TPP阻止国民会議首藤信彦氏の見解 竜頭蛇尾に終わるかTPP?
TPPの原協定がTrans-Pacificを名乗ることができたのは、チリが参加しているらだ。
原協定自体がハードルが高いのになぜチリがと思っていたが、チリはグローバリズムの最初の実験場だったことを迂闊にも忘れていた。
櫻井ジャーナル9月20日の記事で、ショックドクトリンの最初の実験場がチリであったことを思い出した。
このキッシンジャーはチリのサルバドール・アジェンデ政権を第4次中東戦争が勃発する直前、1973年9月11日に軍事クーデターで倒している。その時に使ったチリの軍人がオーグスト・ピノチェト。後に設置される「チリ真実と和解委員会」によると、軍事政権の時代に殺されたり「行方不明」になった人は少なくとも2025名、一説によると約2万人が虐殺され、新自由主義の導入に反対するであろう勢力は壊滅状態になる。ピノチェトは議会を閉鎖、憲法の機能を停止、政党や労働組合を禁止、メディアを厳しく規制する。
そしてピノチェトは新自由主義経済を導入、社会や福祉の基盤を私有化し、労働組合が弱く、低インフレーションで、私的な年金基金の、低賃金で輸出型の小さな国を目指す。1979年には健康管理から年金、教育まで、全てを私有化しようと試みている。その政策を実行したのはミルトン・フリードマンの弟子たち、いわゆる「シカゴ・ボーイズ」だ。この新自由主義経済が投機市場を肥大化させていくわけで、ペトロダラーと同じ機能を果たしている。
何が起きているのか、わからぬままチリ国民は最悪の状態に陥れられたに違いない。
首藤氏によれば、アトランタ会合を主導しているのは日本だという。
上下院合同会議での演説で約束した内の集団的自衛権については、想定以上にもたついた、蛇尾であろうが、TPPを合意すること、それ自体が、今の政権にとっては自己目的化している。
交渉が決裂しない限り、グローバリストに乗っ取られた日本政府の国民貧窮化政策は止まるところを知らない。
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“龍頭蛇尾に終わるかTPP?”
―アタランタ(最終?)閣僚会合監視に出発の前にー
2015年9月29日
TPP阻止国民会議事務局長
首藤信彦(すとうのぶひこ)
主席交渉官会合に続いて9月30日より10月1日まで「風と共に去りぬ」で有名なアタランタでTPP閣僚会合が行われる。菅官房長官が「不退転の決意」で大筋合意を目指すと記者会見で述べているが、それは実は、オバマ政権下ではTPPは成立しないと言っているに等しい。甘利担当大臣は出発直前のインタビューでは「大筋合意に導くべく...」とさらに後退した。
大筋合意(braod agreement)程度では、TPP協定案までさらにこれから最低でも半年かけて協定文策定に必要な完全合意をめざして一層の努力を傾注することになろう。
しいて今回目論むとしたら完全合意(今回ではまったく不可能)だが、万一天佑があってそれが成立したとしても、TPAの90日ルール規定では大統領は来年にならないとTPP成文協定にサインすることができない。しかし常識的には、すでに活況にはいっている次期大統領選挙の最中にこんな欠点だらけの協定を公開できるはずがない。
小国のうちには閣僚を送らないところがある。シンガポールやブルネイだ。ニュージーランドは酪農製品交渉が進展しなければ閣僚は出席しないと、アメリカを牽制している。それはアメリカにとっては極めて痛い。なぜなら、ニュージーランドに門戸を広げるとしたら、その分、アメリカは自国の酪農産業の圧力を受けて、カナダの門戸をこじ開けなければならないからだ。一時、カナダのハーパー首相がそうした可能性を示唆したとニュースが駆け回ったが、カナダ政府は即座に否定して火消しに躍起だ。10月19日の選挙で劣勢が伝えられるハーパー首相が10月1日に国民を怒らせるような自暴自棄な行動にでるとは信じがたいところだ。
カナダには、自動車・部品原産地基準問題でも大幅譲歩してもらわないと閣僚会合は進展しない。自動車原産地問題はメキシコがいちゃもんを突けたと報道されるが、実際の主役はカナダで、そしてまたその裏にはアメリカ自動車労組がいる。何より、カナダにとってはNAFTAの目的を守るという大義名分がある。ここでアメリカが日本に譲るというなら、NAFTAの再交渉にも力が入る。
生物薬剤をめぐるIP問題、自動車原産地、酪農問題の三分野が大きな障害で、それさえ妥結できればTPP合意が成立するというのは、日米関係者の腹だろうが、すくなくともその合意が協定文として結実し、アメリカ議会に提示されるためには、これまで公式には議論されていなかった、通貨操作、環境、人権、民族、イスラム法問題などの、深刻で激しい対立を生むイシューの障害が待ち構えている。
それでは今回のアタランタ会議の目的は何か?それは要するに「蛇の尾」を創ることである。TPP交渉はこのままでは、アメリカ大統領選のカオスに巻き込まれて一切進まなくなるが、それ以上に苦境に立たされるのは、「TPPが当然、成立すると目論んで、つぎつぎと手を打ってきた国や業界」である。日米二国間協議はTPPに組み込まれることが前提で、そのTPPが宙に浮いてしまえば、二国間協議の結論自体も消滅する。そこで、両国政府と特定の産業は、どんなに中身のないTPPでも、ともかく頭と尻尾だけそろえて、TPPは仮想ではなく、必ず成立すると言い続けて、その間に自分たちの利益を確定しなければならないのである。
今回のTPP閣僚会合はあきらかに、日本が誘導してきた。日本での臨時国会、予算編成時期そして来年の参議院選挙を踏まえたぎりぎりのスケジュールが9月末のこの時期であり、アメリカとしてはむしろ国連総会、ローマ教皇、習近平国賓訪問の集中するこの時期は避けたかったろう。
その日本がTPP閣僚会合に持ち込む提案を、それぞれ複雑な利害相関関係を抱えた各国がすんなり認めるのか、あるいはまたハワイ会合で突発したようにメキシコのような伏兵が登場して会合を流すか、その結論は二日後に出て、各国閣僚は風と共に(gone with the wind)アタランタを去っていく。
私は民主党政権時代そして落選後もTPP問題を実に5年間監視し、また安易にTPP参加を選択する政府とは闘ってきた。今回「最後の閣僚会議」と安倍首相が言明するので、およそ最終会合になり得ないアタランタ会議でどのような結論を導きだすのか、監視に赴く予定である。
TPPはアタランタ会合で龍頭蛇尾に終わっても、形式的な合意で手打ちしても、あるいは空中分解しても、それで終わるわけではない。グローバル化した貿易の新ルールというTPP構想を生み出したニーズは不変であり、そこにおいて衰退するパワーを維持したいというアメリカの強烈な意思も健在である。
はたしてアメリカはTPPver.2を持ち出すのか、TiSA(サービス貿易)協定を先行させるのか、中国を含めたRCEP構想に接近するのか、それに対して各国とその市民社会はどう対応すべきか、それらはすべて今回のアタランタ会議の「終わり方」にかかってくる。そうしたPost Atlantaの動向も、今回の監視で、各国NGOとよく話し合ってきたい。
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