五輪ショックドクトリン サマータイム災害
マラソンの開始時間を2時間早めればよいだけなのに、スタート時間は早めずに、時計の針を2時間、進めるという。
いくらなんでも、さすがにそれはないだろうと思っていたら、するすると国策になる勢いだ。
豪雨災害の最中も総裁3選しか頭になかった安倍が、総裁選のドン森喜郞の進言(ぶら下げるエサ)に飛びつく(食いつく)のは必至だったという仕組みだ。
念の入ったことには、複数のマスコミが、政府が検討に入る前に世論調査を実施してしまうという手回しの良さだ。
朝日新聞世論調査(8月4~5日実施)
サマータイム
「大会組織委員会は、気温の低い早朝を有効に使うため、日本全体で夏の間だけ時計を2時間進める『サマータイム』の導入を提案しています。あなたはこの案に賛成ですか。反対ですか」
賛成 53%
反対 32%
その他・答えない 15%— はる / みらい選挙プロジェクト💫 (@miraisyakai) 2018年8月6日
NHK世論調査(8月3~5日実施)
サマータイム
「東京オリンピック・パラリンピックの暑さ対策として夏に生活時間を早める『サマータイム』の導入に」
賛成 51%
反対 12%
どちらともいえない 29%— はる / みらい選挙プロジェクト💫 (@miraisyakai) 2018年8月6日
見事に揃って過半数が賛成という結果に驚く。
ネットでは賛成する意見など皆無に近かった。
「サマータイム制……それって…………帰る時間は……早くなるのか?」
「…………」
「帰る時間は早くなるのかよ!」
「……連れていけ」
「早くなるのかよ! おい! 答えろ!」— まくるめ (@MAMAAAAU) 2018年8月6日
「これ一休、おりんぴっくを涼しくせよ」
「開催期間か開催時刻を変更すればよろしいのでは」
「ならん、それだけはならん!それを申せば打ち首じゃ」
「では、日の本の時計をすべて進めては」
「それじゃ!一休のとんちは流石よのう」https://t.co/JJIiqF2MCf
しばらくのち、幕府は滅びました。— 須藤玲司 (@LazyWorkz) 2018年8月5日
健康への影響を指摘する井上伸氏@雑誌KOKOはツイートは貴重だ。
連続ツイートの一部を貼り付けておこう。
ドイツで2007年、5万5千人を調査。時刻が1時間前倒しのサマータイムの導入と終了で人間は生体リズムを崩し、睡眠不足、肥満、心筋梗塞などの心疾患、脳血管疾患、糖尿病など生活習慣病のリスクを高め、心の問題にまで悪影響を及ぼすことが分かった。影響は朝型人間より夜型人間で顕著だった。
— 井上伸@雑誌KOKKO (@inoueshin0) 2018年8月6日
日本睡眠学会が、2011年のサマータイム導入の議論に際して、強く反対するパンフレットを出している。
引用しておこう。
日本では1948年から1951年に実施されましたが、残業量増加など労働条件の悪化により1952年以降は廃止されました。また、北海道では2004年から2006年に道内の企業・行政機関・団体が参加したサマータイムが行われましたが、実際には規模の大きな繰り上げ出勤です。
ロシアでは、切り替えの時期に救急車の出動や心筋梗塞による死亡者が増加し、生体リズムに反している、省エネ効果がほとんどなかったとの理由から、2011年3月末の夏時間への移行を最後に時間の移行を廃止しています。
フランスでは、1996年の欧州連合(EU)上院代議員団レポートで「年2回の時刻変更に伴う省エネ等の利益は、国民が感じている不利益には大きくおよばない。この人工的な制度を廃止し、より自然な時間の流れに戻すべき」と結論しています。しかしEU全体との協調の必要性から、単独での廃止が難しいのが現状のようです。
まず生体リズムへの影響ですが、これはすでに30年以上前から指摘されています。
英国では、夏時間の開始時期(春)と終了時期(秋)に1週間にわたって起床時刻とともに気分や計算能力についても調べる、という研究が行われました。まず春の変更後ですが、一度新しい時刻に適応してもまた元に戻る揺れ戻しがあり、1週間経っても新しい時刻には合いませんでした。さらに朝には眠気、ぼんやり感、集中困難などの気分変調が伴っていたのです。これは、わずか1時間でも生活リズムを早めると、心身に悪影響をおよぼすことを示した結果、と解釈されています。一方、秋の時刻変更時では、新しい起床時刻に合うまでに約1週間かかるものの、朝の気分はよく、しかも安定しており、朝の計算能力も時刻変更前よりも高まっていました。
