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2015年5月18日 (月)

TPP阻止国民会議 TPAに関する事務局長見解

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                    2015年5月16日
TPA法案の今後について
                           TPP阻止国民会議
事務局長 首藤信彦

当初、TPP反対の市民団体やNGOなどが考えていたシナリオは、まず上院で採決にむけて審議が始まり、と同時に民主党側から多数の修正動議などが出されて紛糾するが、結果的に早期に上院を通過して、下院に送られ、そこで激しい議論と議事妨害(フィリバスター)で審議が延々と遅滞し、迫り来る大統領選の余波を受けてTPA(ファーストトラック)法案の成立が困難となる。。。というものだった。
ところが今週火曜(5月12日)に上院で採決への審議を始める動議の投票で、なんと賛成票が必要とされる60票に届かず、上院での審議がスタートしないという珍事が発生した。この展開にはオバマ大統領や推進派どころか、反対派も驚愕した。この推進・反対派のせめぎ合いは本質的な対立内容の審議ではなく、法案提出の形態(パッケージ化)をめぐっての議運技術上の問題であるから(以下に状況解説)、大統領が直接反対派/慎重派の説得に乗り出して、少なくとも審議には入ることでは合意をみた。基本的に政治家は「審議拒否」と非難されると立場が苦しいものである。
しかし、これによって、審議開始は一週間遅れの5月19日(火曜)となった。この一週間一週間の遅れがTPA法成立ひいてはTPP合意に致命的な影響を与えることになるだろう。
 以下にこの間の顛末およびワシントンの諸団体からの情報を元に、TPA法の今後の帰趨について、現時点での理解をもとに解説したい。

ホワイトハウス・産業界など推進派の強烈なロビー活動にもかかわらず、TPA法案は議会で障害に乗り上げた状態が続いている。TPA法案の成立はここまでの数週間よりもさらに不確実なものになった。法案審議を進めるための手続きが5月12日上院での投票によって否定され、ワシントン中に衝撃波が広がった。同時に、アメリカ議会は今後、厳格な通貨操作禁止条項(罰則規定を含む)を持たないTPPを成立させることはないという強いメッセージが周囲に伝わった。
民主共和の上院指導部はTPA法案審議を予定通り進めようという合意に達しているが、予期せぬ遅滞そして上院における民主党議員の前例のない造反は、いまや下院におけるTPA反対派に一層の油をそそぐことになった。下院では現時点でもTPA法案成立には依然として12人程度足りない。
かくして、以前に予定された5月26日-28日のTPP閣僚会合前に、議会がTPAを成立させることは不可能である。
さらに付け加えれば、そもそも上院においてすら、5月25日より6月1日までの(上下院)一週間の休暇の始まる前に、審議を終了させることはきわめて困難である。すべては6月1日に選挙区から戻ってきた議員が議会に姿を現してからとなろう。
このように当初5月末と予定されていたTPA法案の成立が、一週間また一週間と遅れてくることが、今やこのTPP/TPA問題が2016年次期大統領選挙のテーマとして浮上している状況では、TPA法案を早期に成立させることを一層難しくしている。

12日の上院での審議手続き上の失敗によって、アメリカ上院自体が、上院においてすらTPA反対および通貨操作禁止条項への固執の高いレベルを暴露してしまった。このことは事態をそばで見ている観察者にもショックを与えたほどだ。
そもそも、TPA推進者がまず上院にこの法案を送った理由は、この法案が上院を簡単にそして大差をもって可決成立し、そのことが、現在でも法案成立の見通しが立たない下院におけるTPA法案成立に弾みをつけることになると期待したからである。
そうした戦術に頓挫しただけでなく、このことによって逆に、オバマ大統領のTPPアジェンダは、自分が所属する与党民主党の議事妨害(フィリバスター)によって苦しめられ、大統領自らが乗り出しての民主党議員説得がまったく効果がなかった、すなわちオバマ大統領のリーダーシップの欠如を明らかにした。大統領が直接談判しても民主党上院議員で心変わりして法案審議に協力したのはたった一人だけというありさまだった。この結果、TPA法案審議は審議開始に必要な60票に達せず(賛成52-反対45)審議開始にいたらなかったのである
12日のTPA法案脱線にはその背後に二つの問題がある。ひとつは、上院では、貿易協定全般そして何よりもTPPに関して、通貨操作禁止の厳格なルールを設けるべきだと考える強硬派が大多数だということである。多数野党の共和党リーダーのミッチ・マコーネル上院議員は通貨操作問題を含む関税法案からTPA法案を切り離したい意向だった。それは通貨操作禁止に反対ではなく、審議運営上の方策だ。一方で、民主党リーダーのハリー・リード上院議員はTPAから通貨操作問題を切り離すことは受け入れないと主張。結果、ホワイトハウス側の執拗なロビー活動にもかかわらず、上院の民主党議員はリード上院議員の側についた。
もう一つの問題は、この6月1日には期限切れとなる緊急性の高い法案、たとえばもし失効すれば数万人の雇用喪失につながる高速道路建設への資金供給法案などの審議の前に、貿易法案などを審議すべきだという、それなりに筋の通った主張だ。

