」と明記した。

 国防総省とその他の省庁の国防予算の総額は計6120億ドル(約73兆円)とし、政権の要求水準を実質的に満たした。

米下院も「辺野古唯一」国防権限法案に文言
沖縄タイムス 2015年5月20日 06:39

 【平安名純代・米国特約記者】米下院は15日の本会議で、2016会計年度(15年10月~16年9月)の国防予算の大枠を定める国防権限法案を賛成多数で可決した。米軍普天間飛行場の移設先について「名護市辺野古が唯一の選択肢」と明記し、日米両政府が現行計画で定めた移設先を米下院も支持するとの認識を表明した。

 同法案は、沖縄の米軍施設の統合計画をめぐり(1)日米間の防衛同盟は重要で強固(2)沖縄県知事による13年の埋め立て承認を含め、06年の日米合意に変更を加えた12年4月27日の日米合意の実現を目指すとともに、アジア太平洋地域における米海兵隊の再編のための日本の拠出費の凍結が解除されたことを確認する(3)海兵隊のグアム移転は普天間の辺野古移設と切り離されたが、日米合意を満たすために両方とも進展を継続しなければならない-などの7点を確認した。

 そのうえで、米議会が12会計年度の国防権限法で定めた独立機関による普天間の移設先に関する研究で辺野古が最善との結果が出た点や、日米両政府が辺野古移設を再確認した点などを「米議会の認識」として明記。「辺野古が唯一の選択肢」との文言を盛り込んだ。

 また、日米同盟について、「米国は集団的自衛権の行使容認を含め、日本の防衛政策の変更を支持する」と明記している。

ちなみに、6120億ドルという16年度会計の国防予算は、戦費を除いた米国軍事予算の歴代最高額をほぼ1000億ドル(12兆円!)も更新する過去最高額である(時事ドットコム【図解・国際】米国防予算の推移)。
これは、日本国の集団的自衛権行使容認と引き替えに大統領に与えられたお駄賃にも見える。

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NATIONAL DEFENSE AUTHORIZATION ACT  FOR FISCAL YEAR 2016

2015年5月21日 (木)

日本の原産国表示と米国のそれとの違いがさっぱりわからない農水省関連機関のご説明

独立行政法人農畜産業振興機構に米国の原産国表示がWTO紛争解決制度の上級委員会でWTO違反とされたとの説明が掲載されている。
TBT2条1項違反とされたと説明されているが、内容が説明されていないので、日本の原産国表示との違いがあるのかないのか、さっぱりわからない。
原審に当たるパネルの記事も見つけたが、それを見てもやはりわからない。

TBT(貿易の技術的障害)
第二条 強制規格の中央政府機関による立案、制定及び適用

     中央政府機関に関し、
    2.1     加盟国は、強制規格に関し、いずれの加盟国の領域から輸入される産品についても、同種の国内原産の及び他のいずれかの国を原産地とする産品に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えることを確保する。

米国の義務的原産地表示制度(COOL)、上級委員会もWTO協定違反と報告

 世界貿易機関(WTO)上級委員会は2015年5月18日、米国の食肉の義務的原産地表示制度(COOL)を違反とした、2014年10月に出されたパネルの見解を支持する報告を行った。パネルの見解は、WTOのTBT協定2.1条(同種の産品に対し国産品よりも不利でない待遇を与える義務)について、違反しているとの判断を示したものである。
 この上級委員会の報告を受け、カナダ政府およびメキシコ政府は、今回の報告を歓迎するとともに、WTOに対して報復措置を取るための手続きを開始するとの声明を発表した。

ただし報復措置が行われるまでには、
(1) WTOの紛争解決機関(DSB)が今回の上級委員会の報告を採択(報告日から原則として30日以内)
(2) 仲裁による履行期限の決定(採択から原則として15カ月以内)
(3) 期限内に是正措置が履行されない場合、両国政府からDSBに対して対抗措置の承認申請
(4) 対抗措置の承認が行われるか、その措置に異議がある場合には仲裁に付託(履行期限後30日以内)
(5) 仲裁が決定されれば(履行期限後60日以内)、その後、仲裁の場で対抗措置の内容が決定され、申請、承認、発動
の手続きが踏まれることから、報復措置が実際に行われる場合でも、その時期は2015年10月以降になると見られている。

 カナダは以前に報復措置の対象として、牛肉、豚肉、鶏肉、チェリー、チョコレートなどを提示している。メキシコは対象リストを公表していないが、豚肉が含まれる可能性が高いとみられている。
 米国の食肉、酪農乳製品、穀物関係団体等が加盟している「義務的原産地表示の改革連合」(COOL Reform Coalition)※は、同日付で米国議会に対し直ちに是正措置を講じるよう求める声明を発表した。
 一方で米国議会では、有力議員の間で同制度の維持に賛否両論の意見が出ていることから、今後、議会での動向が注目されている。

※畜産物や穀物関係団体としては、米国飼料産業協会(AFIA)、トウモロコシ精製業協会(CRA)、国際乳製品協会(IDFA)、全米鶏卵生産者協会(NAEF)、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)、全米トウモロコシ生産者協会(NCGA)、全米穀物飼料協会(NGFA)、全国生乳生産者協議会(NMPF)、全米豚肉生産者協議会(NPPC)、全米北米食肉協会(NAMI)、鶏卵生産者連合(UEP)、 アメリカ乳製品輸出協会(USDEC)等が加盟している
【平石康久 平成27年5月19日発】

米国の義務的原産地表示(COOL)がWTO協定違反と裁定

 世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)は10月20日、メキシコやカナダがWTO協定違反として提訴していた米国の食肉の原産地表示(COOL)規則について、違反であるとの裁定を下した。COOL規則の問題については、2012年6月に外国産が米国産に比べ差別的に扱われ不利益を被っているとの裁定が一度下されている。これを受けて米国は、2013年3月にCOOL規則の改訂を行ったが、今回のパネルの裁定は、改めてこれを違反と判断するものとなった。

 今回の裁定について米国通商代表部(USTR)の広報担当者は、「WTOが、肉製品の原産地表示を求める米国の権利は認めたものの、現行の牛肉と豚肉の原産地表示の規制は、カナダとメキシコの家畜の輸出を差別するものだと判定したことに失望している。」とコメントし、今後の対応については、あらゆる選択肢について検討するとしている。なお、WTOの規則では、紛争の当事者は、60日間の異議申し立て期間が与えられている。

 また、関係団体からも声明が発表されており、米国食肉協会(AMI)と北米食肉協会(NAMA)は共同声明で、「米国農務省(USDA)の義務的COOL規則は、家畜生産者や食肉処理業者、食肉加工業者にとって負担となるだけではなく、WTO協定に整合するものではないことから、今回の裁定には驚いていない。異議申し立てはできるが、産業界や議会と協力し、国際的な義務に整合し、市場に安定性をもたらす改正をUSTRとUSDAに働きかけていきたい。今後の改正により、米国にとって最大かつ最も重要な貿易相手国との関係回復に資するだろう。」としている。

 全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)のBob McCan会長は、「生産者は、短絡的な規制の影響により、すでに販売料金の低下に苦しんでおり、フィードロットや牛肉処理工場の閉鎖に直面している。COOL規則は、消費者や生産者の利益とはならず、また、牛肉生産業界のみならず米国経済全体にも不利益を及ぼす可能性がある不十分な規制である。NCBAは、COOL規則がWTO協定に整合するものではなく、貿易相手を満足させるものでもない。」と主張している。

 豚肉生産者協議会(NPPC)のHoward Hill会長は、「米国は、カナダとメキシコからの報復措置を避ける必要がある。豚肉に対する報復関税は、米国の豚肉生産者にとって経済的に大きな打撃となるだろう。NPPCは、消費者に重要な情報を提供し、米国の国際貿易上の義務を守り、米国の食肉サプライチェーンを弱体化させず、不必要にコストを上昇させない表示方法を支持する。米国経済は、第1位および第2位の輸出市場への輸出が、関税により制限されることには耐えられない。議会とホワイトハウスは直ちにこの問題に対処する必要がある。」と米国への報復措置を避けるよう呼びかけている。

 一方、カナダは、米国がWTO協定の裁定に従わない場合、米国の農業と非農産品への報復措置を実施するため、牛肉、豚肉、鶏肉、チェリー、チョコレートなどの40近い米国製品を報復措置の対象とすると以前から公表している。なお、メキシコは、米国の報復措置の対象リストをまだ公表していない。

【渡辺 陽介 平成26年10月22日発】
なお、これで米国のTPP熱が冷めるのか、米国流だけが通用するTPPが必要ということになって、かえって昂じるのか微妙なところである。
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TPP訴訟訴状全文

TPP交渉差止・違憲訴訟の会のホームページで訴状が公開されている。

 

やや目立たぬ位置にあるので、リンクしておく。

 

TPP訴状全文

 

裁判所もTPPや国際経済法などという分野は全くの素人であるので、一通りのことをまとめるだけで長文になった。
裁判所に対して、説得的なものであることを心がけたとともに、「国民のための国際経済法の心得」ともなり得るものを目指したので、お読みいただけると幸甚である。

 

これは、将来世代にわたり、国民の生命、健康、自由、文化を守るたたかいである。
(なおこの訴状では、「国民」とは日本国憲法による基本的人権の享有主体である個人、という断り書きを付けている)
日本初の反グローバリズム訴訟として、間違いなく歴史に残る。
訴状の最後の方の具体的権利侵害の部分を引用しておく。
ともに立ち上がっていただいた原告の方々、訴訟の会を支援してくださる方々に篤くお礼申し上げます。

第5章 権利侵害
第1 原告らについて
      原告らは、等しく国民であるとともに、農業・酪農従事者であり、医療を受けている者であり、食の安全に強い関心を抱く親であり、国際競争力の名の下に不安定な雇用に従事することを強いられ、あるいは絶えざる賃金の低下圧力にさらされている者であり、また、低所得でありながら食料の安定的な供給と安全な食品の提供、そして適切な医療を受けることが必要な者であり、研究者として知的活動に従事する者です。
     また、原告らは、国民に対して安全な食品が提供されるために献身してきた者であり、医療従事者として国民に等しく適切な医療が行き渡ることよう尽力してきた者であり、先進国の圧迫の下で途上国国民が貧困にあえぎ、治療の容易な病気で亡くなっていく悲劇的な状況を改善すべく活動してきた者であり、国会議員として国民の基本的人権を擁護することに献身してきた者です。
     原告らは、基本的人権尊重を原則とする日本国憲法の下、まがりなりにも、これまで人格権を尊重され、それぞれに平穏な生活を営む権利を保障されてきた者です。

第2 TPPによる国家原理の変容の概要
     TPPは、国際経済活動の自由の尊重を国家運営の原則とし、グローバル企業の利益をとくに保護すべきものとします。そのことによって国会の、国民の保護を図り基本的人権を尊重するための立法裁量を大きく制約します。司法権の重要な部分が海外の私的な仲裁に奪われて、外国投資家の利益を損なわない施策の貫徹が求められるようになります。海外で私的に生成する法によって、立法、行政、司法が支配されるようになります。
     このことにより、日本国憲法の基本的人権尊重原則は大きく変容され、国民の福利は、グローバル企業の利益に従属するものとなります。

第3 具体的損害
  1 生存権、人格権侵害
     こうした統治構造と統治原理の変容によって、原告らは生存権、人格権を具体的に脅かされ、また、基本的人権尊重の価値観を根幹としてきた個人としての尊厳を侵害され、甚だしい精神的苦痛を被る者たちです。
     原告らの生存権、人格権侵害は、その立場と生活局面によって、それぞれの現れ方を呈する具体的な損害であるといえます。
  2 知る権利の侵害
     また、原告らは、TPP交渉において、原告らと関係を有する問題が、すでに決着してしまったのか、あるいは議論が続けられているのか、決着したとしたらどのように決着したのか、議論が続けられているとしたら、どのような議論がなされているのか、原告らの立場と生活局面によって、それぞれに重大な関心を有している者です。TPP交渉の内容が秘密とされていることにより、国民主権原理に由来する知る権利が侵害され、原告らの主権者として行動が妨げられており、これも具体的な損害であるといえます。


国会議員8名も原告に加わることになった。
交渉内容に最も権限を有する「国権の最高機関」である国会を排除した交渉姿勢自体が憲法無視である。
秘密保持を理由に国会議員の本来の仕事を放棄している「TPP断固阻止」の自民党議員が情けなさ過ぎるから、良心のある国会議員が、その職責を果たすために、訴訟という手段に踏み切らざるを得なかったのである。
他方で、秘密交渉といいながら、秘密保護法上の概念である「適合事業者」たるべき資格を有する一部企業は情報を共有している節がある。

日本国憲法の基本的人権規定の側から登ってみたら、山頂では、国連でなされてきたグローバリズムと基本的人権をめぐる議論と合流する結果になった。
(起案中、国連における議論を参照した訳ではない。起案を終えて確認してみたら、国連の議論に重なることを確認したという経過である)
グローバリズムは、どこの国民にとっても普遍的に、致命的な危害を及ぼすのである。
(米国の原産国表示が違法とされれば、わが国の原産国表示が許容される可能性は少ない)

 

訴状の具体的な議論はSPSの解明から始めた。
グローバル資本の論理の本質が「ヒト」の生命すら「モノ」扱いする本質がSPSにあらわだからである。

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2015年5月20日 (水)

やっぱりヤバかったWTOルール WTOですでに危うくなった食品表示 WTO、米国の食肉原産国表示を違法と判断 

再三にわたって、『食の安全』どころか、有害産品促進ルールに他ならないと強調してきたSPS(衛生及び植物検疫措置)ルールであるが、米国の食肉表示がWTOで「違反」と判断されたというニュースが飛び込んできた。


