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2016年3月21日 (月)

スティグリッツ氏のTPP批判も訪日目的も伝えぬマスコミ

情報統制社会は、本当に難儀だ。
つい数年前には、一応、一般に報道されていることを踏まえ、報道機関が伝える評価が正しいのかを疑えばよかった。
ところが、標準的報道そのものが失われてしまったのが朝日新聞911事件から1年半の日本だ。


とりあえず米国大統領選挙のようにマスコミが大々的に報道するニュースについては、疑ってみれば、相当いびつに伝わっていることくらいは、比較的容易に推察できる。
日本国政府が付き従っている勢力がネオコンであり、ウォール街であることからすれば、その双方から強く支持されているヒラリークリントンが良いわけはない。
属国隷従状態が永続すること請け合いである。
トランプ批判が止まないのは、あるいは批判にも拘わらず、トランプの支持率が高い(あるいは低くない)のは、単に暴言や排他的言辞のためだけではなく、この両者の尾をトランプが踏みつけにしているからだろう。

いち早く手がかりを提供してくれたのが「田中宇の国際ニュース」で、「櫻井ジャーナル」もようやく米国大統領選挙について触れてくれた。
英語圏の情報を分析して、「日本語で」紹介してくださる方がおられるのに、心から感謝である。
ニューズウィーク誌など海外メディアも、立場は違えど、共和党の混乱の真相について、同様の事実を伝えている。
何ともならない洗脳機関と化しているのが日本のマスコミである。

櫻井ジャーナル3月20日
 トランプを特に嫌っているのがイスラエルの好戦派と一心同体のネオコン。トランプが大統領になった場合、イスラエルの対する多額の援助が減らされる可能 性はある。ネオコンの中心的な存在でビクトリア・ヌランド米国務次官補の夫、ロバート・ケーガンは民主党のクリントンを支援しているが、これはネオコン全 体の動きだ。

 ちなみに、クリントンは巨大 軍需企業のロッキード・マーチンから多額の資金を得ていることで知られ、NATO軍とペルシャ湾岸産油国の雇った戦闘集団がリビアのムアンマル・アル・カ ダフィを惨殺した際、「来た、見た、死んだ」とCBSのインタビューの中で口にしたことでも話題になった。平和的とは言い難い人物だ。

 アメリカの議員は活動資金を得るだけでなく、個人的な富を築くためにイスラエル・ロビーを介してイスラエルへの忠誠を誓っている。ウォール街と深く結び ついているクリントンは巨大資本の利益を第一に考えているはずで、本音ではTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新 サービス貿易協定)を支持しているだろう。この仕組みは巨大資本が国を支配できるようにすることが目的で、主権国家を否定することになる。

ところで、ニューディール派のフランクリン・ルーズベルトは1938年4月29日、ファシズムについて次のように定義している。

 「もし、私的権力が自分たちの民主的国家より強くなるまで強大化することを人びとが許すなら、民主主義の権利は危うくなる。本質的に、個人、あるいは私的権力をコントロールするグループ、あるいはそれに類する何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」

 この定義に従えば、TPP、TTIP、TiSAはファシズム体制の別名とも言えるだろう。

国谷さんの降板の前日、国際金融経済分析会合が開かれ、ノーベル経済学賞受賞者であるスティグリッツ氏が、消費税増税を延期すべきとの意見を述べたことが繰り返し報道された。
スティグリッツ氏は、TPP反対で知られているので、選挙対策目当ての消費税増税の是非だけでなく、TPPについても意見を聞けばいいのになどと思っていたら、きちんと意見を述べていたということをツイッターで知った。

その後、篠原孝氏のブログで、スティグリッツ氏の今回の訪日目的が、恩師である宇沢弘文氏の一周忌の記念講演のためであったことを知らされた。
宇沢弘文氏は、晩年、TPP反対の先頭に立たれ、亡くなる直前まで、TPPの行く末を深く憂慮しておられた。
国会議員の学習会では、講演の半分近くをTPP批判に費やしたという。
氏のTPP批判や、宇沢弘文氏一周忌記念講演は、当然に報道されてしかるべきことだし、見識ある報道機関であれば、消費税だけでなく、国会では焦眉の課題になるTPPについても取材申し込みもすべきところだろう。



<TPPは多国籍企業のロビイストが書いただけ>
 圧巻はTPPについての主張である。講演の半分近くをTPP批判に充てた。
 TPPは自由貿易協定(Free Trade Agreement)だというが、それなら3頁ですむ話なのに、何と6000頁。誰も全部を読みこなしていないだろう。
 オバマ大統領は、21世紀の世界のルールは中国に書かせず、アメリカが書くと言ったが、多国籍企業のロビイストが書いているだけのことで、大企業に都合よく書いている。
 特許等知的財産のルールが問題である。特に薬の問題が大きく、安いジェネリックにできないようになっている。大きな製薬会社の利益が増えるようになっており、アメリカ人の健康が損なわれることになる。この分野でもいいことはほとんどない。

