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2016年3月の7件の記事

2016年3月31日 (木)

TPPのISD条項と子宮頸ガンワクチン問題

子宮頸ガンワチンの副作用に苦しむ少女たちが提訴することを決意したことが報道されている。
裁判に立ち上がった当事者と家族の勇気に心から敬意を表したい。
またこれと連帯して困難な闘いに立ち上がることを決めた弁護団を支持する。


「私たちはデータじゃない、1人の人間です」
そう、これは薬害に蹂躙された被害者の人間の尊厳を回復するための裁判に他ならない。

Sikyuukeigan

接種と症状の因果関係に関する記者からの質問に対して、弁護団は、訴訟上の因果関係としてはすでに十分であると理解していると、回答した。
最高裁は訴訟上の因果関係について次のように述べており、弁護団は、高度の蓋然性の要件はすでに十分に充たされているとしたのだ。

「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。」
(最高裁判所昭和50年10月24日判決)


TPPは、人間の被害とその救済、人間の尊厳とその回復という日本国憲法下における裁判の論理を逆転させる。
TPPの下では、こうした事件は、国際的経済主体の経済活動とその阻害の問題として把握される。
TPPの投資章に基づき、被告製薬会社側の立場からこの問題を見ると、その醜悪な世界観が理解してもらえるのではないだろうか。

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Isds


TPPのISD条項が保護の対象とする『投資』には、

「収益及び利得の期待」

が含まれる(9章第1条)。
『合理的』な期待利益の保護こそ、TPPの投資章(第9章)の根本精神である。


子宮頸ガンワクチン、「サーバリックス」のメーカーはグラクソ・スミスクライン社(GSK社)、「ガーダシル」のメーカーは、MSD社であり親会社はメルク社である。
前者の本拠は英国、後者はドイツとされるが、いずれも米国法人が存在し、「TPPのための米国企業連合」の有力メンバーとなっている。


子宮頸ガンワクチンの定期接種は小学校6年生から高校1年生に相当する年齢の女子とされている(予防接種法施行令1条の3)。
おおざっぱに人数を概算すれば300万人弱が定期接種の対象となる。
ワクチンは1人分5万円ほどとされている。
子宮頸ガンワクチンの対象年齢の市場規模は、ざっくり1500億円である。


そして、少子化を踏まえても年々約50万人が新たに定期接種の対象者となる。
したがって、定期接種によって、メーカーには年々約250億円の安定収入が見込まれた。


副作用被害者らの粘り強い訴えを受け、2013年6月、厚労省は、いったん開始していた定期接種の対象者への周知(予防接種法施行令6条・「積極的勧奨」)を差し控えるに至った。


子宮頸ガンワクチンメーカーであり、「TPPのための米国企業連合」の有力メンバーである2社には、積極的勧奨が差し控えられた結果、すでに推定2000億円規模の売上が阻害され、今後も毎年250億円の収益が阻害される状態となっている。


「期待利益」こそ、TPP投資章の保護の要である。
TPPの投資章・ISD条項の関係で主として問題となるのは「収用」と、国際慣習法上、投資家に与えるべき待遇義務違反である。


期待利益を深刻に阻害し、収用と同等程度に至った場合、間接収用に該当する(付属文書9-B第2項)。
間接収用に該当するかどうかは、
①政府の行為が与えた経済的な影響の程度、
②投資に基づく合理的な期待を害する程度、
③政府の行為の性質
を総合的に考慮して判断するものとされているが(付属文書9-B第3項((ⅰ)、(ⅱ)、(ⅲ))、
①ワクチンメーカーが政府の行為によって受けた経済的な影響は甚大であり、②同メーカーの合理的な期待を著しく侵害していることも明らかであるから、投資章の根本精神に従う限り、③たとえ厚労省の積極的勧奨の差し控えが生命・健康保護目的であったとしても、間接収用に該当すると判断されることは確実である。

Isdss


収用に該当する場合、政府は、遅滞なく、公正な市場価格による補償をしなければならない。市場価格には将来得られるべき利益を含む。将来利益はキャッシュフロー方式によって算定される。
補償が直ちに行われない場合、収用が行われた2013年6月から商業的に妥当な利子(年5%から6%とされることが多いようである)を付加して補償しなければならない(第9章8条3項)。


また、政府は、外国投資家に対して国際慣習法による待遇を与える義務を負っており、同義務には「公正で衡平な待遇並びに十分な保護及び保障を与える義務」が含まれている(第9章6条1項)。


この義務には、「外国投資家の利益に対する慎重な配慮」、「外国投資家の合理的な期待の保護」が含まれると一般に理解されている。
遅くとも、2013年4月に厚労省が子宮頸ガンワクチンの定期接種に踏み切った段階では、ワクチンメーカーは「合理的な期待」を形成している。
厚労省の積極勧奨の差し控えは、この「合理的な期待」を根底から侵害するものであって、「外国投資家の利益に対する慎重な配慮」にも欠けているものであるから、「公正で衡平な待遇並びに十分な保護及び保障を与える義務」に違反している。

Tppdanko


TPPの第9章16条は、「投資及び環境、健康その他の規制上の目的」と題して、次の規定を置いている。

この章のいかなる規定も、締約国が自国の領域内の投資活動が環境、健康その他の規制上の目的に配慮した方法で行われることを確保するために適当と認める措置(この章の規定に適合するものに限る)を採用し、維持し、又は強制することを妨げるものと解してはならない。


この規定は、一見、締約国が環境、健康等公共の福祉のためになす規制を認める規定のようにみえるかもしれないが、そうではない。
otherwise consistent with this chapter(その他の点ではこの章の規定に合致する)場合に、規制を認めるというのである。
日本政府は論理的な解釈が不可能に近いotherwiseを「(この章の規定に適合するものに限る)」と強調の意味に解釈して仮訳しているが、
要するに、この規定は、環境、健康のための規制であっても、この章に適合すること、すなわち、間接収用に該当せず、国際慣習法上の義務にも違反しない等投資章の全ての規定に違反しない限りにおいて、締約国は、環境、健康のための規制を行うことができるとしているに過ぎず、全く無意味な規定である。
むしろ、公共の福祉目的であっても、投資章の義務の遵守を強く求める規定であるから、公共の福祉名義でみだりに規制を行うことを戒める規定であると考えてもよい。


間接収用については、次の規定もある。

「公共の福祉に係る正当な目的(公衆の衛生、公共の安全及び環境等)を保護するために立案され、及び適用される締約国による差別的でない規制措置は、極めて限られた場合を除くほか、間接的な収用を構成しない」(付属書9-B第3(b))


確かに、「極めて限られた場合を除くほか、間接的な収用を構成しない」との規定には、むやみに間接収用を認めることに対する牽制としての効果は期待できるだろうが、「極めて限られた場合」との概念は、極めて曖昧である。


