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カテゴリー「ニュース」の339件の記事

2018年8月 7日 (火)

五輪ショックドクトリン  サマータイム災害

Summertime

 

マラソンの開始時間を2時間早めればよいだけなのに、スタート時間は早めずに、時計の針を2時間、進めるという。

いくらなんでも、さすがにそれはないだろうと思っていたら、するすると国策になる勢いだ。

豪雨災害の最中も総裁3選しか頭になかった安倍が、総裁選のドン森喜郞の進言(ぶら下げるエサ)に飛びつく(食いつく)のは必至だったという仕組みだ。

念の入ったことには、複数のマスコミが、政府が検討に入る前に世論調査を実施してしまうという手回しの良さだ。

 

見事に揃って過半数が賛成という結果に驚く。

ネットでは賛成する意見など皆無に近かった。

 

 

 

 

 

 

健康への影響を指摘する井上伸氏@雑誌KOKOはツイートは貴重だ。

連続ツイートの一部を貼り付けておこう。

 

 

 

 

日本睡眠学会が、2011年のサマータイム導入の議論に際して、強く反対するパンフレットを出している。

 

「サマータイム 健康に与える影響」2012.3

 

 

引用しておこう。

 

 

日本では1948年から1951年に実施されましたが、残業量増加など労働条件の悪化により1952年以降は廃止されました。また、北海道では2004年から2006年に道内の企業・行政機関・団体が参加したサマータイムが行われましたが、実際には規模の大きな繰り上げ出勤です。

ロシアでは、切り替えの時期に救急車の出動や心筋梗塞による死亡者が増加し、生体リズムに反している、省エネ効果がほとんどなかったとの理由から、20113月末の夏時間への移行を最後に時間の移行を廃止しています。

フランスでは、1996年の欧州連合(EU)上院代議員団レポートで「年2回の時刻変更に伴う省エネ等の利益は、国民が感じている不利益には大きくおよばない。この人工的な制度を廃止し、より自然な時間の流れに戻すべき」と結論しています。しかしEU全体との協調の必要性から、単独での廃止が難しいのが現状のようです。

 

 


まず生体リズムへの影響ですが、これはすでに30年以上前から指摘されています。

 

英国では、夏時間の開始時期(春)と終了時期(秋)に1週間にわたって起床時刻とともに気分や計算能力についても調べる、という研究が行われました。まず春の変更後ですが、一度新しい時刻に適応してもまた元に戻る揺れ戻しがあり、1週間経っても新しい時刻には合いませんでした。さらに朝には眠気、ぼんやり感、集中困難などの気分変調が伴っていたのです。これは、わずか1時間でも生活リズムを早めると、心身に悪影響をおよぼすことを示した結果、と解釈されています。一方、秋の時刻変更時では、新しい起床時刻に合うまでに約1週間かかるものの、朝の気分はよく、しかも安定しており、朝の計算能力も時刻変更前よりも高まっていました。

 

 

次に眠りの質についてですが、2006年のフィンランドの研究が夏時間への移行に際して睡眠効率(眠ろうと横になっている時間に対して、実際に眠っている時間の割合)が10%低下することを初めて報告しています。これは寝つきが悪くなり、かつ夜間の目覚めが増したことを示しており、眠りの質の低下の結果と解釈されています。同じグループはその後、秋の時刻変更時にも眠りの質が低下することを報告しています。

 

眠りの量については先のフィンランドの研究ですでに夏時間への移行時には睡眠時間が約1時間減ることが報告されています。

また、2007年に報告されたドイツでの55,000名を対象にした大規模な調査でもサマータイムに起因する健康被害が報告されており、次の3つの結果が示されています。

1. 新たな時刻に身体が慣れるまでに、時計を早める変更後(春)には4週間経っても完全な慣れには至らず、時計を遅くする変更後(秋)には平均3週間かかった。

2. 生体リズムが新たな時刻に慣れるまでの経過には朝型人間と夜型人間で差があり、夜型人間では春の時刻変更後4週間経っても生体リズムと新たな時刻とのズレは消失していなかった。

3. 春の時刻変更後、睡眠時間が短縮した。


 

 


ロシアが時刻変更を中止した理由は健康被害です。夏時間への移行時に救急車の出動回数が増え、検証の結果、心筋梗塞患者が増加していたのです。

 

 

スウェーデンからは医学論文として「夏時間開始時期と終了時期における心筋梗塞の発症頻度に関する研究」が2008年に発表されています。結論は「夏時間が始まる春には心筋梗塞が増え、夏時間が終わる秋には心筋梗塞は減る」でした。

 

1987年から2006年のスウェーデンでのデータに基づいた検討で、夏時間が始まった直後(春)の初めの3日間(月、火、水)に心筋梗塞発症の危険率が有意に増加したというのです。1週間の平均で見ると、危険率は5%高まるとのことです。逆に夏時間が終わった直後(秋)の月曜には心筋梗塞発症の危険率が有意に減少し、1週間の平均で見ると危険率は1.5%低下したとのことです。

 

その原因としては、夏時間が始まると睡眠時間が1時間減り、夏時間が終わると睡眠時間が1時間増えることの影響が指摘されています。さらに著者は「生活リズムの急激な変化で体調を乱すヒトがいる」「夏時間開始時に1時間早く起きる必要から睡眠時間を減らされることで心血管系に悪影響を受けるヒトがいる」と述べています。

 

同じ研究グループは、スウェーデンにおける急性心筋梗塞患者のほとんどを登録した国レベルの追跡研究をもとに、サマータイムが急性心筋梗塞の発症に与える影響を検討し、春の時刻移行時の最初の週には発生の危険が3.9%高まることを2012年に報告しています。

「たった1時間」ではあるのですが、ヒトの身体はかなり敏感にこの急激な変化をストレスと感じるのかもしれません。


 

 

弱者の被害の指摘も重要だ。

 

 


リズム調整能力が低下している高齢者への影響

高齢者もサマータイムの影響を大きく受けると考えられます。人は歳を重ねると社会的活動への意欲や興味が弱まり、社会的活動が少なくなる傾向があります。このことによって、起床・就寝などの生活リズムが体内時計の影響をより強く受けるようになるとともに、自然の昼夜変化や季節変動に一致してきます。サマータイムのような人工的で急激な時刻変更は、生活リズムが昼夜変化や季節変動など自然のリズムに近づいている高齢者にとって、負担が大きいでしょう。

