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2015年5月30日 (土)

ISD ローファームが食い物にする世界 不正義から利得する  ”Profiting from Injustice” 韓国抄訳の翻訳

 『Profiting from Injustice』が、ずっと気になっている。
韓国語の記事を翻訳していたサイトを見つけたので、貼り付けておく。
これだけでも読むのに骨が折れるが、英語の原文は、さらにずっと長文である。
しかし、紹介記事でも、あるのとないとでは、原文に対する見晴らしがずっと変わるので、貼り付けしておく。
欲にまみれた、ごく限られた一部のビジネスロイヤーたちが、ぐるになって、この世界(「グローバル」であるから「地球」といった方がよいのだろうか)を私物化し、食い物にしていることが、よくわかる。
ついでに加えれば、日弁連も、どちらかというと、この仲間入りがしたい派にみえるが、すでにシェアができているので、新規参入は容易ではないと書いてある。


ISDが必要な理由として、かつては、途上国の裁判制度の未整備が主張されていた。
これも、実は先進国目線の途上国(もとともは後進国とか、もっというと、野蛮国とか呼ばれていた)差別であったが、どう見ても裁判制度が成熟している先進国間でのISDが展開するようになると、投資先の国(「ホスト国」という)の国内裁判所より、海外の裁判の方が、中立的な判断がされ、公正であると言われるようになった。
実態は、このように優れて、えげつないのである。


英語が読める方には、「Corporate Europe Observatory」のサイトは断然お勧めである。
ここの国際取引のリンクを開けば、おもしろい情報がいっぱいある。
TPPの条文よりは、ずいぶんと読みやすいが、私には日本語に直すのは不可能である。
英語の教材にしようかと思っている。

なお、韓国バージョンでも、ISDに固定した裁判所があるかのような説明になっているのは、完全な誤解である。

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どうもうまく貼り付けられないので、PDF版 をリンクしておきます。

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2013227日水曜日

ISD条項に関する韓国情報活動家の記事1

日本でもTPPがらみでISDの問題が注目されるようになって、ISDについて知られるようになってきた。韓国では、韓米FTAISDが問題になって、今でも議論は続いているのだけれど、Redianという韓国のオンラインニュースサイトに情報共有連帯という市民団体の人がISDに関する記事を書いていて、面白かったのでざっと翻訳してみた。

内容的には201211月にヨーロッパのCorporate Europe Observatory and the Transnational InstituteというNGOが作成した"Profiting from injustice" という報告書がベースで、これまで韓米FTAについて提起されてきた問題を加えて再構成したものといえる。とにかく、こういうのを読むと、日本でもTPP 参加の議論で大きな焦点になっているISD条項は、相当問題が多いなと思わざるを得ない。もっとも、韓米FTAのようなグローバル協定に反対する立場から の解説なので、問題が多いということを言いたいわけなんだろうし、ぼくもTPPに反対する立場から面白いと思って紹介する次第。

なお、この記事は連載の1回目で、この後もISDに関する数本の記事が続いている。後続の記事についても翻訳して紹介したいと思う。

不当なことで利益を得る(1)

災難の怪物ISDの実体について

[情報共有と知的財産権]さらに多くの戦争、さらに多くの危機、さらに多くのISD

Byクォン・ミラン/情報共有連帯IPLeft/2013123日、6:16 PM

 

敗訴しないことを望んだ空しい期待

昨年、ローンスターは結局ISD(投資家国家訴訟)を提起した。韓米FTAかっぱらい批准ほどではなくても、私は恐くてどきどきしながら韓国政府が敗訴しないことを見守っていた。

そして最近では医薬品特許をめぐりISDが提起された。昨年11月、超国籍製薬会社のリリーはカナダの特許適格性(patentability)の 基準により、自社の注意欠如多動性障害(ADHD)治療剤のストラテラ(Strattera)の使用方法特許(methodof use patent)が無効と決定されたことで、最低1億カナダドル(CDN)にあたる損害を受けたと主張して、NAFTA協定11(投資)により、カナダ政 府に仲裁意向書を通知した。

リリーは19961月にストラテラの特許を申請し、20161月に満了する予定だった。リリーが獲得した特許(735 patent)は化合物アトモキセチンを成人と子供の注意欠如多動性障害(ADHD)の治療のために使用(use)することについてのものだ。そして 200412月にカナダで販売許可を受け、商業的に成功したという。

ジェネリック(複製薬)を作る製薬メーカーのノボファーム(Novopharm)が特許無効訴訟を提起し、これにより20109月に連邦裁判所は 無益(inutility)等の理由で特許無効と判決した。リリーは連邦裁判所の決定に控訴し、その結果、20117月に連邦抗訴法院はこれを棄却し た。リリーは大法院に上告申請したが201112月に棄却された。

WTO加入国に対し、知的財産権保護の最低の基準を強制するトリップス(TRIPS)協定は、特許適格性の基準として新規性(new)、進歩性 (inventive step)、産業適用可能性(capable of industrial application)を要求する。

つまり、既存のものとは違う新し、さらに良い発明でなければならず、その発明を発明者一人が利用するのではなく、産業的に利用する可能性があれば特許権を与えられる。

だがこの三つ基準の概念について、トリップス協定は具体的に定義していないため、国家ごとに解釈が違う。これはトリップス協定が認める数少ない柔軟性(flexibility)あるいは主権の領域の一つだ。

だがリリーは、カナダのすべての司法的手続きを取って特許無効判決を受けたが、これこそNAFTA協定11(投資)の収用条項、最低基準待遇条 項、内国民待遇条項違反だと主張した。リリーはカナダ裁判所がストラテラの特許を無効化したのは直接受け入れに該当して、これによってストラテラを製造、 販売する排他的権利に関する価値(value)を破壊する効果をあげたとし、これを間接収用と見た。

実際、投資条項は投資家の解釈次第で司法権を侵害する。そして保健、環境、労働などの目的による国家の政策や制度もISDを避けられない。

だがNAFTA協定はISDを認めているので、もう元に戻すことはできない。私はカナダ政府が敗訴しないことを願っていた。ところが昨年11月に発 表された研究報告書「不当なことで利益を得る-ローファーム、仲裁者、金融業者が投資仲裁ブームを煽る方法(Profiting from injustice. How law firmsarbitrators and financiers are fueling an investment arbitration boom)」を読んで、私の期待が空しいことこの上ないことを知った。

http://www.redian.org/wp-content/uploads/2013/01/isd%EB%AF%BC%EB%B3%80-e1358932275721.jpg
民主弁護士会のISD関連記者会見資料写真(写真は民主弁護士会)

 

「投資仲裁産業(arbitration industry)」の成長

2011年末までにISDを含む協定は3000本を越える。主に二国間投資協定(BIT)で、FTAに含まれる投資部門、そしてエネルギー憲章条約(Energy Charter Treaty)のような多国間協定がある。

世界銀行傘下にICSID(国際投資紛争解決センター)ができてから30年経った1996年まで、38件のISD提訴しかなかった。だが90年代後 半から訴訟が急速に増えた。2011年末までにわかっているISDだけで450件あった。主に南半球の政府を対象にするものだ。だがほとんどの訴訟が秘密 裏に行われたため、実際の訴訟件数ははるかに多いだろう。

2011年にアメリカの弁護士雑誌(American Lawyer magazine)の報告によれば、最低1億ドルになる非公開の投資仲裁訴訟は151件だった。

一般的に投資仲裁手続きは、投資家が政府に仲裁意向書を通知すると、投資家と政府は仲裁裁判所を選び、それぞれ1人ずつの仲裁者を選んで共に議長を選択し、仲裁判定部が構成される。