「動物が生まれ育った国や、食肉処理された場所を表示するよう小売業者に義務付ける」
ことが、外国産品に対する差別的取扱に当たるというカナダとメキシコの申立が通ったというのである。


他ならぬ有害産品促進ルールを自国産業の要求に基づいて押し通したとおぼしき米国の食肉表示制度がWTO違反とされたというニュースである。


米国の食肉表示は「違反」とWTOが判断、貿易戦争に発展か
ロイター2015年 05月 19日 16:44 JST

[ワシントン 18日 ロイター] - 世界貿易機関(WTO)は18日、米国の食肉原産国表示に対して不服を申し立てていたカナダとメキシコの主張を認める判断を下した。これを受け、両国は米国に対する制裁措置を検討しており、米議会には同制度の廃止に向けた圧力が高まっている。


米国の食肉原産国表示制度とは、動物が生まれ育った国や、食肉処理された場所を表示するよう小売業者に義務付けるもの。カナダとメキシコは輸入食肉に対する差別だとしてWTOに苦情を申し立てていた。


メキシコとカナダの通商・農業担当閣僚は共同声明で「米輸出に対して報復措置をとることについてWTOの承認を求める」と述べた。


カナダ政府は制裁を科す可能性のある米国からの輸入品として、ワイン、チョコレート、ケチャップ、シリアルなどをリストアップした。


米議会で多数派の共和党は、今週中にも制度撤廃に向けて行動する可能性を示唆。一方で、同制度は消費者に重要な情報を提供しているとして、消費者団体や民主党議員の多くは撤廃に慎重姿勢を示している。


ビジネス団体のほか、豚肉生産業者や全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は法的措置を求めている。


全米豚肉生産者協議会(NPPC)のロン・プレステージ会長は「議会が今動かなければ、カナダとメキシコは米国製品の多くに関税をかけてくるだろう。それは、米国の雇用と輸出への死刑宣告だ」と語った。


一方、肉牛生産者のロビー団体「R-CALF・USA」は、議会は断固とした態度で臨み、「米国の主権」を放棄するべきではないと主張している。


市民団体「パブリック・シチズン」は、2014年の調査で米国民の10人中、9人が自国の食肉原産国表示制度を支持していたと指摘。

同団体のロリ・ワラク氏は「WTOの判断は事実上、食品の産地について基本的な情報を消費者に提供するのをやめさせることを米政府に命じている」とし、自由貿易が消費者の安全措置を損なう危険性を示していると述べた。


WTOの紛争解決制度は、TPPのような一審限りではなく、2審制である。
一審はパネルと呼ばれ、二審は上級委員会である。
確認をしていないが、パネルは多分、当事国が選任した委員によって構成される随時のもので、上級委員会はおそらく常設である。
知る限りで言えば、パネルは、SPSの文言通りにグローバリズムに忠実なネオリベラルな判断をする傾向が強いが、上級委員会は、結論を覆すかどうかはともかくとして、パネルの判断が暴走するのを、国家の主権や多様な利害を調整する国家の政策といった方面からある程度、防いできた印象があった。


この記事では「WTOが判断した」となっており、パネルなのか上級員会なのか、よくわからないと思い、少し検索したところ、昨年8月のウォールストリートジャーナルの末尾の記事が見つかった。
パネルは、昨年の8月に判断を示し、今回の判断は、上級委員会によるものとなるから、これがWTOの最終判断ということになる。


この食肉表示をSPSの問題として扱ったのか、TBT(貿易の技術的障害)の問題として扱ったのか、明確にされていない。
SPSは食品の『表示』についても適用されるが、「食品の安全に直接関係するもの」に限定されているので、産地や食肉処理の場所が「食品の安全に直接関係」しないと仮定すれば、TBTの問題になる。確認はしていないが、TBTで扱われるとすれば、SPS以上に表示の義務化は厳しく制限されることになるのが理屈である。

SPS付属書A 第1項末尾
包装に関する要件及びラベル等による表示に関する要件であって食品の安全に直接関係するもの

グローバリゼーションを導き、全世界のネオリベラル化を招いた米国が負けたからざまあみろ、と言いたい衝動はあるが、そうはいかない。
朝日新聞が頭を垂れるのを見て、「小沢一郎バッシング、小沢一郎追放の急先鋒で弁護士を蛇蝎のごとく嫌い弁護士窮乏化政策を牽引した朝日新聞」だから「ざまあみろ」では、すまなかったのと同じである。


まちがいでなければ、わが国は、食肉の原産国表示を義務づけている。
でなければ、わざわざ小売店で、米国産やカナダ産などという国産肉と比べて明らかに不利な表示をするはずがない。
「生鮮食品品質表示基準」


これまでJAS法に基づいてなされてきた食品表示制度は、食品衛生法及び健康増進法に基づいてなされてきた食品表示とともに、この4月から食品表示法に一本化されたばかりであるが、これまでの表示義務のレベルを落とす議論は、さすがの国民家畜化計画推進中のネオリベ安倍晋三もしていないようである。


ちなみに、食品表示法の基本理念は「…消費者の安全及び自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、並びに消費者に対し必要な情報が提供されることが消費者の権利であることを尊重するとともに、 消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるよう消費者の自立を支援することを基本として講ぜられなければならない。 」(3条1項)とされている。
グローバルなモノの流通、貿易の拡大こそが諸国民の幸福を最大化するという教義の下においては、「消費者の安全及び自主的かつ合理的な選択の機会が確保」やら「消費者の自立」なぞは、むしろ消費者の幸福を妨げる非関税障壁に該当するということになるというわけである。


したがって、米国のことを嗤っている訳にはいかず、わが国も、WTOのTBT違反になるのではないかと検討する必要が出てくる。ここら辺は当然、専門家が判断すべき問題であるので、これ以上の口出しはしないでおく。


ちなみに、周知のように、米国では牛肉は生産物であるから、より短期間により大量に生産できることこそが望ましい。
したがって、できるだけ動けないように狭いところに閉じ込め(フィードロットと呼ばれたと思う)、できるだけ高脂質の餌を与え(多くの場合、遺伝子組み換えトウモロコシである。遺伝子組み換えトウモロコシも食べていることは日本も同じ)、肉が早くたくさん生産できるようにしている。それでも足りず、早く出荷して回転率が上がるように成長ホルモンを与えて太らせる。このような飼育環境では病気になりがちなので、抗生物質もふんだんに与える。
牛肉生産場では、人生ならぬ、「牛生」など知ったことではない。
「牛生」だけでなく「豚生」も同じで、一生糞尿にまみれて肉になる。

Dendrodiumブログの2015年4月24日記事は、どれほど隔たったところまで来てしまったのだろうという慨嘆も含め、胸を打つものがあった。

昔は鶏や豚を飼う時、
結局は食べる為に殺してしまうにしても、
生きている時には人との触れあいもあり、
それなりに幸せな時もあっただろう、と思える様な飼い方がされていた。

しかし、最新式の牧畜では、家畜が地獄のような責め苦の中で成長させられていても、
効率第一主義で動物への配慮が、全然なされないのが普通になっている様である。


WTOの栄えある第一号紛争事件は米国のホルモン牛事件であった。この事件で、米国はEUに勝訴し、EUの米国ホルモン牛輸入禁止措置はWTOのSPSルール違反とされた。
糞尿まみれ、薬漬けで、(発がん性が疑われるけれども十分な科学的証拠はない)成長ホルモン漬けで生産された精肉も、安全扱い(有害である科学的証拠はない)されることになったのである。


かくして、生鮮肉の原産国の表示は、食の安全(SPS)に関係のない工業製品と同様のTBTで扱われることになり、米国議会による原産国表示義務化は、カナダ産や米国産の精肉を差別する障壁であると判断され、違法とされたのである。


米国内では、意見が分かれている。
全米豚肉生産者協議会は、むしろ米国の敗訴を歓迎しているようにも見える。
訴えられたから、形式的には争ってみせる、しかし、国内のグローバルな生産業者の声を聞いて、世界的に罠を仕掛けるために、わざと負ける、そんな汚い仕掛けもありなのが、グローバル経済法の世界である。


本当に、TPPでいいんですか。
国際的な経済主体の活動の自由を保障しましょう、諸国民がみんなハッピーになりますという、教義で進んでいいんですか?
私たちTPP訴訟の関係者は問いかけ続けます。

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追記
それにしても岩波新書は、金融工学がもてはやされれば金融工学礼賛本を出版し(さすがに絶版にしていると思うが)、無批判な放射能安全論に与するWTO礼賛本を出版し、TPPはダメだが中国との自由貿易はすばらしいなどという形式的にも間違いの多い安易な新自由主義に乗っかった国際経済本を出しすぎである。
岩波新書のWTO礼賛本にしたがえば、原産国表示は科学的証拠に基づかない無用な貿易障壁になり貿易最大化という単一公理に反するので、止めるべきということになるのである。
ネオリベ大好きな編集者が誰かいるのだろうが、岩波新書なら大丈夫と鵜呑みにする岩波信奉者も身近にいるのを知っているので、企画体制を見直してもらいたいものである。
巻末に日本語文献の索引の少ない岩波新書はまず要注意で、ろくに編集が入っていないのである。

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米食肉表示紛争、カナダ・メキシコが「勝訴」 WTO
By Nirmala Menon
原文(英語)
2014 年 8 月 22 日 18:04 JST

 【オタワ】米国の食肉表示をめぐりカナダとメキシコが世界貿易機関(WTO)に不服を申し立てていた問題で、WTOは2国の主張を認める判断を下した。WTOの見解に詳しい関係者が明らかにした。

 カナダとメキシコは、米国が2013年11月施行の「食肉製品原産国表示規則(COOL)」で、牛肉、豚肉、その他の食肉についてさらなる情報提供を義務づけたことに異議を唱えた。カナダとメキシコは、この規則は自国の競争力を不当に損なうとしてWTOに不服を申し立てた。

 WTO紛争処理パネルは今年に入って、紛争の解決に向け行われたヒアリングでの口頭弁論を基に、カナダとメキシコに有利な判断を示した。パネルの機密文書に詳しい関係者が明らかにした。

 この文書は当事国3国の政府が受け取っており、9月下旬か10月上旬に公表される見通しだという。

 この文書に詳しいある人物は「この文書に何と書いてあるか皆知っている。米国は敗訴した」と述べた。

 米農務省は、原産国表示規則の初期のバージョンが差別的だとする2012年のWTOの見解を受け、規則を改訂した。しかしカナダとメキシコによると、改訂後の規則は一層面倒で、牛や豚の対米輸出を制限することを余儀なくされた。その結果、2国の食肉用家畜は米国から輸入された家畜と比べ、格安に販売される事態となった。

 WTO規則に従って米国はこの文書が公表されてから60日以内に上訴できる。カナダがWTOに報復の承認を得るには、米国が上訴手続きを完了するまで待つ必要があり、来年後半以降になる見通しだ。

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TBT(貿易の技術的障害)
第二条 強制規格の中央政府機関による立案、制定及び適用

 
    中央政府機関に関し、
    2.1     加盟国は、強制規格に関し、いずれの加盟国の領域から輸入される産品についても、同種の国内原産の及び他のいずれかの国を原産地とする産品に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えることを確保する。
    2.2     加盟国は、国際貿易に対する不必要な障害をもたらすことを目的として又はこれらをもたらす結果となるように強制規格が立案され、制定され又は適用されないことを確保する。このため、強制規格は、正当な目的が達成できないことによって生ずる危険性を考慮した上で、正当な目的の達成のために必要である以上に貿易制限的であってはならない。正当な目的とは、特に、国家の安全保障上の必要、詐欺的な行為の防止及び人の健康若しくは安全の保護、動物若しくは植物の生命若しくは健康の保護又は環境の保全をいう。当該危険性を評価するに当たり、考慮される関連事項には、特に、入手することができる科学上及び技術上の情報、関係する生産工程関連技術又は産品の意図された最終用途を含む。
    2.3     強制規格は、その制定の契機となった事情若しくは目的が存在しなくなった場合又は事情の変化若しくは目的の変更について一層貿易制限的でない態様で対応することができる場合には、維持されてはならない。
    2.4     加盟国は、強制規格を必要とする場合において、関連する国際規格が存在するとき又はその仕上がりが目前であるときは、当該国際規格又はその関連部分を強制規格の基礎として用いる。ただし、気候上の又は地理的な基本的要因、基本的な技術上の問題等の理由により、当該国際規格又はその関連部分が、追求される正当な目的を達成する方法として効果的でなく又は適当でない場合は、この限りでない。
    2.5     他の加盟国の貿易に著しい影響を及ぼすおそれのある強制規格を立案し、制定し又は適用しようとする加盟国は、他の加盟国の要請に応じ、2.2から2.4までに規定する強制規格の正当性について説明する。強制規格が2.2の規定に明示的に示されたいずれかの正当な目的のため立案され、制定され又は適用され、かつ、関連する国際規格に適合している場合には、当該強制規格については、国際貿易に対する不必要な障害をもたらさないとの推定(反証を許すもの)を行う。
    2.6     加盟国は、強制規格についてできる限り広い範囲にわたる調和を図るため、自国が強制規格を制定しており又は制定しようとしている産品についての国際規格を適当な国際標準化機関が立案する場合には、能力の範囲内で十分な役割を果たすものとする。
    2.7     加盟国は、他の加盟国の強制規格が自国の強制規格と異なる場合であっても、当該他の加盟国の強制規格を同等なものとして受け入れることに積極的な考慮を払う。ただし、当該他の加盟国の強制規格が自国の強制規格の目的を十分に達成することを当該加盟国が認めることを条件とする。
    2.8     加盟国は、適当な場合には、デザイン又は記述的に示された特性よりも性能に着目した産品の要件に基づく強制規格を定める。
    2.9     関連する国際規格が存在しない場合又は強制規格案の技術的内容が関連する国際規格の技術的内容に適合していない場合において、当該強制規格案が他の加盟国の貿易に著しい影響を及ぼすおそれがあるときは、加盟国は、次の措置をとる。
        2.9.1
        特定の強制規格を導入しようとしている旨を、他の加盟国の利害関係を有する者が知ることのできるように適当な早い段階で出版物に公告する。
        2.9.2     強制規格案が対象とする産品を、当該強制規格案の目的及び必要性に関する簡潔な記述と共に事務局を通じて他の加盟国に通報する。その通報は、当該強制規格案を修正すること及び意見を考慮することが可能な適当な早い段階で行う。
        2.9.3
        要請に応じ、強制規格案の詳細又は写しを他の加盟国に提供し、及び可能なときは、関連する国際規格と実質的に相違する部分を明示する。
 
