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2015年5月11日 (月)

TPP政府説明資料の問題点 九州大学磯田宏氏のメールから

およそ、TPPは統治機構をトップダウンに組み替えようとする仕組みである。
資本の合理的期待を阻害する、非効率な民主主義とか、権力分立とかが、もう邪魔なのである。
権力分立を持たない国家は憲法を持たないと言われようが、外国投資家にとっては、知ったことではない。

外国投資家好みに塗り替えられた、日本政府は、主権者である国民に対する説明会は1回開けば、それでおしまいという腹で15日の政府説明会の日程を入れている(はず)。
しかも、Tokyoで開けば、おしまいという政府の発想は、外国資本好みの発想である。

1回限りの市民向け説明会には、議員向けテキスト公開と同じ誤算があったと想像される。
どうせ誤算ついでなんだから、地方でも説明会を開きなさい\(*`∧´)/

いつも精確な情報を提供していただいてる、九州大学の磯田宏氏からのメールを了解を得て、以下、貼り付けます。
よんどころない事情で出席でないとのことで、参加者に是非、問いただしてほしいとのことです。


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(以下、引用)--------------------

 5月6日付
農業新聞3面記事で,51日にTPP政府対策本部が公表した資料を紹介しつつ,「15日の発の一般向け説明下などでこの資料を使って情報提供を行う考え」と書かれています。しかし(既にご存じと思いますが)以下サイトにある当該「TPPの概要」は,同記事中で政府対策本部が「かなり踏み込んで既述している。一般に公表する内容としては(交渉参加国で)一番詳しい」と自画自賛しているのとは裏腹に,①極めて貧しく,さらに②本年325日リークの「投資章テキスト」(2015120日時点)や,過去の(2014年)USTRSPS報告書日本部分に記載されている事項(2013412日日米事前合意によって設置された二国間並行交渉のうち「非関税措置」で「課題」として挙げられていたポストハーベスト農薬問題を,2013年秋に日本政府が基本的に解決した,という趣旨)などを踏まえると,国民を欺くものになっていないかとさえ懸念せざるを得ない内容です。

 

 

同記事で「説明資料,A4判6ページ分」というのは,TPP政府対策本部「最新のTPP交渉の概要を掲載しました」と称する以下のうちの,2番目です。

(1)「資料1」

(2)「資料2」 (「TPPの概要」51日版)

 

 したがって,私の気がついた限りで,以下について,15日政府説明参加者の方に,質問することをご検討いただければ幸いです。

 なお,お一人の質問可能時間・項目はかなり制約されることが予想されますので,参加可能性のある各種団体・個人の方々への拡散を希望致します。

 

 1.上記(2)「TPPの概要」2頁の「SPS」に「食の安全に関するわが国の制度の変更を求められるような議論は行われていない」とあるが,本当か?仮に12ヵ国全体交渉ではそうかも知れないが,日米二国間並行交渉「非関税措置」でも「議論は行われていない」し,何らの対応(=アメリカ要求の受入)もしてないと断言できるのか?アメリカ政府は公式文書で,事実そのような日本政府の対応が「公表」されたことを記述している。以下,USTR2014年SPS報告書を参照。ただしこの質問に,政府は国会等で「そのような事実はない。USTR報告書の記載は誤り。アメリカ政府にその旨申し入れ,アメリカ政府側も誤りを認めた」旨の答弁をしている。しかしこれは「猿芝居」の台本に対して,アメリカ政府側が(特に議会に自らの「成果」をことさら強調しなくてはならないUSTRが)「勇み足」をしたとの推定も可能である。

 

 USTR2014年SPS報告書  62頁,その(恐らく)外務省訳3435頁に,「2013年まで,日本は収穫前及び収穫後の両方で使用する防かび剤に異なる認可プロセスを維持してきた」,このような「日本の方針は,コーデックスの基準及び堅固な農薬規制制度を有する諸国の間で広く受け入れられている手続に整合していない」とした上で,2013年秋,日本は,防かび剤を含む,農薬(収穫前の使用)及び食品添加物(収穫後の使用)の両方に使用される農業化学物質の審査プロセスの簡素化を発表した」「1回のリスク評価を行うこととしている。審査プロセスは,法律で定める審査に係る時間の大幅な縮減が期待される」としている。