秘密裏に本訴訟が進められ、3人の仲裁者が被害の類型とその規模、賠償金を決める。政府が賠償金の支払いを拒否すれば、政府の財産を差し押さえることができる。

一番よく選ばれる仲裁裁判所はワシントンにある世界銀行傘下の国際投資紛争解決センター(ICSID)、二番目は国連国際貿易法委員会 (UNCITRAL)だ。この他にハーグにある常設仲裁裁判所(PCA)、ロンドン国際仲裁裁判所(LCIA)があり、パリの国際商業裁判所(ICC)と ストックホルム商業裁判所(SCC)はビジネス機構での投資紛争を扱う。これらは「投資紛争産業」になった。

賠償金額だけでなく、仲裁者、証人、専門家、弁護士に支払う法務、行政費用そのものがとても高い。OECDは情報が伝えられている事件の法務費用が平均800万ドルを越え、場合によっては3000万ドルを越える場合もあることを確認した。

フィリピン政府はドイツ航空会社のFraportが提起した2つのISDを防御するために5800万ドルを使った。これは12500人の教師1年分の賃金にあたり、380万人の子供に結核、ジフテリア、ポリオなどの予防ワクチン接種費用で、2つの空港を作れる金額だ。

ある仲裁産業内部の者は、法務費用の80%以上を諮問に使っていると推測する。仲裁弁護士は勝訴せず、有利な合意を引き出しただけでも相当な手数料を受け取る。上位20の仲裁ローファームのパートナー弁護士は、時間当り1000ドル受け取る。

米国のローファームKing&Spaldingは、ある訴訟で依頼人に賠償金13300万ドルの80%以上を要求したと伝えられる。仲裁 者もまた一日の手当て3000ドルに加え、移動、居住費を受け取る。訴訟で負けた側がいつも相手側の法務費用を払うわけではない。両者に裁判、行政費用を それぞれ支払えという仲裁判定が行われるケースが一番多い。この話は政府が訴訟で勝っても納税者は金を払わなければならないということだ。

Plasma Consortiumのブルガリアに対する訴訟で、ブルガリアは結局詐欺だという判決になったこの訴訟を防御するために約1300万ドルの法務費用を使っ た。だが仲裁判定部はPlasma Consortiumにブルガリアの法務費用のうち700万ドルだけを支払うよう命令した(ブルガリアはこれさえ全額を回収できなかった)。当時、ブルガ リアは看護師の不足による保健医療危機を解決しようと努力していた。その金があれば、1796人以上の看護師の賃金を支払うことができた。

しかし財政的な負担は始まりでしかない。こうした訴訟ブームから利益を得る法的産業がある。この報告書は「投資仲裁産業」の主な行為者であるロー ファーム(仲裁弁護士)、仲裁者、金融業者(資本家)の行為とネットワークの実状を見せ、これにより国際投資体制がいかに維持され、拡大しているかを見せ る。

投資仲裁産業は、単なる国際投資法の受動的な受恵者ではなく、とても積極的な行為者だ。彼らは超国籍企業と強い個人的、商業的なきずなを持ち、国際投資体制を活発に防御する学界で顕著な役割を果たす。

政府を訴訟にかけるすべての機会を追うだけでなく、国際投資体制のいかなる改正にも反対する成功的かつ強力なキャンペーンを行なっている。政府(あるいは納税者)が敗訴しなくても損害で、敗訴すればなおさら損害だ。

地球的、国家的危機はISDの機会

国連は、ISDが財政、経済危機に対処する政府の能力を深刻に阻害することを認めた(UNCTAD. 2011)。アルゼンチンが2001年に経済危機に対処するための経済改革プログラムを行ったところ、40件以上の訴訟を受けた。2008年末までに12 件のISDについての判定を受けた結果、アルゼンチンが支払う賠償金は115千万ドルにのぼった(Luke Eric Peterson. 2008)。これはアルゼンチンの15万人の教師、または10万人の医師の年間平均賃金にあたる。

ギリシャが財政危機を迎えると、仲裁弁護士は企業にISDをけしかけた。ドイツのローファーム、Lutherは、依頼人に借金を返すことを敬遠する 国家では国際投資協定を基盤として訴訟をすることができると話した。そして「ギリシャの淫らな財政的処身(Greese's grubby financial behaviour)」は、気分を害した投資家に賠償金を要求する確実な理由を提供すると提案した。

米国のローファーム、K&L Gates201110月依頼人のための要約報告書でアルゼンチンに対する仲裁訴訟の一つを分析し、次のように書いた。投資協定仲裁は、「政府の債務 不履行による投資損失の被害を回復させられる」、「現在の財政危機が世界的になれば、債務機関による構造調整により損害を受ける投資家に希望を提供しなけ ればならない」。このローファームはギリシャを投資協定により、投資家の投資を保護できるかどうかを調べなければならない国家だと認識している。

また、ローファームは依頼人が政府との負債構造調整交渉で「交渉の道具」としてISDを利用し、政府を威嚇するべきだと提案した。米国のローファー ムMilbank、オランダのローファームDe Brauw、英国のローファームLinklatersはすべて同様の方針を持っている。2011年にMilbankのパートナー弁護士の収益は250万ド ルまで上がったが、ギリシャの25歳以下の労働者の一か月の最低賃金は510ユーロ(660ドル)だった。_ 20123月にEUとギリシャに金を貸した銀行、ファンド、保険者は、長い交渉の末にほとんどが償還期間を緩和することに決めた。しかしすぐいくつかの ローファームが債務スワップを受け入れることを拒否し、融資機関の代わりに数百万ドルの損害賠償を要求すると発表した。

ギリシャの負債危機に対する訴訟は、非常に収益性が高い投資仲裁ビジネスの一例でしかない。2011年にリビアに内戦が発生した時、ローファームは超国籍コミュニティに対し、リビアでの彼らの利益を守る方法についての広告を出した。

英国のローファームFreshfieldsは「設備と個人の安全と保安に関して」リビア政府が約束を守れなかったことについての金銭的補償を請求す るために投資協定を利用することができると提案した。米国のローファームKing&Spaldingも、20115月に「リビアの危機:石油会 社とガス会社に有効な法的選択肢は何か(Crisis in Libya:What legal options are available tooil and gas companies?)」というの題名の『依頼人警報(client alert)』を発行し、リビアの石油、ガス会社にISDへの関心を高めた。

保健、社会安全、環境、労働政策は高価なビジネスチャンス

仲裁弁護士にとって、公衆保健、社会安全、環境、人権を保護する政府の規制は収益性の高いビジネス機会だった。ドイツのローファームLutherは 「助けて。収用される!(helpI am being expropreated!)」というの題名のブローシャーで、投資仲裁の機会として新しい税金、新しく導入された環境法、政府規制により下げされた価格 などのシナリオを広報した。

ハンガリーが2011年に莫大な公的負債を減らすために収益性が高い企業に税金を導入すると、米国のローファームK&L Gatesは企業が選択できる投資仲裁を提案した。インドが20123月に抗ガン剤のネクサバールの薬価があまりにも高いため、強制実施を発動すると、 米国のローファームWhite&Caseは特許権を持つ超国籍企業に「BIT下で安息所を見つけるだろう」といった。

スウェーデンのエネルギー企業、バッテンフォール(Vattenfall)がドイツ政府に訴訟をしたのも同じだ。2012年の福島原発事故の後、ドイツ政府が原子力エネルギーを段階的に廃止することに決めると、37億ユーロ(46億ドル)を要求してISDを提起した。

ドイツのアンゲラ・メルケル政府は2010年に原発の段階的廃棄方針を変更し、古い原発の運転期間を814年延長した。バッテンフォールはドイツ政府の当時の決定を見た後、ドイツ、ハンブルグ付近の原発に7億ユーロを投資した。