    2.9.4
        書面による意見の提出のための適当な期間を他の加盟国に差別することなしに与えるものとし、要請に応じその意見について討議し、並びにその書面による意見及び討議の結果を考慮する。
    2.10     加盟国は、2.9の柱書きに定める条件の下においても、安全上、健康上、環境の保全上又は国家の安全保障上の緊急の問題が生じている場合又は生ずるおそれがある場合には、2.9に定める措置のうち必要と認めるものを省略することができる。ただし、強制規格の制定に際し、次の措置をとることを条件とする。
        2.10.1     特定の強制規格及びその対象とする産品を、当該強制規格の目的及び必要性に関する簡潔な記述(緊急の問題の性格についての記述を含む。)と共に事務局を通じて他の加盟国に直ちに通報する。
        2.10.2
        要請に応じ強制規格の写しを他の加盟国に提供する。
        2.10.3
        他の加盟国に書面による意見の提出を差別することなしに認めるものとし、要請に応じその意見について討議し、並びにその書面による意見及び討議の結果を考慮する。
    2.11     加盟国は、制定されたすべての強制規格を、他の加盟国の利害関係を有する者が知ることのできるように速やかに公表すること又は他の方法で利用することができるようにすることを確保する。
    2.12     加盟国は、2.10に規定する緊急事態の場合を除くほか、輸出加盟国、特に開発途上加盟国の生産者がその産品又は生産方法を輸入加盟国の要件に適合させるための期間を与えるため、強制規格の公表と実施との間に適当な期間を置く。

TBT(貿易の技術的障害)
附属書一 この協定のための用語及びその定義

国際標準化機構・国際電気標準会議指針書第二巻(ISO・IECガイド2)の第六版(千九百九十一年)の「標準化及び関連する活動に関する一般用語並びに これらの用語の定義」に提示される用語をこの協定で使用する場合には、サービスがこの協定の対象から除かれていることに留意し、同指針書において定義され るこれらの用語の意味と同一の意味を有する。

もっとも、この協定の適用上、次の定義を適用する。
               
強制規格
産品の特性又はその関連の生産工程若しくは生産方法について規定する文書であって遵守することが義務付けられているもの(適用可能な管理規定を含む。)。 強制規格は、専門用語、記号、包装又は証票若しくはラベル等による表示に関する要件であって産品又は生産工程若しくは生産方法について適用されるものを含 むことができ、また、これらの事項のうちいずれかのもののみでも作成することができる。

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2015年5月19日 (火)

終わってから知った、大阪都構想の本質

大阪都構想には怪しげなものを感じてはいたが、多忙に紛れて、積極的に知る努力をせずにきてしまった(TPP訴訟の訴状を完成させるまでは何しろ余裕がなかった(^^ゞ)。
例によって、メディアの報道は、事後的にも、ミスリードばかりに見受けられるので、改めて、論考を紹介しておきたい。

 

大前治弁護士「今、大坂で何が起きているか」(青年法律家第530号・2015年4月25日)

 

青年法律家協会は、どうもデジタル化が著しく遅れているようで、貴重な論考が、ネットにかからない。
仕方がないので、機関誌をスキャンして、アップすることにした。
画像ファイルに変換した方が、読んでもらいやすいと考えて画像化しようとしたが、このスタイルのものを画像化するのは、読んでもらえる大きさにしようとすると、極めて手間暇がかかる上、見栄えがよろしくない。
したがって、PDFをアップしようとしたら、サーバーの容量制限にかかった。
容量制限をクリアするために試行錯誤している内に、結局90分かかった。

 

したがって、時間がなくなり、解説はしない。
よく読んでいただければ(僕自身、さっと見ただけだが)、この論考が極めて貴重でかつ本質を突いていることが理解いただけると思う。

 

要は、住民に近い立場にある自治体の財源をできるだけ住民から遠い府のレベルに吸い上げ、社会保障関係は財源を奪われた基礎自治体に押しつけて、府のレベルに吸収した財源を用いて、巨大資本が、その場限りの宴(巨大プロジェクト)を催すための無題遣いに充てるシステムを構築しようというのが、大坂都構想の本質である。

 

東京都を含む関東一円の戦略特区構想(これも住民排除の巨大企業のための宴をトップダウンで催す仕組みだ)の大阪版が大坂都構想だったようである。

 

TPPを先取りして、巨大資本に対するオモテナシの支度は、どんどん進んでいる。
東京オリンピックも、リニアもそうだが、事業本体に意味があるのではない。
事業をもてはやして、場を盛り上げて、その場限りで、巨大資本をオモテナシすることに、昨今イベントの本質がある(リニア開通予定時にはリニアに不可欠な超伝導状態を作るための液体ヘリウムが入手できなくなりそうだという決定的な欠陥があるが宴騒ぎがしたいだけの連中にはどうでもいいことである)。
このまま行けば、東京オリンピック頃(様々な条件を踏まえると、その頃、オリンピック自体が開催できる状態にあるかははなはだ疑問)の日本は凄惨な様相を呈することになる。

僅差とはいえ、大坂都構想を否決した大阪市民に敬意を表したい。

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追記 今後も、各地で同様の試みは繰り返されることと思われる。
大前弁護士は学習会の講師に最適に見える。
追記2
インテリ迫害。
IWJ 藤井聡京都大学教授インタビュー 大阪都構想「初期費用600億円 効果1億円」

藤井聡教授を初めとする大学人の排除は、橋下氏がやろうとしていたことがおよそ理屈に合わないことを彼らが明らかにしてしまうからだ。理屈抜きに罵倒して排除する手法を用いる。
こうしたインテリ・知識層の嫌悪・排除は、橋下氏だけでなく、ナチズムや文化大革命もポルポトも、そして、日本の左翼政党にも根強く存在する。
不合理な教条に疑問を呈する存在自体が邪魔なのである。
そして、権力と闘うはずの弁護士層の悲惨な没落(多少なりとも市民運動をされている方であれば、周知であろう)を生んだの要因の一部は日本左翼政党に根強い、インテリ嫌悪感情に根ざしている。

2015年5月18日 (月)

TPP阻止国民会議 TPAに関する事務局長見解

取り急ぎ、ご紹介します。

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                    2015年5月16日
TPA法案の今後について
                           TPP阻止国民会議
事務局長 首藤信彦

当初、TPP反対の市民団体やNGOなどが考えていたシナリオは、まず上院で採決にむけて審議が始まり、と同時に民主党側から多数の修正動議などが出されて紛糾するが、結果的に早期に上院を通過して、下院に送られ、そこで激しい議論と議事妨害(フィリバスター)で審議が延々と遅滞し、迫り来る大統領選の余波を受けてTPA(ファーストトラック)法案の成立が困難となる。。。というものだった。
ところが今週火曜(5月12日)に上院で採決への審議を始める動議の投票で、なんと賛成票が必要とされる60票に届かず、上院での審議がスタートしないという珍事が発生した。この展開にはオバマ大統領や推進派どころか、反対派も驚愕した。この推進・反対派のせめぎ合いは本質的な対立内容の審議ではなく、法案提出の形態(パッケージ化)をめぐっての議運技術上の問題であるから(以下に状況解説)、大統領が直接反対派/慎重派の説得に乗り出して、少なくとも審議には入ることでは合意をみた。基本的に政治家は「審議拒否」と非難されると立場が苦しいものである。
しかし、これによって、審議開始は一週間遅れの5月19日(火曜)となった。この一週間一週間の遅れがTPA法成立ひいてはTPP合意に致命的な影響を与えることになるだろう。
 以下にこの間の顛末およびワシントンの諸団体からの情報を元に、TPA法の今後の帰趨について、現時点での理解をもとに解説したい。

ホワイトハウス・産業界など推進派の強烈なロビー活動にもかかわらず、TPA法案は議会で障害に乗り上げた状態が続いている。TPA法案の成立はここまでの数週間よりもさらに不確実なものになった。法案審議を進めるための手続きが5月12日上院での投票によって否定され、ワシントン中に衝撃波が広がった。同時に、アメリカ議会は今後、厳格な通貨操作禁止条項(罰則規定を含む)を持たないTPPを成立させることはないという強いメッセージが周囲に伝わった。
民主共和の上院指導部はTPA法案審議を予定通り進めようという合意に達しているが、予期せぬ遅滞そして上院における民主党議員の前例のない造反は、いまや下院におけるTPA反対派に一層の油をそそぐことになった。下院では現時点でもTPA法案成立には依然として12人程度足りない。
かくして、以前に予定された5月26日-28日のTPP閣僚会合前に、議会がTPAを成立させることは不可能である。
さらに付け加えれば、そもそも上院においてすら、5月25日より6月1日までの(上下院)一週間の休暇の始まる前に、審議を終了させることはきわめて困難である。すべては6月1日に選挙区から戻ってきた議員が議会に姿を現してからとなろう。
このように当初5月末と予定されていたTPA法案の成立が、一週間また一週間と遅れてくることが、今やこのTPP/TPA問題が2016年次期大統領選挙のテーマとして浮上している状況では、TPA法案を早期に成立させることを一層難しくしている。

12日の上院での審議手続き上の失敗によって、アメリカ上院自体が、上院においてすらTPA反対および通貨操作禁止条項への固執の高いレベルを暴露してしまった。このことは事態をそばで見ている観察者にもショックを与えたほどだ。
そもそも、TPA推進者がまず上院にこの法案を送った理由は、この法案が上院を簡単にそして大差をもって可決成立し、そのことが、現在でも法案成立の見通しが立たない下院におけるTPA法案成立に弾みをつけることになると期待したからである。
そうした戦術に頓挫しただけでなく、このことによって逆に、オバマ大統領のTPPアジェンダは、自分が所属する与党民主党の議事妨害(フィリバスター)によって苦しめられ、大統領自らが乗り出しての民主党議員説得がまったく効果がなかった、すなわちオバマ大統領のリーダーシップの欠如を明らかにした。大統領が直接談判しても民主党上院議員で心変わりして法案審議に協力したのはたった一人だけというありさまだった。この結果、TPA法案審議は審議開始に必要な60票に達せず(賛成52-反対45)審議開始にいたらなかったのである
12日のTPA法案脱線にはその背後に二つの問題がある。ひとつは、上院では、貿易協定全般そして何よりもTPPに関して、通貨操作禁止の厳格なルールを設けるべきだと考える強硬派が大多数だということである。多数野党の共和党リーダーのミッチ・マコーネル上院議員は通貨操作問題を含む関税法案からTPA法案を切り離したい意向だった。それは通貨操作禁止に反対ではなく、審議運営上の方策だ。一方で、民主党リーダーのハリー・リード上院議員はTPAから通貨操作問題を切り離すことは受け入れないと主張。結果、ホワイトハウス側の執拗なロビー活動にもかかわらず、上院の民主党議員はリード上院議員の側についた。
もう一つの問題は、この6月1日には期限切れとなる緊急性の高い法案、たとえばもし失効すれば数万人の雇用喪失につながる高速道路建設への資金供給法案などの審議の前に、貿易法案などを審議すべきだという、それなりに筋の通った主張だ。

ワイデン上院議員は民主党側のTPA法案共同提出者であったが、リード上院議員とともに、TPA法案審議開始に反対票を投じた。なぜなら、彼は、他の上院における緊急度の高い法案を優先し、貿易の不利益として転職せざるをえない労働者への支援(TAA)、通貨操作問題を含めた関税制度の強化、アフリカ諸国への非互恵的市場アクセスの改変などを含む貿易関連法案の一括提出でなければ、TPA審議に応じるべきでないと確信するからである。
一方、共和党指導部側はこのような法案とパッケージ化させるべきでないと考える。その理由は第一に、ほとんどの共和党議員は貿易協定の結果によって職を失う労働者への包括支援策(TAA)に反対だからである。このような形で上院で法案を通してしまうと、ただでさえ下院においてはホワイトハウス側は法案成立にすでに十数名も欠けている状況において、さらに今度は、共和党側から法案にNOを言う議員を出したくないからである。
第二の理由は、通貨操作禁止の問題は、ホワイトハウス側はそれをポイゾンピル(毒薬)と宣伝し、そのような通貨操作禁止条項つきのTPP協提案を出せば、協定にはサインしない国もでてきてTPP自体も成立しなくなるとほとんどの上院議員は信じ込まされているからだ。しかし、TPAを支持してくれる民主党議員の一部も、強固な通貨操作禁止条項なしのTPP協定には最終的に反対するに違いない。
TPAの審議が上院で始まれば、それは激しい熱気をはらんだ論争に満ちたものになり、議場で数多くの修正要求が出されることになる。これによって、少なくとも最初の上院法案にさらに何らかの修正が幾つかつくことになる。そうすると、法案が上下両院で通過するには、今度は下院での法案も同じ修正案を採用するか、「協議委員会」での統一化が図られることになる。特に、より厳格な通貨操作禁止条項を要請する修正案は必ず議場で再登場し、上下両院でこの問題に関して広範な両党共通合意があることを考慮すると、おそらくは上院の議場で通過することになろう。
現時点では、上院での審議状況に注目が集まっている以上、下院の共和党指導層はこの問題が下院で審議を開始することなく、まず上院でTPA法案が採決されるまで、待つ意思であることを公言している。下院の面子としても、そういうことになろう。
となると、昨日の上院での票決を考えると、上院での採決までにようする時間を考えると、下院では6月末まではTPA法案の審議に入らないことを意味する。

