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2016年1月21日 (木)

英語で大学が亡びるとき   英語で日本が滅びる

マスコミに載らない海外記事サイト1月21日付に寺島隆吉著「英語で大学が亡びるとき 「英語力=グローバル人材」というイデオロギー」(明石書店)が紹介されている。

英語で大学が亡びるとき―「英語力=グローバル人材」というイデオロギー

つい気になって検索したら、寺島研究室のページに同書の「あとがき」が全文掲載されていて、時間がないのに、思わず読みふけってしまった。

 

氏の危機感は極めて深い(寺島研究室のサイトのリストを見れば、大半が英語化の危険性を訴える文章で埋められているようだ)。
「あとがき」の最後の方に端的な問題意識が書かれている。

 

「日本人の、日本人による、日本人のための英語教育」は、どのようなかたちをとる必要があるのでしょうか。(略)
そのような議論が緊急におこなわれなければ、そして今の文教政策がこのまま進行すれば、日本 の大学教育だけでなく、日本の公教育全体が確実に亡びるでしょう。


いま極めて深刻なのは、文科省が教育改革という名の「改悪」をすればするほど、教員が置かれている教育・研究環境が悪くなり、生徒・学生の学力は低下しているという事実です。

ですから、何度も言うように、このまま事態が進行す れば、OECDにおける日本の地位も、ノーベル賞受賞者数も 確実に転落・減少するでしょう。 そんな不安を私はどうしても拭い去ることができません。 私が本書を緊急に出版したいと思ったゆえんです。

 

狡猾な帝国は、今や再占領の方針を隠すことなく、日本を二度と立ち上がれないほどに収奪し尽くそうとしている。
文科省は、帝国の方針を忠実に実行している。

 

「あとがき」だけでも十分に読みでがあった。
ネイチャー誌に関する次のような文章も興味深い。

ここまで書いてきたとき、ふと気になって手元にあった松尾義之『日本語の科学が世界を変える 』(筑摩選書)を読み直してみました。驚いたことには、そこには次のように書かれていたのです。

「なぜ日本の若い研究者は外国に留学しないのだろう。古い人にはたぶん分からないと思うが、その一番の理由は、十中八九、日本の研究レベルが高くなってしまい、留学するメリットが薄れてしまったことだ。」 (二一三頁)

氏は右のように述べる理由として次のような事実をあげています。

「ネイチャー誌などを読めば薄々わかるのだが、昔に比べて、本当に、アメリカやヨーロッパから出て くる論文がつまらなくなった。 (中略)私はここ数年 『ネイチャー』誌で日本人の論文が出たら、まず間違いなく、質が高くおもしろいですよ』と科学者に申し上げてきた。トーマス・クーンのいう普通の論文、つまり今の科学のパラダイムの中のこまごまとした論文ではなく、少しでもその殻を破ろうとするものを探すと、多くが日本人科学者の論文だということだ。」

科学雑誌として有名な『ネイチャー (週刊)は、日本独自に『ネイチャー・ダイジェスト』という月刊誌を発行していて、前掲書の著者・松尾氏は二〇 〇九年から四年半、その実質的な編集長を務め、一貫してネイチャー誌に載った英語論文を追い続けてきた人物です。その氏が言うことだけに、私には極めて説得的でした。

第二外国語の非必修化が、その他の言語の研究者を激減させると言うに留まらず、英語という眼鏡を通してしか世界を見ることのできない学生を育てる指摘も、深刻だ。

 

母国語を貶めるかのような英語授業にこだわる文科省のグローバル化政策の愚は明らかなのだが、英語化による危機を現場の近くから発信し続けている方たちが少数ながらもおられるのだということに希望をつなごう。

 

中国への留学生数が米国への留学生数を上回ったという最近のニュースも、若い人の方が、少なくとも文科省より広い視野で世界を見ている結果だと前向きにとらえておこう。

 

僕は、米国とであれ、中国とであれ、自由貿易と称するルールの単一化には反対であるが(それは国民から決定権を遠ざけ、奪うことにつながる)、次のような記事を見ると、中国の打ち出した一帯一路構想が半端なものではないことを痛感する。

報道は、中国経済減速ばかりが目に付くが、一帯一路構想は、「世界の中心で輝く日本」のような自慰的な構想とはスケールが違う戦略的なものであることに注意深くなければ、行方を見誤るだろう。

中国、ギリシャ最大港を買収 「一帯一路」欧州へ
日本経済新聞 2016/1/13

【北京=阿部哲也】中国国有の海運大手がギリシャ最大のピレウス港を買収する見通しとなった。地中海の要衝である同港を足掛かりに、欧州やアフリカへの経済・軍事的な進出を加速する狙いだ。中国の習近平指導部が推進する広域経済圏構想「一帯一路(新シルクロード)」の重要な拠点となる。中国はアジア回帰を強める米国へ対抗するため欧州での影響力拡大を急いでおり、各地で中国勢によるインフラ投資が活発になっている。

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追記
中国によるビレウス港の買収は、経済の拡大を内需の拡大に求めるのではなく、海外に求めようとするグローバルな植民地主義的な振る舞いに見える。
ドイツのギリシャ国債の容赦ない取り立てというグローバリズムが、別のグローバリズムを呼び寄せ、国際的摩擦を拡散・拡大するように見える。

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