 

なお、高齢者ではありませんが、実験的に生活リズムの変化に対する適応力と年齢との関連を見ようとした実験を紹介しましょう。1825歳の6名(若年群)と、3752歳の8名(中年群)で、生活時間帯を6時間早めることの影響を見た実験です。その結果、中年群は若年群に比べ、睡眠中に途中で目覚めることが増え、かつ目覚めも早くなってしまう結果となったのです。また中年群ではぼんやりとし、体調が悪く眠気におそわれ、日常活動にも努力が必要と感じる割合が増えていたのです。年齢を重ねるにつれ、生活リズムの変化への適応が難しくなることが示唆される実験結果といえるでしょう。

 

 

病者への影響

病者への影響に関しては、とくに、精神疾患の患者さんへの影響が指摘されています。

眠りに問題を抱える児童の親に対するアンケート調査で、60%以上の親が夏時間への移行時に子供の眠りに中等度以上の何らかの問題が生じると指摘しています。眠りに問題を抱えている人々では、夏時間に適応できずに症状が悪化する可能性が危惧されます。

 

なお、夏時間では睡眠時間が減ることはすでに指摘しましたが、睡眠時間の減少がうつ病の発症のきっかけになることが指摘されており、夏時間への移行時の影響が危惧されます。さらにオーストラリアの男性では、夏時間への移行時に自殺が増える傾向にあることも指摘されています。


 

 

注意が散漫になって、サマータイム導入時の事故も増えるという。

 

 


英国で、サマータイム導入前の1970年と1971年を対照年、導入後の1972年と1973年を実験年とし、春の時刻変更前後1週間における傷害を伴う交通事故件数の比較が行われました。その結果、導入後の実験年では交通事故が10.8%増加しています。米国・カリフォルニア州やドイツでも同様の結果が報告されています。

 

 

ただし、スウェーデンやフィンランドからは、春秋の時刻変更後いずれも交通事故件数は変化していないとの報告もあり、また、米国・ミネソタ州からは交通事故が減少したという報告があります。


 

北海道での出勤時間繰り上げ実験の結果は、次のとおり。

 


2005年北海道サマータイム月間」アンケート調査結果における「心身に対する影響」も参考になります。2004年で従業員の40% が「体調が悪くなった」と答え、2005年にも43%が「体調が悪くなった」「不都合が生じた」と答えています。現場での健康被害が実証されたといえるでしょう。

そこで繰り上げ出勤やサマータイムの導入に際しては、声を大にして早寝を勧める必要が出てきます。

 

 

ところが日本の夏は夜の早い時刻ではまだ気温が高く、早寝が難しいという現実があります。高温多湿は特に西日本で深刻な問題となりますし、最近の隙間のない住宅構造によって、日中に高くなっている室温は下がりにくくなっています。このような環境下の日本で、いかに早寝を可能にするかは大きな課題です。

 

 

 

ただでさえ睡眠時間が短い人々が、睡眠時間が短くなる夏にサマータイムが導入されることで、さらに睡眠時間が減らされてしまう可能性があるのです。そして、日本は世界に冠たる短時間睡眠国家なのです。このような国でサマータイムを導入した際の健康障害の広がりが大いに懸念されます。

 

中略

 

高齢者には脱水や熱中症に対する注意が必要です。サマータイムによる室内環境、とくに高温多湿の日本における寝室環境悪化の影響が心配されます。


 

 

このパンフレットは、あくまでも1時間の繰り上げを前提にして作られたものだ。

2時間の繰り上げがここで紹介されている事例よりさらに大きな負担をかけることになるのは目に見えている。

入院中の患者や、高齢者施設、障害者施設、ようやく生活リズムを確立した幼児など、弱者ほど、負担が大きいだろうに、マラソンを実質5時スタート(競歩は実質4時スタートになる)にするためだけに、これほど大きな負担を社会に強いるのだろうか。

 

 

昼の時間の有効活用というのが元々の趣旨だった筈だが、この酷暑の中、昼の時間の屋外活動が危険になっているのは言うまでもない。
サマータイムの午後5時は昼間の3時で最も暑い時刻である。
サラリーマンには、「無用な外出は控えましょう」という時刻に退勤するか、それとも残業するかの選択しかない。

 

 

あるいは、ツイッターの多くが指摘しているように、長時間労働を強制するためのサマータイムなのだろうか。いよいよ本気モードの働かせ改革である。

 

とにかく、サマータイム挙国一致は何を目的にしているのか全く不明なのである。

 

総裁3選しか頭にない総理と、老害五輪のドンのあうんの呼吸は、日本の壊されぶりを物語ってあまりある。

 

 

 

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案の定、五輪スポンサーのマスコミからは、地方紙を除き、反対の声は出ない。

毎日新聞で検索される「ありがた迷惑 猛暑五輪には焼け石に水」の記事も『サンデー毎日』のもの。

 

 

猛暑が続き、クーラーを点けることが奨励されている日本では、帰宅すれば直ちにクーラーを付け、職場は残業者がいる限りクーラーが付いているのだから、省エネにはならないことは、明らかだろう。

 

 

2013年には、サマータイム導入に強く反対した、日本睡眠学会が、今回、反対の声を上げられるか注目のポイント。
研究費が削減されるのを恐れて、何も言わないとすれば、5年を超える長期政権が日本を丸ごと劣化させた証である。

2018年7月26日 (木)

残業代ゼロ法が描く『過労死ゼロ』社会

先の国会で成立した最悪の法律は、カジノ法でも参議院定数増法でもなく、間違いなく働かせ放題一括法である。

今さえ、日本の労働分配率(付加価値に占める人件費の割合。つまり労働者に還元される率)は国際社会で抜きんでて低下しているのに、この法律は、さらにこれを加速するだろう。

Roudoubunpairitusuiirieti
主要国の労働分配率の推移・RIETIより

残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)については、公立学校の教員の時間外勤務問題が参考になると思い、古い思い出話をさせていただく。

 

 

公立学校の教員に対しては、原則として時間外勤務命令は禁止されており、学校行事や非常災害、職員会議、緊急な生徒指導など限定された4項目以外には時間外勤務を命じてはならないことになっており、時間外勤務手当は支給されない。

時間外勤務命令が許される限定4項目を見込んで教職調整給(月給の4%)が加算されて支給される仕組みになっている(以上、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」・略称「給特法」)

 

 