本来、アメリカの政治システムにおいては、TPAのような財源法案関係は、まず下院で審議をスタートしなければならない。下院の指導層が、このTPA法案にかぎっては、手をこまねいて上院での審議を見守らなければならないということ自体、議会運営上深刻なトラブルなのだ。上院でこの法案が上程され、さらに議場で票決にかけられるということは、下院での通過が極めて絶望的で通常の議会運営手続きが放棄されることを意味するといっても過言ではない。さらに、上院で最終的に成立した法案は、当初案より確実に多くの修正が付随し、それらは今度は下院にては受け入れがたいものとなる。
可能性は乏しいが、逆に下院が意を決して、同様の法案を独自に立ち上げた場合、下院案は上院案とは異なったものとなり、両法案の統合化が図られ、上下両院でそれぞれ票決にかけられ、さらに遅延と脱線の可能性を増大する。

下院における票読みは、あれほど激しくホワイトハウスがロビー活動したにもかかわらず、最後に推計されたものからあまり変化がない。それは下院の共和党指導層とホワイトハウス側(両者はTPA賛成票を確保するために協働しているらしい)の厳しい意見交換でも裏打ちされている。下院の共和党議員だけでTPA通過に十分な票があるのかを聞かれたジョン・ベイナー下院議長は「オバマ大統領自身がやるべきことをしっかりやれ」と何度も繰り返し、さらに「ヒラリー・クリントン議員もオバマ大統領が民主党議員を説得するのを支援すべきだ」とさえ言い放った。これに対して、ホワイトハウス側は共和党指導層のコメントは「暴言だ」とコメントした。法案を救うために票を必要としている指導者の言うべき意見じゃないだろう。

先週、オレゴン州ポートランドのナイキ本社で行われたオバマ大統領のTPPに関する演説は、民主党支持層をTPA支持に向かわせるためのものだったが、実際はまったく裏目に出た。この注目された演説であったが、オバマ大統領が雇用の海外流出と極端な低賃金生産のシンボルとしてナイキ社を選んだということを聞かされた大統領支持基盤側のショックと不満は大きく、ほとんどの報道がそういた点にハイライトを当てた。オバマ大統領はオレゴン州の各地で多くの抗議を受け、かれの同僚議員でもあるエリザベス・ウオレン上院議員への容赦ない激しい言葉たとえば「まったく間違っている」「くだらないでっちあげ」のような表現が、民主党内の、本来彼が最も納得させなければならない層の不満を一層拡大させた。

重要なことは、このような状況はアメリカ国内だけでなく、TPP参加国でも報道され、特に政策に影響を与えるエリート層は、ABCやCNNのニュースのみならず、アメリカ議会のインターネット中継などをモニターして、状況をより正確にまた敏感に把握していると考えられることである。このことが、最近、各国が「TPA法案が成立するまでは、自国の譲歩案を示せない」と慎重姿勢を明確にしはじめたことと関係があると思う。
そう考えると、12日の上院での審議開始否決がTPAいやTPPの今後に与えた影響はきわめて大きい。5月19日で上院スタートなる審議がはたしていつ終って、下院の出番になるのか、大統領選の前哨戦キャンペーンが次第に激化していくなかで、TPA法案審議の一週間一週間がTPPの運命を決定することになろう。     

 以上

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2015年5月17日 (日)

国民日記 「台湾の輸入規制が許せない本当の理由」

「日本産品に対する台湾政府の措置は、科学的根拠を欠き、遺憾である。」
管官房長官の談話に日本国民としても同感である。


以下、理由を記す。


第1に、有害であるという科学的証拠は、輸入を規制する側が、立証する責任を負うというのが、WTOによって確立された国際ルールである(SPS)。
これは、輸入産品の「安全性」が、しばしば自由貿易を妨げる口実に使われてきたという歴史に学んだ貴重な人類の叡智である。
多少の生命や健康を犠牲にしても、「自由貿易」が大事であるというのが、長年の苦闘の末、現代人類のたどり着いた地平である。
しかも、ただ、科学的に立証すればよいというものではない。
輸入を規制する側は、誰もが「科学的に十分な証拠」と認めるほどに、まぎれもなくグーの音も出ないほどに、明らかに立証しなければならないのである。
だから、林農相も「(WTO違反で台湾を)訴えてやる」と強調されたのである。

参考 農林水産省 「諸外国・地域の規制措置(平成27年4月24日現在)」


第2に、台湾は、米国とか、EUと異なり、小国である。
「八紘一宇」の精神で世界の中心で輝くニッポンの利益を損なうこと自体が、非科学の極みであって、許せない。
場合によっては、「重要影響事態」、「存立危機事態」には、同盟国の関係で、当てはまらないが、少なくとも「武力攻撃予測事態」に当てはめようとすれば、当てはめられることを忘れてもらっては困る。
福島県や、その他の県の産品を世界各国が一斉に輸入規制したとき、わが国は、米国やEUを初めとする国々には文句を言わず、汚染水が再びもれたことを口実にして韓国が輸入規制を強化したときに限って、断固、抗議する姿勢を示したのは、韓国が日本の直近にあり、多数の日本人が訪れる上、日本より小国だからである(近隣にあっても大国である中国には、こじれると、またレアアースの輸出を停止されると困るから、抗議しないことにしている)。


こちらが科学的証拠を示す必要はないが、科学的証拠はありあまるほどあるので、敢えて示す。
第1に、ニッポンの最高責任者である総理様が「汚染水は完全にブロックされ、コントロールされている」と証言している。総理様がウソをつくことはあり得ない。
これが、わが国産品が安全であることの何よりの科学的な証拠である。


第2に、仮に有害であるとすれば、国民を保護するべき国家が、これを規制しないはずがない。しかし、わが国は、自由に流通を認めている。これがセカンドベストの科学的証拠である。現実に、放射能で死者が出たとする報道は一つもない。
福島原発事故の放射能レベルが科学的に有害でないことは、権威ある岩波書店から発行された文献でも、国政経済法の権威である先生が科学的証拠に基づくから、世界各国が日本産品の輸入を受け入れていると、文献の冒頭で強調しているほどであることからも重ねて明らかである。


第3に、今回の台湾の措置は、水産物だけではなく、お茶等の農産品に関しても放射能検査を義務づけるというが、あたかも空気汚染を疑うかのようである。
しかし、わが国においては空気こそ完全にブロックされて、アンダーコントロール下にある。汚染水以上に空気こそが、完全に総理様の支配下にあることは、世界が認めるところである。

重ねて参考 農林水産省 「諸外国・地域の規制措置(平成27年4月24日現在)」


第4に、高い放射能を検出した測定器に限って、一斉に故障している事実が、この4月にも判明したばかりである。正常な機器は決して異常な放射能数値を示さないのである。


最後に再び、食品の有害性に関するWTOのルールに戻るが、わが国の産品が放射能に汚染され有害であることの十分な科学的証拠を示す責任は、台湾政府にある(念のために断っておくが、大国パワーを発揮する、米国政府や、中国政府、EUにはないし、小国であっても、あまり日本人が行かない遠方の国々は問題ではない)。


しかるに、放射能の有害性レベルなど容易に判明しないのである。
それが証拠に、わが国では福島県の小児の甲状腺ガンの疫学調査を、少なくとも何十年という単位で行うこととしている。科学的証拠を得るには、何十年もかかるということだ。
WTOルールの下では、予防的なアプローチとして不十分な科学的証拠に基づいて、万一の場合に備えて取ることができるのは、たかだか2年程度の暫定的な輸入規制である。
したがって、WTOルールにしたがえば、何十年もかけないと判明しない放射能の有害性について、輸入制限をとることは原理的に不可能である。


敢えて重ねて言えば、台湾政府の主張にいささかでも科学的根拠があるとすれば、わが国は、国民をまるごと疫学調査のために供しているに等しく、かつての悪の帝国ソ連がチェルノブイリで行ったより、はるかに非人道的な犯罪行為を犯していることになる。
しかし、総理様がそのような方ではないことは、国民みなが知っている。
したがって、台湾は直ちに輸入制限を解除すべきである。


(平成27年5月12日 日本国民日記より)


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2015年5月16日 (土)

一億一心 世界の中心で輝くニッポンを取り戻す

2015年度の株式配当総額が史上最高額を更新し初の10兆円を超える見通しとなりました。これは実に日本国の税収の2割を超える金額を株主の方々に還元できたことを意味し、いかにニッポンの株式市場が投資家の方々にとって魅力的なものに成長したかを示してあまりあるものであります。
これもすべて国民の皆様のご協力の賜物と感謝いたします。
3軒に1軒の貯金がない世帯の方々、2軒に1軒の貧困ラインにある母子家庭の皆様、そして6人に1人の貧困ラインにある子どもたちまで、あまねく皆様が、私の超異次元金融緩和を支持してくださり、円安によって生じる生活必需品のおびただしい値上がりを快く受け入れ、また消費税増税による法人税減税をも快く受け入れて、配当総額の押し上げに協力してくださいました。
また国民すべての財産である年金積立金を快く市場に投入していただいたことも忘れるわけにはいきません。
まさに世界一ビジネスがしやすいニッポンを作ろうじゃないかと国民一丸となり、心を合わせた賜物であります。
年金積立金の運用基準の変更による配当押し上げ効果は今期限りです。
安定した経済成長を達成するという目標はまもなく達成されます。あらゆる国民の資産を市場に投入すべく、引き続き1億1心、火の玉となって外国株主の方をおもてなしし、世界の中心で輝くニッポンを取り戻すため邁進していこうではありませんか。
(日本経済新聞一面トップ記事『株式配当 初の10兆円 今年度』に関する首相閑邸談話)

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2015年5月15日 (金)

殉職者1800人

皆さん、お仕事は安全だと勘違いしていませんか。2011年、殉職された方は2338人。同じ年の自衛隊の殉職者は9人でした。1961年には民間の殉職者は6000人を超えていました。ざっくり見て自衛隊創設以来、民間の殉職者は20万人です。皆さん、自衛隊と変わらぬほど会社に尽くしておられます。今でも毎年1000人に及ぶ民間の方々が会社に命を捧げておられます。
皆さんは自衛隊と同じように、会社、つまり株主の利益のために命をかけてくださっているのです。株主の三人に一人は外国人です。株式取引の3分の2は外国人が行っています。もちろん同盟国の株主もたくさんおられます。
殉職の精神こそ明治以来の近代日本が庶民まであまねく行き渡らせた醇風美俗であり、私が目指す世界一ビジネスがしやすいニッポンを実現するために、なくてはならないこの国の貴重な資源です。
ぜひとも皆さんの殉職の精神を私が世界一ビジネスがしやすいニッポンを実現するために、これまで以上に精一杯発揮していただくようお訴えさせていただく次第です。


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2015年5月14日 (木)

為替操作禁止法案は国際法に違反する

TPA法(Bipartisan Congressional Trade Priorities and Accountability Act of 2015。2015年超党派議会貿易重点説明責任法)の情勢が揺れ動いている。
審議入り拒否の、法的に正確な説明は、例によって『方谷先生に学ぶ』のブログ5月13日付で詳細に行われている。
忠犬ポチ宣言で、フィリバスター(議事妨害との和訳は間違い。表現の自由から派生した議員の法的権利であるとの指摘があります)にはなりませんと日本国総理が宣言した、TPA案審議に当たってフィリバスターを禁止する案が否決されたということのようで、これまた忠犬ポチらしい演説をしたものだと思う。

それにしてもマスコミは、貿易促進権限(Trade Promotion Authority)等という言葉は、どこにも出てこない法案を、いつまでも”貿易促進権限法”などと呼ぶのはやめにしてもらいたい。
USTR自体が、今回の法案は貿易促進権限=ファストトラックとは異なるのだと説明しているはず。
マスコミは、「方谷先生に学ぶ」のブログを読んでちゃんと勉強してから発信するように。


一転、フィルバスター禁止が可決されそうである。

<米上院>TPA審議入り合意…否決から一転、妥協
毎日新聞 5月14日(木)10時13分配信

【ダラス(テキサス州)清水憲司】米議会上院の与野党幹部は13日、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉前進に不可欠な、大統領に通商交渉権限を一任する大統領貿易促進権限(TPA)法案について、審議入りすることで合意した。前日に審議入りに必要な動議を否決したばかりだが、一転して妥協が成立した。14日に動議の採決を行い、正式に審議入りする見通しだ。

共和党上院トップのマコネル院内総務が発表した。前日の動議では、TPA法案とともに、どの法案を一括審議するかをめぐり両党が対立。民主党の大勢が反対に回り、審議入りに必要な60票(議席数100)を確保できなかった。

