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2015年5月28日 (木)

道を踏み違えた日弁連  『日弁連問題』の勃発

武本夕香子弁護士の論考で初めて日弁連会長の会務執行方針の「基本姿勢」を読んだ。
これほどひどいとは正直、思わなかった。
人権の砦であるべき日弁連は、すでに過去のものになりつつある。

 

「基本姿勢」中、とくに強い違和感を覚えるのは、

「すべての判断基準は、市民の利益に叶いその理解と信頼を得ることができるか否かにあります。」

「 日弁連の主張を最大限実現するためには、孤立を回避することが不可欠であり、独りよがりや原理主義と批判されるような言動は排さなければなりません。
司法と日弁連の歴史に思いをいたし、経緯と情勢そして現実を冷静に見極め、説得力のある最善の主張を展開することにより多くの人々の理解を得、力を合わせて改革を着実に前進させることが大切です。」

との部分であり、現実迎合の姿勢があらわである。
日弁連は、政党と異なって、政権獲得を目的とする団体ではないのであるから、かような遠慮が無用なことは武本夕香子弁護士の説くとおりである。

 

一体、ここにいう理解を得、利益を叶えるべき「市民」とはだれなのか。
「孤立を回避することが不可欠」で「独りよがりや原理主義」と批判されてはならない」相手は誰を想定しているのか。
刑事司法改革に関する会長声明をご覧いただきたい。

 

取調べの可視化の義務付け等を含む「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」の早期成立を求める会長声明

被疑者取調べの全過程の録音・録画の義務付けをはじめとする刑事訴訟法等の一部を改正する法律案は、2015年5月19日、衆議院で審議入りした。

有識者委員が参加した法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」で約3年間の議論を経て全会一致で取りまとめられた答申に基づく本法律案は、被疑者取調べの録画の対象範囲が裁判員裁判対象事件及び検察独自捜査事件に限定されているものの、対象事件については全過程の録画を義務付けるものである。さらに、本法律案には、被疑者国選弁護制度の勾留段階全件への拡大、証拠リストの交付等の証拠開示の拡大、裁量保釈の判断に当たっての考慮事情の明確化、犯罪被害者等及び証人の保護措置の創設等の改正が含まれている。

また、本法律案には、通信傍受の拡大捜査・公判協力型協議・合意制度のいわゆる司法取引制度の導入など、証拠収集手段の多様化も盛り込まれた。当連合会は、通信傍受制度の安易な拡大に反対してきたところであるが、補充性・組織性の要件が厳格に解釈運用されているかどうかを厳しく注視し、人権侵害や制度の濫用がないように対処していく。いわゆる司法取引についても、引き込みの危険等に留意しつつ、新たな制度が誤判原因とならないように慎重に対応する。

本法律案については、多くの制度がひとつの法案に盛り込まれていることに批判もあるが、答申にも述べられているとおり、複数の制度が一体となって新たな刑事司法制度として作り上げられているものである。

当連合会は、長年にわたり、刑事司法改革を訴え、全件全過程の被疑者取調べの可視化に取り組んできたが、この刑事訴訟法改正により、複数の重要な制度改正とともに供述調書に過度に依存せず、取調べの適正な実施に資する制度が本格的に導入されることで、全体として刑事司法改革が確実に一歩前進するものと評価している。本法律案が、充実した審議の上、国会の総意で早期に成立することを強く希望する。

えん罪を生まない刑事司法制度の確立は当連合会の真に求めるものである。その実現には、理念に則った弁護実践とともに、制度の適切な運用と不断の見直しが不可欠となる。当連合会は、市民・関係者、全ての弁護士、弁護士会とともに、改革をさらに前進させるために全力を尽くす決意である。

    2015年(平成27年)5月22日

日本弁護士連合会      

 会長 村 越   進 

 

盗聴範囲の拡大は公権力による国民の監視やプライバシー侵害の問題がある。
司法取引の導入はえん罪の温床となる危険が大きい。
目的の異なる制度改正を一本の法律で行うことは、民意を損ねる。
このブログに来られる方は、多分、今般の刑事訴訟法等の「改正案」に反対の方がほとんどであろう。

 

いやしくも日弁連様であるから、そんなことは百も承知の上で、
「すべての判断基準は、市民の利益に叶いその理解と信頼を得ることができるか否かにあります。」
「 日弁連の主張を最大限実現するためには、孤立を回避することが不可欠であり、独りよがりや原理主義と批判されるような言動は排さなければなりません。
司法と日弁連の歴史に思いをいたし、経緯と情勢そして現実を冷静に見極め、説得力のある最善の主張を展開することにより多くの人々の理解を得、力を合わせて改革を着実に前進させることが大切です。」
との基本姿勢を適用すると、猛毒を含んだ法改正の「早期成立を強く望みます」となるのだ。

野党の立場に立ってみる。
一括法を示されたにも関わらず、頼みの日弁連からは早期成立を希望される。
野党にしてみれば、法案成立に協力せよと言われたようなものである。
司法官僚にいいようにあしらわれる日弁連のさまは、米議会演説の栄光を得るためにポチダヨ宣言した総理より、さらに卑屈にすら見える。

 

この延長には、幅広く臣民の理解が得られるよう心がけ、孤立を恐れる、戦前の日弁連の姿が待っている(つうか、それまでに日弁連はつぶれますが)。

 

大日本辯護士會聯合會憲法改正案

天皇制ハ之ヲ存続シポツダム宣言ノ趣旨ニ従ヒ民意ヲ基礎トシテ大権ヲ行使セラルルカ為メ且天皇ト国民トヲ直結シ従来軍閥官僚等カ袞竜ノ袖ニ隠レ跋扈跳梁シタル弊習ヲ芟除セムカ為帝国憲法ノ条章ニ次ノ如キ改正ヲ行ハルルヲ適当ト認ム

