日弁連会長の安倍話法 だから刑事訴訟法一括改正には反対しなさいな
刑事訴訟法一括改正案の問題点を簡単にまとめておきます。
第1に、盗聴法の拡大強化。
全国の警察施設で警察官が立会人なしで盗聴できるようにします。
盗聴対象となる犯罪は、窃盗・傷害などを加え、飛躍的に拡大し、「犯罪予防」のあらゆる口実で、全市民社会の盗聴が可能になります。
第2に、司法取引の導入。
捜査機関が、被疑者や被告人に対し自分の刑を軽くする代わりに「他人の刑事事件に関する事実」を明かすよう「取引」する制度です。
他人を売り渡すことを奨励し、権力が狙った人物に犯罪をでっち上げることが自在に出来るようになり、弁護人も協力を求められます。
第3に、「匿名証人」を認めます、
被告人や弁護人に氏名や住所を明かさない証人を認めます。
警察署や検察庁からビデオリンクの証言が許され、”おとり捜査官”が身分を隠してウソの証言をすることが可能になります。
こうした刑事訴訟法一括改正に反対している弁護士会は22弁護士会と言われています。
速やかな成立を求める弁護士会は、さすがに多分、存在しないでしょう。
ところが、総本山の日弁連会長は、「速やかな成立を強く求める」を言うのです。
現在、各単位会は、戦後最悪の戦争法制反対の運動に力を注いでいます。
刑事訴訟法改正が戦争法制と一体をなす弾圧立法の不可欠なツールである(マチベンの立場では企業支配国家の確立のためにも不可欠です)ことは明らかですが、日弁連会長は、前者の反対の音頭はとるが、後者には賛成し、速やかに成立せよと言っているのです。
前後一貫性がないことに平気なのは、安倍総理にそっくりです。
日弁連会長は基本姿勢で、日弁連は「幅広い市民の理解に支えられ」るべきで、「井戸やコップの中の議論」ではいけない、と強調しています。
ほんのわずかな取り調べ可視化と引き替えに捜査機関に対して、強力な弾圧手段を認めようとするのは、「幅広い市民の理解」が得られない「井戸やコップの中の議論」に他ならないでしょう。
矛盾を矛盾とも思わないのも、安倍総理にそっくりです。
日弁連会長は、こうも言います、
「日弁連内には、様々な問題について異なる意見が存在します。
可能な限り情報と認識の共有化を図りながら、…丁寧な会内議論を行い、会内合意の形成を追求します。」
先に述べたとおり、すでに22の弁護士会が刑事訴訟法の一括「改正」に反対し、賛成している弁護士会は見当たりません。
「会内合意の形成を追求」するのであれば、刑事訴訟法の一括「改正」反対の方向に向けてなされるべきなのは明らかです。
ほとんど自己矛盾の言動を認識していないかのように行動できるのも、安倍総理そっくりです。
総理の場合は、善意かも知れませんが、日弁連会長は、とびきり優れた頭脳の持ち主なので、故意です。
また、会長は言います。
『相違や対立を克服し、「会内論争に終始しばらばらで相手にされない日弁連」ではな
く、「社会に向けて一致して発信し行動する力強い日弁連」を目指します。日弁連として、ぶれない一貫性、ころころと変わらない継続性、そして責任感が必要
です。』
ここまで来ると、「沖縄県民の理解を得た」と言い張って、辺野古基地建設を強行する、安倍総理の専制性とウリ二つです。
つまり、安倍総理の場合は、わかっているのかいないのか一貫性のない言動を平気でしますが、日弁連会長は、一貫性のないことを承知の上で、多くの弁護士会の反対を押し切って、戦後史に残る悪法の「早期成立を求める」との声明を強行したわけです。
「丁寧な会内議論を行い、会内合意を形成し」、「井戸やコップの中の議論」に終始せず、多数会の反対を無視して、「社会に向けて一致して発言し行動する力強い日弁連」を目指すとする日弁連会長の、発言や言動は、今やほとんど意味不明です。
実に「ポチダヨ宣言」をして、「強い日本」を目指す安倍総理の安倍話法と、全く相似形です。
安倍総理の場合は、個々の言動は不一致ですが、戦前復帰を目指す、戦争中毒である点では、一貫しています。
日弁連会長は、日弁連の人権擁護委員会委員長、憲法委員会委員長など人権擁護の分野では他に並ぶ者がいない、スペシャリストでしたから、個々の言動が矛盾するだけでなく、全体の軌跡が矛盾撞着しているのです。
(愛知県弁護士会が見当たらないのは、一体、どうしたことだろう。)
「自由にできる盗聴法」と「たれ込み推進司法取引」や「匿名証人」制度が日弁連も反対している、共謀罪の不可欠のツールであることは、明らかです。
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