13日の与野党協議では、民主党がTPA法案との一括審議を求めていた他の法案について、TPA法案とは別々に審議することで折り合った。民主党が求めた法案は、TPP交渉参加国の為替政策を制約する条項を含んでおり、一括審議だとTPA法案とともに否決される可能性や、可決された場合には各国がTPPに慎重になり、交渉が頓挫する可能性もあった。米メディアは「(前日の否決が)オバマ大統領の優先政策を阻害したと受け止められ、民主党が軟化した」との見方を伝えた。

14日に動議が可決されれば、TPA法案の正式な審議が始まるが、修正案も提出される見通しで、月内に上院が可決するかは微妙な情勢だ。また、下院は本会議審議が始まっておらず、月内の法案可決は厳しい情勢だ。


一括審議を求めていた為替操作禁止法を別の案件として審議することで折り合ったということのようである。


日本では正確に報道されていないが、今回の貿易重点説明責任法案には、ちゃんと為替操作禁止が盛り込まれている。


 2015年版
 2章(b)(11) 通貨(2014年TPA法案と同じ)
通貨政策に関する米国の原則的な交渉目的は、米国との貿易交渉の相手国が、効果的な国際収支調整を避けるため、または交渉している相手国に対し不公平な競 争上の優位を得るための為替操作を、協力メカニズム、強制力のある規制、報告、監視、透明性や適切と思われる他の手段を用いて、防ぐこと。


2002年TPA(超党派大統領貿易促進権限法)と比べれば、
2002年TPA
SEC. 2102(c)(12) 通貨政策
著しくかつ予想外の通貨変動の貿易に対する影響を調査し、ある外国の政府が、国際貿易において有利な競争を促進するために、一種の通貨操作をやったかどうかを吟味する協議機関を協定当事者間に設立することを求める。


よほど踏み込んだ貿易重点にされていることがわかるだろう。
だから、マスコミはごまかさないように、為替操作禁止条項は、すでに2015年TPA法に存在している。
「強制力ある規制」、「監視」、「透明性や適切思われる他の手段を用いて、防ぐこと」としてちゃんと明記されているのである。
これだけで、忠犬ポチを震え上がらせる(手なづける)には十分である。


もめているのは、これでも不十分であるとして、米国が不公正だと認めた国に対しては、対抗措置として、米国の判断で、一方的に関税を引き上げる相殺関税などの一方的強制措置を執ることができるようにすべきだという主張についてである。
米国の一方的な報復関税に悩まされた国は、日米半導体事件(1989年)、日米自動車戦争(1995年)当時の日本だけではない。
世界各国が米国の、制裁と称する一方的な報復関税に悩まされた。
このためもあって、世界貿易機関は、国際法の分野としてはあまりにも極端に高度に司法化された強制的な紛争解決制度を設ける代わりに、一国の判断で経済制裁をするようなことはないようにした。
不公正貿易か否かの認定については、WTOの紛争解決制度による認定によらなければならないとしたのである。
だから、本来、WTOの紛争解決制度によらず、一方的な判断で報復関税を行うとすれば、GATTないしGATS等に違反することになるものと思われる。
しかし、国内法と国際法が地続きのジャイアン国には自国のなすことには、国際法違反という概念自体が存在しないように見える。


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TPP 『永遠の忠犬ポチ』の偉大な誤算 明日、反撃ののろしがあがる

下院はともかく上院は、スムーズに通過するとのもっぱらの観測であった米国上院のTPA法案(2015年超党派貿易重点説明責任法案)の雲行きがにわかに怪しくなってきた。

 

TPP、月内合意は困難に 米上院、法案審議見送り
中日新聞2015年5月13日 夕刊

 【ワシントン=斉場保伸】米議会上院は十二日、環太平洋連携協定(TPP)交渉妥結に不可欠とされる大統領貿易促進権限(TPA)法案の審議開始に必要な動議を否決した。上院では他の重要法案の審議がめじろ押しとなっており、月内のTPA法案可決は極めて困難となった。これにより、TPP交渉の大筋合意は六月以降にずれ込むとの見通しが濃厚となった。

 審議開始には上院の定数百議席のうち六十票の賛成票が必要だったが、賛成五十二票、反対四十五票で否決された。

 TPPはオバマ政権の進める重要政策。しかし、政権与党の民主党でTPPの雇用への悪影響を懸念する声が根強く、必要な票数を集めることができなかった。

 否決を受けてオバマ大統領は、民主党幹部と今後の成立に向けた対応を協議した。上院民主党内には、他国による為替操作を禁止する施策もセットで協議するよう求める声が強い。下院ではさらに反対勢力が強く、議会審議の先行きは不透明さを増した。

 TPPの交渉に参加する十二カ国は米領グアムで十五~二十五日に首席交渉官会合を開催。さらに閣僚会合を開いて、大筋合意に持ち込む道筋を検討している。しかし、甘利明TPP担当相は「TPAが成立しないと日本の最終的な態度は表明できない」との考えを示しており、TPAを持たない米政府との交渉には各国が二の足を踏んでいる。

 ◆TPA=Trade Promotion Authority

 <大統領貿易促進権限(TPA)法案> 米議会が政府に通商交渉を一任する措置。米合衆国憲法では通商権限は政府でなく議会にあるため、TPAがないと政府は他国と通商協定に合意しても議会に再交渉を求められる可能性がある。TPAが認められると議会は通商協定を修正できず、賛否だけを決める。

 

間違いの大きい報道ではあるが、全体としては正しい。
間違う部分は、日本のマスコミ全体が一致して間違えることにしているらしい。
現地にいて、間違いを拡散するのだから、マスコミはたちが悪い。
さる大戦の時と同じで、一社が出し抜くとバッシングの嵐に見舞われるが、みんなで間違える分にはおとがめなしなのである。

 

それは、さておき、5月下旬のTPP閣僚会議で大筋合意とのシナリオが、よほどのことがない限り、完全に狂ったことだけは間違いないだろう。

 

上下院合同会議での『永遠の忠犬ポチ』宣言が内定してからというもの、沖縄に対する対応は、力尽くでねじ伏せ、屈服させる植民地統治まがいの武断政治がまかり通り、やれ『八紘一宇』だ、『我が軍』だと勇ましい発言が相次ぎ、戦争法制一括法案を夏には成立させると暴走するかと思えば、オスプレイを横田に配備するは、拉致交渉決裂を導く総連弾圧事件を起こすやらで、最近は台湾との関係すら怪しくなって、『マスターベーション・ジャイアン(つまりは、ただのスネ夫)』は、アジアでの孤立をますます深めて、アジアの不安定要因になっている。

 

隷属することによって、専制を確立する構造は、白井聡氏が『永続敗戦論』で提示した構造そのものである。
さすがの、白井氏も自身の予言が当たりすぎて、びっくりしているのではなかろうか。

 

さて、TPPである。
『永遠の忠犬ポチ』は、5月下旬の閣僚会議での大筋合意の厳命を受け、まず、農協改革で屈服して本来、殊勲甲でたたえられるべき萬歳会長を晴天の霹靂、突然辞任させ、TPP反対運動の全中の活動をとりあえず6月まで、機能停止にした。なぜか全中も機能停止を受け入れているように見えるのが不可思議である。
そして、日米首脳共同会見に宣言された「大きな前進」は日本の「全面降伏」、水面下での日米妥結であった。
栄えある『永遠の忠犬ポチ』演説(皮肉なことに昭和天皇誕生日)を踏まえて、5月1日には、TPP交渉参加以来初めての、市民も参加できるという触れ込みの政府説明会をマスコミに「フルオープン」(大体、官僚が使うことばとも思えないが、政府対策本部の文書には「フルオープン」と書いてある)で開催することを決定、一度限りの説明会でアリバイだけ作ることにした。
続いて、5月5日には、TPP草案の「テキスト」を国会議員に閲覧させると宣言した。
これもアリバイ工作である。
で、誤算があったことが帝国から伝わると、早々と5月8日には、国会議員にはTPP情報を一切出さないという従来の方針に戻ったのである。

 

さすがに、明日5月15日の政府説明会は、撤回できない。
概要資料で示された内容は、欠陥だらけである。
是非とも、第2回、第3回のフルオープンの政府説明会を続けてもらいたい。
Tokyoだけでなく、地方創生と言うのだから、地方でも開け\(*`∧´)/
誤算を固塗するために400名の市民枠を、抽選名目で、政府動員国民にすり替える可能性はある。あるいは、マスコミ「フルオープン」を宣言した最初から、その段取りであった可能性も否定できない。
ので、念のため言っておいてみよう。

 

さて、TPPであるが、追い打ちをかける狼煙が明日5月15日に上がる(予定である)。
TPP交渉差止・違憲訴訟である
誤解される向きもあるようなので、念のために確認しておくが、これは『プロパガンダ』訴訟でも、政治目的の裁判でもない。
70頁を超える訴状で展開された議論は、正真正銘の憲法論であり、勝つために提訴した訴訟である。
提訴後には、ホームページに掲載されると思われる訴状を読んでいただければ、わかっていただけると思うが、TPPは国政全般にわたってグローバル企業が内政干渉するための法体系である。
条約であるから法律に優越する、したがって、既存の法律で抵触するものは改廃しなければならないし、将来にわたってTPP体系に反する法律は当然のことながら、禁止される。
その範囲が、全ての経済活動に及ぶがゆえに、日本国憲法体系に変えて、TPP法体系を国政の根幹に据えることになるのである。
基本的人権尊重原則に代わって、グローバル企業の利益の尊重が国家原則になり、国民主権の内実がグローバル企業主権にすり替えられるのである。

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追記
昨晩は、めずらしくまともなTPPに対する見方を開陳するコメンテーターを見た。 食の安全が脅かされること、TPPが発効すると、TPPに違反する立法はできなくなるので、国会も国民の安全や生命、健康を守るという本来の機能が果たせなくなること、グローバルスタンダードというのは国民の関与がない国際舞台で基準が決まることなので一国の国会は関与できず、グローバルスタンダードと民主主義は相性が悪いこと。 当たり前の話であるが、今やこの国では、子どもでもわかるような当たり前のことを言うと、バッシングされるか、メディアから追放される有様である。
敬意を表する。

2015年5月12日 (火)

TPP 政府調達

九州大学磯田宏氏のメールで引用されていた同氏作成にかかる政府調達のPDFを画像化して以下に貼り付ける(なお、昨日の記事にも画像として貼り付けておいた)。

Tyoutatsu_2  

磯田氏は、黄色部分のとくに注意してもらいたいとの趣旨であると思われるが、地方自治体(地方政府と呼ばれる)に限らず、全体に外国資本に開放すべき水準となる金額が大幅に低下することがわかる。
確かに日本政府が主張するとおり、日本の政府調達は、諸外国と比べても開放的になっている。そのことは、WTOの政府調達協定が示す水準と日本政府の自主的措置の水準が全く合致しているか、場合によっては日本政府の示した水準がさらにこれを下回っていることからわかる。
しかし、TPPは、政府調達を開放すべき水準をさらに大幅に引き下げる。
物品の665万円、建設サービス関連665万円、建設を除くサービス665万円という水準では、ほぼ全ての調達が外国資本に開放されるとみるべきであろう。
このことは、とうの昔に「TPP亡国論」で、中野剛志氏が指摘していたことである。
磯田氏は、本当にそれでいいのか改めて問うているが、そもそも地方政府自体が議論の主体になろうとしていないように見える。


地方自治体が担う各種のサービスが指定管理者制度も含め次々と民間委託されているが、今のところ矛盾は目立つ形では現れていない。
これはTPP前の猶予に過ぎないことをどれほど自治体担当者が自覚しているのか、はなはだ心許ない。
大阪市が予定している、住民の生命に関わる水道の民営化など、とんでもない。
成功した例は、途上国だけでなく、パリも含めて皆無のはずである。

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2015年5月11日 (月)

TPP政府説明資料の問題点 九州大学磯田宏氏のメールから

およそ、TPPは統治機構をトップダウンに組み替えようとする仕組みである。
資本の合理的期待を阻害する、非効率な民主主義とか、権力分立とかが、もう邪魔なのである。
権力分立を持たない国家は憲法を持たないと言われようが、外国投資家にとっては、知ったことではない。

外国投資家好みに塗り替えられた、日本政府は、主権者である国民に対する説明会は1回開けば、それでおしまいという腹で15日の政府説明会の日程を入れている(はず)。
しかも、Tokyoで開けば、おしまいという政府の発想は、外国資本好みの発想である。

1回限りの市民向け説明会には、議員向けテキスト公開と同じ誤算があったと想像される。
どうせ誤算ついでなんだから、地方でも説明会を開きなさい\(*`∧´)/

いつも精確な情報を提供していただいてる、九州大学の磯田宏氏からのメールを了解を得て、以下、貼り付けます。
よんどころない事情で出席でないとのことで、参加者に是非、問いただしてほしいとのことです。


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(以下、引用)--------------------

 5月6日付
農業新聞3面記事で,51日にTPP政府対策本部が公表した資料を紹介しつつ,「15日の発の一般向け説明下などでこの資料を使って情報提供を行う考え」と書かれています。しかし(既にご存じと思いますが)以下サイトにある当該「TPPの概要」は,同記事中で政府対策本部が「かなり踏み込んで既述している。一般に公表する内容としては(交渉参加国で)一番詳しい」と自画自賛しているのとは裏腹に,①極めて貧しく,さらに②本年325日リークの「投資章テキスト」(2015120日時点)や,過去の(2014年)USTRSPS報告書日本部分に記載されている事項(2013412日日米事前合意によって設置された二国間並行交渉のうち「非関税措置」で「課題」として挙げられていたポストハーベスト農薬問題を,2013年秋に日本政府が基本的に解決した,という趣旨)などを踏まえると,国民を欺くものになっていないかとさえ懸念せざるを得ない内容です。

