知らされぬISD条項の恐怖 マスコミの大罪
TPPに関する学習会の度に、参加者に「ISDって聞いたことがありますか」と尋ねる。
TPPに関心があって集まっている学習会ですら、手が上がるのは2,3割というところだ。
ものすごくコアな人たちの学習会でもない限り、5割を超えることはない。
おそらく外国企業が相手国政府を国際裁判に強制的にうったえるISDを知っている国民は1%にも満たないだろう。
全国紙は2013年頃に何度か制度の説明をしたっきり、ISDをめぐって大きな動きがあっても、ほとんど報道しない。
国民がISDを知らないのは、国民の責任ではなく、もっぱらマスコミの責任だろう。
すこし古いことになるが赤旗が僕のインタビュー記事を掲載してくれた。
わかりやすいと評判なので、ツイートを紹介しておきます。
手元に紙面が見つからず、よみにくくてすみません。
TPPのISD条項について赤旗が岩月浩二弁護士へのインタビュー記事を掲載した。わかりやすい。ISDって何?「外国投資家が、投資先の協定違反で損害を受けたとして、その国に訴えることができる制度」。そこに主権を侵す重大問題が潜む。(津) pic.twitter.com/7l19rWXKcs
— 赤旗政治記者 (@akahataseiji) 2016年5月2日
仮に全国紙、とくに朝日新聞が、同じような記事を掲載していれば、TPPをめぐる世論ははるかに厳しくなっていたに違いない。
米国主流メディアであるCNNですら、今年2月19日には“The Real Danger in TPP”とする記事を掲載する事態だ。
僕のインタビュー記事は何も突飛なものではない。
少なくともISDに疑問を持つ各国市民が同様に考えていることに過ぎない。
ごく直近では、EU官僚たちが難航する米国とのTTIP(環大西洋投資貿易協定)に弾みを付けようとしてもくろんだCETA(カナダEU包括的経済・貿易協定)の署名式が、ベルギーのワロン地域のISDに対する反対が理由で無期限延期になった。
ISDに反対する声が、貿易協定を頓挫させた初めての例だ。
小地域の手違いが生んだ誤算に過ぎないと矮小化するべきではない。
ワロンの反対の背後にはEU全域に広がる市民の反対がある。
仮にもTPPが強行採決されるようなことが許されるのであれば、最近、とみにISDに対するだんまりを決め込んだ(米国を揺るがしたトランスカナダ社の米国政府に対する150億ドルのISDすら報道しなかった筈だ)、朝日新聞の罪は歴史に残るだろう。
今晩、気鋭の三雲崇正弁護士とともに、急遽、IWJでインタビューを受けることになりました。今から事務所を出ます(午後2時20分)
追記 10月29日
いや、ものすごい恫喝が入ったんだろうな。
ワロン地域、屈服と。
これでEUと日本の経済連携協定の危険性がいっそう切実になった。
EU企業も結構、ISD大好きで好戦的なので‥‥
対加貿易協定、30日調印=ベルギーの反対でずれ込み-EU
【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)は28日夜、カナダとの包括的経済・貿易協定(CETA)の調印式を30日にブリュッセルで行うと発表した。反対していたベルギーの説得に時間がかかった影響で、調印のためのEU・カナダ首脳会談は当初予定の27日当日に延期されており、3日遅れの開催となる。
EUは28日、ベルギーも含めすべての加盟国の同意を取り付け、理事会でCETAを承認した。ベルギー南部のワロンの地域政府などは、紛争処理手続きを定めた条項などに難色を示していたが、27日になって承認する姿勢に転じた。(2016/10/29-09:18)
いずれにしろ、なりふり構わず強引に推し進めなければならないほどに、グローバリズムは追い込まれているにちがいない。
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