今から30年も前になるが、公立中学校の先生の長時間勤務が、教師の教育活動を阻害し、教育の自由を侵害しているという理由で国家賠償請求(相手方は自治体)訴訟を起こしたことがある。

 

平成元年、愛知県では高校入試の選抜制度が抜本的に変えられ。極めて複雑な入試選抜制度が導入された。このため、これまでの進学指導の実績が全く役に立たなくなり、進学指導の現場は混乱を極めた。中3の学年主任をしていた原告は、生徒に適切な進学指導をするために、新たな選抜制度の下で各高校の難易度がどう変動するかを見極め学年教諭の共通認識とするために同僚とともに膨大で雑多な事務作業に追われることになった。

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30年前でも教員は十分に多忙だった。その上に新たな入試制度に対応するために実に膨大な事務作業が降りかかり、原告の職務は繁忙を極めた。

今で言う過労死基準には満たなかったものの、学内における残業時間は、1月から3月の3ヶ月間で平均70時間に達した(過労死基準残業時間平均80時間が設けられるのはこのずっと後のことである)。これは学内における残業時間であり、当然、授業準備やテスト採点などの持ち帰り残業も存在した。

 

原告は定年に間近い年齢で、長時間の時間外勤務の心身の負担は大きかったに違いない。しかし、提訴したのはそうした理由からではない。教職調整給とおよそ見合わない残業を強いられたからでもない。
原告が提訴に至ったのは、雑務の多さが生徒と向き合う時間を奪い、経験豊富な教員なら見過ごすことのない、重大な非行事件(いじめを超える犯罪)のサインを見過ごしたことの後悔である。雑務による多忙さがなければ、適切な指導ができ、その場から被害者生徒を救うことができたという悔恨である。

 

 

3ヶ月間の毎日の勤務内容を主張し、それが強制されたものであって、校長もこれを認識していたことを証明するのに膨大な作業と立証を要した。はしょって結論を言えば、提訴から10年近くを経て下された判決は、完全敗訴であった。

判決は、原告が強いられた時間外勤務は命令されたものではなく、全て自発的に行ったものだと結論づけたのである。

 

 

法律は時間外勤務命令を禁じているのだから、時間外勤務命令はないはずである、したがって、原告の勤務は自発的なものであるという、倒錯した論理を暗黙の前提としたものであった。

 

 

 

現在では教員の長時間勤務が問題視されるようになったが、当時の社会環境は全く違った。提訴に当たって僕が教員の長時間勤務の問題を持ち込もうとした新聞記者も労働組合も、まさにせせら笑うか、門前払いの対応だった。社会には問題意識を共有する基盤がなかった。有力で誠実な教育法学者の協力はかろうじて得られたが、社会意識の広がりを欠くところでは目的を果たすことはできなかった(たいていの場合、僕の抱く問題意識は10年程度は時代を早まっている)。

 

 

公立学校の教員が多忙化するのは必然だった。いくら膨大な仕事を押しつけても、時間外勤務手当を支払うための予算措置を講じる必要もなければ、時間外勤務を強制されたとして裁判所に訴えても、法律で禁じられている時間外勤務命令は存在しないことになってしまうからだ。

 

 

先の国会で見送られた裁量労働制についても同じことがいえる。ましてや高度プロフェッショナル制については、いくら膨大な仕事をさせても残業代を払わなくてもよい。企業には全く費用が発生しないのだから、次々と仕事を押しつけることが目に見えている(まさに公立の教員と同じ立場である)。

そして高度プロフェッショナル制度の適用対象は、経団連が求める水準によれば、年収400万円以上にまで拡大されていく。実態としての労働時間単価が最低賃金を割り込んでも、高度プロフェッショナル制度のもとでは、残業代は発生しない。

 

 

そして、たとえ過労死しようが、労働時間を把握することは不可能であり、企業は時間外勤務を命じたわけではない。本人の自己管理が悪かったということにされてしまうようになるだろう。

 

電通の高橋まつりさんのような過労死事件は起きなくなるのだ。

 

 

そう思っていたら、厚労省は労災担当官を大幅に削減するという報道があった。

今後3年で666名削減するという

 

 

働き方改革で労基署の労災担当職員を大幅削減へ

東京新聞2018723

 

 過労死ゼロや長時間労働の削減を目指す政府の看板政策「働き方改革」。全国の企業への監督・指導徹底のため、労働基準監督署の監督官を増やす半面、労災担当者を3年間で666人も削減する計画が明らかになった。企業への監督・指導は重要だが、労働者が負ったけがや病気が仕事によるものかどうか判断する労災認定が滞れば、労働者やその家族に大きな影響が出る。労基署の担当者の中からは「これでは成り立たない」と悲鳴が上がっている。 (片山夏子)

Roukisyorousaibusyonado

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今回の厚生労働省の計画で、3年間で労災担当官は3分の2の1300人まで減る。しかし、2016年度の労災補償の受給者は、新規だけでも約62万6000人。申請数はさらに多い。

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中堅の労災担当官は「監督官を増やせと号令がかかっていることは知っている。現場の実情を無視した対応を迫られ、みんな不安だ。今でも手一杯なのに労災担当をこれ以上減らされたら成り立たない」

 

 

現実に発生している労災を認定するのに必要な人員をはるかに下回る人員で労災認定に当たれば、必然的に認定される労災は減るだろう。証拠が不十分であれば、それ以上の調査をすることなく不認定にすればよい、あるいは書類に難癖を付けて労災申請を受理しないという水際作戦も行われるだろう。まして複雑な精神疾患が絡む事件になれば、すべて不認定にして裁判所へ丸投げすることになろう。

 

 

過労死ゼロを掲げる「働き方改革」のもとでは、過労死はあってはならないのである。あってはならない以上、認定も厳しくなる。そこへ労災担当職員を削減すれば、過労死認定はどんどん減っていくだろう。かくして政府が掲げる過労死ゼロが達成される仕組みである。

これは時間外勤務命令が禁止されている以上、時間外勤務命令は存在しないという裁判所の論法と同じである。

 