国際経済活動に対する制限については、それが国民の健康の保護を目的とするとしても、科学的な十分な証拠を要するとするのが、国際経済法の基本ルールである。
十分な科学的証拠がない状態における国際経済活動の自由の制限は、十分な科学的な証拠(前記した最高裁判決とは異なり、この場合は、厳密な科学的証明に匹敵するものが求められる)を収集するための暫定的な期間のみ認められる。
積極的勧奨が差し控えられてからすでに3年近くが経とうしており、予防的なアプローチによる差し控えとしても十分な期間が経過しているにも拘わらず、十分な科学的証拠なしに積極勧奨を差し控える措置を維持しているのは、「極めて限られた場合」に該当するとの主張が十分に可能である。
また、子宮頸ガンワクチンの積極勧奨の再開については、専門家の団体である日本産婦人科学会が強く求めているばかりでなく、WHO(世界保健機関)も、積極勧奨を差し控える日本政府の対応を名指しで非難している。
こうした中立的で権威ある機関の見解にも反する積極勧奨の差し控え措置は、たとえ健康目的の制限であっても「極めて限られた場合」に該当し、厚労省の決定は間接収用に該当するとの主張には多分、説得力が認められるだろう。


TPPが発効すれば、これらの理由により、ワクチンメーカーは、日本政府をISD仲裁に付託することが可能である。
海外仲裁で違法判定を受け、巨額の賠償を命じられるリスクを冒してまで、厚労省がいったん開始した定期接種に関する積極的勧奨の差し控えを続けることができるか、極めて疑問である。

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Tpphantai


以上は、積極勧奨の差し控え措置自体に着目した議論であるが、被害者からワクチンメーカーに対する裁判については、次のような問題も生じる。


裁判もISDの対象となるので、仮に、被害者がワクチンメーカーに対する賠償判決を勝ち取り、これが最高裁で確定しても、GSK社とMSD社は、賠償を命じた最高裁判決によって損害を被ったとして、日本政府を相手取って、最高裁判決をISD仲裁に付託することができる。
TPPが発効すれば、外資を相手取った裁判では、常に第4審類似の審級が存在することになる。
とくに、被害者救済の観点から、厳密な意味での科学的な証明でなくとも、賠償を命じることができるとする国内判例の論理は、ISD仲裁で大いに問題になりうる。
十分な科学的証拠もなく国際経済活動を制限することにつながるからである。
TPPが発効すれば、国内裁判所もISDで日本政府がどのように裁かれるかを想定して判決せざるを得ないという事態が生じる(国内裁判所の屈服)。


まだ、ある。
ISDの仲裁廷は、賠償のみでなく、場合によっては保全措置を執ることが認められている。

仲裁廷は、一方の紛争当事者の権利を保全し、又は当該仲裁廷の管轄権を十分に実効的なものとすることを確保するため、暫定的な保全措置を命ずることができる。(9章23条9項)

したがって、ワクチンメーカーに対する賠償判決がISD仲裁に付され、ワクチンメーカーが賠償判決の執行の停止を求めた場合、仲裁廷は日本政府に対して、暫定的な保全措置として、当該判決の執行の停止を命じることが可能である。
行政権の主宰者である政府に対して、司法権の執行の停止を命じるのは明確に三権分立原則に違反するが、ISD条項は、外国投資家を国家と対等の法主体として認め、国家を単一の権利義務主体として措定するものであるから、権力分立原理は、仲裁廷が執行停止を命じることを否定する論拠とはならない。

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Syokuminti


加えて仮に厚労省の積極勧奨の差し控えがTPP発効後に行われた場合を仮定してみると、さらに問題があることがわかる。


この場合、前記した暫定的な保全措置は、積極勧奨の差し控え自体を停止させることを命じることができる(積極勧奨の復活)。


また、最終的な仲裁において原状回復を命じることもできるとされているので、最終的な仲裁によって積極勧奨の差し控え処分を取り消すことも可能である(9章29条1項(b)「原状回復。この場合の裁定においては、被申立人が原状回復に代えて損害賠償金及び適当な利子を支払うことができることを定めるものとする」)。


また、こうした仲裁申立とともに、保全措置を国内裁判所に申し立てることもできる。

「被申立人の司法裁判所又は行政裁判所において、暫定的な差止による救済(損害の賠償を伴わないものに限る)の申立を行い、又は当該申立に係る手続を継続することができる。ただし、当該申立が、仲裁が継続している間、当該申立人又は当該企業の権利及び利益を保全するこのみを目的とするものである場合に限る。」(第9章21条3項)

つまり、積極勧奨の差し控えをISDで争うワクチンメーカーは、ISDに付託して積極勧奨の違法性を争うとともに、暫定的な救済を求めて、積極干渉の差し控えを取り消すように国内裁判所に申し立てることができる。


この場合、積極勧奨の差し控えが国際法上、違法か否か関する判断は、もっぱらその件限りで構成される仲裁廷の権限に属し、国内裁判所は、判断権限を有さない。
にも拘わらず、国内裁判所は、いわば仲裁廷の道具として、積極勧奨の差し控えが、間接収用や、国際慣習法上の最低限待遇義務と呼ばれるものに違反するか否か、仲裁廷がいかなる判断をするかを想定しながら、暫定救済の申立に対して判断を下すことを強いられることになる。


この9章21条3項に関しては、明らかに特別な訴訟手続法の整備が必要であるが、今般政府が提出したTPP関連一括法の中には存在していない。

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不本意ながら、甚だ、むつかしくなった。
走り書き的な覚え書きである。
少なくとも、TPPのISD条項が国内法秩序に重大な影響を及ぼすことだけは理解してもらえるのではないだろうか。


政府が濫訴防止措置として主張するであろう、先決問題の先行処理、手続の公開(但し、秘匿情報に対する歯止めはない)、懲罰的賠償の禁止等々の大半は既知のものであり、子宮頸ガンワクチンの副作用に関係する、上記のような各種のISD手続を防ぐことはできない。


TPPの観点からは、厚労省の積極勧奨の差し控えをめぐるこうした手続は、ISDの本旨に沿うものだからである。

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2016年3月28日 (月)

麻生財務大臣兼副総理、クルーグマン相手に自説を展開 『デフレを解決したのは何か? 戦争だ!』

どうせ、マスコミはスルーするに違いないから書いておくね。
スティグリッツ教授だけではなく、クルーグマン教授についても、マスコミは大事なことは何も伝えず、ただ消費税増税延期の是非について報道しただけだよね。

3人の国際的な権威である経済学者が意見を述べた、国際金融経済分析会合の目的は次のような広範なものだ。

「本年5月に開催される G7サミットの議長国として、現下の世界的な経済状況に適切に 対応するため、世界の経済・金融情勢について、内外の有識者から順次見解を聴取し、意 見交換を行う『国際金融経済分析会合』(以下『会合』という。)を開催する。」