次に眠りの質についてですが、2006年のフィンランドの研究が夏時間への移行に際して睡眠効率(眠ろうと横になっている時間に対して、実際に眠っている時間の割合)が10%低下することを初めて報告しています。これは寝つきが悪くなり、かつ夜間の目覚めが増したことを示しており、眠りの質の低下の結果と解釈されています。同じグループはその後、秋の時刻変更時にも眠りの質が低下することを報告しています。
眠りの量については先のフィンランドの研究ですでに夏時間への移行時には睡眠時間が約1時間減ることが報告されています。
また、2007年に報告されたドイツでの55,000名を対象にした大規模な調査でもサマータイムに起因する健康被害が報告されており、次の3つの結果が示されています。
1. 新たな時刻に身体が慣れるまでに、時計を早める変更後(春)には4週間経っても完全な慣れには至らず、時計を遅くする変更後(秋)には平均3週間かかった。
2. 生体リズムが新たな時刻に慣れるまでの経過には朝型人間と夜型人間で差があり、夜型人間では春の時刻変更後4週間経っても生体リズムと新たな時刻とのズレは消失していなかった。
3. 春の時刻変更後、睡眠時間が短縮した。
ロシアが時刻変更を中止した理由は健康被害です。夏時間への移行時に救急車の出動回数が増え、検証の結果、心筋梗塞患者が増加していたのです。
スウェーデンからは医学論文として「夏時間開始時期と終了時期における心筋梗塞の発症頻度に関する研究」が2008年に発表されています。結論は「夏時間が始まる春には心筋梗塞が増え、夏時間が終わる秋には心筋梗塞は減る」でした。
1987年から2006年のスウェーデンでのデータに基づいた検討で、夏時間が始まった直後(春)の初めの3日間(月、火、水)に心筋梗塞発症の危険率が有意に増加したというのです。1週間の平均で見ると、危険率は5%高まるとのことです。逆に夏時間が終わった直後(秋)の月曜には心筋梗塞発症の危険率が有意に減少し、1週間の平均で見ると危険率は1.5%低下したとのことです。
その原因としては、夏時間が始まると睡眠時間が1時間減り、夏時間が終わると睡眠時間が1時間増えることの影響が指摘されています。さらに著者は「生活リズムの急激な変化で体調を乱すヒトがいる」「夏時間開始時に1時間早く起きる必要から睡眠時間を減らされることで心血管系に悪影響を受けるヒトがいる」と述べています。
同じ研究グループは、スウェーデンにおける急性心筋梗塞患者のほとんどを登録した国レベルの追跡研究をもとに、サマータイムが急性心筋梗塞の発症に与える影響を検討し、春の時刻移行時の最初の週には発生の危険が3.9%高まることを2012年に報告しています。
「たった1時間」ではあるのですが、ヒトの身体はかなり敏感にこの急激な変化をストレスと感じるのかもしれません。
弱者の被害の指摘も重要だ。
● リズム調整能力が低下している高齢者への影響
高齢者もサマータイムの影響を大きく受けると考えられます。人は歳を重ねると社会的活動への意欲や興味が弱まり、社会的活動が少なくなる傾向があります。このことによって、起床・就寝などの生活リズムが体内時計の影響をより強く受けるようになるとともに、自然の昼夜変化や季節変動に一致してきます。サマータイムのような人工的で急激な時刻変更は、生活リズムが昼夜変化や季節変動など自然のリズムに近づいている高齢者にとって、負担が大きいでしょう。
なお、高齢者ではありませんが、実験的に生活リズムの変化に対する適応力と年齢との関連を見ようとした実験を紹介しましょう。18~25歳の6名(若年群)と、37~52歳の8名(中年群)で、生活時間帯を6時間早めることの影響を見た実験です。その結果、中年群は若年群に比べ、睡眠中に途中で目覚めることが増え、かつ目覚めも早くなってしまう結果となったのです。また中年群ではぼんやりとし、体調が悪く眠気におそわれ、日常活動にも努力が必要と感じる割合が増えていたのです。年齢を重ねるにつれ、生活リズムの変化への適応が難しくなることが示唆される実験結果といえるでしょう。