 

 

同記事で「説明資料,A4判6ページ分」というのは,TPP政府対策本部「最新のTPP交渉の概要を掲載しました」と称する以下のうちの,2番目です。

(1)「資料1」

(2)「資料2」 (「TPPの概要」51日版)

 

 したがって,私の気がついた限りで,以下について,15日政府説明参加者の方に,質問することをご検討いただければ幸いです。

 なお,お一人の質問可能時間・項目はかなり制約されることが予想されますので,参加可能性のある各種団体・個人の方々への拡散を希望致します。

 

 1.上記(2)「TPPの概要」2頁の「SPS」に「食の安全に関するわが国の制度の変更を求められるような議論は行われていない」とあるが,本当か?仮に12ヵ国全体交渉ではそうかも知れないが,日米二国間並行交渉「非関税措置」でも「議論は行われていない」し,何らの対応(=アメリカ要求の受入)もしてないと断言できるのか?アメリカ政府は公式文書で,事実そのような日本政府の対応が「公表」されたことを記述している。以下,USTR2014年SPS報告書を参照。ただしこの質問に,政府は国会等で「そのような事実はない。USTR報告書の記載は誤り。アメリカ政府にその旨申し入れ,アメリカ政府側も誤りを認めた」旨の答弁をしている。しかしこれは「猿芝居」の台本に対して,アメリカ政府側が(特に議会に自らの「成果」をことさら強調しなくてはならないUSTRが)「勇み足」をしたとの推定も可能である。

 

 USTR2014年SPS報告書  62頁,その(恐らく)外務省訳3435頁に,「2013年まで,日本は収穫前及び収穫後の両方で使用する防かび剤に異なる認可プロセスを維持してきた」,このような「日本の方針は,コーデックスの基準及び堅固な農薬規制制度を有する諸国の間で広く受け入れられている手続に整合していない」とした上で,2013年秋,日本は,防かび剤を含む,農薬(収穫前の使用)及び食品添加物(収穫後の使用)の両方に使用される農業化学物質の審査プロセスの簡素化を発表した」「1回のリスク評価を行うこととしている。審査プロセスは,法律で定める審査に係る時間の大幅な縮減が期待される」としている。

 さらに同報告書は続けて「農薬の最大残留基準値」についても,「2013年以前,当該農薬の主要供給国での申請承認までの間,日本が殺虫剤・防かび剤のインポート・トレランスの申請受付を拒否したことにより」「日本への米国の輸出において混乱のリスクを悪化させた」,「しかし,20135月,日本は,その殺虫剤・防かび剤の最大残留基準値が申請国で設定されているかどうかに関わらず,中核的なリスク評価が完了している場合において,殺虫剤・防かび剤にインポート・トレランスの適用を認めることを公表した。この方針変更に伴い,米国の環境保護庁に登録申請が認められている農薬会社は,同時に日本におけるインポート・トレランスを適用することができるようになっ」たと記述している。

 

注:「インポート・トレランス」とは,国外で新たに使用が認められ,我が国へ輸出する農畜水産物等に使用される農薬等に係る暗流基準値の設定要請のこと。

 

2.同じく政府「TPPの概要」23項の「政府調達」で,「我が国はこの分野では開放が進んでいる国であり,攻めの分野となっている」と,あたかも現在以上の「開放」を求められることはあり得ないかのような説明があるが,現存するP4(環太平洋戦略的経済連携協定,シンガポール,ブルネイ,ニュージーランド,チリ)での政府調達市場開放額に合わせるとしたら,特に地方政府(都道府県,政令指定都市,場合によってはさらに市町村)において,現行より大幅な市場開放をせざるを得なくなる。

試算「TPPに日本が参加した場合に予想される政府調達基準の引き下げ」 )。

Tyoutatsu

 そこで質問は,

 第一に,TPP交渉「政府調達」で,地方政府は対象になっているのか,なっているとすればどのレベルまでか(都道府県,政令指定都市,その他市町村)。

 第二に,政府調達市場開放基準額はどのようなレベルで設定されようとしているのか。

 

3.同じく政府「TPPの概要」5頁「投資」の最後に「なお,保健,安全及び環境後を含む公共の利益を保護する政府の権限に配慮した規定が挿入されている」とし,あたかもこれら政府の権限はISDSの対象外になるから大丈夫であるという印象を与える記述になっている。そこで質問は,

 

 第一に,「無条件で対象外になる」と断言できるのか,断言できるとすれば根拠は何か。

 

 第二に,2015325日にリークされた投資章テキスト(添付)では,(政府はリークテキストについて一切,ノーコメントでしょうが)

Article II.1; DefinitionInvestmentにおいて,「投資」定義に,「政府調達契約(道路,橋梁,運河,ダム,パイプライン等のインフラ建設),政府が管理する天然資源譲許(concession)契約,政府との公共サービス運営契約(発送電,上下水道,電気通信等)を含める」という提案(アメリカ政府によるものとされている)が,カギ括弧(square brackets)に入っている,つまりこのような定義がまだ排除されていないことが示されているが,事実いかん。

②確かにArticle II.15: Investment and Environmental, Heath and other Regulatory Objectivesで,「投資章のいかなる規定も,投資が環境,保健,その他の規制諸目的に対して慎重な方法で行われることを確保するために加盟国が適切と考えるあらゆる措置any measuresを採用,維持,あるいは義務づけることを妨げると解釈してはならない」旨の文言があるが,おなじ条文の中でany measuresの直後にotherwise consistent with this Chapterつまり「その他の点では本章と合致している」限りの,とある。これでは実際上,投資章で外国投資(投資家)に保証・保護されるあらゆる権利・利益を「侵さない」限りでの「公共利益目的の政府措置」しかISDSの対象外にならないということではないのか。

③またAnnex II-B, 3. (b)では,「加盟国が,公衆保健,完全,および環境といった正当な公共福祉諸目的を保護するために設計し適用する被差別的な規制諸行為は,間接収用を構成しない,ただしまれな諸環境における場合を除いては」とある。「まれな諸環境」とは何か。この文言はどうなっているのか。この文言があるなら,その解釈を拡大していけば,この条項自体がどんどん意味をなさなくなっていくのではないか。

投資や越境サービス等の「市場アクセス」について,日本政府は非適合措置(Non Confirming Measures,市場開放をしないネガティブリスト)に,いったい何を挙げているのか。

 

以上,長文で申し訳ありません。もしご同意いただくことができ,かつ時間が許すなら,部分的にでも質問事項に入れていただければ幸いです。その場合,政府側の「回答」等についても共有していただければ幸いです。

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2015年5月 9日 (土)

TPP政府対策本部サイト 5月1日付アップ資料について

市民にも公開される説明会(5月15日)に合わせて、交渉進ちょく状況に関する資料もTPP政府対策本部のサイトにアップするとの報道があった。


「資料1」(PDF)

 「資料2」(PDF)

さっと見た印象。


1)政府資料であるのに、日付の記載がない。
このため、これが今回、公表された資料かどうか、確信が持てない。
政府作成文書に日付(少なくとも年月)の記載がないのは極めて異例のことと思われる。


2)そもそもTPP政府対策本部の構成が不明で、誰が構成員なのか不明である。


3)政府分類によれば、21分野であるのに、文章説明である「資料2」には、18項目しか説明文がない。
(なお、章立ては29になると言われている)


4)説明が抜けているのは、「資料1」の一覧表中、
①(18)法的・制度的事項(「資料1」によれば、「協定全体に関わる事項を定める」、
②(19)紛争解決 「資料1」によれば、締約国間の紛争を解決する際の手続について定める。
③(20)協力・キャパシティビルディング 「資料1」によれば、「協定の合意事項を履行するための国内体制が不十分な国に、技術支援や人材育成を行うことについて定める」
④(21)分野横断的事項 「資料1」によれば、規制の整合性(規制の画一性)、競争力・ビジネス円滑化、開発についての説明がない。


5)制度的事項の説明文の欠落は、重要である。
この構成は、「資料1」によれば、①前文、②冒頭・一般的定義、③透明性・腐敗防止、④例外、⑤運用・制度、⑥最終規定からなっている。
協定全般の運用や全般に関わる透明性などの重要事項が、いまなお全く明かされないということになる。


ちなみに、医療費を高騰させると言われている、「医療技術に関する透明性と手続の公正」は、この制度的事項の透明性に関わる付属文書である。
この付属文書では、薬価決定に当たって、製薬会社の意見を事前に聴取すること等の他、薬価が市場価格との関係で公正であることを示す検証可能な確実な証拠に基づいて決定されるべきこと、医薬品会社に対して、独立した機関に対する審査請求、再審査請求の手続を保障すること(したがって、薬価決定の権限は、現在の厚生労働大臣から、第三者機関に移行することになる)など、薬価・医療機器の価格高騰を必至とする条項が多く定められている。
なお、米国に限らず、海外の医療費は、一般的に言って、日本より高額である。
薬価等の高騰は、国民を適切な治療から遠ざける(米国の個人破産の原因の一位が医療費の負担であるとされる)。
また、現在でも高齢化によって逼迫している、健康保険財政をさらにいっそう、悪化させる。


海外での盲腸手術の総費用(AIU保険)


医療費は?盲腸で入院して手術した費用(虫垂炎ナビ)
日本は平均7日間の入院で、37.8万円となっています。3割負担では11,3400円となりますね。


6)「規制のコヒーレンス」(拙訳「規制の単一性」)についての説明も存在しない。
政府が分野横断的事項に分類しているように、規制は、モノ・サービス全体に関わる事項であり、すべての経済活動に関する立法、行政、地方自治体等の関与は規制に該当しうる。
経済活動に関わる内政全てといってよいほど包括的な分野を「規制」という観点で包括的に括って、規律する章が、「規制のコヒーレンス」章である。
コヒーレントな波といった(経済学者が好んで使いたがる)物理学におけるコヒーレンス本来の意味からは、「整合性」との政府訳は誤訳であり、「単一性」とする方が本来の語義に忠実である。
したがって、「規制のコヒーレンス」章は国内外を通じて規制の単一化を追求するものと理解される。
この主権国家の機能全般に関わる、極めて広範な分野を規律する事項も、政府説明からは抜け落ちている。


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[otherwise]の解釈に関する5月7日付の記事について、同日付の記事に下記のとおり付加しました。念のため。
「otherwise」について、「その他の点では」と訳せば、一貫性がある訳ができるとの指摘があった。
確かに自然な訳である。
しかし、なお以下の疑問はある。
まず法律用語などで「otherewise」が用いられるときは、「さもなくば」または「本来であれば」との意味で使用される例も少なくないと聞く。
また、だからだと思われるが、京都大学法学院の国際経済法を専攻する学生の訳(何度も繰り返すが、一流の学者が監修をしている)でも、「otherewise」は敢えて訳されていないこと。
さらに、条約のような法的文書では明確性が求められるのであるから、もし「その他の点では」という意味であれば、他の明瞭な表現が可能であるにもかかわらず、敢えて、多義的な「otherewise」が用いられていること。
むしろ、国際経済の分野では米国は、極めて狡猾な方法を用いていることに対する警戒を怠ってはならないと思う。
少なくとも、この「otherwise」の意味を確定するには、交渉過程での解釈合意を知ることが不可欠であるが、交渉過程文書は、TPP発効後4年間は秘匿される秘密保持契約によって極秘にされている。

2015年5月 8日 (金)

【速報】大臣は気楽な商売 議員に対する「テキスト」開示撤回 西村副大臣のあきれる軽さ

(・_・)エッ....?

TPP条文案、開示方針を撤回=米と同じ対応困難―西村内閣府副大臣


(時事通信) 5月8日(金) 10:49:00

 【ロサンゼルス時事】西村康稔内閣府副大臣は7日、米ロサンゼルス市内で記者会見し、交渉が最終局面に入った環太平洋連携協定(TPP)の条文案を国会議員に開示したいとの先の発言を撤回した。

 西村氏は4日、ワシントンでの会見で、米通商代表部(USTR)が守秘義務を負った連邦議会議員にTPP条文案を開示していることを引き合いに、日本でも近く国会議員に条文案を開示する意向を表明。国会と調整する方針を示した。

 西村氏は7日、「日米では(議員の守秘義務などで)制度上の違いがあり、同様の対応はできない」と釈明。その上で「(4日の会見での)伝え方が悪 かったということで反省している」と述べた。一方で、「情報開示についてはどのような対応ができるか引き続き検討したい」と強調した。

 西村氏が独断で打ち出した妥結前の条文案開示方針に対し、日本では米国のような厳しい守秘義務が担保できないことなどから政府内で反対意見が強まり、発言を撤回したとみられる。 

なんという軽さ。

マスコミは、20年前だろうが、30年前だろうが、誤報があれば、徹底してバッシングして、訂正だけではすまずに、紙面を大幅に割いて謝罪し、その上、靴の裏を舐めなければならない。
それを囃して、やんやの喝采をしていたはずの政府の、副大臣は、「反省してます」と一言言えば、TPPの「テキスト」を国会議員に閲覧させると言った、重大な発言をいとも簡単に撤回できる。


まさか、西村副大臣の思いつきで、テキスト閲覧発言が出たはずがない。
最低限の政府要人の間でコンセンサスがあったから、そのような重大発言ができたのである。
で、政府要人には、安倍晋三訪米中に、国会議員に「テキスト」を見せるべき時期が来たと思わせる、重大な出来事があったことは間違いがない。

記事は、政府内から反対意見が強まったと観測しているが、根拠は示されていない。
反対意見の出所は、どうせ米国政府内→外務省ではないのか。
『永遠の忠犬ぽち』宣言の国のくせに、民主主義帝国のまねをする分際ではない、と。


さて、舐められ切った、野党は、西村副大臣=政府のこの軽さを厳しく追及するだろうか??