Koumuinkyuyosuijun
出典 社会実情データ図録5193a
日本は、公務員の人口比率もGDPに占める公務員給与もOECD最低水準にある

監督官を増やすから、今でも不足している労災担当職員を減らすというのは、全体として公務員削減計画があるためである。

公務員を減らすべきだという大前提がある限り、行政が注力する新たな分野があれば、必要な他の部門が激減させられるということは必ず起こる。

公務員を削減するという方針は、まさに民営化や規制緩和と直結するネオリベラリズムの考え方だ。

参議院定数増をめぐる議論でも、野党(共産党を除く)の反対には定数増自体が悪いことだという暗黙の前提があったように思う。

まさに野党も含めて、小さな政府論に支配された状態であり、グローバルなネオリベラリズムにとって恰好の草刈り場になるだろう。

 

世界一ビジネスのしやすい我が国は、世界一労働者を搾取しやすい国となろう。

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それにしても、労災担当官の削減を取り上げているのが中日(東京)新聞だけで後追いの記事も出ないという事実は、メディアが『過労死認定ゼロ』に加担しているようで、いやなものである。

2018年7月25日 (水)

酷暑五輪をめぐるメディア状況

「屋外での運動を控えてください」と、放送される危険な暑さの中、「この暑さでやれるという確信を得ないといけない。」という森喜朗の妄言(日刊スポーツ7月24日「森喜朗会長が語る、この猛暑が東京五輪のカギに」)に続き、アスリートである増田明美がNHK特番で「アフリカ勢は下見をしない、日影を熟知してコース取りできる日本勢のチャンスだ」とのたまっている。オリンピックの意義について真っ先に国威発揚を挙げた国営放送に迎合したのか、高橋尚子まで同様に日本勢のチャンスだとのたまうのには、心底がっかりさせられる。

 

 

Kokuihatuyou

 

当の東京都の小池百合子に至っては、「打ち水でおもてなしを」とはしゃぐ有様で、話にならない。

 

 

この人たちは、このまま東京五輪が開催されれば、辞退者続出、選手の事故や、観客の熱中症続出で、史上最悪のオリンピックとして名を残すことになるのを十分に知っているはずだ。

 

 

国内のメディアはほぼ全てが、オリンピック公式スポンサーだから、ラジオ以外で開催時期をずらせとか、ましてや「オリンピックなんかやめたら」という声は上がりようもない。
万全の暑さ対策で臨むという報道一色である。

 

 

失敗すると分かっていて挙国一致で酷暑オリンピックに突き進むさまは、「竹やりで本土決戦を」と呼号した先の大戦のときの支配層と何も変わっていない。

竹やりなんかで立ち向かえる訳がないと、相当数の庶民は思いながら、粛々とついていったんだろうか。

 

 

酷暑のオリンピックの無謀さについて、NHKの唯一のまっとうな報道は、宗主国のメディアの報道を紹介するものであった。


 

海外メディア猛暑で東京五輪を不安視の報道相次ぐ

NHK2018725 443

 

日本で連日、猛烈な暑さが続く中、海外のメディアからは、2年後の東京オリンピックの開催時期を不安視する報道が相次いでいます。

 

このうち24日付けのアメリカの有力紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、日本で続く猛暑について特集記事を組み、危険な暑さで死亡する人が相次いでいるなどと伝えています。

 

この中で、開幕まで2年となった東京オリンピックについても触れ、「猛烈な暑さで選手と観客の体調への不安が高まっている。夏の開催についての疑問が再燃した」と報じています。

 

そのうえで、前回、1964年の東京オリンピックは厳しい暑さを避けるために10月に開催されたことや、2022年にカタールで開催されるサッカーワールドカップは冬の時期にずらしたことを紹介し、東京オリンピックの開催時期も再検討すべきではないかとの見方を示しています。

 

またイギリスの有力紙「ガーディアン」の電子版は、「日本で熱波。2020年のオリンピックに懸念」という見出しをつけて、選手や観客が熱中症などの危険な状態になる可能性があると指摘し、開催時期を不安視しています。

 

朝6時台のニュースでは放送されたが、視聴率の高い7時台のニュースでは放送されなかった。
当たり前のことすら、海外報道の紹介でこっそり放送するのが精一杯というマスコミの状況なのだ。

できれば、海外で「命に関わる危険な暑さ」であることが周知され、海外選手や観客が犠牲とならないよう祈るばかりである。

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2018年7月19日 (木)

なぜ名古屋は多治見に負けるか  名古屋市39.2℃7月最高を記録

まさにうだるような暑さである。

昨日7月18日の名古屋の最高気温は39.2度。

これは名古屋の歴代記録で5位の高温。

7月としては観測史上最高の暑さである。

Nagoyakionrankingu

ところが、ニュースは全国1位となった多治見の40.7度ばかりを伝え、7月最高の暑さを記録した名古屋の暑さを伝えてくれない。

名古屋人として少し悔しいのである。

 

そこで、ニュースがさっぱり触れない多治見観測所の写真を以下に貼り付ける。

Tajimikansokusyo

出典である「【気温】館林と多治見はどっちがずるい?観測所の測定環境を比べてハッキリさせてみた!」<嫁に聞いた話>ブログ2016/06/18によれば、次の理由で気温が高目に出る仕組みになっている。

 

車の排気熱の影響を受ける

地面が芝生ではなく除草シート

建物から近く空気がよどみ易い

 

付け加えると、多治見の観測所は、中央高速道路多治見インター近く国道248号線沿いの消防署内の駐車場脇に立地している。

 

 

対して、わが名古屋の観測所の写真は次の通りである。

Nagoyakisyoudaiamedasu

 

引用元ブログ「園主の作文/名松園」20091219日「ふり返りの一年・・・2 名古屋地方気象台と京都へ」

 

 

広々とした芝生の上、気温観測の模範例のように近くには建物も車もない。

 

名古屋地方気象台は、名古屋市東部の住宅街、戸建て住宅が建ち並ぶ小高い丘の頂上近くに位置する。

 


多治見40.7℃ VS 名古屋39.2℃。

その差1.5℃は実に微妙ではあるが、観測条件の違いを踏まえれば、少なくとも互角だろう。

 

最初に引用した<妻に聞いた話>ブログ氏は、館林市のアメダスの写真も撮影されているので、貼り付ける。基本、多治見と同様だ。
どうも、気象台に設置されたアメダス以外は、あまり設置環境には配慮されていないようのである。

Tajimikansokusyo_2

 

多治見が暑い、館林が暑いと言っても意味ないのであるが、名古屋人としては何とかして「名古屋の方が暑い!」と主張したいのである。

 

 