だから、たかだか選挙対策目当てっぽい消費税増税の是非だけクローズアップして報道している時点で、報道機関としてはアウトだからね。

スティグリッツ教授が、TPPについても意見を述べていることは、この第1回会合に同氏が提出した資料が同会合のサイトに公開されていることから確認できる。
第2回会合の資料も開示されているけど、クルーグマン氏が意見を述べた、第3回会合については、資料なしとしてな~あんにも開示されていないんだよね。

Dai3kaikokusaikeizaikinnyuubunsekik

業を煮やした風があるツイートが、クールグマン氏から流れた。


第3回会合の議事録12頁のPDFがリンクされている。
英語の出来ない2級国民でかつ経済に疎い僕には、とうてい解読できるものではないが、麻生財務大臣兼副総理が重大な発言をしていることはわかるので、該当部分だけ、訳してみたよ(例によって訳の正確性は保証しないからね)。

「【麻生財務大臣】
1930年代を通して、米国ではデフレのような状況にあったと記憶している。ルーズベルト大統領によってニューディール政策がとられた。その結果、非常に順調に機能したが、関連した最大の課題は長い期間、企業家や経営者たちが資金を借りて設備投資をしなかったことだ。この状況は1930年代の終わりまで続いた。
日本でも同様の状況が起きている。日本企業は過去最高の収益を記録したが、設備投資はされなかった。 多額の収益が日本の企業部門に留まっている。内部留保は増え続けている。 賃上げや配当や設備投資に使われるべきだが、そうはならない。企業は現金や預金として保有しているだけだ。
同様の状況が1930年代の米国でも起きた。
何がこの問題を解決したか?
戦争だ!

なぜなら、第2次世界大戦が1940年代に起き、それが米国のための解決となったからだ。
それでは、日本の企業家を見よう。彼らはデフレマインドにとらわれている。
彼らはデフレマインドを転換し、資本投資を始めなければならない。
我々はきっかけを探している。
それが最大の悩みだ。

【クルーグマン】
マクロ経済的に重要な点は、戦争が非常に大きな財政刺激になったことだ。
それが戦争であったという事実は非常に不幸だった。
それは、単に、さもなければ起きなかった財政刺激をもたらしたというだけのことだ。

事実、1930年代のニューディール政策では、今と同様、当時も財政均衡の声が多数あったため、ルーズベルトは1937年に財政刺激を撤回した。
ひどい誤りだった。
大きな第二次不況を引き起こした。
そうだ、我々は明らかに戦争ではない達成方法を探している。

まさか、日本の財務大臣から『戦争が最大の不況対策だ』なんていう飲み屋の与太話のような話に付き合わされるとはクルーグマン氏の想像を超えたに違いないよね。
真っ当に経済の議論を展開しようとした同氏に対しては、全く無礼千万だ。
その上、あれだけ自分にマイクを突きつけておきながら、消費税増税議論だけを紹介しているマスコミも、失礼だ。
当日の議論をいっこうに明らかにしようとしない政府を見て、業を煮やして、自ら当日の議論全容をツイッターで明らかにしたんだろうね。
「aftermath (No,I don't enjoy this sort of things)」の意味は、二級国民にはよくわからないけど、記者に取り囲まれる写真と一緒に流されていることを見ると、東京で話した内容が伝わらないこと、選挙対策目当てに利用されるようなことを自分は好まないと言っているようにも見える。

日中の情勢は第1次世界大戦当時の英独の関係に似ているとか、ナチスドイツのように憲法を変えるとか、麻生副総理の思想は、一貫している。
失言などではないんだな。
失言なのは、アベノミクスが完全に失敗だったことを前提にした発言になっちゃっているところかしらね。

マスコミは、伝えない。シカトすることを決め込んだ。

国際金融経済分析会合は

「率直な意見交換を確保するため、会合は非公開。会合後、事務局より記者ブリーフ。」

とされているから、非公開会合の内容については、政府発表以外、報道してはならないというのが各社共通の自主検閲コードだからだよね。

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ちなみにウィキペディアによれば、クルーグマン氏もTPPについて、否定説である。

TPP批判

クルーグマンは以下のような観点から環太平洋戦略的経済連携協定への批判を展開する[31]。

  •     関税は既に現在でも十分低いにもかかわらずそれをさらに下げ、悪いことに薬の特許や映画のコピーライトといった知的財産権の強化をする。特許というのは我々が独創性にどう報賞するかであり、顧客の出費を上げることで報賞すべきものだろうか。大規模な製薬会社やハリウッドはそれで報賞すべきと考えるだろうが、それによって高価になった薬に途上国の人々がアクセスできなくなってしまうことが懸念される。
  •     多国籍企業が国家を訴え、その裁判が部分的に民営化された司法団体によって裁かれるようなシステムがTPPによって作られてしまう。そのようなシステムはアメリカ国内の政策運営の阻害要因になる。例えば金融市場の規制はターゲットにされる可能性がある。例えば2010年に提唱されたボルカー・ルールも狙い撃ちにされるかもしれない。

        「ポール・ボルカー#ボルカー・ルール」も参照

  •     オバマ政権とホワイトハウスは基本的には実直だが、国際貿易・投資についての政策になると正直ではない。オバマ政権はTPP懐疑派は完全に間違っていると主張し、懐疑派があたかも貿易の価値がわからない経済音痴のように扱おうとしている。
  •     自由貿易にメリットはある。だが問題は彼らが進めているTPPはそもそも貿易協定とは異なるものであり、協定の中身がアメリカにとって良いものではない。

2016年3月22日 (火)

教科書から『イラク侵攻』が消える

情報統制社会は、横暴で強力な権力に対する忖度によって支配されているので、採り上げてはならないことは、比較的、わかりやすいようで、米国のパイプライン計画撤回をトランスカナダ社がISDに持ち出したことや、スティグリッツ氏がTPPを根本的に批判していることなどは、各社の検閲コードが一致しているよう だ。
各社の検閲コードには、“TPPの問題は関税問題以外は触れてはならない”と書いてあるに違いない。

Kenetsu

米国のパイプライン計画撤回に対して、カナダ企業が巨額の賠償を求めたことは、経済問題としても重要なので、日本経済新聞は書かざるを得なかった事情があるようだ。
だから、赤旗を除くと、採り上げたメディアは日本経済新聞がおそらく唯一だ。
その書きっぷりがすごい。

カナダ企業、パイプライン建設申請却下で米を提訴
2016/1/7 10:54
【ワシントン=川合智之】原油パイプラインの建設申請をオバマ米政権に却下されたカナダのエネルギー企業トランスカナダは6日、却下はオバマ大統領の権限を越えた判断だとして、米テキサス州ヒューストンの連邦裁判所に提訴したと発表した。パイプラインへの投資額など総額150億ドル(約1兆8千億円)超の損害賠償も請求した。