しかし、メルケル総理は20113月、日本で福島原発事態が起きると既存の政策をひっくり返し、二つの原発を含む8つの原発を直ちに閉鎖し、2022年までにドイツ内の原発をすべて閉鎖することにした。

これに対し、バッテンフォールは自分たちの投資がすべて吹き飛んだと主張してISDを提起したのだ。バッテンフォールは、エネルギー憲章条約 (Energy Charter Treaty)の「国家は投資家に対し公正で公平な待遇をしなければならない」という条項を今回の原発訴訟の根拠とした。これは、韓米FTAにも含まれて いる。

バッテンフォールは2009年にもハンブルグ・モーアブルクの石炭火力発電所に対するドイツ政府の環境規制に対し、14億ユーロ(19億ドル)の賠償金を要求し、エネルギー憲章条約を根拠としてICSIDに提起し、2010年にドイツ政府の賠償を受け取ったことがある。

オーストラリア政府は世界保健機構(WHO)の勧告を受け入れ、タバコの箱にブランドごとにデザイン、色、ロゴを表記せず、薄緑の箱 (generic olive green packets)に製造会社・商標名を小さな文字で表記し、口腔癌、視力を失った眼球のように喫煙関連の病気の写真と共に警告の文句を大きな文字で表記さ せる法律を制定した。

http://www.redian.org/wp-content/uploads/2013/01/%ED%98%B8%EC%A3%BC-%EB%8B%B4%EB%B0%B0.jpg
オーストラリア議会の禁煙法決定で推進されたタバコの外箱の模型。これにタバコ会社は訴訟で対応した

 

201111月にこの法案が通過すると、香港のフィリップ・モリス・アジアは香港オーストラリア投資協定(BIT)を通じてISDを提起した。そ して201112月にはフィリップ・モリス、ブリティッシュアメリカ・タバコ(BAT)、ジャパン・タバコ、インペリアル・タバコの4社が、オーストラ リア政府の措置は知的財産権(商標権)を侵害し、違憲の可能性があるとし、オーストラリア高等法院に訴訟を提起した。2012815日、オーストラリ ア大法院は合憲と判決した。だがISDは進行中だ。フィリップ・モリスはカナダのタバコ規制政策に対してISDを提起すると威嚇し、カナダのタバコ規制政 策を無力化させている。

南アフリカ共和国の長い間の人種差別制度による不平等を是正するために、20041月、大統領は黒人経済育成法(Black Economic empowerment Act)に署名した。黒人が経済活動に参加する機会と恩恵を保障するため、企業に対し黒人管理者の割合、黒人の所有限度、黒人労働者の割合などを基準とし て点数を付け、政府の入札や銀行融資を優先的に支援する制度を用意した。

これに対して2007年にイタリアの鉱山会社Piero Forestiをはじめ、多くの企業が南ア・イタリアBIT、南ア・ルクセンブルクBITを通じ、ISDを提起した。南ア共和国の政府がこれらの企業に新 しいライセンスを与えることで合意した後、20108月に仲裁が終了した。

このように、ローファームは国家に対して訴訟をするあらゆる機会を探す。企業に対し、訴訟の機会についての情報を絶えず知らせることは、仲裁弁護士にとっては一番基本的な仕事だ。戦争や経済危機のような地球的、国家的な危機状況は、仲裁弁護士が利益をあげる機会になる。

そして、保健、環境、労働政策さえISDを避けられないのではなく、むしろこうした公共政策が仲裁弁護士にとってはIDSの最優先の対象だ。だが投 資家がISDを提起した時、勝算があるか、少なくともISDを提起することが利益につながる構造があるからこそ、「投資仲裁産業」がこのように成長できた のだろう。なぜ可能なのだろうか?

原文(レディアン)

この翻訳物の著作権は、原サイトの規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可に従います。

投稿者 yu 時刻: 1:52 

 

2013228日木曜日

ISD条項に関する韓国情報活動家の記事 2

不当なことで利益を得る(2)

仲裁専門ローファーム、「彼らだけのリーグ」

[情報共有と知的財産権]「ISD提起の威嚇」だけで政府の政策が挫折

Byクォン・ミラン/情報共有連帯IPLeft/ 201324日、11:35 AM

 

昨年、ローンスターがISDにより韓国政府に約24千億ウォンの損害賠償金を請求したという。このとてつもない訴訟を代理するローファームが選定 された。 ローンスターと韓国政府(法務部)は、国内の法務法人としてそれぞれ世宗(セジョン)と太平洋(テピョンヤン)を選定し、海外のローファームとしては米国 のローファームのシドリー・オースティン(Sidley Austin)とアーノルド・アンド・ポーター(Arnold&Porter)を選定したという。

シドリー・オースティンとアーノルド・アンド・ポーターは、2011年に一番多くのISDを手がけた投資仲裁専門ローファーム上位20位の5位と6 位を占めた(下表参照)。今回は、これらのローファームが投資仲裁産業の成長のために何をしているのかを調べてみよう。研究報告書「不当なことで利益を得 る-ローファーム、仲裁者、金融業者らが投資仲裁ブームをあおる方法(Profiting from injustice. How law firmsarbitrators and financiers are fueling an investment arbitration boom)」によれば、次のように要約できる。

  • 他の仲裁専門弁護士、仲裁者、資金提供者、学者と友人になれ
  • 政府公務員をスカウトしろ
  • 仲裁者になれ
  • ビジネスを創り出せ。戦争、経済危機、政治的変化に注目しろ。多国籍の依頼人にISDはそうした激変で金を稼げることを納得させろ。 
  • 「投資協定ショッピング(BIT-shopping)」をして、同じような事件で併行訴訟を追求しろ。
  • 政府を脅せ。訴訟の威嚇は政府が進んで諦めたり合意させる。
  • タダで貧しい政府の力量を強化させろ。みんな潜在的な依頼人だ。
  • 投資協定の改革に反対してロビーをしろ。
  • 投資仲裁システムを保護しろ。 

こうしたローファームの行為をこの報告書は「救急車を追いかける弁護士(ambulance chaser)」に例える。これは19世紀末に(交通)会社と被害者に訴訟を誘導し、金を稼いだことから出てきた表現だ。今日、これはグローバルだ。 カナダのヨーク大学(York University)のオズグッド・ホール・ロースクール(Osgoode Hall Law School)のグス・ヴァン・ハートン(Gus Van Harten)副教授は、「仲裁専門弁護士は、単に救急車を追う追撃者ではなく、仲裁者を兼ねて事件を作り出す」と話した。

緊密なコミュニティ、巨大なビジニーズ

国際的には3つのローファームが投資仲裁ビジネスを主導している。英国のフレッシュフィールズ(Freshfields Bruckhaus Deringer)、米国のホワイト・アンド・ケース(White&Case)とキング・アンド・スパルディング (King&Spalding)だ。 Freshfieldsは今までに165件以上のISDを担当した。2011年には3つのローファームが130件のISDを担当した。新規ローファームの 進入は難しい市場だ。

ある弁護士は、ICSID(国際投資紛争解決センター)に提起された30件の訴訟のうち25件がヘビー級に行くと推測している。投資家から訴訟を受ける国家、つまり非西欧国家のローファームにはほとんど参加する機会もない。

仲裁専門弁護士は投資仲裁コミュニティの「門番」になって、緊密にコミュニティを維持している。この小さな弁護士グループは、仲裁者とコンサルタン ト、専門家、証人を行き来して、さまざまな役割を果たす。この小さなグループの中で、仲裁判定部は仲裁専門弁護士を知り、弁護士は仲裁判定部を知る。

仲裁者と弁護士を兼ねることは何回も問題になったが、相変らず認められている。仲裁者となる25人の弁護士がいるFreshfieldsは、この市場を主導している。 また、仲裁専門弁護士はコンサルタントとしても大活躍をしている。

ゲームの不文律を知る者は別にいる

ローンスターが勝つか、韓国政府が勝つか。その答はしばしば仲裁者になってきた英国のローファーム、Herbert Smith FreehillsMatthew Weinigerに関する大学の講義から知ることができる。彼は国際商業裁判所(ICC)が作った薄い小冊子と英国の法廷規則の2冊を比較して「成文化さ れていない内容がこれほど多い。 この内容を知っているのが仲裁専門弁護士だ」と学生に説明した。

私たちが仲裁判定の結果が正しいかどうかを確かめる基準になりそうなものは存在しない。数千億ウォンから数兆ウォンにのぼる賠償金がかかる訴訟を全的に仲裁専門弁護士に依存しなければならず、彼らが多額の受託料を受け取るのは当然ではないだろうか?

