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2015年5月 9日 (土)

TPP政府対策本部サイト 5月1日付アップ資料について

市民にも公開される説明会(5月15日)に合わせて、交渉進ちょく状況に関する資料もTPP政府対策本部のサイトにアップするとの報道があった。


「資料1」(PDF)

 「資料2」(PDF)

さっと見た印象。


1)政府資料であるのに、日付の記載がない。
このため、これが今回、公表された資料かどうか、確信が持てない。
政府作成文書に日付(少なくとも年月)の記載がないのは極めて異例のことと思われる。


2)そもそもTPP政府対策本部の構成が不明で、誰が構成員なのか不明である。


3)政府分類によれば、21分野であるのに、文章説明である「資料2」には、18項目しか説明文がない。
(なお、章立ては29になると言われている)


4)説明が抜けているのは、「資料1」の一覧表中、
①(18)法的・制度的事項(「資料1」によれば、「協定全体に関わる事項を定める」、
②(19)紛争解決 「資料1」によれば、締約国間の紛争を解決する際の手続について定める。
③(20)協力・キャパシティビルディング 「資料1」によれば、「協定の合意事項を履行するための国内体制が不十分な国に、技術支援や人材育成を行うことについて定める」
④(21)分野横断的事項 「資料1」によれば、規制の整合性(規制の画一性)、競争力・ビジネス円滑化、開発についての説明がない。


5)制度的事項の説明文の欠落は、重要である。
この構成は、「資料1」によれば、①前文、②冒頭・一般的定義、③透明性・腐敗防止、④例外、⑤運用・制度、⑥最終規定からなっている。
協定全般の運用や全般に関わる透明性などの重要事項が、いまなお全く明かされないということになる。


ちなみに、医療費を高騰させると言われている、「医療技術に関する透明性と手続の公正」は、この制度的事項の透明性に関わる付属文書である。
この付属文書では、薬価決定に当たって、製薬会社の意見を事前に聴取すること等の他、薬価が市場価格との関係で公正であることを示す検証可能な確実な証拠に基づいて決定されるべきこと、医薬品会社に対して、独立した機関に対する審査請求、再審査請求の手続を保障すること(したがって、薬価決定の権限は、現在の厚生労働大臣から、第三者機関に移行することになる)など、薬価・医療機器の価格高騰を必至とする条項が多く定められている。
なお、米国に限らず、海外の医療費は、一般的に言って、日本より高額である。
薬価等の高騰は、国民を適切な治療から遠ざける(米国の個人破産の原因の一位が医療費の負担であるとされる)。
また、現在でも高齢化によって逼迫している、健康保険財政をさらにいっそう、悪化させる。


海外での盲腸手術の総費用(AIU保険)


医療費は?盲腸で入院して手術した費用(虫垂炎ナビ)
日本は平均7日間の入院で、37.8万円となっています。3割負担では11,3400円となりますね。


6)「規制のコヒーレンス」(拙訳「規制の単一性」)についての説明も存在しない。
政府が分野横断的事項に分類しているように、規制は、モノ・サービス全体に関わる事項であり、すべての経済活動に関する立法、行政、地方自治体等の関与は規制に該当しうる。
経済活動に関わる内政全てといってよいほど包括的な分野を「規制」という観点で包括的に括って、規律する章が、「規制のコヒーレンス」章である。
コヒーレントな波といった(経済学者が好んで使いたがる)物理学におけるコヒーレンス本来の意味からは、「整合性」との政府訳は誤訳であり、「単一性」とする方が本来の語義に忠実である。
したがって、「規制のコヒーレンス」章は国内外を通じて規制の単一化を追求するものと理解される。
この主権国家の機能全般に関わる、極めて広範な分野を規律する事項も、政府説明からは抜け落ちている。


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[otherwise]の解釈に関する5月7日付の記事について、同日付の記事に下記のとおり付加しました。念のため。
「otherwise」について、「その他の点では」と訳せば、一貫性がある訳ができるとの指摘があった。
確かに自然な訳である。
しかし、なお以下の疑問はある。
まず法律用語などで「otherewise」が用いられるときは、「さもなくば」または「本来であれば」との意味で使用される例も少なくないと聞く。
また、だからだと思われるが、京都大学法学院の国際経済法を専攻する学生の訳(何度も繰り返すが、一流の学者が監修をしている)でも、「otherewise」は敢えて訳されていないこと。
さらに、条約のような法的文書では明確性が求められるのであるから、もし「その他の点では」という意味であれば、他の明瞭な表現が可能であるにもかかわらず、敢えて、多義的な「otherewise」が用いられていること。
むしろ、国際経済の分野では米国は、極めて狡猾な方法を用いていることに対する警戒を怠ってはならないと思う。
少なくとも、この「otherwise」の意味を確定するには、交渉過程での解釈合意を知ることが不可欠であるが、交渉過程文書は、TPP発効後4年間は秘匿される秘密保持契約によって極秘にされている。

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