<ISDSは害だらけ、アメリカ議会は批准しない>
 特に投資条項は好ましくない。
 1980年頃までは、CO2の排出など問題にならなかった。今は違う。地球に代わりはなく一つしかない。環境を壊したらおしまいである。だから、環境規制は必要だが、カナダ政府の規制により損害を被ったとアメリカの企業がISDSで訴えて、カナダ政府が敗けている。タバコの規制も訴えられている。ISDSは新しい差別をもたらし、人間の健康や環境をも害する懸念がある。
 アメリカにとってTPPの効果はゼロであり、アメリカの議会で批准されないだろう。従って、日本も批准すべきではない、とまで言い切った。
 TPPはいずれにしろ害だらけであり、賛成できない。
 原中勝征前日本医師会会長が閉会のあいさつで、まるで宇沢教授の講演を聞いているようだと結んだ。全く同感である。

(後略)

スティグリッツ氏のTPPに対する考え方を確認しようとしたら、集英社の季刊言論誌「コトバ」2013年6月号「TPPと規制緩和を問い直す」という記事が掲載されていた。
とてもわかりやすいものだ。
TPPは自由貿易ではない。特定の集団が政府の政策を管理する協定だ、というスティグリッツ氏の主張の仕方は、頭から反自由貿易になっている僕なんかの主張より、多くの人に受け入れられやすいだろう。
規制の例として採り上げられている、チューインガムを路上に吐き捨てない、信号交差点の例なども、とてもわかりやすい。


TPPは特定集団のために「管理」された貿易協定だ

TPPは特定集団のために「管理」された貿易協定だ

 賛否両論を呼び、物議をかもしているふたつの分野について、お話をしたいと思います。ひとつは自由化や規制緩和に関することです。もうひとつは貿易にまつわる政策についてです。
 貿易政策について非常に重要なポイントは、TPP(環太平洋経済連携協定)をはじめとする自由貿易協定が「自由」な貿易協定ではない、ということです。
 どうして「自由」貿易協定ではないのか。私はときどき冗談めかしてこんなふうに答えています。
「もしある国が本当の自由貿易協定を批准するとしたら、その批准書の長さは三ページくらいのものだろう。すなわち、両国は関税を廃止する、非関税障壁を廃止する、補助金を廃止する、以上」
 実際の貿易協定の批准書がどんなものかご覧になったことはありますか? 何百ページ、何百ページと続くのです。そんな協定は「自由」貿易協定ではありません。「管理」貿易協定です。
 こうした貿易協定は、ある特定の利益団体が恩恵を受けるために発効されるものです。特定の団体の利益になるように「管理」されているのが普通です。
 アメリカであればUSTR(米国通商代表部)が、産業界のなかでも特別なグループの利益を代弁している。とりわけ政治的に重要なグループの利益を、です。
 TPPはアメリカの陰謀だと揶揄する人もいますが、そうです、確かにそういう側面はありますよ。こんなことは新しいニュースでもなんでもないでしょう。
 しかも、こういう二国間の貿易協定が発展途上国に多大な犠牲を払わせているのです。二〇〇一年一一月のドーハ開発ラウンドで発展途上国と合意事項がありましたが、アメリカはその合意を反故にしたのです。今から考えると、我々は発展途上国にとってフェアな多国間貿易体制をつくるべきだったと思います。実際に自分が関わったケースでも、二国間の貿易協定で途上国に大変な犠牲を強いることがよくありました。

九九パーセントの国民の生活を犠牲にするTPP

 かつてラテン・アメリカのある国の大統領が貿易協定に署名するべきかどうかを私に聞いてきたことがありました。私は彼の顔をじっと見て、「あなたが協定に署名することはできません」と申し上げ、彼は「なぜだ」と聞き返しました。じつは彼は医師でしたので、私はこう語りかけました。
「あなたは医者になるときにヒポクラティスの誓いをたてましたよね。人を傷つけるな、というあの誓いです。この協定に署名すると、(国民を傷つける結果となり)その誓いを破ることになりますよ」
 たとえば、ジェネリック医薬品の価格は高騰し、医療へのアクセスが難しくなり、多くの人が死ぬことになるでしょう。環境や資本の流れなどあらゆるところで、悪い影響が国民に降りかかってくるでしょう。貿易協定は人々の生活を苦しめる結果を生むのです。
 もうひとつ例をあげてみましょう。GMO(遺伝子組み換え生物)についてです。消費者は食料品にGMOが含まれていることを知る権利があるのか、ないのかという議論が今、アメリカであります。ほかの諸国の多くは、規制はしないけれども、国民が知る権利はあるだろう、という見解です。
 ところが、USTRは、国民に知る権利はないと主張しているのです。それは、USTRが特定の団体の利益を反映しているからです。このケースの場合、USTRが代表しているのは(遺伝子組み換え作物に力を入れている)モンサント社の利益です。
 私が言いたいのは、貿易協定のそれぞれの条項の背後には、その条項をプッシュしている企業があるということです。USTRが代表しているのは、そういう企業の利益であるということを忘れてはいけません。
 USTRはアメリカ国民の利益を代弁しているわけではありません。ましてや日本人の利益のことはまったく念頭にありません。