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付録

西日本豪雨にしろ、この酷暑にしろ、マスコミでは地球温暖化が枕詞のように使われる。『温暖化(人為的気候変動)』洗脳状態である。


右も左も挙国一致(世界一致か)で主張される説ほど怪しいものはない。

都市化の影響が最も少ないと思われる、南極の夏季に当たる12月、1月、2月の平気気温の推移を貼り付けておこう(気象庁・南極昭和基地のデータ)。

少なくとも『温暖化』を読み取ることは極めて困難だ。


12月

Nankyoku12tukiheikintinoruinenti

1月

Nankyoku1gatutukiheikikinnnoruinent

2月

Nankyokutu2kiheikinkionnoruinenti

 

ここまで世界一致でCO2による地球温暖化(人為的な気候変動)防止が叫ばれている以上、巨大な利権があるに違いないと思う。

原発利権?
日本があれほど原発輸出をしまくって、核拡散の脅威をまき散らしても世界のどこからも異議がでないのは、温暖化対策という名目があるからだろうか。

市場利権(CO2排出権取引市場の確立)?
CO2排出権が市場化されれば、膨大な金融商品が生み出されるだろう。
行き場を失いつつある過剰マネーにとって「地球温暖化」というスローガンによって生まれる新たな巨大市場ほど好ましいものはないのではあるまいか。

 

なんぞと考えても、暑いものは暑いのである。

 

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2018年7月 6日 (金)

「滅びるね」

漱石が登場人物に「(日本は)滅びるね」と語らせたことは、どこかで聞いた覚えがある。

読んだことはない。

 

日露戦争後の会話だったということもどこかで聞いていたかもしれない。

忘れてしまったのだとしたら、実感がなかったからだろう。
数年前までこれほど“日本はスゴい”空気が蔓延するとは思いもよらなかった。

Asahara

 

ワールドカップ日本代表の健闘を讃える報道一色に違和感を覚える中、ふと「滅びるね」という言葉が浮かんだ。

 

 

冒頭、三四郎がたまたま乗り合わせた中年男(広田先生)の言葉だ。

 

 

「お互いは哀れだなあ」と言い出した。「こんな顔をして、こんなに弱っていては、いくら日露戦争に勝って、一等国になってもだめですね。もっとも建物を見ても、庭園を見ても、いずれも顔相応のところだが、――あなたは東京がはじめてなら、まだ富士山を見たことがないでしょう。今に見えるから御覧なさい。あれが日本一の名物だ。あれよりほかに自慢するものは何もない。ところがその富士山は天然自然に昔からあったものなんだからしかたがない。我々がこしらえたものじゃない」と言ってまたにやにや笑っている。三四郎は日露戦争以後こんな人間に出会うとは思いもよらなかった。どうも日本人じゃないような気がする。

「しかしこれからは日本もだんだん発展するでしょう」と弁護した。すると、かの男は、すましたもので、

 

「滅びるね」と言った。――熊本でこんなことを口に出せば、すぐなぐられる。悪くすると国賊取り扱いにされる。三四郎は頭の中のどこのすみにもこういう思想を入れる余裕はないような空気のうちで生長した。だからことによると自分の年の若いのに乗じて、ひとを愚弄するのではなかろうかとも考えた。男は例のごとく、にやにや笑っている。そのくせ言葉つきはどこまでもおちついている。どうも見当がつかないから、相手になるのをやめて黙ってしまった。すると男が、こう言った。

「熊本より東京は広い。東京より日本は広い。日本より……」でちょっと切ったが、三四郎の顔を見ると耳を傾けている。

 

「日本より頭の中のほうが広いでしょう」と言った。「とらわれちゃだめだ。いくら日本のためを思ったって贔屓の引き倒しになるばかりだ

 この言葉を聞いた時、三四郎は真実に熊本を出たような心持ちがした。同時に熊本にいた時の自分は非常に卑怯であったと悟った。

 

 

日露戦争勝利に浮かれていた当時の日本の空気があっての「滅びるね」だった。

自国のことを悪くいうことが、タブーになった空気に向かって、投げられた言葉が「滅びるね」というのだ。

 

 

日露戦争を戦った当事者は、その勝利がいかに危うくつぎはぎされたもろいものか、十分に知っていた。

しかし、国民はロシアに勝利した日本を一流国として浮かれ、その批判はタブーになったのだ。

 

 

自国の批判を許さず、自国を客観視できない国は『滅びるね』

 

 

ワールドカップを戦った選手は、ベルギーと10回対戦しても勝てないほどの力の差を痛感しているだろう。

しかし、世論は大健闘を讃え、おそらく批判は許されない。
コロンビア戦は開始早々11対10のハンディをもらった後、1対1なんだから、実質、ロシア大会は、1分け3敗じゃないかなどと悪態は御法度である。

 

 

ワールドカップロシア大会は、現在日本を覆っている批判を許さず、日本を讃える空気が、日露戦争後の日本の空気とつながっていることを思い知らせる。



オウム真理教死刑囚の大量死刑執行、生中継の日に。

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2018年4月27日 (金)

おすすめ映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』

韓国で1200万人の観客を動員した昨年最大のヒットとなった『タクシー運転手 約束は海を越えて』が先週から日本でも上映されている。
光州事件の実話に基づいた映画だ。

Takusiuntensyu

映画comの注目作品で上位20位に入っていて、名画座系ではない、大手が配給しているにも拘わらず、全国で14館しか上映していない。
経験上、韓国映画で日本で上映された作品は優れたものが多い。
韓国で大人の4人の1人という1200万人もの観客動員を達成し、アカデミー賞の韓国作品の代表として出品される映画が、日本中でたった14館しか上映していない、それも上映回数が減り、まもなく終演しそうだというのはあまりにも不自然で、何らかの圧力や忖度を感じさせる。


映画comの紹介文は次のとおり。

1980年5月に韓国でおこり、多数の死傷者を出した光州事件を世界に伝えたドイツ人記者と、彼を事件の現場まで送り届けたタクシー運転手の実話をベースに描き、韓国で1200万人を動員する大ヒットを記録したヒューマンドラマ。「義兄弟」「高地戦」のチャン・フン監督がメガホンをとり、主人公となるタクシー運転手マンソプ役を名優ソン・ガンホ、ドイツ人記者ピーター役を「戦場のピアニスト」のトーマス・クレッチマンが演じた。1980年5月、民主化を求める大規模な学生・民衆デモが起こり、光州では市民を暴徒とみなした軍が厳戒態勢を敷いていた。「通行禁止時間までに光州に行ったら大金を支払う」というドイツ人記者ピーターを乗せ、光州を目指すことになったソウルのタクシー運転手マンソプは、約束のタクシー代を受け取りたい一心で機転を利かせて検問を切り抜け、時間ギリギリにピーターを光州まで送り届けることに成功する。留守番をさせている11歳の娘が気になるため、危険な光州から早く立ち去りたいマンソプだったが、ピーターはデモに参加している大学生のジェシクや、現地のタクシー運転手ファンらの助けを借り、取材を続けていく。

