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2015年7月19日 (日)

背信のチプラス  ギリシャ危機・奪われる民主主義  反グローバリズムの長い道のり

国民投票で圧倒的多数の緊縮反対の民意を得ながら、IMF、EU、欧州中央銀行が突きつけた緊縮策より、さらに厳しい条件を承認したチプラスが背信の首相であったことは、明らかだ。


ギリシャ民主主義の勝利はつかの間も続かなかったのだ。


国民投票当日、財務相が辞任した。
交渉を円滑に進めるために、EUをテロリスト呼ばわりする、EUに対する強硬姿勢が顕著な財務相が自ら引いたという表向きの発表だった。
しかし、その後の進展は予想を超えるものだった。
議会も圧倒的多数で、超緊縮案を承認した。

ギリシャ国民にとって、これほどの裏切りはない。


国民は十分に知っていた。
反緊縮の道が容易ではないこと、反緊縮の結果、当面は言語に絶する混乱が起きるかも知れないこと。
そうしたことを覚悟して、ギリシャ国民、とくに若者たちは反緊縮に一票を投じたに違いない。
なぜなら、反緊縮のもたらす混乱には未来があるが、緊縮政策には、未来がないことを体感していたからに他ならない。


不可解なのは、チプラスがEUの求める緊縮政策を承認する心づもりであれば、なぜ、土壇場になって国民投票を持ち出しのかだ。
予め、緊縮政策を受け入れるつもりであれば、わざわざ国民投票まで行う必要は全くなかったはずだ。
本来、TPPの強力な推進政党であった自民党が、断固阻止を掲げて勝利したからと言って、参加に先立って、わざわざTPPに反対する民意を明確に確認した上で、TPP交渉に参加するというばかげたことはあり得ない。


国民投票の発表直後、チプラスは、ロシアを訪問した。
また、BRICS銀行との関連も噂された。
EUに対抗する、何らかの対策を用意しようとしていたようにも感じられた。


ギリシャで起きたことは、ウクライナで起きたことに似ているのかもしれない。
ウクライナのヤヌコビッチは、EUの支援からロシアの支援を受ける方針に転換した。
その結果、クーデターによって追放された。


この顛末と類似した事態が、ギリシャ政界を揺るがせていたとしても何の不思議もない。


今回、改めて浮かび上がったのは、EUでのグローバリズムの盟主はEUの一人勝ち国家、ドイツだということだ。
われわれは、ドイツに対して持つイメージを変える必要があるのかも知れない。


ギリシャ国民は、左翼政権に望みをかけて、急進左派連合を政権に就け、手厳しい裏切りにあった。
次は、極端な民族主義を掲げる極右政党に走るしかないであろう。


この道は、また、第一次政界大戦に敗れ、過酷な戦争賠償に苦しんだドイツの姿と似ている。
当時、ケインズは「平和の経済的帰結」の中で、ドイツに課された、過酷な戦争賠償に警告をならしていた。

ドイツほどの国力を持たず、疲弊しきったギリシャが、戦争を起こすことはないだろうと、EUは高をくくる。
果たして、EU=ドイツの楽観は、正しいのか。
本当のところは、誰にもわからないのではないか。


ギリシャは、土壇場の国民投票のツケを、当初のEU案にはなかった、国有資産の基金化という代償で払わされる。
緊縮政策は、当然ながら、ギリシャ財政をいっそう悪化させる。
ギリシャは、いずれ国有資産を民間に売却せざるを得ない。
ギリシャの国有資産を手に入れるのは当然のこと、グローバル資本である。


これは、侵略であり、植民地支配ではないのか。
見えにくいが、ギリシャ国民は、緩慢に殺されている、のだ。


第二次大戦から70年を経て、巨額の戦争賠償を免除される、寛大な措置を受けたドイツは、再び、侵略国家になる。
同じく、寛大な講和の恩恵を受けた極東の島では、こちらは武力による侵略を妄想する者が、国を誤らせようとしている。

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全国紙は、なべて投資家目線でギリシャ危機を論じ、国民の立場でこれを論じるものは見いだせない。
社説の目次を見る限りでは、東京新聞(中日新聞)だけが、公平を保とうとしているように見える。

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