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2015年10月13日 (火)

TPPを圧力として国内改革をせよ  竹中平蔵の主張(産経新聞10月12日)

産経新聞の【正論】欄で、竹中平蔵が「TPPを国内改革の起爆剤に」との文章を寄せている(2015年10月12日午前5時)。

突っ込みどころ満載の文章であるが、この文章の肝は、標題のとおりTPPという圧力の下で、国内改革をせよとするところにある。

アメリカでは、批准の過程で議会が相当にもめることも予想される。知的財産権で、アメリカはオーストラリアなどの要求でかなり譲歩したという見方もある。アメリカ国内でこれが認められないと、TPPは文字通り絵に描いた餅に終わる。

と、首藤信彦氏と同様の見通しを述べている。
TPPが米国議会で承認される可能性は乏しいと見るのは、推進論者も反対論者と同様に認めているのである。
つまりは、TPPは発効しない可能性が小さくないとみているのだ。
ところが、竹中平蔵は、そのすぐ後に、次の通り続けている。

日本においては、TPPを梃子に国内改革を進めることが重要になる。昨年1月のダボス会議の場で、安倍首相は「TPPはアベノミクスの支柱」と述べている。その趣旨はまさに、成長戦略の一丁目一番地である規制改革を進める上で、TPPという外部からの健全なプレッシャーが大きな役割を果たす、ということであろう。

これは、論理矛盾だろう。
発効するかどうか見通しが立たないのに、国内改革を先行させよとしているのだ。
多分、竹中平蔵の中では、何の矛盾でもないのだろう。
TPP自体より、TPPを圧力とした規制緩和こそが、竹中平蔵の目的だからだ。

TPPより、さらに怖いのはTPPゾンビだとする首藤氏の主張が裏付けられている。

竹中平蔵は、TPP交渉参加表明直後の産業競争力会議で次のように述べている(第4回産業競争力会議2013年3月15日)。

まず、TPP 交渉への参加を決断された総理及び内閣の皆さんに敬意を表したい。各大臣には、我々の要望を正面から受け止めてもらった。例えば、厚生労働大臣は、ハローワークの民間開放について今までと違う方向性を示していただいた。公務員試験へのTOEFLの導入も前向きなご判断をいただいた。

ハローワークの民間開放、公務員試験へのTOEFL導入は、TPPの条文から必然的に導かれるものではない。
巡りめぐって、TPPによる社会変化と関係しそうかという程度のものである。
(しかし、パソナグループにとっては、大いに利害関係がありそうな分野である。)
竹中平蔵一派にとっては、規制緩和され、公的部門が市場化されれば、何でもよいのである。
要するに、公的部門を市場化し、国内規制を大企業本位に作り替えることに目的があり、TPPはそのための口実に過ぎない。
これは、竹中平蔵にとっては、かねてからの持論であるので、上記のような論理矛盾の文章は、彼の中では何も矛盾していない。

今回の「大筋合意」の肝は、大々的に「大筋合意」報道を垂れ流し、国民をTPPは不可避と集団催眠にかけた上で、私的勢力が公共財をかすめ取ることにある。

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ちなみに、大筋合意を妥結と勘違いしている人が意外に多い。
あくまでも「大筋」に関する合意であって、妥結ではない。
TPPは、おそらくA4版2000枚を上回る膨大な条文の山であり、妥結は、これら規定全てについて合意がなされ、TPP協定の成文ができあがったときのことである。
具体的な条文について、12カ 国の合意が成立して、初めて「妥結」である。

未確定部分が多く残っていた条文を確定させるためには、膨大な作業が必要である。
日本だけが交渉官を総動員して当たろうとしても、他の国が乗ってこなければ、空回りするだけである。
だから、普通に考える限り、条文確定作業には数ヶ月を要する。

大統領は、署名する90日以上前に署名する意思があることを書面で議会に通知しなければならない。
日本政府が前のめりなのに対して、大統領はまだ議会にこの通知をしていない模様だ。
(仮に今日、通知がなされたとして、90日後は2016年1月11日になる)
次期大統領候補がこぞって反対を唱える内容では、時期が遅れれば遅れるほど通知もしにくくなる可能性が高い。

その上、2015年超党派議会貿易重点説明責任法によれば、署名の60日以上前には、条文をWEBで公開しなければならなくなった。
2002年超党派大統領貿易権限促進法によれば、署名後、60日以内に議会に条文を提出するとされていたのが、同じ日数だけ前倒しされた上、公開するとされたのだから、議会の大統領に対する不信感は極めて強いということになる。

次期大統領候補がこぞって「大筋合意」されたTPPに反対を表明する中で、わざわざそのような「大筋合意」にしたがった条文を超特急で仕上げ、WEB公開するのは、火に油を注ぐに等しい。

したがって、米国の批准は、なおのこと、むつかしいだろうという見通しは、常識的な見方である。

但し、何が起きても不思議ではないというのが、TPPである。
そもそも権限のない大統領に日本だけでなく他の10カ国も振り回されて交渉し続けていたこと自体が異常だったのだから。

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追記
三橋貴明氏が、大筋合意の内容に関して、日米並行2国間協議の中で、内政干渉を国内制度化する事項を発見している(2015年10月10日付「TPP交渉参加国との交換文書一覧」)。
規制改革に対して、外国投資家に意見等を述べる機会を認め、これを規制改革会議に付託することを承認したという内容だ。
文字通り隠しもせず、その通りに書いてあるのに、お前は何を見ていたかという話なのだが、正直、末尾に日米二国間交渉の合意内容が記載されていること自体に気づいていなかった。


常、学習会では、二国間協議の重大さを強調しているのに、まさか交換文書の中に堂々と入れられていたとは、迂闊であった。

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