 同社が計画したのは、カナダから米テキサス州に原油を運ぶ「キーストーンXLパイプライン」。オバマ政権は建設を認めると石油消費が増え気候変動に悪影響があると判断し、昨年11月に申請を却下した。同社は6日の声明で、オバマ政権の判断には「恣意的で根拠がない」と批判した。

連邦裁判所に大統領権限逸脱の提訴をしたとする、すぐ次に「損害賠償も請求した」と書いているので、誰が見ても国内裁判所に提訴したとしか読みようがない。
米国では、賠償請求をISDに持ち込んだことが大問題になっているのに、検閲コードに従えば、ISDが大問題になっていることは決して書けない。

検閲コードに従うと、マンガのような記事しか書けない。
誤報ともねつ造とも言いがたい、読者を誤解させる目的で書かれた記事を何と呼べばいいのだろう。

情報統制社会では、検閲コードにかからないことを最優先にニュースが作られる。
問題の重大性に応じた標準的な報道が存在しないというのが、甚だ厄介だ。

当然、知られているだろうと思われることも意外に知られていなかったりする。
これでは国民の共通認識が何も成り立たなくなってしまう。
議論の前提が奪われてしまうのだ。

教科書から『イラク侵攻』という記述が消されるという話は、さすがのNHKも7時のニュースで報道していたので、周知のことと思われたが、検索してみると、どうもそうでもないようだ。
米国が国際法違反を認めていない以上、違法性を窺わせる「侵攻」は適切ではないとして修正を求めたというのが文科省の言い分だ。

教科書から『イラク侵攻』が消えるということは、イラク戦争が違法な戦争だったという歴史的評価がタブーになる先駆けである。
各社の検閲コードには「タブーの存在を知らせてはならない」と書かれている模様なので、各社とも触れていないのだろう。


米国では大統領候補すら、侵略を意味する“invade”を使っているのに、日本では、米国の名誉を傷つける『イラク侵攻』が官僚によって消され、タブーとなる。

かつて日本は朝鮮を植民地支配した。
皇民化教育は、日本におけるより植民地朝鮮において、より厳格に実施された。
今の日本の官僚組織は、朝鮮総督府の官僚組織と同様に厳格に宗主国に忠誠を誓い、マスコミは忖度検閲コードを厳格に適用して宗主国(軍差複合体やウォール街)の名誉を害することは決してしない。

戦後レジームからの脱却などというと勇ましげだが、何のことはない。
戦後レジームから脱却した先は米軍占領下に戻るということだったのだ。

Censored

念のため、『イラク侵攻』を消し去った教科書検定を伝えるニュースを引用しておく。

教科書検定 集団的自衛権の行使容認を記述

3月18日 19時14分

今回の検定に合格した教科書では集団的自衛権の行使容認に関して「現代社会」と「政治・経済」の12点のすべての教科書が記述をしているほか、7点の「倫理」や「世界史」、それに「日本史」の教科書も触れています。

今回の検定は去年5月までに申請された教科書が対象になっていて、これらの教科書は、おととし、政府が集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行ったことなどについて取り上げています。
記述の中には、集団的自衛権を巡る政治の動きについて解説したもののほか、個別的自衛権と比較して違いを説明したり、図柄を使って集団的自衛権が行使される場合の例を紹介したりして、生徒が理解しやすいよう工夫がされています。
今回の検定では、これらの記述のうち3点の教科書の合わせて5件の記述内容に修正を求める意見が出されました。このうち現代社会の教科書では、「第9条の実質的な改変」という見出しについて、「生徒が誤解するおそれのある表現である」という意見がつき、「自衛隊の海外派遣」と修正されました。
また別の現代社会の教科書では、「これからの「政治」の話をしよう」と題した教員と生徒の会話を掲載していますが、このなかの集団的自衛権について触れている記述に修正を求める意見が付きました。教員が「戦後ずっと平和主義を国是としてきた日本が世界のどこでも戦争ができる国になるのかもしれないね」と話している部分が、「生徒が誤解するおそれのある表現である」として意見がつけられました。その結果、「戦後ずっと日本の国是とされてきた平和主義のあり方が大きな転換点を迎えているといえるのかもしれないね」と修正されました。
さらに、安倍内閣が掲げる「積極的平和主義」について解説した脚注では、「これは、第二次安倍内閣の政策として掲げられ、集団的自衛権と集団的安全保障に関する憲法解釈を変更し、アジア地域をはじめとする広範な地域で自衛隊の活動を認めようという考え方」という記述に対して「生徒が誤解するおそれのある表現である」という意見がつけられました。その結果、記述が変更され、「第二次安倍内閣の政策として掲げられた国際協調主義にもとづく考え方。専守防衛や軍縮、国連PKOへの積極的参加などに加え、集団的自衛権の行使を含む自衛隊の活動を憲法解釈の変更によって認めることにより、国際社会の平和と安定および繁栄の確保に、積極的に寄与していこうとするもの」となりました。

従来認められてきた記述に修正意見多数

今回の検定では、新しい基準や指針の改訂に基づくもの以外でも、これまでは認められてきた記述に修正を求める意見が多く付きました。
「日本史」の教科書6点を例に見ますと、検定意見は合わせて206件で、このうちこれまで認められていた記述の修正を求める意見は、新基準と「解説書」の改訂に基づくものを除いて69件と、3分の1を占めました。
具体的な意見の内訳では、「生徒が誤解するおそれのある表現である」が最も多く30件でした。例えば、「2001年のアフガン戦争、2003年のイラク戦争に際しては、一連の特別措置法にもとづき自衛隊を派遣した」という記述は、前回の検定に合格し、今使われている教科書に載っていますが、今回は派遣の目的が誤解されるおそれがあるとして修正を求められました。その結果、「2001年のアフガニスタン紛争に対してはテロ対策特別措置法を制定し、海上自衛隊の艦船をインド洋に派遣して給油をおこなった。2003年のイラク戦争に対してはイラク復興支援特別措置法を制定し、人道支援に当たった」と、派遣の経緯や活動内容を加えた記述にして検定に合格しました。
文部科学省は「社会状況の変化にともない、従来の表現のままでは自衛隊が戦闘行為をするために派遣されたと誤解されるおそれがあるので修正を求めた」としています。
これまでは認めてきた記述に修正を求める意見は「現代社会」でも66件と、全体の3分の1を占めています。例えば「2003年のイラク戦争の際、アメリカが国連の決議なしに開戦した」という記述が認められてきましたが、今回は「開戦の経緯について誤解する」という意見が付き、教科書会社は「アメリカが国連での明確な決議なしに」と、「明確な」ということばを加えました。
イラク戦争をめぐっては、別の教科書の「米英などイラク侵攻」という記述にも「生徒が誤解するおそれのある表現だ」と意見が付き、「米英などイラク攻撃」と修正されました。これについて文部科学省は「アメリカは国連決議に基づく軍事行動だとしており、『侵攻』ということばは違法性が高い印象を与えるため修正を求めた」としています。
また、これまでは認めてきた記述に多くの修正を求めたことについて文部科学省は、「より正確でバランスのとれた教科書にするという検定基準見直しの趣旨を踏まえ、踏み込んで意見を付けた。これまでが寛容すぎたと考えている」と話しています。


