無料ブログはココログ

« 共謀罪は市民運動を殺す 昨日の中日新聞から | トップページ | 『日本は素晴らしい資本の供給源だ』 種子法廃止、水道法改正 »

2017年2月24日 (金)

共謀罪は民主主義を殺す  組織的業務妨害共謀罪の恐怖

Moritomogakuen

今さら、へたれマスコミなど、どうでもいいような気もするが、国会で取り上げられている段階に至ってすら疑獄事件をマスコミが報じなくなっては、やはり困る。
共謀罪が、マスコミを殺すという指摘がある。


2012年に亡くなられた、マスコミ出身の日隈一雄弁護士が“共謀罪でメディアは一網打尽だ!~信用毀損罪適用可能”とする記事を書いておられる。
2006年3月6日の記事であるから、まだ健全な批判精神がマスコミに存在していた時代のもので、マスコミに対して警鐘を鳴らす趣きもある記事であるが、ここで指摘されていることは、未だに非常に重要な論点というべきだろう。

端的にいえば、日隈一雄弁護士は、共謀罪はマスコミから報道の自由を奪う結果をもたらすと警告している。
サーバーから消えるといけないので、記事は末尾に引用しておく。


ここで取り上げられているのは信用毀損罪及び業務妨害罪である。

刑法
第二百三十三条  虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。


「信用毀損」は主として経済的側面における社会的評価を意味する。
「業務」とは事業をはじめとする、広く社会的な活動というような意味である。
以下では、「業務妨害」を念頭に置いて考えてみたい。



「虚偽の風説の流布」とは今風にいえば、フェイクニュースのことだ。
業務妨害の結果は具体的に発生しなくても、この罪は成立するとするのが判例の立場なので、業務を妨害するに足りる「虚偽の風説」を流布すれば、業務妨害罪が成立する。


したがって、マスコミが流したニュースが、虚偽の内容で人の業務を妨害する危険性を発生させれば、この罪は成立する。
但し、報道内容が虚偽であることの認識は犯罪の構成要件とされるから、過失によって虚偽のニュースを流しても業務妨害罪には該当しない。


この罪には未遂犯はなく、既遂犯のみを処罰対象とする。
つまり業務を妨害するに足りる「虚偽の風説」が流布されて初めて犯罪が成立する。


共謀罪の対象は長期4年以上の懲役・禁錮が法定刑とされている犯罪であり、長期刑が3年以下とされる刑法上の業務妨害罪はそれ自体としては、共謀罪の対象とはなっていない。


しかし、組織犯罪処罰法では、組織犯罪であることを条件として、その法定刑の長期を5年に加重している。威力業務妨害罪も同様である。


組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律
第三条第一項
十一  刑法第二百三十三条 (信用毀損及び業務妨害)の罪 五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金
十二  刑法第二百三十四条 (威力業務妨害)の罪 五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金


組織的な犯罪とは、

「団体の活動(団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。以下同じ。)として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたとき」

をいうとされており、相当に広範囲な行為が組織的な行為とされる。


マスコミ報道であれば、組織的行為に該当することは確実である。
したがって、マスコミがフェイクニュースを流布すれば、組織犯罪としての業務妨害罪に問われることになる。
虚偽であることの認識が犯罪の構成要件になるから、誤報は民事責任が生じることがあったとしても、犯罪にはならない。
結果として、現在、組織犯罪処罰法がマスコミにとって脅威になっていることはない。
昨今のマスコミのへたれぶりは、もっぱら根性がないか、マスコミの使命が権力を擁護することにあると、わきまえているかの、いずれかによるものである。


さて、延々と金正男殺害事件をトップニュースで流し続けるお馬鹿マスコミは、森友学園の破格の国有地取得事件については、驚くべき臆病さを示している。
国会で相次いで取り上げられるようになって、ようやく恐る恐るテレビで流れるようになったざまである。


報道されている内容に虚偽があっても、現状では、それが意図的なものでない限り、現行法では警察権力が動くことはできない(建前である)。
しかし、共謀罪が導入されれば、日隈弁護士が憂えたように状況は一変する。