 さらに同報告書は続けて「農薬の最大残留基準値」についても,「2013年以前,当該農薬の主要供給国での申請承認までの間,日本が殺虫剤・防かび剤のインポート・トレランスの申請受付を拒否したことにより」「日本への米国の輸出において混乱のリスクを悪化させた」,「しかし,20135月,日本は,その殺虫剤・防かび剤の最大残留基準値が申請国で設定されているかどうかに関わらず,中核的なリスク評価が完了している場合において,殺虫剤・防かび剤にインポート・トレランスの適用を認めることを公表した。この方針変更に伴い,米国の環境保護庁に登録申請が認められている農薬会社は,同時に日本におけるインポート・トレランスを適用することができるようになっ」たと記述している。

 

注:「インポート・トレランス」とは,国外で新たに使用が認められ,我が国へ輸出する農畜水産物等に使用される農薬等に係る暗流基準値の設定要請のこと。

 

2.同じく政府「TPPの概要」23項の「政府調達」で,「我が国はこの分野では開放が進んでいる国であり,攻めの分野となっている」と,あたかも現在以上の「開放」を求められることはあり得ないかのような説明があるが,現存するP4(環太平洋戦略的経済連携協定,シンガポール,ブルネイ,ニュージーランド,チリ)での政府調達市場開放額に合わせるとしたら,特に地方政府(都道府県,政令指定都市,場合によってはさらに市町村)において,現行より大幅な市場開放をせざるを得なくなる。

試算「TPPに日本が参加した場合に予想される政府調達基準の引き下げ」 )。

Tyoutatsu

 そこで質問は,

 第一に,TPP交渉「政府調達」で,地方政府は対象になっているのか,なっているとすればどのレベルまでか(都道府県,政令指定都市,その他市町村)。

 第二に,政府調達市場開放基準額はどのようなレベルで設定されようとしているのか。

 

3.同じく政府「TPPの概要」5頁「投資」の最後に「なお,保健,安全及び環境後を含む公共の利益を保護する政府の権限に配慮した規定が挿入されている」とし,あたかもこれら政府の権限はISDSの対象外になるから大丈夫であるという印象を与える記述になっている。そこで質問は,

 

 第一に,「無条件で対象外になる」と断言できるのか,断言できるとすれば根拠は何か。

 

 第二に,2015325日にリークされた投資章テキスト(添付)では,(政府はリークテキストについて一切,ノーコメントでしょうが)

Article II.1; DefinitionInvestmentにおいて,「投資」定義に,「政府調達契約(道路,橋梁,運河,ダム,パイプライン等のインフラ建設),政府が管理する天然資源譲許(concession)契約,政府との公共サービス運営契約(発送電,上下水道,電気通信等)を含める」という提案(アメリカ政府によるものとされている)が,カギ括弧(square brackets)に入っている,つまりこのような定義がまだ排除されていないことが示されているが,事実いかん。

②確かにArticle II.15: Investment and Environmental, Heath and other Regulatory Objectivesで,「投資章のいかなる規定も,投資が環境,保健,その他の規制諸目的に対して慎重な方法で行われることを確保するために加盟国が適切と考えるあらゆる措置any measuresを採用,維持,あるいは義務づけることを妨げると解釈してはならない」旨の文言があるが,おなじ条文の中でany measuresの直後にotherwise consistent with this Chapterつまり「その他の点では本章と合致している」限りの,とある。これでは実際上,投資章で外国投資(投資家)に保証・保護されるあらゆる権利・利益を「侵さない」限りでの「公共利益目的の政府措置」しかISDSの対象外にならないということではないのか。

③またAnnex II-B, 3. (b)では,「加盟国が,公衆保健,完全,および環境といった正当な公共福祉諸目的を保護するために設計し適用する被差別的な規制諸行為は,間接収用を構成しない,ただしまれな諸環境における場合を除いては」とある。「まれな諸環境」とは何か。この文言はどうなっているのか。この文言があるなら,その解釈を拡大していけば,この条項自体がどんどん意味をなさなくなっていくのではないか。

投資や越境サービス等の「市場アクセス」について,日本政府は非適合措置(Non Confirming Measures,市場開放をしないネガティブリスト)に,いったい何を挙げているのか。

 

以上,長文で申し訳ありません。もしご同意いただくことができ,かつ時間が許すなら,部分的にでも質問事項に入れていただければ幸いです。その場合,政府側の「回答」等についても共有していただければ幸いです。

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