高評価のレビューの一つは次のようになっている。


今年ベストムービーに、
名を連ねる一本になるでしょう。

序盤、軽快に、物語が進むが
中盤、終盤と進むにつれ、
重く、深い人間ドラマとなっていく。

この見事なグラデーションに、
感服しました。

そして、
終盤涙が幾度も流れました。

お隣、韓国の映画の質。
とんでもないものになっていく...
            ふるやるふさん


韓国が厳しい軍事独裁政権が支配する国だったことを肌感覚で知る日本国民は、今では半数を切るかもしれない。
1980年5月の光州事件は、軍事独裁政権が最も激しく自国民に対して牙をむいた韓国現代史上最大の悲劇とされる事件だ。
自国の軍隊が政府批判の声を上げる自国民を殺害していく。
戒厳令下、広州市の交通・情報を遮断して行われた苛烈な軍事弾圧によって光州市民の声は圧殺されていく。
1人のドイツ公共放送の記者がこの包囲の中で取材した結果が、全世界に発信されて、光州事件が世界に知られるようになった。
このドイツ記者は、東京駐在の記者だった。


その8年後、ソウルオリンピックをきっかけとして、韓国はやがて90年代に民主化への道を進めていくことになる。


韓国国民は、自らの力で軍事独裁政権を倒した記憶がある。
その記憶の最も暗い闇を象徴するのが光州事件だ。
そこから民主化を成し遂げたという記憶が、朴槿恵政権を倒した国民的うねりを巻き起こしたのだろう。
文在寅自身がこうかたっている。
「文在寅政府は光州民主化運動の延長線上に立っています。」


これも経験上だが、映画comのレビューで評価が4を満たす映画は興味がある分野では、外れがない。今のところ、評価は4を上回っている。
まだ観ていないが、日本での上映が終わりそうな気配を感じるので、急ぎご紹介する次第だ。


いや、それにしても、大手が配給する映画で、それなりの評価が定着している外国映画が、全国14館でしか上映されていないというのは、それ自体が一つの事件として取り上げるに値するだろう。

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2018年1月10日 (水)

日韓合意について日本政府はなすべきことをしてきたのか

韓国政府は、いわゆる慰安婦問題に関する日韓合意に関して、再交渉は求めないとしつつ、日本政府が拠出した金額と同額の10億円を韓国政府が和解・癒やし財団に拠出し、日本政府の拠出金について日本側と協議していくとの方針を表明した(1月9日)。



この方針について、日本側は直ちに抗議を表明し、『慰安婦』問題に関する日韓合意によって最終的かつ不可逆的に解決しており、さらなる措置は全く受け入れられないと表明した。


この問題は、当分混乱が必至であり、日本のメディアでは韓国側に対する非難一色である。
韓国側が日本政府に求めているのは「国際基準に基づいて真実を認め、元慰安婦らが名誉と尊厳を回復し心の傷を癒やすための努力を継続する」ことである。
問題は、日本では、この要求を韓国側の追加的な要求と受け止めるかのごとき報道があふれていることである。一色であると言ってもよいだろう。


『慰安婦』問題に関する2015年12月28日の日韓合意に関して、日本では「最終的かつ不可逆的解決」との文言だけが独り歩きしている。
10億円を拠出したことで日本側の責任は全て果たしたかのごとき言説が流布されて、韓国側からの求めについて、それがどのようなものであれ、合意に反するとするとらえ方が一般化している。


問題は、ここにこそあるだろう。
果たして、日韓合意は、10億円さえ拠出すれば、後の措置は全て韓国政府の責任になるとするような一方的なものだったのか。



外務省のサイトに掲載された日韓合意の全文は次のとおりである(平成26年12月28日「日韓両外相共同記者発表」)。


1 岸田外務大臣
 日韓間の慰安婦問題については,これまで,両国局長協議等において,集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき,日本政府として,以下を申し述べる。

(1)慰安婦問題は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり,かかる観点から,日本政府は責任を痛感している。
 安倍内閣総理大臣は,日本国の内閣総理大臣として改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明する。

(2)日本政府は,これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ,その経験に立って,今般,日本政府の予算により,全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には,韓国政府が,元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し,これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し,日韓両政府が協力し,全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復,心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。

(3)日本政府は上記を表明するとともに,上記(2)の措置を着実に実施するとの前提で,今回の発表により,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。
 あわせて,日本政府は,韓国政府と共に,今後,国連等国際社会において,本問題について互いに非難・批判することは控える。

2 尹(ユン)外交部長官
 韓日間の日本軍慰安婦被害者問題については,これまで,両国局長協議等において,集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき,韓国政府として,以下を申し述べる。
(1)韓国政府は,日本政府の表明と今回の発表に至るまでの取組を評価し,日本政府が上記1.(2)で表明した措置が着実に実施されるとの前提で,今回の発表により,日本政府と共に,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は,日本政府の実施する措置に協力する。

(2)韓国政府は,日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し,公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し,韓国政府としても,可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて,適切に解決されるよう努力する。

(3)韓国政府は,今般日本政府の表明した措置が着実に実施されるとの前提で,日本政府と共に,今後,国連等国際社会において,本問題について互いに非難・批判することは控える。


日本で広く知られているのはこのうち、「この問題が最終的かつ不可逆的に解決される」との部分である。


しかし、「最終的かつ不可逆的な解決」は、上記(2)の措置を着実に実施するとの前提であることが岸田外相の発言によっても明らかである。


この(2)の措置は、次の通りである。
「日本政府は,これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ,その経験に立って,今般,日本政府の予算により,全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には,韓国政府が,元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し,これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し,日韓両政府が協力し,全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復,心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。


日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うことが「解決」の前提とされているのだ。


日本国内では、『慰安婦』被害者を初めとする韓国政府に対する批判は、もっぱら韓国政府が対処すべき課題であり、他人事のであるかのような受け止め方が広がっているが、元『慰安婦』の名誉と尊厳の回復、心の癒やしは日韓両国政府が協力して当たるべき課題とされ、それがなされて初めて「最終的かつ不可逆的な解決」に至るとするのが日韓合意の肝なのである。