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本当のところ、ネット検索を遂げた今でも、教科書から『イラク侵攻』が消えたことがあまり知られていないことなのか、信じられない。
見当外れであれば、ごめんである。

2016年3月21日 (月)

スティグリッツ氏のTPP批判も訪日目的も伝えぬマスコミ

情報統制社会は、本当に難儀だ。
つい数年前には、一応、一般に報道されていることを踏まえ、報道機関が伝える評価が正しいのかを疑えばよかった。
ところが、標準的報道そのものが失われてしまったのが朝日新聞911事件から1年半の日本だ。


とりあえず米国大統領選挙のようにマスコミが大々的に報道するニュースについては、疑ってみれば、相当いびつに伝わっていることくらいは、比較的容易に推察できる。
日本国政府が付き従っている勢力がネオコンであり、ウォール街であることからすれば、その双方から強く支持されているヒラリークリントンが良いわけはない。
属国隷従状態が永続すること請け合いである。
トランプ批判が止まないのは、あるいは批判にも拘わらず、トランプの支持率が高い(あるいは低くない)のは、単に暴言や排他的言辞のためだけではなく、この両者の尾をトランプが踏みつけにしているからだろう。

いち早く手がかりを提供してくれたのが「田中宇の国際ニュース」で、「櫻井ジャーナル」もようやく米国大統領選挙について触れてくれた。
英語圏の情報を分析して、「日本語で」紹介してくださる方がおられるのに、心から感謝である。
ニューズウィーク誌など海外メディアも、立場は違えど、共和党の混乱の真相について、同様の事実を伝えている。
何ともならない洗脳機関と化しているのが日本のマスコミである。

櫻井ジャーナル3月20日
 トランプを特に嫌っているのがイスラエルの好戦派と一心同体のネオコン。トランプが大統領になった場合、イスラエルの対する多額の援助が減らされる可能 性はある。ネオコンの中心的な存在でビクトリア・ヌランド米国務次官補の夫、ロバート・ケーガンは民主党のクリントンを支援しているが、これはネオコン全 体の動きだ。

 ちなみに、クリントンは巨大 軍需企業のロッキード・マーチンから多額の資金を得ていることで知られ、NATO軍とペルシャ湾岸産油国の雇った戦闘集団がリビアのムアンマル・アル・カ ダフィを惨殺した際、「来た、見た、死んだ」とCBSのインタビューの中で口にしたことでも話題になった。平和的とは言い難い人物だ。

 アメリカの議員は活動資金を得るだけでなく、個人的な富を築くためにイスラエル・ロビーを介してイスラエルへの忠誠を誓っている。ウォール街と深く結び ついているクリントンは巨大資本の利益を第一に考えているはずで、本音ではTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新 サービス貿易協定)を支持しているだろう。この仕組みは巨大資本が国を支配できるようにすることが目的で、主権国家を否定することになる。

ところで、ニューディール派のフランクリン・ルーズベルトは1938年4月29日、ファシズムについて次のように定義している。

 「もし、私的権力が自分たちの民主的国家より強くなるまで強大化することを人びとが許すなら、民主主義の権利は危うくなる。本質的に、個人、あるいは私的権力をコントロールするグループ、あるいはそれに類する何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」

 この定義に従えば、TPP、TTIP、TiSAはファシズム体制の別名とも言えるだろう。

国谷さんの降板の前日、国際金融経済分析会合が開かれ、ノーベル経済学賞受賞者であるスティグリッツ氏が、消費税増税を延期すべきとの意見を述べたことが繰り返し報道された。
スティグリッツ氏は、TPP反対で知られているので、選挙対策目当ての消費税増税の是非だけでなく、TPPについても意見を聞けばいいのになどと思っていたら、きちんと意見を述べていたということをツイッターで知った。

その後、篠原孝氏のブログで、スティグリッツ氏の今回の訪日目的が、恩師である宇沢弘文氏の一周忌の記念講演のためであったことを知らされた。
宇沢弘文氏は、晩年、TPP反対の先頭に立たれ、亡くなる直前まで、TPPの行く末を深く憂慮しておられた。
国会議員の学習会では、講演の半分近くをTPP批判に費やしたという。
氏のTPP批判や、宇沢弘文氏一周忌記念講演は、当然に報道されてしかるべきことだし、見識ある報道機関であれば、消費税だけでなく、国会では焦眉の課題になるTPPについても取材申し込みもすべきところだろう。



<TPPは多国籍企業のロビイストが書いただけ>
 圧巻はTPPについての主張である。講演の半分近くをTPP批判に充てた。
 TPPは自由貿易協定(Free Trade Agreement)だというが、それなら3頁ですむ話なのに、何と6000頁。誰も全部を読みこなしていないだろう。
 オバマ大統領は、21世紀の世界のルールは中国に書かせず、アメリカが書くと言ったが、多国籍企業のロビイストが書いているだけのことで、大企業に都合よく書いている。
 特許等知的財産のルールが問題である。特に薬の問題が大きく、安いジェネリックにできないようになっている。大きな製薬会社の利益が増えるようになっており、アメリカ人の健康が損なわれることになる。この分野でもいいことはほとんどない。

<ISDSは害だらけ、アメリカ議会は批准しない>
 特に投資条項は好ましくない。
 1980年頃までは、CO2の排出など問題にならなかった。今は違う。地球に代わりはなく一つしかない。環境を壊したらおしまいである。だから、環境規制は必要だが、カナダ政府の規制により損害を被ったとアメリカの企業がISDSで訴えて、カナダ政府が敗けている。タバコの規制も訴えられている。ISDSは新しい差別をもたらし、人間の健康や環境をも害する懸念がある。
 アメリカにとってTPPの効果はゼロであり、アメリカの議会で批准されないだろう。従って、日本も批准すべきではない、とまで言い切った。
 TPPはいずれにしろ害だらけであり、賛成できない。
 原中勝征前日本医師会会長が閉会のあいさつで、まるで宇沢教授の講演を聞いているようだと結んだ。全く同感である。

(後略)