貿易協定と国内の法規制との対立

 貿易協定で決められた方針と国内の法規制との対立の可能性についても、お話ししましょう。
たとえば、シンガポールのチューイングガムにまつわる規制です。そんな規制が、反貿易的な政策でしょうか? いえ、嚙んだ後捨てられたチューインガムが街中のあちこちにこびりついているのに困って、シンガポール政府はチューイングガムを規制しただけなのです。
 ところが、アメリカ政府やUSTRの言い分は、それは協定に違反する政策だ、チューインガムをシンガポールに輸出しにくくなる、というものでした。
 事は日本に対しても同じです。日本には日本独自の規制がある。たとえば大型車には余計に税金がかかるという制度です。排気ガスという点でも、燃費という意味でも、大型車には問題があるから、税負担も重くしている。私としては、これはとても合理的な税制だと思います。
しかし、(大型車を輸出したい)アメリカは、こうした税制を反米的な政策だと見るわけです。実際は、ドイツ製の大型車は日本でも売れていて、日本人はキャデラックに興味がない、というたったそれだけのことです。逆にいえば、日本の社会のニーズを反映した製品をアメリカがつくっていない。アメリカの大型車の販売が伸びない理由は、「反米的な税制」のせいではありません。
 ですから、日本にとって重要なのは、反・自由貿易的だとか、反米的だと批判されても、その批判に屈しないことです。軽自動車への減税を日本人はあきらめてはいけないのです。公害は勘弁でしょう。環境を守りたいでしょう。子どもは守りたいでしょう。
 そうしたことは、商業的な利益のために、投げ出してはいけない、基本的な価値なのです。そして、目指すべきは規制緩和などではないのです。議論すべきは、適切な規制とは何か、ということです。
 規制なしで、機能する社会はありません。たとえば、ニューヨークに信号機がなかったら、交通事故を引き起こし、交通麻痺に陥るだけでしょう。現在のような規制がなければ、環境は汚染され、私たちの寿命は昔と同じように短いままだったでしょう。規制がなければ、安心して食事をすることもできません。
「規制を取りはらえ」という考え方は、じつにばかばかしい。問うべきなのは、どんな規制が良い規制なのか、ということのほうなのです。
 先進工業国のなかでアメリカがもっとも格差がひどいのは、規制緩和のせいなのです。規制緩和という政策のせいで、不安定性、非効率性、不平等性がアメリカにもたらされました。そんな政策を真似したいという国があるとは思えません。

ウォールストリートの言いなりになるな!

 もし日本が危機的な状況に陥りたくないのなら、重要なことは、アメリカ流のやり方を押し付けるウォールストリートやアメリカ財務省の言いなりになるべきではない、ということです。すでに日本は二○年ものあいだ低成長のままです。アメリカの言いなりになって、さらに次なる経済危機を迎えたいのでしょうか。そうでなければ、自由化や規制緩和という政策課題を考えるときにはとても慎重になるべきなのです。
 必要な変化を進めようとするときに、それを妨げる既得権益グループというものが存在するのも確かです。私のような外国人が、何が日本にとって必要な規制緩和で、何がそうでないかを判断することはできません。
 しかし、自由化や規制緩和を進めるときには、心に留めておくべきことがあります。自由化それ自体が、ある特定の利益団体の狙っていることであり、彼らの利益になるということです。
TPPに関してもそれはまったく同じ構図なのです。アメリカの一部の利益団体の意向を反映するTPPの交渉は、日本にとって、とても厳しいものになることを覚悟しなくてはなりません。日本は本当に必死になって交渉する必要があるのです。

後略

それにしても、スティグリッツ氏のこうした議論は、TPPの是非を議論するベーシックなものとして報道されていて当然のものである。
情報を読み解くという以前の段階で、重要な情報自体がひたすら隠蔽され、知ろうとして細い糸をたどってようやくにして知ることができる状態では、到底民主主義社会とは呼べない。

今の状態は、暗黒政府間近の状態とでも言ったらいいのだろうか。


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