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2015年5月 7日 (木)

ISD条項の罠17 翻訳されない「otherwise」 環境・健康保護の核心条項に仕組まれた罠

英文テキストなど、国会議員に閲覧させてもちっとも怖くない。
TPPの条文は膨大な上に、並の英語力では絶対に理解できない。
翻訳会社が一部を翻訳したのを見たこともあるが、とうてい合格ラインの答案にはなっていなかった。
英語の他に、法律と経済両方の専門知識が必要である。
それくらいにしちむつかしいのである。

 

考えてみれば、わかっていただけるだろう。
日本の法律も、専門家が読み解かなければ意味が不明である。
法律の知識だけではだめである。
各分野の専門知識がないと、読み解けない日本の法律は山ほどある。
TPPの英文は、日本法の上を行く、さらに高度に難解なのである。

 

代表的なものを例に挙げよう。
健康や環境等の公共的な規制が、ISD提訴されて妨害されるのではないか、という論点について、推進派が、好んで取り上げて、ISDによって環境や健康のための規制が妨害されることはないと主張する、最大のよりどころとされる重要規定、いわば推進派の目玉商品である。
TPP投資章の最新リーク版では、ようやく留保(カギ括弧)が取れて、次の条文となっている。

 

Article II.15: Investment and Environmental, Health and other Regulatory Objectives
Nothing in this Chapter shall be construed to prevent a Party from adopting, maintaining, or enforcing any measure otherwise consistent with this Chapter that it considers appropriate to ensure that investment activity in its territory is undertaken in a manner sensitive to environmental, health, or other regulatory objectives.

 

たどたどしく訳してみる。
条文の名前は、「投資と環境、健康及びその他の規制目的」である。

 

で、マチベン程度の英語でも、全体構造としては、まず、「投資章のいかなる規定も加盟国が執る措置を妨げるものと解釈してはならない」ということはかろうじて理解できる。
Nothing in this Chapter shall be construed to prevent a Party from adopting, …measure




 

いかなる措置がこの規定の対象かという当たりで、もう、マチベンの場合は、ついて行けなくなる。
どのフレーズが、どこにかかっているのか、こんがらかって、さっぱりわからなくなるのである。
何日も頭の中でちらちら考えた末、かろうじて、次のように考えるようになる。

 

まず、適切に配慮する措置である。
that it considers appropriate

何を適切に配慮する措置か、
「投資活動が、環境、健康、その他の規制目的に敏感な方法で開始されることを確保すること」を「適切に配慮する」措置である。
ensure that investment activity in its territory is undertaken in a manner sensitive to environmental, health, or other regulatory objectives

この措置には条件がある。
「この章に合致する」ことである。

consistent with this Chapter

 

要約すれば、「この章に合致すれば、環境等目的の投資活動の開始に対する規制が、妨げられるものと解釈してはならない」ということになる。

以上を踏まえて、全体を訳すと、
「この章のいかなる規定も、加盟国が、その領域内における投資活動が、環境、健康もしくはその他の規制目的に敏感な方法で開始されることを確保するように適切に配慮された、この章に合致する措置を採用、維持、もしくは執行することを、妨げるものと解釈してはならない」
となる。

 

Nothing in this Chapter shall be construed to prevent a Party from adopting, maintaining, or enforcing any measure otherwise consistent with this Chapter that it considers appropriate to ensure that investment activity in its territory is undertaken in a manner sensitive to environmental, health, or other regulatory objectives.

 

和訳しても十二分にむつかしいことが理解していただけるであろう。
法的文章であるから、わかりにくいからと言って、意訳してはいけない。
これを国会議員に英文で見せるということである。
ほとんどの場合、見せられる方が当惑するだろう。

 

重要なことは、さんざん苦労して訳してみても、結局、この規定は、何も言っていないに等しいということである。
要するに、投資章の規定に合致していれば、公共目的の規制は妨げられないと言っているだけだ。
この規定が、ISDは、環境や健康などの公共目的の規制を妨げないとする理由に、どうしてなるというのだろう。

で、政府は、国会議員は、そんな条文の山を、そらんじた上で、自分で訳せとでも、言うのだろうか。

 

念のために、京都大学大学院の学生を濱本正太郎教授が監修している、「ISDS条項の批判的検討-ISDS条項はTPP交渉参加を拒否する根拠となるか」の米国モデル規定(ほぼ同じ文章が米国の投資協定のモデル規定に存在する)に当たっても、似たりよったりの訳になっている(9頁)。
監修しているのだから、国際経済法の学者も認める訳だと見てよい。

 

要するに、投資章に合致する規制目的の政府の活動を妨げない、という当然のことを言っているだけだ。

 

で、従来の議論は、ここまでで終わっている。
先日、極めて英語と国際法に堪能な方にお会いする機会があったので、お尋ねしてみた。
で、極めて貴重な示唆をいただいた。

 

otherwise」を、なぜ訳さないのか、と。
この英文は、「otherwise」を入れて訳せば、まるきり違う意味になるのではないか、と。

 

言われてみれば、そうなのである。
どうしても、翻訳に入れられなかったのが、この「otherwise」なのである。
国際経済法を専攻していると思われる最エリート校(この国の最先端である)の大学院生(したがって、英語に極めて堪能なはず)の翻訳で、国際経済法の一級の学者が監修した訳でも、「otherwise」は訳されていない。
入れると、普通の日本語としては、変になるからである。

 

otherwise」は、普通に訳せば、「さもなくば」である。
だから、該当部分を直訳すると、「さもなくば、この章に合致する措置」ということになる。
つまり、「さもなくばこの章に合致する措置を維持することを妨げない」ということになる。

 

「さもなくば、この章に合致しない措置を執ることを妨げない」というのであれば、意味が通る。
公共目的の措置は、仮にこの章に合致しなくても、妨げられないという意味になるから、まさに、公共目的の加盟国政府の措置はISDから守られる、とするISD推進派(ないし「反対しない」派)の主張のとおりになる。
しかし、「otherwise」の次に来ているのは、あくまでも「合致」であって、「合致しない(inconsistent)」ではないのである。

 

結局、この規定の本来の意味は、「環境等の公共規制目的の措置を執ることは、公共規制目的の規制でなければ投資章の規定に合致しているものであったとしても、妨げられない(妨げるものと解釈されてはならない)」となる。
日本語として、意味不明にみえる。
英語でも意味不明のはずだ。

 

意味をとろうとすると、次のように考える以外にない。
「環境、健康等の公共規制目的の措置は、この章の規定に合致していても、ISDの対象になる」

 

「投資章に合致する公共規制目的の措置」は妨げません、自由にやってください。
だけど、ISDの対象にはなります。

 

この規定は、とんでもないことを意味しているのではないだろうか。
こういうには、それなりの根拠がある。
WTO発足時には、衛生及び植物検疫措置(SPS)で散々もめた経過があるはずだが、その結果、SPSは、見た目、極めつけに難解な規定になった。
そして、WTOが発足してみると、結局、生命、健康より、「自由貿易」が大事というトンデモ規定であることが判明した顛末がある。

 

政府が、そうでないと言うなら、きちんと「otherwise」を和訳した、適切な翻訳文を示してもらいたい。

 

で、僕の言いたいのは、TPPの英文は、かくほどにむつかしいということである。
推進派からは、目玉商品のごとく持ち出される、超重要規定すら、かくも難解でかつ怪しいのである。

 

国会議員に「テキスト」を閲覧させても、政府にとっては、痛くもかゆくもない。
その場で、これほど困難な規定を、読み下すことができる議員は、いたとしてもほんの一握りである。
で、そういう人の大半は、政府の公共規制が妨げられても、何ら構わないと考える議員に違いないからである。

 

すでに、リークされた「テキスト」は出回っており、米国議会の調査局は、「非公式開示文書」として、正式な草案(ないし米国提案)であることを前提に扱っている。
政府が、まずやるべきは、すでに公開されている、①投資、②知的財産権、③医薬品・医療機器関連手続の透明性、④規制の単一性、⑤TBTに関する規定を、日本国民が英語圏の国民にハンディを負わない程度に、和訳することである。
いずれ、国会審議の際には、和訳しなければならないのであるから、すでに和訳をしていると思われる。
その公開をまず第一にすべきである。

 

コヒーレンスを「整合性」と誤訳するくらいの政府であるから、和訳が完全なものとは、とりあえずは、期待していない。
しかし、それでも、翻訳の下作業くらいは、しかるべき公的機関が責任をもって行うべきである。
マチベン程度の低能力では、とりあえず日本語にしてみる、それだけに大変な時間がかかってしょうがないのである。

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追記 5月10日
「otherwise」について、「その他の点では」と訳せば、一貫性がある訳ができるとの指摘があった。
確かに自然な訳である。
しかし、なお以下の疑問はある。
まず、法律用語では「otherewise」が用いられるときは、「さもなくば」または「本来であれば」との意味で使用される例も少なくないと聞く。
また、だからだと思われるが、京都大学法学院の国際経済法を専攻する学生の訳(何度も繰り返すが、一流の学者が監修をしている)でも、「otherewise」は敢えて訳されていないこと。
さらに、条約のような法的文書では明確性が求められるのであるから、もし「その他の点では」という意味であれば、他の明瞭な表現が可能であるにもかかわらず、敢えて、多義的な「otherewise」が用いられていること。
むしろ、国際経済の分野では米国は、極めて狡猾な方法を用いていることに対する警戒を怠ってはならないと思う。
少なくとも、この「otherwise」の意味を確定するには、交渉過程での解釈合意を知ることが不可欠であるが、交渉過程文書は、TPP発効後4年間は秘匿される秘密保持契約によって極秘にされている。

2015年5月 6日 (水)

英語演説をたくらんだのは誰だ!!

いやな予感がすると書いたその日のうちのニュースが、これだ。
(時刻を見ると、ブログより先にNHKが報じたようだが、このニュースは夜になって知った)

 

TPP 内容を国会議員に開示で調整
NHK5月5日 11時10分

TPP=環太平洋パートナーシップ協定を巡って、内閣府の西村副大臣は、情報公開が不十分だと指摘されていることを踏まえ、交渉内容を記した文書を国会議員が閲覧することを認める方向で調整する方針を明らかにしました。


アメリカを訪れている内閣府の西村副大臣は4日、ワシントンで記者会見を開きました。
この中で、西村副大臣はTPPを巡って国会で「情報公開が不十分だ」と指摘されていることを踏まえ、来週以降「テキスト」と呼ばれる交渉内容を記した文書を国会議員が閲覧することを認める方向で調整する方針を明らかにしました。
そして、アメリカの通商代表部の対応を参考に、日本で開示する文書の範囲や閲覧のルールについて具体的な検討を急ぐ考えを示しました。
また、アメリカ議会が政府に強力な交渉権限を与える法案について「TPPの交渉妥結に不可欠だ」と指摘しました。
そのうえで「この法案と、来週15日からグアムで開かれる交渉参加12か国による首席交渉官会合がうまくいかなければ閣僚会合は難しい」と述べ、閣僚会合の開催につなげるためにも法案の早期成立に期待を示しました。

「『テキスト』と呼ばれる交渉内容を記した文書を国会議員が閲覧することを認める方向」だという。
完璧なまでの秘密主義を貫いていた日本国政府が「テキスト」を開示するという。
何かが大きく進展をした。
ここまで来ると、水面下の妥結を疑わない方がおかしい。

 

閲覧に付する「テキスト」は、日本語ではなく、英語である。
それでも議員には「テキスト」を開示したのだから極端な秘密主義ではないと言い張るつもりだろう。
外務省は、間違っても日本語に訳してくれたりしない。

 

何しろ、総理が米国議会で英語で演説した国だ。

Sourienzetu1

Sourienzetu2

スタンディング・オベーションが起きるほどに達者な英語を話す総理だ。
留学経験もある総理大臣だ。

Sourienzetu3

(顔上げ、拍手促す。収まるのを…)
スタンディング・オベーションが起きる…\(;゚∇゚)/

Sourienzetu4

ニコニコ動画の安倍演説を見ると、「通訳が下手すぎる」というコメントがひっきりなしに流れていたが、通訳が下手なのではありません。
総理の英語が下手なのです。
留学経験ある、日本を代表する総理大臣が、自ら英語での演説を選択した、にしては、あまりにも英語がお粗末で、通訳泣かせの英語だったのです。
感動したと語る米議会議員がいるのは、議員には総理演説の原稿が予め配られていたからに違いありません。

 

英語演説などという冒険を許したというか、むしろ安倍晋三のコンプレックスにつけ込んで、おだてて木に登らせる策略をめぐらしたのは、外務官僚でしょう。
普通なら、絶対に止めるべきところです。

外務官僚の狙いは、明らかです。TPPに反対する米国議会議員に、日本は極めて純朴でおバカなアメリカかぶれの国であることをアッピールしたのです。

 

『永遠の忠犬ポチ』を誓う内容の演説を起草したのは外務官僚です。
外務官僚は、それでも足らずに、演出のために、たどたどしくて、聞き取りにくい下手くそな英語を使わせて、とどめを刺したのです。