かつて、韓国側から安倍総理のお詫びの手紙を添えることを求められたとき、安倍総理は日韓合意に明記されていない措置であるとして、「毛頭考えていない」(平成26年10月3日衆院予算委員会)として、頭からこれを拒否した。
これは自ら日韓合意によって約束した『慰安婦』被害者の名誉と尊厳の回復や癒やしを否定することに他ならない。


日本政府は、日韓合意の着実な履行を求めるという立場である。
であるならば、韓国側がこのたび表明した「日本が国際基準に基づいて真実を認め、元慰安婦らが名誉と尊厳を回復し心の傷を癒やすための努力を継続するよう望む」との希望に対して、真摯に対応することこそが求められると言わなければならない。


日韓合意をめぐる混乱は、韓国側のみに責任があるとは到底思われない。
10億円を拠出したら、それで全て終わりだとする、日本政府と日本メディアの日韓合意をのとらえ方にも大きな責任がある。


もとより文書によらず、日韓外相の共同発表という形式を取った日韓合意にはそもそも条約としての法的拘束力はない(ウイーン条約法条約2条1(a))。
相互の信頼関係こそが合意の唯一の基盤である。
韓国政府を非難するばかりの日本政府やメディアが信頼関係を損なってきたことは明らかであろう。


異様な嫌韓ブームに続く、朝日新聞の『慰安婦』報道に対する謝罪以来、歴史修正主義は益々勢いを増している。
明治150年、天皇退位、オリンピックとナショナリズムが昂揚することが見込まれる中、直近の出来事についてすら、正確な理解がないがしろにされ、歪められる世論状況には強い危うさを覚えざるを得ない。

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産経ニュース 2018.1.10 12:50

「日本が心から謝罪するなどし、被害者が許せば解決」韓国の文在寅大統領の発言の要旨


 韓国の文在寅大統領の年頭記者会見の要旨は次の通り。

 一、平昌冬季五輪を南北関係改善と朝鮮半島の平和の転機としなければならない。

 一、従軍慰安婦問題を巡る日韓合意は両国間の公式的合意という事実は否定できないが、誤った問題は解決しなければならない。

 一、慰安婦問題を巡り韓国は、外交的な問題の中、十分に満足できなかったとしても現実的に最善の方法を探した。

 一、合意に基づき日本が拠出した10億円は問題解決に向けて良い目的で使えるなら望ましい。

 一、日本が心から謝罪するなどして、被害者たちが許すことができた時が本当の解決だ。

 一、日本とは心を通わせた真の友人となることを望む。歴史問題と未来志向の協力を分離して努力していく。

 一、今年が朝鮮半島の平和の始まりとなるよう最善を尽くす。その過程で日本や米国、中国など国際社会と協力する。(共同)

2017年12月21日 (木)

地に墜ちる企業倫理

大相撲のコンプライアンスは重要らしいが、企業のコンプライアンスは大して問題ではないらしい。


政治の劣化に劣らず、経済の劣化は見るも痛ましい。
東芝やシャープが沈み、日本郵政が豪州の投資家に食われ、三菱重工は船は沈み、飛行機は飛ばずで、日本を代表する企業の凋落が著しい。
神戸製鋼、三菱自動車、スバル、スズキ、三菱マテリアル(子会社)、東レとデータ改ざんが常態化していることが報じられても、一報だけでマスコミは素通りし、ひたすら大相撲のコンプライアンスを騒ぎ立てている。


いったい、いつから、なぜ、経済界全体が劣化し、安全性を軽視するデータ改ざんが行われるようになったのか、突き詰めた調査報道は知る限りない。


新幹線の台車に亀裂が入った報道はされているが、原因究明までには時間がかかろう。
そのうちにうやむやにされるのではないか。


データ改ざん問題の嚆矢となった神戸製鋼は、新幹線の台車部品も供給していたことが報じられていた。


仮に神戸製鋼のアルミ部品が事故と関係がないとしても、台車に亀裂が入るのは、メンテナンスだけの問題ではあるまい。


神戸製鋼は、世界中の原発にも部品を提供していると、昨日のグリーンピースジャパンのメールにあった。


憂いはつきない一方で、ネットでは、こんな馬鹿げた記事も拾える(RECORD CHINA)。
ダメになればなるほど、日本はすごいと騒ぎ立てるさまは、神州不滅、世界に冠たる神の国と騒ぎ立てながら未曾有の敗北へと突き進んだ時代と重なる。

新幹線に神戸製鋼の不正製品、中国ネットユーザーが意外な反応


2017年10月22日、財経網によると、神戸製鋼のデータ偽装問題は中国でも注目を集めている。

新幹線の一部に神戸製鋼が製造した部品が使用されていると発表された。データ偽装の対象で基準に満たない強度しかないという。

このニュースに中国ネットユーザーは意外な反応を示している。

「日本の基準には合わないんだろうけど、中国の基準なら全然OKだよね」
「西安の地下鉄のケーブル品質偽装事件を覚えている。最初はデマだってごまかしていたのに最終的にごまかしきれなくて謝罪したやつ。外国の問題は大々的に報道するのに、自国の問題はすぐに忘れたふりをする中国メディア…」

「日本半端ない。データ偽装の部品を使っていても、事故ゼロなんだもん。日本半端ない」
「これで日本製品のイメージが悪くなったらいいな。日本車が安く買えそうだから(笑)」
「日本の厳しい品質基準で、中国の高速鉄道を検査してもらいたいね」(翻訳・編集/増田聡太郎)



自国の誤りを批判することが、この国では、タブーになりつつある。


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損壊すれば過酷事故の恐れ
前代未聞のスキャンダル再び
神戸製鋼データ不正問題



■ 世界中の原発に部品を供給するトップメーカーで不正発覚

蒸気発生器に欠陥のある日本鋳鍛鋼社製の部材が見つかり、2016年6月、フランスの原子力安全局が12基の原発の運転停止と検査を指示した原発強度不足問題。
日本では、過去の検査記録など書面のみを調査した各電力会社の報告をうけ、「強度不足の恐れはない」と原子力規制委員会が対応をたった3週間で中断したきりになっていましたが、今度は日本鋳鍛鋼よりさらに大手の神戸製鋼の性能データに不正が発覚しました。