そもそも、業務妨害について、共謀自体が犯罪行為になるというのであるから、森友学園に関する記事の掲載のための社内の打ち合わせや、ニュースの企画や取材のための事前の社内打ち合わせ自体が共謀罪にでっち上げられる可能性がある。
切符の手配でも、取材対象者や協力業者に対する連絡でも準備行為に該当するから、処罰条件も満たすことになる。
何も起きていないのに、一斉摘発が可能になる。
そして、政府に不都合な事実を報道をする可能性がある報道機関に対しては、常時、事実上の監視活動が行われる可能性がある。


そのような状況では、今さえへたれなマスコミが、森友学園のような事件を避けて通ることは明らかだろう。
今回の事件について、第一報が流れてから、現場の記者は早い段階から動いていたが、報道は大幅に遅れた。
政府に不都合な『虚偽の風説』とこじつけられて、打ち合わせ自体が共謀罪に問われる可能性があるということになれば、こんりんざい、政府に不都合な事件は取材すらしなくなるだろう。
仮にも取材活動に及ぼうものなら、記事になるはるか前の打ち合わせをとらえて、政府は、共謀罪容疑で報道機関を強制捜査することが可能になるのだから。
有罪か無罪かが問題ではない。強制捜査が可能であることが問題なのだ。
市民や国民のためのマスコミが確定的に殺されることは明らかだろう。

Kokkaimaekougi

もう一つ、ここでは、威力業務妨害罪も組織的な行為とみなされれば、共謀罪の対象となることも指摘しておきたい。


威力を用いる業務の妨害が組織的なものとされれば、法定刑の長期は5年に引き上げられる。
ここで「威力」とは「人の意思を制圧するに足りる勢力」を言うとされる。
石破氏が国会前の抗議行動を「テロ」呼ばわりしたことからも窺われるように、国会や官邸前の抗議行動が盛り上がれば、威力業務妨害をこじつけられる可能性はある。
現状では、抗議行動そのものに対して威力業務妨害罪を発動するかどうかということであり、弱いなりに存在する社会的な民主的価値観が、そうした抗議行動をそれ自体として犯罪とすることを防いでいる。
しかし、共謀罪が適用されるということになると、事態はきわめて深刻になるだろう。


これらの抗議行動は、多かれ少なかれ、組織犯罪処罰法が言うところの「組織的な行為」の要件を満たす可能性がある。
組織犯罪処罰法は、団体を
「「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるものをいう。」
と定義しているので、国会前抗議活動は組織犯罪に当たらないとの主張は可能であるが、警察や検察がどのように主張するかは別問題である。

したがって組織的威力業務妨害罪の問題となり得る。
組織的威力業務妨害罪には共謀罪が適用される。
これは、抗議行動の打ち合わせ自体が犯罪になるということを意味する。


すでに相当程度広がっていると思われる市民運動に対する監視がさらに進行する中、抗議活動が行われる以前に、関係者や関係箇所を一斉に摘発することが可能になる。
刑罰を科すことが可能かどうかは、本筋の問題ではない。
政府の意に沿わない、あらゆる活動に対して、常に強制捜査が行われる可能性があるという威嚇が問題なのだ。


共謀罪は、市民運動を殺すことになりかねない。


戦前には横浜事件という巨大な弾圧えん罪事件もあった。
つい数年前まで、そうした事件は過去のものであると思っていた。
しかし、事態はあまりにも急速に悪化している。
我々は今、民主主義を踏みにじる暴挙が国会で常態化し、正視に耐えないような愚劣な意識の持ち主が、この社会の枢要部に巣くっているのを見せつけられている。
(上に行くほど、馬鹿が出てくるのは、植民地の特徴である。そういう輩に限って、上にへつらい、下に傲慢な性格が悪い連中ばかりなのが、また、植民地の特徴である)


共謀罪が現代版治安維持法であり、ファシズムを不可逆的に進めるという指摘には根拠があるに違いない。

* ランキングに参加しています *
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

-----------------------------------------

共謀罪でメディアは一網打尽だ!~信用毀損罪適用可能
2006-03-06 22:47:36 | 共謀罪

共謀罪について,近く,話をする機会があるので,改めて,刑法を眺めていたところ,何と,信用毀損罪「第233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」について,「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」による加重規定があることを発見した。加重されると,「6年以下の懲役又は50万円以下の罰金」(3条1項7号※1)となり,共謀罪の適用範囲に入ってくるのだ!

