「帰ってきたヒトラー」観てきた 全国で観られます
何となくではあるが、選挙前には観ておきたいと思っていた「帰ってきたヒトラー」を投票日前日の土曜日に観てきた。
傑作だ。
こんな映画を作ってしまい、ヒット作になるというドイツは捨てたものじゃないと思う。
少し前になるが、米国映画「マネーショート」も前宣伝と違って本質は非常にシリアスで(であるから前宣伝のような爽快感はない)、アメリカにはきっと復元力があるんだろうと思わされた。
このコメディ、マニアックなパロディ満載で、ごく一部の観客だけが仕切りに笑っていた場面があった。他の観客にはどこがおかしいのか、さっぱりわからない。
後でネット検索して、ようやく「ヒトラー最期の12日間」のパロディだとわかった。
「12日間」のこの場面は、予習しておいた方が断然、楽しめる。
映画の初めの方で、「おっぱいぷるんぷるん」という何とも品のよくないジョークが出るが、これも「12日間」のパロディだと知っておいた方が楽しめる。動画はこちら
日本語字幕作成者というのは、実は大変な努力をしていることがわかって楽しい。
この映画、前評判の高さに比べ、とにかく上映館が少ない。
名古屋でも名画上映で知られる中規模館ともう1館しか上映していない。
7月初めに探したときには、東海4県で名古屋の2館しか上映予定が掲載されておらず、東北に至っては1館も上映館が掲載されていなかった。
後で確認したら、今は、全国の各県の上映予定が掲載されている。
ご自分のお住まいの地域で上映予定がなくて、諦めた方は、今なら上映予定を確認できますので、もう一度、上映予定のご確認を。
それにしても、順次公開という手法は、フィルムを使っていた頃ならともかく、デジタル化した今では、どうしてそういう方法をとるのか、わからない。
現に定刻相当前に行かないと席がないのではないかと思われるほど混んでいたし、年齢・性別問わず、まんべんなく人気があると思わせる観客層だった。
一斉公開の方が、観客動員は増えるだろうし、何より映画のレベルからすれば、全国シネコンで上映しても十分に採算がとれるはずだ。
(このあたり、出版前から話題騒然だった「日本会議の研究」が、出版業界の常識に反する増刷遅れで大幅な売上減となったのと何かしら似ている)
この国では、ひょっとしたら「贅沢は素敵だ」という程度のささやかな抵抗すら危うくなるのかもしれない。
ヒトラーの掲げた「反ユダヤ」、「反共産主義」は、歴史的、経済的、社会的な文脈の中で生まれたもので、ヒトラーの特異な個性が生み出したものではない。「強いドイツ」は復古主義の表現だ。
時代の危うさは、相似形で世界規模に広がっていることをつくづく感じさせられる。
ドイツには危機をエンターテインメントにする力がある。
日本にも、エンターテインメントにする力があってほしいと、つくづく思う。
ちなみに、理解できなかったパロディを楽しむためにもう一度観に行くつもりである。
肝心の演説場面で、実は寝落ちして聞き逃した失態も取り返すつもりである。

追記
なぜ「帰ってきたヒトラー」が良い映画か、きちんと書いているブログのトラックバックが付きましたので、念のため以下にリンクしておきます。
“カモメのエッセイ”7月13日(6月26日アメブロから転載)
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