ワイデン上院議員は民主党側のTPA法案共同提出者であったが、リード上院議員とともに、TPA法案審議開始に反対票を投じた。なぜなら、彼は、他の上院における緊急度の高い法案を優先し、貿易の不利益として転職せざるをえない労働者への支援(TAA)、通貨操作問題を含めた関税制度の強化、アフリカ諸国への非互恵的市場アクセスの改変などを含む貿易関連法案の一括提出でなければ、TPA審議に応じるべきでないと確信するからである。
一方、共和党指導部側はこのような法案とパッケージ化させるべきでないと考える。その理由は第一に、ほとんどの共和党議員は貿易協定の結果によって職を失う労働者への包括支援策(TAA)に反対だからである。このような形で上院で法案を通してしまうと、ただでさえ下院においてはホワイトハウス側は法案成立にすでに十数名も欠けている状況において、さらに今度は、共和党側から法案にNOを言う議員を出したくないからである。
第二の理由は、通貨操作禁止の問題は、ホワイトハウス側はそれをポイゾンピル(毒薬)と宣伝し、そのような通貨操作禁止条項つきのTPP協提案を出せば、協定にはサインしない国もでてきてTPP自体も成立しなくなるとほとんどの上院議員は信じ込まされているからだ。しかし、TPAを支持してくれる民主党議員の一部も、強固な通貨操作禁止条項なしのTPP協定には最終的に反対するに違いない。
TPAの審議が上院で始まれば、それは激しい熱気をはらんだ論争に満ちたものになり、議場で数多くの修正要求が出されることになる。これによって、少なくとも最初の上院法案にさらに何らかの修正が幾つかつくことになる。そうすると、法案が上下両院で通過するには、今度は下院での法案も同じ修正案を採用するか、「協議委員会」での統一化が図られることになる。特に、より厳格な通貨操作禁止条項を要請する修正案は必ず議場で再登場し、上下両院でこの問題に関して広範な両党共通合意があることを考慮すると、おそらくは上院の議場で通過することになろう。
現時点では、上院での審議状況に注目が集まっている以上、下院の共和党指導層はこの問題が下院で審議を開始することなく、まず上院でTPA法案が採決されるまで、待つ意思であることを公言している。下院の面子としても、そういうことになろう。
となると、昨日の上院での票決を考えると、上院での採決までにようする時間を考えると、下院では6月末まではTPA法案の審議に入らないことを意味する。

本来、アメリカの政治システムにおいては、TPAのような財源法案関係は、まず下院で審議をスタートしなければならない。下院の指導層が、このTPA法案にかぎっては、手をこまねいて上院での審議を見守らなければならないということ自体、議会運営上深刻なトラブルなのだ。上院でこの法案が上程され、さらに議場で票決にかけられるということは、下院での通過が極めて絶望的で通常の議会運営手続きが放棄されることを意味するといっても過言ではない。さらに、上院で最終的に成立した法案は、当初案より確実に多くの修正が付随し、それらは今度は下院にては受け入れがたいものとなる。
可能性は乏しいが、逆に下院が意を決して、同様の法案を独自に立ち上げた場合、下院案は上院案とは異なったものとなり、両法案の統合化が図られ、上下両院でそれぞれ票決にかけられ、さらに遅延と脱線の可能性を増大する。

下院における票読みは、あれほど激しくホワイトハウスがロビー活動したにもかかわらず、最後に推計されたものからあまり変化がない。それは下院の共和党指導層とホワイトハウス側(両者はTPA賛成票を確保するために協働しているらしい)の厳しい意見交換でも裏打ちされている。下院の共和党議員だけでTPA通過に十分な票があるのかを聞かれたジョン・ベイナー下院議長は「オバマ大統領自身がやるべきことをしっかりやれ」と何度も繰り返し、さらに「ヒラリー・クリントン議員もオバマ大統領が民主党議員を説得するのを支援すべきだ」とさえ言い放った。これに対して、ホワイトハウス側は共和党指導層のコメントは「暴言だ」とコメントした。法案を救うために票を必要としている指導者の言うべき意見じゃないだろう。

先週、オレゴン州ポートランドのナイキ本社で行われたオバマ大統領のTPPに関する演説は、民主党支持層をTPA支持に向かわせるためのものだったが、実際はまったく裏目に出た。この注目された演説であったが、オバマ大統領が雇用の海外流出と極端な低賃金生産のシンボルとしてナイキ社を選んだということを聞かされた大統領支持基盤側のショックと不満は大きく、ほとんどの報道がそういた点にハイライトを当てた。オバマ大統領はオレゴン州の各地で多くの抗議を受け、かれの同僚議員でもあるエリザベス・ウオレン上院議員への容赦ない激しい言葉たとえば「まったく間違っている」「くだらないでっちあげ」のような表現が、民主党内の、本来彼が最も納得させなければならない層の不満を一層拡大させた。

重要なことは、このような状況はアメリカ国内だけでなく、TPP参加国でも報道され、特に政策に影響を与えるエリート層は、ABCやCNNのニュースのみならず、アメリカ議会のインターネット中継などをモニターして、状況をより正確にまた敏感に把握していると考えられることである。このことが、最近、各国が「TPA法案が成立するまでは、自国の譲歩案を示せない」と慎重姿勢を明確にしはじめたことと関係があると思う。
そう考えると、12日の上院での審議開始否決がTPAいやTPPの今後に与えた影響はきわめて大きい。5月19日で上院スタートなる審議がはたしていつ終って、下院の出番になるのか、大統領選の前哨戦キャンペーンが次第に激化していくなかで、TPA法案審議の一週間一週間がTPPの運命を決定することになろう。     

 以上

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