改めて,現在提出予定の法案を見てみよう。

■■引用開始■■
次の各号に掲げる罪に当たる行為で、団体の活動(その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体である場合に限る。)として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、その共謀をした者のいずれかにより共謀に係る犯罪の実行に資する行為が行われた場合において,当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
一 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪 五年以下の懲役又は禁錮
二 長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪 二年以下の懲役又は禁錮
■■引用終了■■

ということは,ブラックジャーナリズムを生業とするものは,「虚偽の風説を流布し,人の信用を毀損する」犯罪を「団体の活動として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行わ」うことになることを予定しつつ,「団体の活動(その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体である場合に限る。)として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者」にあたるために,記事を企画しただけで出版しなくても,組織犯罪処罰法で加重された信用毀損罪の共謀罪で逮捕され,刑に処せられることとなる。

では,ブラックジャーナリズムではないが,噂の真相なら,あるいは,鹿砦社ならどうなのか?鹿砦社なんて,言論弾圧されていても,大手メディアはほとんど取り上げず,ブラック扱いだ…。

大手なら大丈夫…そうだろうか?NHKが女性国際戦犯法廷を取り上げた番組の編集過程で政治家の介入があったことを指摘した朝日新聞は,ほとんど孤立無援だった。もちろん,良心的な記者もいたが,表現の自由に対する圧力がかけられていたにもかかわらず,あまりに,無関心だったというほかない。

自分たちは関係ない…そう思っていたら,新聞社やテレビ局の記者や編集者が組織犯罪処罰法で加重された信用毀損罪の共謀罪で逮捕されることになりかねない。

そんな馬鹿なって思うかも知れないが,そんな馬鹿なって放置するのではなく,そんな馬鹿なことが起きないような法律にする努力をすることが大切だ。あとであのとき立法化を止めていたらって思ってももう遅い。(議案経過)


※1
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律
(組織的な殺人等)第3条 次の各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動(団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。以下同じ。)として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは、その罪を犯した者は、当該各号に定める刑に処する。

1.刑法(明治40年法律第45号)第186条第1項(常習賭博)の罪

5年以下の懲役
2.刑法第186条第2項(賭博場開張等図利)の罪
3月以上7年以下の懲役
3.刑法第199条(殺人)の罪
死刑又は無期若しくは5年以上の懲役
4.刑法第220条(逮捕及び監禁)の罪
3月以上10年以下の懲役
5.刑法第223条第1項又は第2項(強要)の罪
5年以下の懲役
6.刑法第225条の2(身の代金目的略取等)の罪
無期又は5年以上の懲役
7.刑法第233条(信用毀損及び業務妨害)の罪
6年以下の懲役又は50万円以下の罰金
8.刑法第234条(威力業務妨害)の罪
5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
9.刑法第246条(詐欺)の罪
1年以上の有期懲役
10.刑法第249条(恐喝)の罪
1年以上の有期懲役
11.刑法第260条前段(建造物等損壊)の罪
7年以下の懲役

日隈氏の記事中、6年とあるのは、現行法では5年である。

« 共謀罪は市民運動を殺す 昨日の中日新聞から | トップページ | 『日本は素晴らしい資本の供給源だ』 種子法廃止、水道法改正 »

憲法」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 共謀罪は民主主義を殺す  組織的業務妨害共謀罪の恐怖:

» 目的は積極的戦争主義の為の学校経営・安倍友への公有地払い下げ事件の真相 [dendrodium]
森友学園の小学校建設予定地に国有地が破格の安値で払い下げられた疑獄事件に、安倍総理が関与している証拠はまだ見つかっていないから、安倍総理は白であるという論法にされる恐 ... [続きを読む]

« 共謀罪は市民運動を殺す 昨日の中日新聞から | トップページ | 『日本は素晴らしい資本の供給源だ』 種子法廃止、水道法改正 »

2022年2月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28