● 病者への影響
病者への影響に関しては、とくに、精神疾患の患者さんへの影響が指摘されています。
眠りに問題を抱える児童の親に対するアンケート調査で、60%以上の親が夏時間への移行時に子供の眠りに中等度以上の何らかの問題が生じると指摘しています。眠りに問題を抱えている人々では、夏時間に適応できずに症状が悪化する可能性が危惧されます。
なお、夏時間では睡眠時間が減ることはすでに指摘しましたが、睡眠時間の減少がうつ病の発症のきっかけになることが指摘されており、夏時間への移行時の影響が危惧されます。さらにオーストラリアの男性では、夏時間への移行時に自殺が増える傾向にあることも指摘されています。
注意が散漫になって、サマータイム導入時の事故も増えるという。
英国で、サマータイム導入前の1970年と1971年を対照年、導入後の1972年と1973年を実験年とし、春の時刻変更前後1週間における傷害を伴う交通事故件数の比較が行われました。その結果、導入後の実験年では交通事故が10.8%増加しています。米国・カリフォルニア州やドイツでも同様の結果が報告されています。
ただし、スウェーデンやフィンランドからは、春秋の時刻変更後いずれも交通事故件数は変化していないとの報告もあり、また、米国・ミネソタ州からは交通事故が減少したという報告があります。
北海道での出勤時間繰り上げ実験の結果は、次のとおり。
「2005年北海道サマータイム月間」アンケート調査結果における「心身に対する影響」も参考になります。2004年で従業員の40% が「体調が悪くなった」と答え、2005年にも43%が「体調が悪くなった」「不都合が生じた」と答えています。現場での健康被害が実証されたといえるでしょう。
そこで繰り上げ出勤やサマータイムの導入に際しては、声を大にして早寝を勧める必要が出てきます。
ところが日本の夏は夜の早い時刻ではまだ気温が高く、早寝が難しいという現実があります。高温多湿は特に西日本で深刻な問題となりますし、最近の隙間のない住宅構造によって、日中に高くなっている室温は下がりにくくなっています。このような環境下の日本で、いかに早寝を可能にするかは大きな課題です。
ただでさえ睡眠時間が短い人々が、睡眠時間が短くなる夏にサマータイムが導入されることで、さらに睡眠時間が減らされてしまう可能性があるのです。そして、日本は世界に冠たる短時間睡眠国家なのです。このような国でサマータイムを導入した際の健康障害の広がりが大いに懸念されます。
中略
高齢者には脱水や熱中症に対する注意が必要です。サマータイムによる室内環境、とくに高温多湿の日本における寝室環境悪化の影響が心配されます。
このパンフレットは、あくまでも1時間の繰り上げを前提にして作られたものだ。
2時間の繰り上げがここで紹介されている事例よりさらに大きな負担をかけることになるのは目に見えている。
入院中の患者や、高齢者施設、障害者施設、ようやく生活リズムを確立した幼児など、弱者ほど、負担が大きいだろうに、マラソンを実質5時スタート(競歩は実質4時スタートになる)にするためだけに、これほど大きな負担を社会に強いるのだろうか。
昼の時間の有効活用というのが元々の趣旨だった筈だが、この酷暑の中、昼の時間の屋外活動が危険になっているのは言うまでもない。
サマータイムの午後5時は昼間の3時で最も暑い時刻である。
サラリーマンには、「無用な外出は控えましょう」という時刻に退勤するか、それとも残業するかの選択しかない。
あるいは、ツイッターの多くが指摘しているように、長時間労働を強制するためのサマータイムなのだろうか。いよいよ本気モードの働かせ改革である。
とにかく、サマータイム挙国一致は何を目的にしているのか全く不明なのである。
総裁3選しか頭にない総理と、老害五輪のドンのあうんの呼吸は、日本の壊されぶりを物語ってあまりある。
毎日新聞で検索される「ありがた迷惑 猛暑五輪には焼け石に水」の記事も『サンデー毎日』のもの。
研究費が削減されるのを恐れて、何も言わないとすれば、5年を超える長期政権が日本を丸ごと劣化させた証である。