スティグリッツ氏のTPPに対する考え方を確認しようとしたら、集英社の季刊言論誌「コトバ」2013年6月号「TPPと規制緩和を問い直す」という記事が掲載されていた。
とてもわかりやすいものだ。
TPPは自由貿易ではない。特定の集団が政府の政策を管理する協定だ、というスティグリッツ氏の主張の仕方は、頭から反自由貿易になっている僕なんかの主張より、多くの人に受け入れられやすいだろう。
規制の例として採り上げられている、チューインガムを路上に吐き捨てない、信号交差点の例なども、とてもわかりやすい。


TPPは特定集団のために「管理」された貿易協定だ

TPPは特定集団のために「管理」された貿易協定だ

 賛否両論を呼び、物議をかもしているふたつの分野について、お話をしたいと思います。ひとつは自由化や規制緩和に関することです。もうひとつは貿易にまつわる政策についてです。
 貿易政策について非常に重要なポイントは、TPP(環太平洋経済連携協定)をはじめとする自由貿易協定が「自由」な貿易協定ではない、ということです。
 どうして「自由」貿易協定ではないのか。私はときどき冗談めかしてこんなふうに答えています。
「もしある国が本当の自由貿易協定を批准するとしたら、その批准書の長さは三ページくらいのものだろう。すなわち、両国は関税を廃止する、非関税障壁を廃止する、補助金を廃止する、以上」
 実際の貿易協定の批准書がどんなものかご覧になったことはありますか? 何百ページ、何百ページと続くのです。そんな協定は「自由」貿易協定ではありません。「管理」貿易協定です。
 こうした貿易協定は、ある特定の利益団体が恩恵を受けるために発効されるものです。特定の団体の利益になるように「管理」されているのが普通です。
 アメリカであればUSTR(米国通商代表部)が、産業界のなかでも特別なグループの利益を代弁している。とりわけ政治的に重要なグループの利益を、です。
 TPPはアメリカの陰謀だと揶揄する人もいますが、そうです、確かにそういう側面はありますよ。こんなことは新しいニュースでもなんでもないでしょう。
 しかも、こういう二国間の貿易協定が発展途上国に多大な犠牲を払わせているのです。二〇〇一年一一月のドーハ開発ラウンドで発展途上国と合意事項がありましたが、アメリカはその合意を反故にしたのです。今から考えると、我々は発展途上国にとってフェアな多国間貿易体制をつくるべきだったと思います。実際に自分が関わったケースでも、二国間の貿易協定で途上国に大変な犠牲を強いることがよくありました。

九九パーセントの国民の生活を犠牲にするTPP

 かつてラテン・アメリカのある国の大統領が貿易協定に署名するべきかどうかを私に聞いてきたことがありました。私は彼の顔をじっと見て、「あなたが協定に署名することはできません」と申し上げ、彼は「なぜだ」と聞き返しました。じつは彼は医師でしたので、私はこう語りかけました。
「あなたは医者になるときにヒポクラティスの誓いをたてましたよね。人を傷つけるな、というあの誓いです。この協定に署名すると、(国民を傷つける結果となり)その誓いを破ることになりますよ」
 たとえば、ジェネリック医薬品の価格は高騰し、医療へのアクセスが難しくなり、多くの人が死ぬことになるでしょう。環境や資本の流れなどあらゆるところで、悪い影響が国民に降りかかってくるでしょう。貿易協定は人々の生活を苦しめる結果を生むのです。
 もうひとつ例をあげてみましょう。GMO(遺伝子組み換え生物)についてです。消費者は食料品にGMOが含まれていることを知る権利があるのか、ないのかという議論が今、アメリカであります。ほかの諸国の多くは、規制はしないけれども、国民が知る権利はあるだろう、という見解です。
 ところが、USTRは、国民に知る権利はないと主張しているのです。それは、USTRが特定の団体の利益を反映しているからです。このケースの場合、USTRが代表しているのは(遺伝子組み換え作物に力を入れている)モンサント社の利益です。
 私が言いたいのは、貿易協定のそれぞれの条項の背後には、その条項をプッシュしている企業があるということです。USTRが代表しているのは、そういう企業の利益であるということを忘れてはいけません。
 USTRはアメリカ国民の利益を代弁しているわけではありません。ましてや日本人の利益のことはまったく念頭にありません。

貿易協定と国内の法規制との対立

 貿易協定で決められた方針と国内の法規制との対立の可能性についても、お話ししましょう。
たとえば、シンガポールのチューイングガムにまつわる規制です。そんな規制が、反貿易的な政策でしょうか? いえ、嚙んだ後捨てられたチューインガムが街中のあちこちにこびりついているのに困って、シンガポール政府はチューイングガムを規制しただけなのです。
 ところが、アメリカ政府やUSTRの言い分は、それは協定に違反する政策だ、チューインガムをシンガポールに輸出しにくくなる、というものでした。
 事は日本に対しても同じです。日本には日本独自の規制がある。たとえば大型車には余計に税金がかかるという制度です。排気ガスという点でも、燃費という意味でも、大型車には問題があるから、税負担も重くしている。私としては、これはとても合理的な税制だと思います。
しかし、(大型車を輸出したい)アメリカは、こうした税制を反米的な政策だと見るわけです。実際は、ドイツ製の大型車は日本でも売れていて、日本人はキャデラックに興味がない、というたったそれだけのことです。逆にいえば、日本の社会のニーズを反映した製品をアメリカがつくっていない。アメリカの大型車の販売が伸びない理由は、「反米的な税制」のせいではありません。
 ですから、日本にとって重要なのは、反・自由貿易的だとか、反米的だと批判されても、その批判に屈しないことです。軽自動車への減税を日本人はあきらめてはいけないのです。公害は勘弁でしょう。環境を守りたいでしょう。子どもは守りたいでしょう。
 そうしたことは、商業的な利益のために、投げ出してはいけない、基本的な価値なのです。そして、目指すべきは規制緩和などではないのです。議論すべきは、適切な規制とは何か、ということです。
 規制なしで、機能する社会はありません。たとえば、ニューヨークに信号機がなかったら、交通事故を引き起こし、交通麻痺に陥るだけでしょう。現在のような規制がなければ、環境は汚染され、私たちの寿命は昔と同じように短いままだったでしょう。規制がなければ、安心して食事をすることもできません。
「規制を取りはらえ」という考え方は、じつにばかばかしい。問うべきなのは、どんな規制が良い規制なのか、ということのほうなのです。
 先進工業国のなかでアメリカがもっとも格差がひどいのは、規制緩和のせいなのです。規制緩和という政策のせいで、不安定性、非効率性、不平等性がアメリカにもたらされました。そんな政策を真似したいという国があるとは思えません。

ウォールストリートの言いなりになるな!