降参しろと脅すこと

ISDは投資家にとって政治的な武器だ。バッテンフォールとドイツのISDに関与したローファームのLutherは、「すぐありそうな投資協定訴訟 の影の下では、解決に到達するのはやさしい」と言う。ISDを提起するという脅しや仲裁意向書を通知するだけで、政府の保健、環境政策などを挫折させた事 例は多い。

代表的な例が超国籍タバコ会社からの脅迫で、カナダ政府が進んで禁煙政策を放棄したことだ。NAFTA協定の発表から5年経った時、カナダのある元 公務員は「この5年間、新しい環境規制と提案をすると、ニューヨークのローファームから手紙が送られてきた。農薬、医薬品、特許法、ドライクリーニングの 化学薬品に関するものだった。事実上、すべての新しい試みがターゲットにされ、ほとんどは陽の目を見なかった」と話した。こうした「予防戦争(pre- emptive strike)」はますます増えるだろう。

BIT(二国間投資協定)ショッピング

仲裁専門弁護士は、最も投資家親和的な協定を選ぶ。別名『二国間投資協定ショッピング(BIT shopping)』だ。超国籍企業は同じ事件に対し、さまざまな投資協定を利用して、同じ政府を相手に何回も訴訟をすることができる。

最も有名な事件の一つが米国の化粧品会社、エスティ・ローダー(Estee lauder)の相続者であるRonald Lauderが米チェコBITとオランダ・チェコBITを利用し、立て続けにISDを提起したことだ。前者は棄却されたが、後者ではチェコは利子とともに 保健予算総額にあたる27千万ドルを支払うよう命令された。

特にオランダは多くの投資協定を締結しており、「協定ショッピングの出入口(gateway for treaty-shopping)」として有名だ。アムステルダムに基盤をおくローファームのDe Brauwは、オランダを「通じて」、開発途上国とエネルギーが豊富なところに投資しろと国際的に広告を出す。米国のローファーム、Baker McKenzieはオランダにある仲介会社を通じ、中国に投資をしろと依頼人に広告をする。

なぜなら米中投資協定はないが、オランダ・中国の投資協定があるためだ。 オーストラリア政府が20114月、今後の協定にはISDを入れないと発表すると、英国のローファーム、Clifford Chanceはまだ外国政府に訴訟をしたがるオーストラリアの企業に「とても人気がある選択」としてオランダを提案した。

増える新しい依頼人、政府を教える

仲裁専門ローファームは、政府が投資協定の交渉をして協定草案を作る時にコンサルティングをして、政策を実行するにあたり、投資訴訟の危険の処理についてもコンサルティングをして、ISDについて教育をする役割もする。

スイスのローファーム、Laliveは、開発途上国の力量強化のための国連機構UNITARのために、投資仲裁について定期的なオンライン教育コー スを運営している。貧しい国家の公務員はスカラーシップにより無料で教育を受ける代わりに、ローファームのLaliveは潜在的な新しい依頼人リストを得 るわけだ。201111月にカナ、ザンビア、リベリア、南アフリカ共和国、ウガンダ、エジプトから来た12人の政府側弁護士が、投資法と仲裁について一 週間の訓練を受けた。 この訓練は、SalansHogan LovellsVolterra FiettaAllen&Overyなどの国際的な大型ローファームがトレーナーを提供し、後援した。

投資協定と仲裁システムの変化を防ぐ

200912月、リスボン条約の発効後に、ヨーロッパはいつよりも投資協定に対して論争が続いている。その理由は、まず、リスボン条約が発効する とFTABITなど、すべての貿易協定は個別会員国が批准せず、ヨーロッパ議会の批准手続きだけ通れば発効するためだ。二番目は、EUの排他的権限領域 がサービス、知的財産権と海外直接投資(FDI)にまで拡大したためだ。

特に、投資部門をEUの排他的権限としたことで、今後EU次元の投資協定を締結する法的装置ができたが、投資政策についてのEU次元の排他的管轄権 が完全に確定したわけではない。これによりEUは、共同の投資政策が必要な状況になり、会員国はすでに締結した、あるいは会員国の間で締結されたBITと の関係をどうするのかを決定しなければならなくなった。

20107月にヨーロッパ執行委員会は、共同投資規定を立案するための方向を提示する報告書「包括的な国際投資政策の方向(Towards a comprehensive European international investment policy)」で、すでに締結された個別のBITとの過渡的な両立を認める暫定的措置についての規定を提出した。

暫定的措置の内容は、会員国が第三国と締結したBITと、会員国間で締結したBITを存続させるが、EUの法律と合わせて再協議をしなければならず、現在進行中のBIT交渉を続けるということだ。

ヨーロッパの労組と市民社会グループは、長い間、会員国のBITについて整備を要求してきた。具体的にはISDをなくし、投資家に義務を賦課して、さらに正確かつ制約的な表現で投資家の権利を明確にし、政府の統制権をはっきりさせることなどだ。

ヨーロッパ議会が20114月に発表した「未来の国際投資政策(Future European international investment policy)」という題名の決議では「投資」、「外国投資家」の概念と範囲を明確に定義し、国家安全、環境、保健、労働者および消費者の権利、文化多様 性の領域で政府統制権を保護することを要求した。ヨーロッパ執行委員会は、20126月にISD規定案も提出した。

こうした論争に影響を与えるため、国際的な大手ローファームのHogan LovellsHerbert Smith FreehillsBaker McKenzieは、EUの政策マンを招請して超国籍企業との非公式の論争を行った。ここにはISDを提起したことがあるDeutsche Bankとエネルギー企業のShellも参加した。

そして有名な仲裁者で米国のローファーム、Shearman&Sterlingの弁護士のEmmanuel Gaillardは、EU会員国間のBITを段階的に廃止しようとするヨーロッパ執行委員会の提案について、「惨めな経済的な結果」を招くと憂慮した。彼 は最低3件のEU会員国間のBIT訴訟を仲裁してきた事実から、なぜ彼がこの協定を維持しようとしているのかが分かる。

オランダのローファーム、De Brauwは、ヨーロッパ議会の議員に対して既存のBITと高い投資家保護基準を維持すべきであり、特にISDは維持するべきだという内容の書簡を送っ た。投資保護を労働や環境基準と関連させるなという内容も含まれていた。De Brauwは、オランダ・スロバキアのBITを利用して、スロバキア政府に14200万ドルを要求したオランダの保険会社Eurekoを代理している。 スロバキア政府は以前、行政府の医療民営化政策をひっくり返し、保険者に非営利目的の基盤で運営するよう要求したことによる。

回転ドア、政府から出たり入ったり

NAFTA協定の交渉家とコンサルタントの何人かは、投資仲裁産業では誰もが知る名前になった。FreshfieldsJan PaulssonKing&SpaldingGuillermo Alvarez Aguilarはメキシコ政府のコンサルタントをし、Daniel Priceは米政府側で交渉した。NAFTAが署名された瞬間、これらの弁護士は企業に対し、政府に訴訟をしろとけしかけた。Jan PaulssonDaniel Priceは有名な仲裁者でもあり、次回でも議論されるだろう。

