WTOを壊すトランプと習近平(笑) 慌てるグローバル小役人たち
写真の日テレニュースではあまりに記事が短いので、以下、時事から引用。
日米欧、産業補助金に待った=中国念頭、WTO改革で初声明
【ニューヨーク時事】日米欧の貿易担当閣僚が25日、機能不全が指摘される世界貿易機関(WTO)の改革に関する初の共同声明をまとめた。
主に中国を念頭に、自国の特定産業を優遇する補助金を導入した国を厳しく取り締まる新たなルールづくりを目指す。今秋に共同提案して加盟国に支持を広げ、世界にはびこる保護主義の連鎖を断ち切る狙いだ。
産業補助金は、激しさを増す米中「貿易戦争」の火種の一つ。トランプ政権はハイテク産業育成に巨額の補助金をつぎ込む中国を批判し是正を求めている。官民一体で成長を目指す中国は政策転換を拒否し、鋭く対立している。
日米欧は、自国の特定産業への補助金で国際競争をゆがめた疑いのある国に対し、罰金を科すことや、正当性を立証する責任を求めることなどを検討中。現行ルールでは補助金に関する報告義務が形骸化し、中国による違反が横行している。
共同声明には、外資企業に対する強制的な技術移転の阻止に向けたルール整備も明記された。こうした知的財産権侵害を理由として米政権は中国に巨額の貿易制裁関税を連発している。
今回の日米欧合意は、WTO脱退をちらつかせて保護主義に傾くトランプ政権を多国間貿易の枠組みにつなぎ留める効果も期待できる。世耕弘成経済産業相は「米国も含めて取り組むことが一番重要だ。貿易戦争回避にもつながる」と強調した。
車のエンジンが壊れているのに、室内アクセサリを取り替えれば何とか走れるだろうともがいている。
そもそも関税約束を守ることは、WTOの実体ルールの一丁目一番地だ。
WTOと言わずとも、GATT1947の時代から、そうだ。
WTOに届け出た関税の上限枠(譲許関税)を超えた関税を課してはならない。
大原則である。
そしてWTOの手続ルールの一丁目一番地は、自力救済の禁止である。
法治国家の国内では当然に自力救済は禁止である。侵害されている権利を実現するのは実力ではなく、裁判所の力を借りなければならない。
WTOは、主権国家のジャングルである国際社会でも、自力救済禁止ができると考えた。
そこで、WTOルールの違反があったら、WTOの裁判に訴えよ、WTOの裁判体が許さない限り、経済制裁は発動してはならないというルールを作った。
前者が、WTOの実体原則の根本、後者が手続原則の根本だ。
で、この間の経過を簡単にWTOルールから振り返ると、
米国が仕掛けた関税引き上げの第一弾「鉄鋼・アルミニウムの関税引き上げ」については、トランプ政権は「安全保障上の理由」を挙げた。
例外的に譲許関税を超える関税引き上げを認める理由としてWTOルールは「安全保障上の理由」を挙げている。
したがって、口実に過ぎないかどうかはともかく、この措置は、体裁上は、WTOルールに則って行われた。
何しろ、国家の安全がかかっているのだから、これを理由とする関税の引き上げに、予めWTOの裁判体の許可を得る必要はない。
ところが、これに対して、行った中国の報復関税措置から、WTOルールは蹂躙され始める。
中国は、報復関税の根拠として、セーフガード(輸入の急増が、国内産業を危うくする緊急事態に行うことが認められる輸入数量制限)に対する対抗措置は、裁判を経なくても可能だとするWTO規定を挙げた。
しかし、米国は、関税引き上げを「安全保障上の理由」によるものとしており、「セーフガード措置」などと一言も言っていない。
形式だけ見ても、米国の措置は輸入数量制限ではないから、「セーフガード」などにはなりようがない。
中国は、直ちに実力行使に出てはならず、まず、WTOの裁判体に訴え、米国の措置の違法性を認めさせた上、一定期間に是正措置がとられない場合には、改めて裁判体の承認を得た範囲で報復を実行すべきであった。中国が裁判を経ずに直ちに報復関税を発動したのは、明らかにWTOの体面すら立てず、WTOの顔をつぶすもので、違法である。
第二弾、第三弾の制裁関税、報復関税に至ると、米中とも、WTO協定なぞどこ吹く風である。
制裁関税も報復関税もWTOの裁判を経なければ、発動してはならない、などという鉄則は、どこかに吹っ飛んでいる。
要するに、WTOのルールの根幹が、世界一位、二位の経済大国によって、身も蓋もなく、徹底して蹂躙されているのである。
ここまで蹂躙されると、WTOに巣くって飯を食っているグローバリストどもは、さぞや心穏やかではなかろうと思って、反応を見ていたが、全然、反応が見えない。
本来は、WTOが正式に批判して、厳重に抗議すべきところ、そんな反応は全くない。
どうもその様子は、米中の措置がWTOの根幹を侵すWTOルール違反だということをひた隠しにしたいようですらある。
ようやく、今回、彼らに変わって、米欧日の貿易担当閣僚が、共同声明を挙げた。
しかし、その内容たるや、WTOルールをまるごと無視されて、WTOの存立を疑われる事態が生じているのに、その違反を厳しく追及するのではなく、中国の補助金を検討のまな板に乗せる、次は中国が外国企業に要求する技術移転の強要について、ルール化を図るというに止まる。
エンジンが壊れた車も、アクセサリーさえ変えれば、走る、と、この人たちは考えているようだ。
あるいは、母屋が倒壊して極めて危険な状態なのに、離れた犬小屋を修繕すれば、大過ないと考えているようである。
WTOルールの緩和こそが必要であるにも関わらず、いっそうの厳格化を追及しようというのも見当外れだ。
大体、大泥棒である米国の貿易担当閣僚がどの顔をして、盗っ人を捕まえるというのか。
そのばからしさを思うと、嗤える。
言いたいこと、説明しておきたいことはさらにあるが、時間がないので、追ってまた。
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