 もし日本が危機的な状況に陥りたくないのなら、重要なことは、アメリカ流のやり方を押し付けるウォールストリートやアメリカ財務省の言いなりになるべきではない、ということです。すでに日本は二○年ものあいだ低成長のままです。アメリカの言いなりになって、さらに次なる経済危機を迎えたいのでしょうか。そうでなければ、自由化や規制緩和という政策課題を考えるときにはとても慎重になるべきなのです。
 必要な変化を進めようとするときに、それを妨げる既得権益グループというものが存在するのも確かです。私のような外国人が、何が日本にとって必要な規制緩和で、何がそうでないかを判断することはできません。
 しかし、自由化や規制緩和を進めるときには、心に留めておくべきことがあります。自由化それ自体が、ある特定の利益団体の狙っていることであり、彼らの利益になるということです。
TPPに関してもそれはまったく同じ構図なのです。アメリカの一部の利益団体の意向を反映するTPPの交渉は、日本にとって、とても厳しいものになることを覚悟しなくてはなりません。日本は本当に必死になって交渉する必要があるのです。

後略

それにしても、スティグリッツ氏のこうした議論は、TPPの是非を議論するベーシックなものとして報道されていて当然のものである。
情報を読み解くという以前の段階で、重要な情報自体がひたすら隠蔽され、知ろうとして細い糸をたどってようやくにして知ることができる状態では、到底民主主義社会とは呼べない。

今の状態は、暗黒政府間近の状態とでも言ったらいいのだろうか。


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国谷裕子さんの降板に寄せて

国谷裕子さんがキャスターを務める最後の回となった3月17日のクローズアップ現代のテーマは“未来への風~“痛み”を越える若者たち~”。

NHKのサイトでは、冒頭の国谷さんの語りが省かれているようなので、文字起こしををしてみた。
実に的確に日本の経済状態を語っている。

大きな時代のうねりの中で当たり前だったことがそうでなくり、失われた10年がいつのまにか20年になっていきました。
グローバル化が急速に進み、激しい価格競争の中でコスト意識を強めざるを得なくなった企業は、人を減らし、柔軟に人件費を調整できる非正規雇用を拡大していったのです。
大人たちが信じていたことが変わっていった時代、日本の経済成長が下降に転じてから生まれ育った世代は失われた20年という実感そのものも乏しいとみられています。
内閣府が13歳から29歳を対象に行った調査では、将来について「明るい希望がある」と答えた若者の割合はご覧のように日本が最下位です。

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内向きで政治や社会に無関心、社会に傷つけられても自己責任と自分を責めがちな世代とみられがちですが、一方でご覧のように別の内閣府の調査では20代の半数近くが、自分の生活の充実より、国や社会のことにもっと目を向けるべきだと考えるようになっています。

Naikakuhu2

社会に貢献することで充実感を得たいという若者が増えていることを示しています。
とは言っても、激しい競争、管理の強化、横並びに従わざるを得ない同調圧力といったプレッシャーによって、決して声を上げたり行動がしやすいとは言えない社会、今夜はそうした中で自ら声を上げ、痛みを乗り越えていくために行動を始めた姿を通して若者たちの心の内を見つめます。

激しい競争、管理の強化、横並びに従わざるを得ない同調圧力といったプレッシャーによって、決して声を上げたり行動がしやすいと言えない社会
という言葉に国谷さんの無念が込められているように感じたのは僕だけではないだろう。

番組は、ゲストの柳田邦男氏がフリップに沿って、若者に望むことを語って終わった。


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  • 自分で考える
  • 情報を読み解く力
  • 多様な考えを理解する
  • 表現力を身につける

これもまた国谷さんが最後に視聴者に残したかったメッセージのように感じられた。

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朝日新聞が頭を垂れた2014年9月11日からの流れの速さには言葉を失う。
この3月、あれから僅か1年半で、多少とも骨のあるキャスターは基本的にテレビから姿を消すことになった。
その全てに、いち早く屈服した、朝日新聞は責任がある。
朝日新聞の対応は、あまりにも無思慮で、無責任だった。
言論に携わるものであれば、自らの屈服が何をもたらすか、事態がどのように進むかは容易に理解できたはずだ。
(たかだかマチベンですら、朝日新聞911事件の直後にドイツだったかの牧師の述懐や茶色の朝を援用している)

それにしても、昨今の情報統制はひどいものだ。
いくつも、いくつもの禁止コードに囲まれて、われわれは情報難民だ。

柳田邦男氏や国谷さんがいう、情報を読み解く前に、情報を得ることだけで四苦八苦しなければならない。
ガラケーではツイッター情報を採るのに苦労するようになって昨年夏にスマホに乗り換えたが、今度はスマホの情報量のあまりの多さに圧倒されて難儀をしている。
新聞を読む時間はないし、本もまともに読んでいない(>_<)

情報統制の例を紹介したいと思っていたが、PCがフリーズして、データが飛んでしまったので、記事を改めることにする。

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NHKは国際放送で、Today's Close Up という番組を放送している。
このメインキャスターは、英語のできる国谷さんであり、何とクローズアップ現代と同じスタジオで放送している。
パソコンやスマホからNHKワールドに行けば、無料で見ることができる。
但し、国際放送であるので、日本語の字幕は出ない。
英語の出来ない二流国民は、残念ながら、空気感しか知ることはできない (^-^;

Todays_close_up

2016年3月 8日 (火)

ISDで自由化される解雇  外圧が促進する解雇自由化

3月5日付赤旗にISD条項に関する僕のインタビュー記事が掲載された。
このスペースで、よく要領よくISD条項について、まとめていただいたと感心する。
とても僕には、こんなに要領よくまとめる能力はない。
「3分でわかるISD条項」である。
せっかくだから、記事を貼り付けておこう。

Akahataisd20160305


判決もISDの対象になる。
外国投資家の利益を害すれば、海外仲裁に出されるのだ。
判決が海外の仲裁人団によって裁かれることは、どこの国の法律家にとっても屈辱的だ。
だから、多くの国の法律家が、裁判をISDの対象から除くことを主張している。


国民にとっても、判決がISDの対象になることは極めて深刻だ。
外資相手に国内で裁判を起こしたとしよう。
外資は巨大な相手だから、困難な裁判だ。
10年裁判になっても何もおかしくはない。
地裁、高裁、最高裁と争って、ようやく外資に対する勝訴判決が確定したとしよう。


判決が、ISDの対象になるということは、この最高裁判決が違法だとして、損害賠償や原状回復を求めて、政府を相手とするISD仲裁を起こすことを外資に対して認めるということである。
公正衡平待遇義務とか、最低待遇義務とかに違反するという理屈を付ければ、外資は、いつでも国内判決を海外の仲裁廷に持ち出し、弾劾することができる。
TPPの規定の体裁に即して言えば、判決が「国際慣習法」に違反するという理屈づけもできる。


この結果、TPPは解雇を自由化する。

わが国では、解雇権を濫用する解雇は無効だとするのは確立した法理だ。
また、わが国では、整理解雇の有効性は、整理解雇の必要性や人選の適切性などの4要素を考慮して判断するとするのが判例である。