仲裁回転ドアに属する多くの人、特に米国では政府と国際機構にバックを持っている。以前は米政府の内部にいて、現在ではローファームのWell, Gotshal&Mangesで働くTheodore Posnerは、そんな人たちが「政府の公務員が交渉する方法と問題を分析する方法を知っている」と話した。

フランスのローファーム、SalansBarton Legumは、2000年から2004年に米国の国務省で投資家の紛争から米国を防御する代表諮問委員として、新しい投資協定を発展させる支援をした。現 在はその時に得た洞察力を利用して金を稼いでいる。NAFTA協定を使い、最低52千万ドルの賠償金を米政府に要求したカナダの製薬会社Apotexを 代理している。

Legumは有名な仲裁者でもある。米国のローファーム、Greenberg TraurigRegina Vargoは、30年以上、米政府でCAFTA-DR(米国と中米6か国間の自由貿易協定)のようなFTAと、投資協定での主な交渉家として活動した。 CAFTA-DRの下で初めて提起されたISDで、Vargoは米国の鉄道投資家の代理としてグアテマラ政府から約1200万ドルの賠償金を受け取った。ある同僚によれば、Vargoよりも「CAFTAに密接で、特別な人はいない」と言う。

Anna Joubin-Bret15年間、開発途上国に投資協定問題についてコンサルティングし、国連貿易開発会議(UNCTAD)にいた。開発途上国を交渉家 で埋まった部屋に誘い、結局、数十の投資協定調印国にさせたUNCTADの悪名高い署名パーティーの代表組織者だった。現在は米国のローファーム Foley Hoagで政府側を代理して協定草案についてコンサルティングをしている。

上位20位の投資仲裁専門ローファーム

この報告書は、2011年に担当したISD件数について、上位20位のローファームを選定した。ローファームが自ら提供した情報で付けた順位だ。こ れらの情報は外部的に確認できず、情報を提供しないローファームもあるため、このリストにない国際的な巨大ローファームも投資仲裁産業で、重要な行為者が あるかもしれないということを見過ごしてはいけない。

3位になった米国のローファーム、King&Spaldindの履歴を見よう。このローファームには、ワシントン、ニューヨーク、パリ、ロ ンドン、シンガポールといった主要投資仲裁中心地で活動する50人の仲裁専門弁護士がいる。このローファームの弁護士の何人かは仲裁者としてICC(国際 商業裁判所)と仲裁機構にいる。ICSID(国際投資紛争解決センター)の最高重役だったMargrete Stevensは、17ICSIDに在籍した後、このローファームに移った。前述のように、Guillermo Aguilar-AlvarezNAFTA交渉ではメキシコ政府のために法的諮問をしていた。このローファームが20123月の時点でウェブサイトに 公開した37件 のISDのうち35件が投資家を代理した事件だ。

このローファームの成功の鍵は、アルゼンチン政府に対するICSID訴訟での勝利だった。このローファームは20122月まで、アルゼンチン政府 に対して提起された49件のICSID訴訟のうち、最低15件の訴訟で投資家を代理した。このローファームで国際仲裁グループの共同代表であるDoak Bishopは「アルゼンチンのペソ危機で発生した訴訟について諮問を求める弁護士」と認められている人だ。 彼はアジュリ(Azurix)がアルゼンチンにICSIDを提起した訴訟でアジュリを代理し、18500万ドルの賠償金の判定を受け取った。

アジュリは米国のエンロン(Enron)から分社した水企業で、ブエノスアイレスで民営化された上下水システムを買収したが、2000年に深刻な藻 類の発生などで、水質に問題が起きた。これについて地方政府が責任を問うたことに対し、ISDを提起した。このローファームの二番目の特徴は、巨大ガス、 精油会社のために活動したことだ。90年代中盤に米国の巨大精油会社テキサコ(Texaco)の訴訟を担当し始め、現在はテキサコを買収したシェブロン (Chevron)を代理している。 シェブロンはアマゾンの熱帯雨林で油田掘削による汚染を除去するため180億ドルを支払えというエクアドル裁判所の命令を避けるためにISDを提起した。

乱暴に言えば、投資協定文を作った人とISDの判定をする人と訴訟を代理する人が同じ人だったり、互いに友人になって投資家の利益を保護するシステムを拡大し、そのシステムを利用してISD件数を増やしているのだ。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       
   

ローファーム

   
   

2011
   ISD

   
   

2011
   
収入

   
   

2011
   
パートナー弁護士
   
収益

   
   

政府側 /    
   
投資者側

   
   

有名な仲裁者

   
   

備考

   
 

Freshfields Bruckhaus
  Deringer
  (
英国)

 
 

71

 
 

$1.82 billion

 
 

$2.07 million

 
 

双方。主に投資家を代理

 
 

Jan Paulsson,
  Noah Rubins,
  Lucy Reed,
  Nigel Blackaby

 
 

10年間支配的な投資仲裁専門ローファーム

 
 

White & Case
  (
米国)

 
 

32

 
 

$1.33 billion

 
 

$1.47 million

 
 

双方
 
恐らく政府側活動が多い

 
 

Carolyn Lamm, Charles Brower
  (2005
年まで),
  Horacio Grigera
  Naóon (2004
年まで)

 
 

2001年金融危機を迎えたアルゼンチンにイタリア債権所有者を代理して数十億ドルISD提起

 
 

King & Spalding
  (
米国)

 
 

27

 
 

$781
  million

 
 

$1.93
  million

 
 

ほとんど投資家のために活動

 
 

Doak Bishop,
  Guillermo
  Aguilar-
  Alvarez,
  Eric Schwartz,
  John Savage

 
 

米国石油会社Chevronを代理してエクアドルにISD提起
 
米国企業Rencoを代理しペルーに8億ドルを要求してISD提起

 
 

Curtis
  Mallet-Prevost, Colt & Mosle
  (
米国)

 
 

20

 
 

$165
  million

 
 

$1.54
  million

 
 

政府

 
 

ベネズエラ、カザフスタン、トルクメニスタンなどの政府を代理、20012012年に収益が50%増加

 
 

Sidley
  Austin
  (
米国)

 
 

18

 
 

$1.41
  million

 
 

$1.60
  million

 
 

双方
 
恐らく企業側の活動が多い

 
 

Stanimir
  Alexandrow,
  Daniel Price
  (until 2011)

 
 

ウルグアイにISDを提起したフィリップ・モリスを代理

 
 

Arnold
  & Porter
  (
米国)

 
 

17

 
 

$639
  million

 
 

$1.40
  million

 
 

双方
 
恐らく政府側活動が多い

 
 

Jean Kalicki,
  Whitney
  Debevoise

 
 

カナダにISDを提起した米国製紙会社Abitibi-Bowaterを代理。この会社の工場閉鎖に、カナダ地方政府が伐採権と採取権を撤回したことにISDを提起。その結果カナダはNAFTAでのISD中でこれまで最高の賠償金の13千万ドルを支払った。  

 
 

Crowell
  & Moring
  (
米国)

 
 

13

 
 

$329
  million

 
 

$845
  thousand

 
 

ほとんど投資家のために活動

 
 

エルサルバドルが金採堀権を認めず、エルサルバドルGDPの約1%を要求して訴訟したカナダの鉱山会社Pacific Rimを代理

 
 

K&L Gates
  (
米国)

 
 

13

 
 

$1.06
  billion

 
 

$890
  thousand

 
 

双方

 
 

Sabine Konrad

 
 

