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2015年12月29日 (火)

TPP阻止国民会議 首藤信彦氏の見解 署名・批准問題:来年への展望

TPP署名・批准問題:来年への展望

 20151223

 

        TPP阻止国民会議 
      事務局長 首藤信彦

 

すでにアメリカ議会いやアメリカ社会全体がクリスマス休暇に入り、TPP問題関係NGOからの情報提供もめっきり少なくなりました。この年末の機会に10月のアトランタ会合からの各方面の動きと、年初の展望予想を描きました。

 

アトランタ後の経緯

 105日に大筋合意された(ことになっている)TPP交渉は一か月後の115日に協定案なるものが公表され、同時にオバマ大統領はTPP協定署名通告を議会に送った。TPA規定に従えば、通告90日後の来年2月初旬には、楽観的シナリオでは、TPP協定署名が行われると予想されている。

 しかしながら、公表された協定案の主体は一般約款に近いもので、はたして6年間にわたって激しいつば競り合いが行われた重要テーマはどう決着しているのかは、必ずしも明確ではない。多数あるはずのサイドレターもUSTRのサイトに掲示されたものだけなのかも不明である。妙な話だが、テキストの公開を激しく求めてきた市民グループも、それが実際に公開され、しかもその内容が漠として明確でないので、激しい批判がトーンダウンするという不思議な状況となった。

 もはやTPPの成立はひとえにアメリカの動向にかかっていると言って過言ではない。これまで政府/議会にバイオ医薬品独占的保護期間12年を厳命してきたアメリカ製薬業界などは8年(それすらも定かでない)という基準に一斉に反発し、他の産業たとえばタバコ産業や自動車産業においても、ISDSや通貨操作禁止を巡って協定案への不満が沸き起こっている。

それを受けてアメリカ議会においては上院財政委員長のオリン・ハッチ氏(共和党)が再交渉の要求をオバマ政権に突き付けている。議会においてはマコネル院内総務(共和党)の大統領選挙前の議会審議を忌避する(1211)などの発言が続いた。これをTPP条約発効はオバマ政権下ではまったく不可能とみるか、逆にこうしたことでオバマ政権の危機感をあおって、再交渉あるいは実効ある譲歩を勝ち取る高等手段と考えるか、分析評価は両面である。

 他方、アタランタ会合のラストミニッツに、アメリカ側の大幅譲歩を勝ち取ったはずのオーストラリアやラ米諸国も「保護期間5年・国内制度変更不要」がアメリカ業界の理解と異なるところから、協定上の明文確定を求めている。これが再びアメリカの圧力で万一、5+3=8年などの理解に寄せられることがあれば、対象国のTPP推進政権には大打撃となる。

 その結果、協定案の外で、何らかの便法(また極秘のサイドレター?)などを考えて、再協議・協定案変更などで署名を遅らすことなく、各国の主張を融合させる手法が考案されている。このことは在アメリカ日本大使館の山野内勘二公使が図らずも公開の場で述べ、世界中にその情報が駆け巡った(国会農水委員会審議において外務省は否定)。

 議会外で行われる次期大統領選挙のキャンペーンの高まりそして、クリスマス休暇の始まりによって、TPP関連のニュースは少なくとも表面上は姿を消しつつある。

 アメリカ議会でのTPP問題の受け入れ態勢の不透明感の一方で、TPP関連でいくつかのイベントがあった。その最大のものはタバコ訴訟で(すでに10月のアトランタ合意でもタバコはISDSの対象外となっていたが)、2011年にオーストラリア政府がタバコにプレインパッケージを義務付けたのに対しフィリップ・モリス側が提訴していたが、この1217日にシンガポールの仲裁機関で敗訴し、オーストラリア政府の主張が認められた。これはISDSもアメリカ絶対有利とは言えなくなってきた最新事例である。世界中でISDSへの批判や監視が強まる中で、これで安堵するわけにはいかないが、以前のように一方的にアメリカに有利な状況ではなくなるのかもしれない。しかし、これに危機感を強めるのがアメリカのたばこ業界で、それがまたTPP協定再交渉への圧力となっている。

 もう一つはマレーシアがついにTPP参加のCost/BenefitCB)分析を発表したことである。マレーシアは過去に二回、国連に分析を依頼し、結果を公表と声明したが、いずれも公開されることなかった。政界のGDPはマイナス成長になると結果が出た。。。と政界では噂された。そこで政府はそれ自体が多国籍企業ともいえる国際会計企業のプライス・ウオーターハウスにCBを依頼し、何度も「今夜発表する」とアドバルーンをあげたが公表できなかったものであるが、12月ついに結果を公表した(21日ニュース)

 それによるとなんと2027年までに256600億円(2110億ドル)相当のGDP増加があるということだ。詳しい数字も、その結果を導いたモデル(またGTAP系だろうか?)も仮定条件もわからないので、論評を避けるが、あまりに過大で楽観的な数値に現実味を欠くとしか言いようがないだろう。