 

日本は、これほど無能で、従順で、忠誠を誓うためなら恥ずかしくて人前で話せないような下手くそな英語でも喜んで話すような国ですから、TPPを結んでも、全然、怖くありません、と。

 

カンニングペーパーを「ウォールストリート・ジャーナル」が掲載しているのも、日本に対する警戒心を解くのに恰好の材料だからでしょう。


日本がここまで「クォンタム・リープ」されるのは、外務官僚にやすやすと操られる程度の総理大臣を日本国民が支持し続けるからである。

 

それにしても、議員は、総理と同じように、英文の「テキスト」を閲覧して、総理と同じようにわかったような顔をするのだろうか。
完全にばかげた話である。

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クォンタム・リープされる憲法

リテラのサイトが、憲法記念日の話題を、民放テレビがことごとく避けたことを伝えている。
もともと影が薄かった憲法記念日ではあるが、今や、憲法に触れること自体がタブーになってしまったようである。

テレビで憲法がタブーになった!憲法記念日に民法はスルー、NHKは政治家に丸投げ

Lritera2015.05.05

思えば、憲法の施行から60年の節目だった2007年、憲法記念日直近の4月29日にNHKは『日本国憲法 誕生』と題したドキュメンタリーを放送した。この番組では、それまで極秘とされてきた憲法成立の裏側 を、 当時の資料や、GHQや極東委員会関係者による証言、政府案の起草を作成した内閣法制局・佐藤達夫の録音テープなどから検証。結果として、衆議院内に設置 された「帝国憲法改正案委員小委員会」によって条文の修正が行われていたこと、9条にしても積極的に戦争の放棄を明文化したのは日本の議員によるものだっ たことを明らかにした。

2007年の当時に当たり前だったことが、今や最大のタブーとされる。
その変化は、数年規模ではなく、2014年9月11日(朝日新聞頭垂れ事件)から一気に加速して、今や、私たちは憲法に触れること自体がタブーであるかのような、別世界にいる。
瞬時に別軌道に飛ぶ。
こういうのをクォンタム・リープという。

なにやら幸福の科学が好んで使っていた言葉でもあるようだ。

日本会議←→統一教会が取りざたされたら、TPPではクォンタム・リープと幸福の科学好みの言葉を使う。

ネオリベ勢力も、エマニュエル・トッドが喝破したように単一の公理系で動く集団であるから、カルトの一種である。
日本はすべらからくカルト集団に乗っ取られてしまったのかもしれない。

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2015年5月 5日 (火)

TPP 市民向けの説明会の通知

TPP政府対策本部に、下記説明会のご案内がある。
これまで関係者限定だった説明会を一般市民に開放した上、マスコミにもフリーにするという。

米国上下院合同会議の演説の直後だけに、少し、いやな予感がする。

日米首脳声明では、日米二国間の交渉で大きな進展があったとしながらも、演説では、TPPの妥結に向けて、とくに踏み込んだ発言もなかったので、特別なことはないかと思っていたが、安倍晋三にとって栄光の上下院合同会議での演説の直後だけに水面下で合意が成立していたとしてもおかしくはない。
アリバイ作りのための市民向け説明会ではとの、懸念がぬぐえない。

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平成27年5月1日
TPP政府対策本部T

TPP協定交渉に関する説明会の開催について
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2015/05/150515setsumeikai_annai.pdf

環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉に関し、4月19日~21日に日米閣僚協議を行うとともに、4月23日~26日に米国メリーランドで開催された首席交渉官会合に参加いたしました。
これらを受けまして、TPP交渉に関する状況について、従来から行っていた関係団体等への説明会を拡大し一般の方も参加可能な説明会を開催いたします。
説明会では、TPP協定交渉の最新の状況についてご説明する予定です。


関係する業界団体等の方も参加いたしますとともに、マスコミに対してフルオープンとさせていただきますので、ご承知おき願います。
参加に当たり、次の事項を遵守してください。
これらを守られない場合は、退出いただくことがあります。
また、平穏・円滑な進行ができないと当本部が判断した場合、説明会を中止することがあります。
(ア)交渉の現状を報告するという説明会の趣旨を踏まえ静粛を旨とし、以下の行為を慎むこと。
・飲酒及び喫煙
・大声の張り上げ等による議事の妨害
・その他、平穏・円滑な議事進行を妨げる一切の行為


(イ)以下の物品等を会場に持ち込まないこと。
・のぼり、プラカード、横断幕等
・拡声器、鳴り物等、議事の進行の妨げになる器具
(ウ)その他、係員の指示に従うこと。

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2015年5月 4日 (月)

「クォンタム・リープ(量子跳躍)」とTPP「規制のコヒーレンス」

クォンタム・リープ=量子的飛躍=量子跳躍


量子は、飛び飛びの値しかとることができない。
原子核の周りを回っている(といわれる)電子は、軌道Aから軌道Bに移るとき、瞬時に移る。
軌道Aと軌道Bの間を移動するのではなく(中間値をとらない)、瞬間的に移る。
軌道Aで消えた瞬間、軌道Bに現れるという移動の仕方をする。


日常的な感覚で言うと、東京でなくした財布が、なくした瞬間に大阪(ブラジルでも、イラクでもいい)で出てくるような感じだ。


そんな感覚で、日本を変えていると彼は言っている。
これを別の言葉で言うと、ショック・ドクトリンを用いているということだろう。
感覚遮断されてしまっている間に、一気にネオリベラリズム化してしまえということだ。
感覚遮断されてしまった者は、感覚遮断が解かれたときには、もう別の支配者が君臨する別の価値観の世界にいることになる。
この変化は、まさに「クォンタム・リープ」的だ。


実は、いまだから言えることがあります。20年以上前、GATT農業分野交渉の頃です。血気盛んな 若手議員だった私は、農業の開放に反対の立場をとり、農家の代表と一緒に、国会前で抗議活動をしました。ところがこの20年、日本の農業は衰えました。農民の平均年齢は10歳上がり、いまや66歳を超えました。日本の農業は、岐路にある。生き残るには、いま、変わらなければなりません。私たちは、長年続い た農業政策の大改革に立ち向かっています。60年も変わらずにきた農業協同組合の仕組みを、抜本的に改めます。世界標準に則って、コーポレート・ガバナン スを強めました。医療・エネルギーなどの分野で、岩盤のように固い規制を、私自身が槍の穂先となりこじあけてきました。人口減少を反転させるには、何でも やるつもりです。女性に力をつけ、もっと活躍してもらうため、古くからの慣習を改めようとしています。日本はいま、「クォンタム・リープ(量子的飛躍)」 のさなかにあります。親愛なる、上院、下院議員の皆様、どうぞ、日本へ来て、改革の精神と速度を取り戻した新しい日本を見てください。日本は、どんな改革 からも逃げません。ただ前だけを見て構造改革を進める。この道のほか、道なし。確信しています。


国内の演説では、間違っても、クォンタム・リープなどと言う言葉は、使わないだろう。
彼自身、知っていたか疑わしい。
演説の起草者が、こんな聞き慣れない言葉を用いたということは、経済を、物理学用語で表現するのが、米国の流行だということだろう。
ネオリベラリズム経済学者は、自説を、まるで物理の法則のように必然だと主張したがるから物理用語を使いたがる訳だ。


TPPには分野横断的事項に「規制のコヒーレンス」という章が設けられている。
「コヒーレンス」の和訳に悩んでいたが、彼の演説原稿を見て、物理用語で理解すればよいことに確信を持った。
レーザー光線のように単一の波長・周波数を持った波をコヒーレントな波という。
コヒーレンスはその名詞形であるから、「単一」ないし「単一性」と訳せばよいのである。


これまでの自由貿易協定は、各産業分野ごとにそれぞれルールを決めてきた。
むろんTPPにも分野別の決め事がある。
これに加えて、すべての産業を横断的に「規制」の観点から、ひとからげで把握するのが「規制のコヒーレンス」である。
知る限り(と言っても、ほとんど知らないのであるが)、前例のない条項である。


物理学用語にしたがうならば、「規制のコヒーレンス」というのは、「規制の単一」化という意味である。
なるほど単一規制になれば、バリアフリーで、「非関税障壁」なんぞはなくなる。


経済活動に対する国の対応は、すべて「規制」という概念で括ることができるので、ほぼ内政の全般にわたる部分が、この章の対象になる。
TPP加盟国の間で、規制を単一化するというのであるから、内政の決定は、TPP「規制の単一委員会」が決定することになる(文理上、今すぐではなくても、やがてそうなる)。


「規制の単一委員会」が少人数(但し、グローバル企業の助言者はたくさんいる)で決定した内容にしたがって、米国と米国の諸州を除く各国は、国内法制をしかなくてはらなくなる。
国権の最高機関である国会は、「規制の単一委員会」の決定にしたがって、立法作業をするのである。


国民の、グローバル企業による、グローバル企業のための国家は、それでも、日本国憲法に言う「国民主権国家」と呼ぶことができるだろうか。
できる、というのが米国の答えであり、安倍晋三の答えである。


クォンタム・リープというのは、そういうことなのである。


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追記(本当に私的なメモ) 5月13日
法律英語用語辞典第3版(2003年9月18日初版・2009年1月19日3版)
「一貫した」=consistent with
2000年代以降、人権側の国際文書でも用いられているが、一貫性の概念自体が、メタルクラッド事件を通じて形成された概念なのではないかとの疑問を留保。
欧米圏で、「フィールド」がベストセラーになったのは2001年。

2015年5月 1日 (金)

ロシアだけが知っている

米国上下院合同会議での日本総理の歴史的演説について、各紙の見出しは、
「大戦、『痛切な反省』」でそろった。
前日の日米首脳会談については、『日米同盟強化』を避けて、一人、「核兵器使用は非人道的」と角度つけ過ぎの見出しを打って独自路線を歩んだ朝日新聞も、足並みをそろえた。
『希望の同盟を強調』した産経は、とんちんかんというか、読者を舐めているとしかいいようがないので問題外であるが、『首相、対米公約で退路断つ 普天間移設や安保法制 』(30日 1:44) 『首相、安保法制成立「夏までに」 異例の国際公約 』(30日 1:36)と見出しを打った日本経済新聞の独自路線は、評価に値する。
これまで伝えられてきた「深い反省」ではなく「痛切な反省」に表現がランクアップした。
その点がニュース性がある、という評価である。


ところが、この『痛切な反省』をすでに4月7日に報道している社がある。

日本、第2次大戦中の暴力へ初めて「痛切な反省」


日本政府は第2次世界大戦時に隣国へ行なった攻撃に対し、「痛切な反省」を表した。岸田外相はこの表現が記載された外交青書を内閣閣議で読み上げた。


「痛切な反省」が表されたのは初めて。観測筋は、戦後70年の今年、歴史改ざんへの日本政府を名指しにした非難が相次ぐなか出されたものとの見方を示している。

中国、韓国をはじめとする隣国からは、日本が安全分野の政策を見直していることについて、自衛隊の全権拡大につながるとの批判が浴びせられている。

安倍首相は2012年の首相就任以来、第2次大戦に降伏日に2度と戦争をしないという宣誓を一切行なわず、アジア隣国に行なった暴力への謝罪も行なったことがないことについて、国際社会からは何度も憂慮の念が表されている。


ロシアのスプートニク社である。


マチベンは、いったんブログでこれを取り上げながら、この記事が触れる外交青書の要旨を外務省のサイトで確認したところ、「深い反省」とあるので、「痛切な反省」はスプートニク社の翻訳のニュアンスであろうと即断して、記事を撤回した経緯がある。


そうではなくて、「深い反省」と記載した外交青書の要旨の方が、誤訳(!)であったわけで、4月上旬の閣議で、岸田外相が読み上げた外交青書には「痛切な反省」が入っていたという訳である。


怖いことである。
ロシアは何でも知っているのである。
日本のマスコミが、日本総理の歴史的演説まで知らなかった、閣議で「痛切な反省」が了承されていたという機密事項を、ロシアだけは知っていたのである。
恐るべしKGB(FSB)。

な~んて訳では絶対なくて、真に怖いのは日本のマスコミである。
知っていて、歴史的総理演説まで、メディアスクラムを組んで、水も漏らさぬ体制を組んだ日本のマスコミの方である。


なお、日本語だと、「深い」か「痛切な」かと形容詞の違いのように見えてしまうが、英語では、通常の語法であるとすれば「ディープ」の後に「リフレクション」を使うか「リモース」を使うかなど、どの程度強い反省を示す単語を使うかという名詞の違いである。

スプートニクは、「リモース」を使うことが4月上旬の閣議で了承されたことを普通に伝えた。
対する日本のマスコミは、「リフレクション」であると伝えた、あるいは歴史的総理演説までは「リモース」を「反省」と訳すことで、水も漏らさぬ体制を敷いたという仕掛けである。


やはりこの国では、国内の出来事を知るためには、海外メディア、とくに非西側メディアに頼らなければならなくなった。
さしたる言論弾圧法制もないまま、これほどまで言論統制が貫徹する国になったのは恐るべきことだ。


ちなみに、スプートニク日本のスクープに拘り続けた、「逝きし世の面影」ブログによれば、ロシア・トゥデイはこんな写真も報じている。
言論統制が行き渡る根本原因にかかわる写真だ。

http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/93/dc26e721190cfdf77211da5d1452c041.jpg


察しはおつきでしょうが、これが何かは、「逝きし世の面影」(4月30日)をご覧ください。

動画はこちらから。「人類猫化計画」(4月27日 下の写真が動画リンクになっています)

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