第一 国民投票制ノ採用
最モ重要ナル国務ヲ決定スルカ為必要アリト認ムルトキハ天皇ノ発議ニ依り国民ノ直接投票(レフエレンダム)ニ諮フノ途ヲ啓クト共ニ議会モ亦第七十三条第二項及第三項ノ特別決議ニ依り之ヲ要請シ得ルモノトスルコト

第二 立法ニ対スル議会権限ノ拡張
法律ノ制定ハ裁可ヲ要セス帝国議会ノ議決ヲ以テ足ルコトトシテ天皇ノ裁可権ヲ拒否権ニ改ムル為第五条第六条及第三十七条ヲ改正シ猶憲法ノ改正ニ付テモ議会ニ発案権ヲ認ムルカ為第七十三条等ヲ改ムルコト

第三 天皇ノ大権ニ対スル制限
(イ)議会大権ニ関シ議会ノ両院ヨリモ臨時議会ノ召集ヲ要求シ得ル様第七条ニ規定スルコト
(ロ)命令大権ニ関シ第八条ノ緊急命令ハ之ヲ廃止スルト共ニ第九条中「及臣民ノ幸福ヲ増進スル為」ノ所謂助長命令モ之ヲ削除スルコト
(ハ)外交大権ニ付テハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ之ヲ行フヘク第十三条ヲ改正スルコト
(ニ)統帥大権及軍政大権ニ関スル第十一条及第十二条ヲ削除スルコト

第四 臣民ニ対スル保障
第十九条乃至第二十九条及第三十一条ノ規定ヲ整備シ日本臣民ハ社会上政治上及経済上平等ナル原則ヲ明記スルト共ニ総括的ニ臣民ノ自由ヲ制限スルニハ法律ノ規定ニ依ルヘキ旨ヲ定メ憲法ニハ法律ヲ以テモ仍制限スヘカラサル自由ニ付テノミ保障規定ヲ置クコト

第五 貴族院ノ改組
貴族院ノ名称ヲ改メ職域代表者及勲労ニ因り勅任セラレタル者(華族制度ヲ存置スル場合ニハ其ノ代表者ヲモ加フ)ヲ以テ之ヲ組織スルコトトシ其ノ選定方法ハ法律ヲ以テ之ヲ定ムル様第三十三条第三十四条等ヲ改正スルコト

第六 常置委員ノ設置
議会閉会中其ノ権限ヲ代行セシムルカ為議会ニ常置委員ヲ設置スルコト

第七 内閣制度ノ確立
内閣制度ニ付憲法ニ明定シ行政権ハ内閣総理大臣及各省大臣ヲ以テ組織スル内閣ニ於テ之ヲ掌理スルト共ニ内閣ハ議会ニ対シテモ責任ヲ負フヘキ旨ヲ定メ内閣総理大臣ノ任免ニ付テハ議会ヨリ推薦スルノ途ヲ啓キ更ニ内閣総理大臣及各省大臣ハ当然国務大臣タルコトヲ規定スルコト

第八 枢密顧問ノ廃止
枢密顧問ヲ廃止スル為第五十六条ヲ削除スルコト

第九 司法裁判権ノ拡張
行政官庁ノ違法処分ニ因リ権利ヲ傷害セラレタル場合ニハ広ク行政訴訟ヲ提起シ得ルコトトスルト共ニ其ノ裁判権ヲ司法裁判所ノ管轄トシ行政裁判所ヲ廃止スヘク第六十一条ヲ改ムルコト
尚官吏ノ違法行為ニ因ル損害ニ付テハ国家ニ賠償責任アリトスルコト

第十 譲位ト華族
皇室典範ヲ改正シ譲位ノ途ヲ啓クト共ニ華族令ヲ廃止シ又ハ一代華族制度ニ改ムルコト

 

ポツダム宣言の受諾を受け、おそらく占領軍が憲法改正案を所望していることを聞きつけて、大日本弁護士会連合会は、臣民の理解を広く得るべく天皇大権は存続させて(結果、天皇は国会の制定した法律の拒否権を持つ)、臣民の自由は原則として、法律の範囲内についてのみ認めるのを原則とする改憲案を立案したのだ。
かかる微温的な改正しか提言する能力がなかったのが、時局迎合した戦前の大日本弁護士会連合会のなれの果てである。

 

日弁連は今、その道に踏み込んでいる。
マスコミや、大学の批判をしていて足下の日弁連がむちゃくちゃにされていることに気づかなかった。
日弁連問題が勃発していることに気づかなかった不明を恥じる。

 

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追記
日弁連会長が基本姿勢として「日弁連の歴史に思いをいたし、経緯と情勢そして現実を冷静に見極め」などとのたもうておられるのは、この大日本弁護士会連合会の現実的な姿勢であるのかもしれない。
だとすれば、日弁連執行部とは、戦前へ回帰しようとする現政権といくばくの違いもない。
「多くの人々の理解を得」というのも、現政権周辺の「多くの人々」ということのようにも見える。
日弁連会員の多く、日弁連は強制加入団体であるから、つまりは弁護士の多くは、「盗聴法の強化・拡大」や「司法取引」に反対のはずだ(と信じたい)。
会員の総意に背くなら、弁護士業を続ける限り強制的に徴収される、日弁連の高い会費は、まるで「オレオレ詐欺」並の、ぼったくりと言わざるを得ない。

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