バッテンフォールとドイツとの訴訟でSabine Konradがドイツ政府諮問  

 
 

Shearman
  & Sterling
  (
米国)

 
 

12

 
 

$750
  million

 
 

$1.56
  million

 
 

双方
 
ほとんどの訴訟で投資家の諮問

 
 

Emmanuel
  Gaillard,
  Philippe
  Pinsolle,
  Fernando
  Mantilla-
  Serrano,
  Yas Banifatemi

 
 

仲裁者Emmanuel Gaillardはこのローファームの最高位者で、投資法と仲裁に対する学問的、政治的論争に絶えず介入  

 
 

DLA Piper
  (
米国)

 
 

11

 
 

$2.24
  billion

 
 

$1.22
  million

 
 

双方

 
 

Pedro
  Martinez-Fraga

 
 

世界2位ローファーム。ベネズエラを相手にICSIDに提起された何人のISDで投資家を代理

 
 

Chadbourne & Parke
  (
米国)

 
 

$306
  million

 
 

$1.31
  million

 
 

投資家

 
 

不透明な投資仲裁の代表的な例。2011年に11件のISDに介入したがウェブサイトに何も公開していない

 
 

Cleary
  Gottlieb
  Steen &
  Hamilton
  (
米国)

 
 

$1.12
  million

 
 

$2.69
  million

 
 

双方

 
 

Telecom Italiaを代理。Telecom Italiaの少ない投資と欠陥サービスにより、ボリビアがEntelを国有化したためISD提起。その結果ボリビアは1億ドルを支払った

 
 

Appleton
  & Associates
  (
カナダ)

 
 

$
  million

 
 

$
  million

 
 

投資家

 
 

NAFTA発効後、初めてカナダに対するISDを提起。精油会社Ethylとカナダの訴訟で1300万ドルの賠償判定を受ける。このローファームは今も定期的にカナダ政府に訴訟を提起

 
 

Foley
  Hoag
  (
米国)

 
 

$149
  million

 
 

$1
  million

 
 

政府

 
 

Mark Clodfelter

 
 

主に政府のために活動。数人の弁護士が政府にバックグラウンドを持つ

 
 

Latham &
  Watkins
  (
米国)

 
 

$2.15
  billion

 
 

$2.27
  million

 
 

双方

 
 

Robert Volterra
  (2011
年まで)

 
 

世界4位ローファーム。アラブの春の後、エジプトの裁判所がムバラク政権下で取得した繊維工場を返還しろとIndoramaに命令したことにISDを提起。
  Indorama
を代理

 
 

Hogan
  Lovells
  (
米国/英国)

 
 

$1.66
  billion

 
 

$1.16
  million

 
 

双方
 
恐らく政府側活動が多い

 
 

インドネシアの裁判所がボルネオで英国のChurchillの炭鉱業許可が偽造されたと判決。許可を取り消されたChurchill20億ドルを要求しISDを提起。Churchillを代理

 
 

Clyde & Co
  (
英国)

 
 

$460
  million

 
 

$915
  thousand

 
 

双方
 
恐らく企業側の活動が多い

 
 

リビアのカダフィ政権退陣後に初めてリビアで開業した外国ローファーム

 
 

Norton Rose
  (
英国)

 
 

$1.32
  billion

 
 

$620
  thousand

 
 

投資家のために活動する傾向

 
 

Yves Fortier
  (2011
年まで)
  MichaelLee
  (2001
年まで)

 
 

カナダへのISDで投資家を代理してきたカナダのローファームOgilvy Renault2011年に合併。
  Yves Fortier
2011年まで50年以上このローファームで働く。  

 
 

Salans
  (
フランス)

 
 

$260
  million

 
 

$725
  thousand

 
 

双方
 
恐らく投資家側の活動が多い

 
 

Bart Legum,
  Jeffrey Hertzfeld,
  Hamid Gharavi
  (2008
年まで)

 
 

Barton Legumは米政府弁護士でいくつかのNAFTA紛争で米国を防御。現在は米国に訴訟をしたカナダ製薬会社Apotexを代理

 
 

Debevoise
  & Plimpton
  (
米国)

 
 

$675
  million

 
 

$2.07
  million

 
 

ほぼ100%投資家を代理

 
 

Donald Francis
  Donovan

 
 

最大の賠償金判定を受けたICSID紛争で投資家を代理。米国精油会社Occidental Petroleumが環境汚染によりアマゾンでオイル生産を中断させられたことでエクアドルに訴訟をして、賠償金176千万ドルの判決を勝ち取る

 

前の記事: ISD条項に関する韓国情報活動家の記事 「不当なことで利益を得る(1)

原文(レディアン)

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投稿者 yu 時刻: 1:47 

2013316日土曜日

ISD条項に関する韓国情報活動家の記事 3

不当なことで利益を得る(3)

ISDの守護者、仲裁者クラブ

By クォン・ミラン/情報共有連帯IPLeft / 2013220日、4:32 PM

最近、ローンスターと韓国政府が仲裁者を選任した。ローンスターが仲裁者に指名したチャールズ・ブロワー(Charles Brower)は、2005年までの37年間、米国のローファーム、ホワイト・アンド・ケース(White&Case)に在籍し、この報告書が選 定した国際仲裁市場を牛耳る仲裁者の2位に選ばれた人物だ。

ブロワーは、これまで知られている450件のISDのうち33回仲裁人に指名され、このうち94%は投資家により指名された。続けて韓国政府も仲裁者にブ リジット・スターン(Brigitte Stern)を選任したという。ブリジット・スターンは、この報告書が選定した仲裁者の1位だ。この報告書は仲裁者が決して中立的でないどころか、企業に 好意的な投資仲裁システムを作るパワーのある行為者になる理由を暴露している。

仲裁「マフィア」

仲裁者たちは、あまり世の中に知られていない。だが仲裁者は互いをよく知っている。学界とジャーナリスト、そして内部の人たちは、彼らを「小さくて、秘 密っぽく、クラブ風の」、「インナーサークル(inner circle)」あるいは「仲裁『マフィア』」と描写している。クラブを小さく維持することは、仲裁者が投資仲裁システムをしっかり捉えていることを意味 する。

匿名の国際法研究者によれば、似た価値、似た教育、似た観点でまとまった小さなコミュニティが維持されるため、投資仲裁システムが見えないという。彼によ れば、仲裁システムの動き方についての仲裁者間の一貫した観点は、仲裁システムの生存に必須だと彼は主張する。だから仲裁者たちは「そのシステムを守る役 割を果たす」のである。

この報告書では、これまでに知られている450件のISDを担当した仲裁者が誰なのか、投資家が要求した賠償金額がいくらなのかを調査した(最終的に判定 された賠償金額は分からないことが多い)。仲裁をした件数が多い順に15人のエリート仲裁者を選定した(下表参照)。単に15人の仲裁者が今までに知られ ている450件のISDのうち247(55%)を担当した。圧倒的に集中している。

そして、2003年から2010年に提起されたISDのうち、投資家が請求した賠償金額が1億ドル以上の事件を調査して順位を付けた。2010年までの ISDで、一番高額な賠償金を請求したのは、エネルギー会社のYukosHulleyVeteran Petroleumがロシアを訴えた訴訟だ。1036億ドルを請求した。次はConocoPhillipsがベネズエラに300億ドルを請求した。

15人のエリート仲裁者たちは、1億ドル以上の賠償金が請求されたISD 123件のうち79(64%)を担当し、40億ドル以上の賠償金が請求されたISD 16件のうち12(75%)を担当した。賠償金が大きいISDほど、15人のエリート仲裁者に集中していることが分かる。

http://www.redian.org/wp-content/uploads/2013/02/1-e1361345450800.png
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投資仲裁システムの生存は、相互にとても強い凝集力でつながった小さな仲裁者クラブ次第だと言える。15人のエリート仲裁者たちは、皆少なくとも1回は同 じ訴訟で他のエリート仲裁者と共に仲裁判定部を引き受けた。15人のエリート仲裁者が共に仲裁判定部を担当したISD69件あった。