 

場内議論と場外乱闘

まずアメリカ議会内では、2月に予想されるTPP協定署名が一つの山場になる。協定案は当初予想されていたものよりかなり妥協的なものになっていると思う。アメリカ政府と業界ははたしてこの公開流通しているテキストで本当に納得しているのか疑問だが、ひとたび署名すれば、変更は極めて困難になる。署名後105日以内に、貿易委員会のCB分析が議会に提出され、法案審議に議会側が了承すれば、法案の提出と審議がスタートするが、大統領選挙でTPPをオバマ失政の一つと位置付けるトランプ候補の勢いがいまだに止まらず、はたして上下両院の議員が自分の選挙戦に悪影響を与えるTPP協定審議に手をだしてくるかどうかは疑問だ。

 今夏TPAは僅差で成立したが、それは人権や通貨操作の問題などを切り離し、とりあえず交渉権限を大統領に与えることでアメリカのリーダーとしての面子を守った苦渋の合意であった。今度はTPP協定そのものの問題であるから、通貨操作、環境問題(COP21も新たに絡む)、LGBTや移民問題、マレーシアでの人権抑圧、ベトナムやメキシコの労働条件改善、不明瞭な国営企業概念など、凍結していた諸問題が解凍され、議会で審議の重要なテーマとなるだろう。

 場外乱闘と書いたが、議会の外で、製薬業界やそこから支援を受けている議員、ロビイストなどが入り乱れて、製薬業界の利益を堅守しようと様々な行動をとっている。いまや製薬はかつての農業・自動車に代わって、アメリカを代表する産業である。かって「GMにとっていいことはアメリカにとってもいいことだ」と述べた経営者がいたが、いまやJ&Jやメルクのように一年一年と巨万の富を生み出す製薬業界の主張する12年を、消費国側が外交上の手練手管で実質5年にするのは容易ではない。

 製薬業界からの支援を受け、その代弁者として発言の語気を強めるハッチ議員は、まさに国益を念頭に、中立公正にTPP問題の命運を決めるはずの財政委員長であり、その彼が、議会での審議の前に、個人的な政治スタンスでTPP協定再交渉を声高に主張する根拠は何なのか、本当は別な意図があるのか、年明けからの彼の言動が一層の注目を集めるであろう。

 

日本では?

アメリカを含め、参加国内では自国の利益に対する詳細分析と評価が進んでいるが、日本ではどのような評価を出すのか?経済成長が低迷するなかで、輸入拡大と国内対策そして地域経済と社会への影響など、とても包括的で現実的な分析ができるとは思えない。これまでもそうした分析努力がなされてこなかったのである。TPP問題が浮上したときにGTAPモデルでその効果が論じられたが、当時とはまったく異なる円安環境で、どれだけの効果が計算されるのか?おそらく長期的な構造改革までをポジティブ・ファクターに取り入れて、ある意味、マレーシア的な成長でっち上げ報告となるのではないだろうか?

いずれにせよ、14日の国会開催や予算審議は、最も楽観的なシナリオ:最短で2月と予想されるTPP協定署名よりもさらに前倒しの見切り発車となる。発効どころか、署名もされていない条約にはたして予算を配算することが許されるのだろうか?参議院選挙目的のバラマキ予算が編成されるなかで、野党のみならず国民もしっかりと審議を見守らなければならない。

年末に予算委員会・農水委員会などで閉会中審査が行われたが、TPPそのものを追求し葬ろうとするより、各党議員は、地元選挙区により多くの予算を早くつけることを優先したというのは外部のひがみであろうか?しかし、おそらく、14日から始まる国会審議でも、TPPの是非よりも予算内容の審議にシフトするのではないかと危惧される。

 

 

 

急務の阻止体制再編

 我々にとって最大の課題は、これまでのTPP阻止の活動や体制をどのように、アトランタ後のTPP問題の変容と環境変化に合わせるかである。これまでも必ずしも有効ではなかった単純な「反対」姿勢だが、少なくとも形式的にはTPPテキストが公開された以上、新しい活動とそれを支える体制が必要である。

 特に問題なのは、TPP協定がまだ署名されず、発効がはたしていつになるかわからない状況で、すでに政府はアメリカ政府+業界の意向を受けて、「日本の国内政策」として次々と法改正、制度改変、基準の変化をもたらしている。その実態把握が急務である。

TPPが成立するかどうかわからない段階で、アメリカによる実質的な富の収奪が進行してはならない。

特に、ここ1-2年、TPP交渉が足踏み状態になった状況で、アメリカ業界や多国籍企業は野心的なTPP協定を成立させるよりも、日本の既存の業界、制度に食い込み、そこで既得権益、内部者利益を獲得しようと戦略転換した可能性がある。

TPP協定のみならず、今後は正面のドアから来るTPP協定だけでなく、背後から「しのびよるTPP」にも注意を払う必要がある。

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