しかし、こうした解雇制限は、国際的には普遍的なものではない。
したがって、外資は容易にこれを公正衡平待遇義務や最低基準待遇義務に違反するとしてISD仲裁を持ち出して、政府に損害賠償を求めることが可能だ。
ISD仲裁の仲裁人の大半は世界を股にかけて各国の税金を巻き上げることを生業としているビジネスロイヤーであるから、日本の特殊な考え方は、国際慣習法たる公正衡平待遇義務に違反するとして日本政府に対して賠償を命じることはほぼ確実である。


解雇制限法理を変えなければ、外資は何度でもISD仲裁を申立て、政府は繰り返し賠償を命じられるだろう。
賠償を命じられることがわかっているような解雇制限法理を維持し続けることはできない。
これは極めて見やすい理屈で、韓国法務省も米韓FTA交渉中の検討では、整理解雇に関する韓国裁判例が変更を余儀なくされること、あるいは立法的手当を要することを問題にしていた。
そして韓国大法院は、判決をISDの対象から除くことを提案していた。


現実に日本IBMが2012年に行った大量解雇が、東京地裁で争われている
ビジネスジャーナル2013年1月8日付が次のようにIBMの事件を紹介している。

ビジネスジャーナル2013年1月8日
「IBM大量解雇、ついに訴訟へ 「明日から出社不要」(上司)」

複数の社員によれば、それは決まって夕方、退社時間の少し前に起こる。上司から突然呼び出され、別室で解雇が通知される。併せて「退社時間までに荷物をまとめて会社を出るように。明日からは出社に及ばず」と告げられる。業務の引き継ぎもなければ、同僚へのあいさつもない。問答無用で社員を叩き出すこうした解雇は、ロックアウトと呼ばれる。


解雇理由は「個人の勤務成績不良」というが、どの解雇通知にも同じ定型文が印刷されているだけ。その内容は

「貴殿は、業績が低い状態が続いており、その間、会社は様々な改善機会の提供やその支援を試みたにもかかわらず業績の改善がなされず、会社は、もはやこの状態を放っておくことができないと判断しました。以上が貴殿を解雇する理由となります」

というもので、一言一句変わらず、個人ごとに業績や努力を検討した形跡はうかがえない。

IBM関係者が語る。

「しかもその際、自ら退職する意思を示せば解雇を退職に切り替え、退職加算金と再就職支援をする、と付け加えるのです。それを選べば、解雇撤回を争う道はほぼ閉ざされますが、切羽詰まったなか、加算金を選ぶ被解雇者が多いようです」

 


IBMは「TPPのための米国企業連合」のメンバーである。
TPPが発効すれば、この事件は、ISD仲裁に持ち出される可能性が高い。
労働者が当事者とされない場で、外国投資家保護の観点から、解雇問題が法的に争われるのだ。


東京都の元労働委員会の方が僕のインタビュー記事を引用して、3月5日付のブログに書いておられる。


 おれは都労委委員現職当時、マスコミや金融の外 資系企業の不当労働行為事件をいくつも担当してきた。「解雇規制の日本の法律は無視する」と広言してはばからない外資経営者もいた。ISDはそいつらを援 護し武器を与える。日本の法秩序が根底から揺るがされる危険があるのだ。

 ISDの仲裁廷はどんな仕組みで運営されるのか。「ISDでは紛争のたびに3人の仲裁人を選任し判断を委ねます。提訴した外国投資家が1人、訴えられた政府が1人を選任し、残る1人は両者の合意によって選びます。3人が出した結論には当事者は従わなければなりません」。


 問題はその仲裁人だ。ことは外国投資家との紛争なのでその辺の事情に詳しくなければならない。そんな理由からほとんどが国際的なビジネス弁護士になって しまう。この国際的なビジネス弁護士というのが曲者で、企業利益のためなら国家主権の侵害などつゆほども気に留めない。おれはそういったたぐいのビジネス 弁護士にしばしばお目にかかったことがある。あいつらにだけは日本を滅茶苦茶にされたくない。


世界を股にかけて、税金から荒稼ぎをするのが、最先端の国際ビジネスロイヤーである。
国家や国民にとっては、ごろつきみたいな連中が、最高裁の上位に座って最高裁の判決を審査するのである。
現実にISDが起こされなくても、ISDで裁かれる可能性があるという圧力が裁判をゆがめる危険性も十分にある。


国内でTPPに呼応する勢力によって、解雇の金銭解決の制度化が、執拗に追求されている。
彼らにとっては、TPPは恰好の追い風になっている。


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2016年3月 2日 (水)

マスコミが束になっても敵わない   オバマを襲う巨額ISDを採り上げたメディアは“赤旗”のみ

トランスカナダ社の150億ドルのISDを採り上げたメディアがないと書いたが、赤旗が1月10日に、とっくに採り上げていた。

Pipelineisd

地図・写真入りで大きな扱いだ。
なぜか、ネット検索では、「パイプライン ISD」でも、「トランスカナダ ISD」でも上位にはヒットしなかった(ネットにも記事は掲載されている。見出し通りで検索するとヒットする)。

地図を見れば、日本のリニアを超えるような巨大事業だとわかる。
訴訟大国との間でISDを結べば、重要な政策変更は不可能になるということだ。



当然ながら、TPPが発効すれば、外国投資家の合理的期待を保護し、外国投資家の利益には慎重な配慮を払うことが義務付けられるから、外国企業が入札に参加するリニアは、引き返し不可能になる。
環境問題も、ましてや財政難も理由にはならない。
ISDが国内裁判所を避ける目的は、何より国際法であるグローバル投資法を厳格に適用することが目的だからだ。


辺野古新基地建設も、TPPが発効すれば、引き返し不可能になる。
たとえ米国政府が海兵隊を引き上げると言い出した結果(少なくとも中期的には、そうなりそうな米国情勢である)、新基地建設を取りやめたのだとしても、基地建設で利益を上げる企業の中にTPP加盟国の企業があれば(事の性格上、当然、あるはずだと思われる)、ISD必至である。
漫画みたいな話であるが、本当の話である。
重要な政策の変更には、私的利益を補償するための巨額なコストがかかるのである。

「ISDS条項の主要目的が私的な利益のために民主的過程と国民の利益を覆す点にあることを、トランスカナダ社は証明した」(国際環境法センター:キャロル・ミュフェット議長)という訳である。


それにしても大マスコミは、赤旗の何百倍もの特派員を送っているだろうに、全く報じていない(今回は、念のために有料の新聞記事横断検索をかけてみたが、赤旗以外はヒットしなかった)。
いくら何でも恥ずかしいと思ってもらいたいものである。

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なお、1月16日には「マスコミに載らない海外記事」が採り上げていた。
これも後で知った次第。

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