Marc LalondeFrancisco Orrego Vicunna5回、同じ仲裁判定部を引き受け、L Yves FortierStephen M. Schwebel5回同じ仲裁判定部を引き受けた。Brigitte SternMarc LalondeGabrielle Kaufmann-Kohlerとそれぞれ5回ずつ同じ訴訟で仲裁判定部を引き受けた。その上、ローンスターと韓国政府が選任した仲裁者のCharles BrowerBrigitte Sternは、4件のISDを共に引き受けた。場合によっては3人の仲裁判定部を15人のエリート仲裁者に入る人が引き受けた。こうしたケースは15件も あった。

このうち、3人の仲裁判定部とどちらかの代理人が15人の仲裁者に入っているケースは7件ある。代表的な例としては、歴代最高の賠償金1036億ドルを要 求したYukosHulleyVeteran Petroleumとロシアとの訴訟で、仲裁者パネルはYves FortierDaniel PriceStephen M. Schwebelだ。Emmanul Gaillardは投資家を代理した。

ロシアは2002年までエネルギー産業民営化を推進し、20035月に「ロシア エネルギー戦略:2020年まで」を発表し、エネルギー産業に対する国家統制を強化して、大企業形態の国営エネルギー会社の育成計画の下で、2004年か ら民間企業による運送パイプライン建設を禁じ、外国系会社の持分を49%までに制限した。

こうしたロシアのエネルギー戦略の実行の過程で、2003年に当時ロシアで1位のエネルギー企業だったYukosの会長が、脱税や横領で拘束され、2004年には未納税額のためにYukosの資産が押収されて競売が行われた。

これに対し、Yukosの株式を持っていた3つの企業は2005年、ロシアを相手にエネルギー憲章条約を利用してISDを提起した。3つの企業を代理した ローファームのShearman &Sterlingが発表した依頼人機関誌「ユーコス:エネルギー憲章条約に対する歴史的な決定(Yukos:landmark decision on the energy charter treaty)」によれば、ロシアは1994年にエネルギー憲章条約に署名したが国内批准をしておらず、20098月にエネルギー憲章条約の会員国にな らないと発表した。しかし仲裁判定部は20091130日、Yukosなどがエネルギー憲章条約を利用してISDを提起することを認めると判定した。

同じISDで、仲裁と代理を同じローファームが担当したケースもある。特に、このような場合はISD制度の公正性を問うこと自体が無意味だ。 Bayindir Insaat Turizm Ticaret Ve Sanayi A.S.とパキスタンとの訴訟で、Essex Court Chambersに所属するStephen M. Schwebelが企業側を代理し、同じ所属のKarl H Bockstiegel3人の仲裁判定部の1人になった。同時に所属が同じ2人の弁護士が、パキスタン政府を代理した。

Chambersはローファームではなく、いわゆる自営業者弁護士の「職務共同体(office community)」と言えるので問題にはならないと主張するが、HEPとスロベニアとの訴訟で国際投資紛争解決センター(ICSID)の仲裁判定部 は、仲裁判定部議長のDavid A.R. Williamsと、スロベニアが代理人に選定したDavid MildonEssex Court Chambersに所属しているため、スロベニア政府はDavid Mildonに弁護を任せられないと決めた。

仲裁者の多くの地位

仲裁者は、弁護士、あるいは専門家として、証人としてISDに直接参加したり、政府の代表者や諮問を引き受けて政策に影響を与え、学界で問題を提起し、企 業の代わりにロビイストとして活動したり、企業の理事会に参加する。これにより彼らは投資仲裁システムを維持し、利益を得る。こうしたことは、仲裁者に とっては平凡なことだ。

ローンスターと韓国のケースも同じだ。韓国政府の代理をしたアーノルド・アンド・ポーターのジーン・カリッチ(Jean Kalicki)とローンスターを代理したシドリー・オースティンのスタニミール・アレクサンドロウ(Stanimir Alexandrow)は、有名な仲裁者でもある。

この分野でとても華麗な履歴を持つ人を紹介しよう。ダニエル・プライス(Daniel Price)だ。プライスは典型的な投資仲裁チャンピオンではないが、一番多くの地位についた仲裁者を選べと言えば、当然プライスが1位だ。

投資協定交渉家、ISDを擁護する企業ロビイスト、企業の利益を防御するコンサルタント、新自由主義を促進するメディア解説者、仲裁者、これらはすべて彼 の履歴だ。プライスは過去20年間、何回も回転ドア人事を経験した。プライスは、自分が交渉を促進した投資協定の受恵者だ。米貿易代表部の責任法務諮問委 員になり、米露BIT(1992年署名)の交渉をした。彼はもまたNAFTAの投資保護条項について交渉した。彼は投資家-国家訴訟条項を考案し、企業に この条項を利用して政府に対する訴訟を要求した初の米国弁護士の1人として知られている。

1992年、彼は初めて政府の要職から離れた。彼は投資仲裁産業に無限の利益を創出する可能性を見つけ、その産業を発展させることにした。2002年から 2006年に、彼はメキシコ政府を相手にアリアンツ(Fireman's fund insurance)の代理となった。訴訟の間、アリアンツのためにホワイトハウス、米貿易代表部、国務省、商務省にロビーを行った。

また、モンサント、国際投資機構、米国の製薬会社と生命工学会社のためのロビイストとしても活動した。Yukosなどがロシアを相手にISDを提起した2005年から、ホワイトハウスの招請を受ける2007年まで、Yukosが指名する仲裁者だった。

プライスは米国のローファーム、Sidley Austinで国際投資紛争解決担当部で議長として4年間活動した後、2007年にジョージ・ブッシュ大統領の高位級の経済諮問を担当し、また米政府に戻った。

2008年に国際経済危機が頂点に達した時、彼は解決の方向性についての論争に影響を与える位置にあった。彼はG8(東京)でブッシュの特別代表を引き受 け、2008年にワシントンで開かれた初めてのG20首脳会談を陣頭指揮した。G20は「私的財産の尊重、貿易と投資開放、競争的市場を含む自由市場の原 則について約束すれば、われわれはこの改革が成功するだろうということを認める。開発途上国を含み、われわれは経済的成長に害を与え、資本の流れを悪化さ せる規制を避けなければならない」と話した。まさにプライスが支持してきた措置だ。

彼は2009年にローファームのSidley Austinに戻り、2011年にまた辞めた。彼はビジネスコンサルタント会社のRock Creek Global Advisorsと独立の法律業務の両方を始め、企業との関係を振興させる計画だ。彼は自分を中立的仲裁者と言い、企業に対し政府の規制を避ける方法につ いてコンサルティングをする。

投資協定に署名すること

誰もがご存知の通り、投資協定のISDでは、政府に訴訟をすることができるのは企業だけだ。仲裁専門弁護士や仲裁者にとって、この言葉は投資協定がなけれ ば訴訟もなく、訴訟がなければ仲裁者や代理人には選任されないということを意味する。したがって、投資仲裁産業を成長させるには投資協定の締結を要求する ことが必須だ。

1990年代にJan PaulssonNAFTA協定11(投資保護)の交渉でメキシコ政府の諮問をした。そして彼は企業がメキシコ政府に提起した2件のISDで、仲裁判 定部を引き受けた。Emmanuel Gaillardは政府の諮問は引き受けなかったが、2010年にモーリシャスで開かれた公開カンファレンスを活用して、モーリシャス政府が投資協定に署 名するように奨励した。米政府を代表して、NAFTA11(投資保護)の交渉を率いたDaniel Priceは、当時メキシコ政府がISDを受け入れるように積極的に圧力を加えた。その結果、メキシコ政府は別名Calboドクトリンと言われる原則-国 内裁判所だけが外国人投資家が提起した訴訟の司法権を持つ-を捨てた。Calboドクトリンは、メキシコ憲法の一部だった。その後、プライスは米国企業の Tate&Lyle Ingredients AmericasFireman's fund insurance(アリアンツ)がメキシコ政府に対して訴訟をした時、これらの企業の代理をした。

曖昧な規則、さらに多くの訴訟

前編で言及したように、仲裁機構は特別な仲裁基準や規則は持っていない。投資協定文だけが根拠だ。したがって、投資協定の条項が曖昧であるほど、正確性が低いほど、企業が訴訟をする機会が多くなる。

国連国際貿易法委員会(UNCTAD)は「国際投資協定の条項は、厳密に表現されていない」と指摘した。その結果、投資協定の曖昧な規則を仲裁者がいかに解釈するかに全てがかかっている(UNCTAD 2011)。規則が曖昧なほど、仲裁者の役割が重要になる。

投資家にとって、公正かつ平等な待遇を提供する政府の義務(fair and equitable treatment、公正衡平待遇と呼ばれるようになる)ISDの重要な理由として登場した。

国連国際貿易法委員会(UNCTAD)によれば「投資家が訴訟を提起するとき一番よく依存し、最も成功的な根拠になっている」この条項は、一番質が低く、 不明確な条項の一つだ。また、仲裁者が「公正で平等な待遇の概念を広く解釈してきた」と指摘し、「結論は、限りなく不均衡的な接近になる。投資家の利害を 擁護し過ぎている」と結論した(UNCTAD 2012)

20105月までに結果が公開されている140件のISDについての統計研究(2012)で、Gus Van Harten教授は仲裁者たちが投資概念、法人投資家、少数株主権、併行訴訟といった問題について、請求人(投資家)に都合がいいように拡大解釈する傾向 が強いことを確認した。また仲裁判定では、投資家の国籍が強く作用する傾向を確認した。投資家が米国、英国、フランス、ドイツ国籍であれば、仲裁者は拡大 解釈する傾向を見せた。

仲裁者が投資家の代理になる時も同じだ。NAFTA協定によるFireman's fund(アリアンツ)とメキシコの訴訟で、投資家はメキシコ政府が財政的投資を収用したと主張した。これは、メキシコ政府が1997年の金融危機の時に 取ったエネルギー措置の結果だった。この訴訟の判定では、NAFTA協定受け入れ条項の解釈が決定的だった。噂によれば、投資家の代理をしたDaniel PriceStephen M. Schwebelは「収用」が財産権の没収概念より広い方式で解釈されるように主張する82ページの報告書を提出した。

しかし仲裁者たちは、人権と社会権についての国際法の接近は制限的だ。20125月にヨーロッパ憲法と人権センター(ECCHR)は、ジンバブエに対し て提起された2件のISDについて仲裁判定部に声明書(法廷助言)を提出しようとした。木材農場に関する訴訟だったが、ヨーロッパ憲法と人権センター (ECCHR)は紛争中の農場は先住民の先祖が住んでいた区域にあるとし、裁判の結果が土地に対する土着共同体の権利に影響すると主張した。

Yves Fortierが議長になった仲裁判定部はこうした憂慮を聞くことも拒否した。国際司法裁判所判事のBruno Simmaは、「経済的、社会的権利を考慮することは、投資家国家仲裁では例外」だと指摘した。

投資協定の改革を防ぐこと

ローンスターが選任した仲裁者のCharles Browerが「国際仲裁の基本的な要素を変えるいかなる提案も、仲裁機構には受け入れられない攻撃になる。反対に、こうした基本的な要素を強化する提案 は、注意深く考慮されるべきだ」と言う程、投資仲裁システムの変化に反対する。

前編で、リスボン条約の発効後、ヨーロッパの投資政策について仲裁専門ローファームと有名な仲裁者が影響を及ぼす方法について言及したが、米国でも似たようなことがあった。

NAFTA協定の下でカナダの企業から、何回も訴訟にあった米政府が、2004年に1994 BITモデルを修正し、新しいBITモデルを導入した。2004 BITモデルは、米政府が特に保健と環境の領域で統制権を発揮できる政策空間が若干導入されたが、期待できるようなものではなかった。

米政府で要職に付き、20年間国際司法裁判所の裁判官を歴任した有名な仲裁者のStephen M. Schwebelは、こうしたささいな変化さえ非難した。米国を代表して投資協定の交渉をしたDaniel Priceも反対した。最も有名な仲裁者のひとりであるWilliam W. Parkは「こうした政策の変化は問題が多く、海外の米国投資家に相当な被害を引き起こすだろう」と話した。

そして2009年にオバマは大統領候補として、労働と環境に対する義務を強めるために2004モデルを再検討することを約束した。だが2012年に出され た新しいBITモデルは、実質的な変化はなかった。201258日のTPP(環太平洋経済パートナー協定)交渉のために時を合わせて発表されたものだ という。

主な変化は、これまでのISDに対する批判を反映させ、投資により「労働と環境」を傷つけないようにすること、「将来は控訴制を導入」してISDの透明性 と公正性を強化することだ。だが3人の仲裁者が下した決定により、政府が損害賠償をする構造には変わりはなく、投資家が損害を受けないように国家主導経済 を制限したため、実効性については批判的がある。当時、米国政府の諮問委員会の一員だったStephen M. Schwebelは、1994年モデルに戻すことを支持した。

最近では南米国家連合(UNASUR)が、国際投資紛争解決センター(ICSID)に代わる仲裁センターの建設を議論している。エクアドルのコリア大統領 は、南米が自主的に紛争解決機構を創立することを提案し、ベネズエラのチャベス大統領もエクアドルの提案を支持している。チリ出身の有名な仲裁者、 Francisco Orrego-Vicunaは、「非常に投資家親和的と見なされるICSIDのような機構を代替するという提案は良いアイディアではないと思う。なぜな ら、そんな機構はほぼ確実に非常に政府親和的と認識されるだろうし、投資家は満足しないだろう」と主張した。

一方、投資仲裁システムに対する批判が強まっていることで、エリート仲裁者たちは現システムの基本には触れず、妥協する方案を探している。例えば William W. Parkは、政府の統制がきく政策空間を回復させる立場をある程度受け入れ、「さもなくば投資家国家仲裁は投資家の勝利に反発する大衆的な圧力の犠牲にな りかねない」と指摘した。

Honatiauはもっと直接的だ。彼は仲裁システムのすべての参加者の役割を再検討し、システムの作動方式の変化を受け入れる必要性を認め、「こうした 代価を払うことによってのみ、数十年間、仲裁者は国際的な取り引きの「天賦の裁判官(natural judge)」として残ることができる」と話した。

Jan Paulssonは仲裁機関がさらなる透明性を持つために、紛争当事者が仲裁者を選任せず、仲裁判定部全体を選任するべきだと提案したが、仲裁システムの 投資家に親和的な偏向については触れない。彼は国連の国際貿易法委員会(UNCITRAL)の規則に透明性の条項を入れる試みを阻止しようとするバーレー ン代表を防御した。Charles Browerは仲裁コミュニティが「システム全体の根本的な再設計を要求しない」程度の大きさの改革だけしか受け入れる準備ができていないと指摘する。つ まり、小さな改正を受け入れることで仲裁システムの構造的な変化を未然に防ぐのである。

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原文(レディアン) 

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投稿者 yu 時刻: 16:51 

 

 

 

 

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