世界中の原発で使用される神戸製鋼グループの製品は、日本の原発にも広く供給されています。
新規制基準に適合した原発についての電力会社の自主調査では、安全上重要な部分にも使用されていることが判明。

それらの製品が不正が行われた工場由来でなく、これまでの検査で問題がなかったこと、運転実績などを根拠として「現時点で直ちに重大な影響を与える問題ではない」と電力会社は報告しましたが、それだけで今後の安全を保証できるものではありません。

■ 「推定“安全”」ではなく現品検査を

電力会社に口頭で確認を「依頼」した原子力規制委員会に対し、グリーンピースは「現段階の対応では不十分」として、文書での調査指示と情報公開を求めました。
10月末には緊急署名も実施、提出。
わずか3日余りと短期間にもかかわらず、7,214筆ものご賛同をいただきました。
心より感謝申し上げます。

安全上重要な原発部品に万が一欠陥があれば、放射能の大量放出を含む過酷事故にも
つながりかねません。
神戸製鋼グループで判明した不正製品の供給先は全体で約500社。40年という改ざんがあった期間の長さや供給網の複雑さからも、「安全を推定」ではなく、現品の検査などより詳細な調査をすべきです。

■ フランスでは調査継続中

3年前に発覚した強度不足問題について、フランスでは現在も調査が続けられています。
日本でも確実な調査・検査が必要です。
いったん事故が起これば、取り返しのつかない深刻な被害を引き起こす原発。
あの悲劇がどれだけ多くの人々の生活を、人生を致命的に破壊したか、その現実よりも重い事実はありません。

関西電力と九州電力は、11月30日、神戸製鋼所データ改ざん事件を受けての調査に時間がかかるとしてそれぞれ大飯原発3、4号機、玄海原発3、4号機の再稼動を約2カ月遅らせる計画を発表しましたが、高浜3、4号機、川内原発1、2号機は現在も稼働中です。

グリーンピースの放射能調査でも、避難指示が解除された地域の中で安全に暮らせないレベルの放射能汚染が発見され、強制的な帰還政策による女性や子どもへの人権侵害が起こっていることがわかっています。
国際社会にこの現実を伝えるため、グリーンピースは被害者の方とともに働きかけを実施、国連の会議で複数の国から日本政府への是正勧告につながりました。
二度と事故を繰り返さないためにも、すべての原発での調査と国民への情報共有が必要不可欠です。
再稼働すべきではありせん。


2017年9月27日 (水)

北朝鮮の「核保有」はフェイク??

国難突破解散。
北原白秋補作詞、山田耕筰作曲の、国難突破日本国民歌が作られたのは1932年。
同じ1932年、挙国一致内閣が成立する。
安倍自民党とコイケユリコ党、それに民進党まで合流する挙国一致政治が出来しそうな形勢は1932年とよく似ている。
まだ、彼らが滅びるのに13年もあるかと思うと、正直げんなりする。





さて、北朝鮮の核保有について、小出裕章氏は、懐疑的だと知った。
(逝きし世の面影ブログ9月25日)

Koidehiroaki

北朝鮮が核兵器を保有しているという話は、いかにも根拠が薄いと思うが、疑う声が全く出ないので、腹がふくれる思いだった。


広島型原爆の6倍という前提で、国会議事堂上空で北朝鮮の核爆弾が爆発した被害予想図をIWJが作成してインタビューで紹介していた(IWJ 写真家初沢亜利氏インタビュー9月10日より)。

Kakubakuhatu

赤く塗られた東京23区は一瞬で焼失。
外側の赤線の埼玉、神奈川、千葉を含む範囲は爆風で建物が吹き飛ぶという。

これは広島型の6倍という前提であるが、包括的核実験禁止条約機構の公式見解では、広島型の10倍ということに固まったそうだから、さらにこの1.6倍の範囲に焼失、爆風範囲が及ぶことになるというわけだ。
とてつもない爆発である。





これほど強力な核爆発があったのに、放射性物質は検出されていない。
何という強固な実験場だろうか。

2度の振動があったから核実験場のトンネルが崩落したという推測もあったが、それでも放射性物質だけは出さないというのだから、よほど強力な放射性物質の遮断をしている訳で、北朝鮮は、原発事故の放射能を垂れ流している日本国よりよほど国民思いではないか。


放射性物質が不検出なので、核実験が成功したとする根拠は、その爆発力の大きさしかないが、これまた、マグニチュード6.1と素人には理解できないほど巨大な訳で。
たとえば、今朝5時22分にあった岩手県沖深さ30キロのマグニチュード6.0の地震は、北朝鮮の核実験より小ぶりなわけだが、こんなに揺れた。

Jisin


ごく浅い深度で核実験をしたから、揺れが伝わる範囲が極めて限定されるということなのだろうが、そうなるとマグニチュードの推測が怪しくなる。

検出できないほどに微弱な揺れからマグニチュードを推測する作業をしているのだろうが、微弱な揺れであればあるほど推定されるマグニチュードの誤差は大きくなるだろう。
大体、それほど微弱な揺れからマグニチュードを推定するのが正しいやり方かも怪しい。

微弱な揺れで推定が可能なのは、おそらくこれまでの「核実験」と比べた相対的な爆発力の大きさの比較でしかないのではないだろうか。
したがってこれまでの「核実験」の威力が誇大に評価されていれば、今回の「核実験」の威力も誇大評価になる訳で。


ここら辺は、地震の専門家が実際のところを知らせてくれないと、「核兵器」だけが一人歩きする。


あれほど見せたがりの金正恩が、「核実験」の映像だけは一度も見せたことがないのも怪しい。
結局のところ、北朝鮮の「核兵器」なるものはフェイクである可能性が高いと思う。

大体、マスコミに登場する専門家を信用するととんでもない目に遭うことくらい原発事故で学んだ筈なのに、また同じ轍を踏もうとしている。
彼らは北朝鮮の脅威を煽ることで飯を食っている。

真に恐ろしいのは、金正恩でもトランプでもない。
戦争による兵器の大量償却を欲している軍産複合体だ。


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追記
IWJの初沢亜利氏のインタビューは、1990年代の飢餓に瀕した最貧国北朝鮮でイメージが固着している者にとっては、新鮮だった。
この4年ほどで、確実に経済成長して、富裕層が生まれてきているという。
マスコミの北朝鮮特派員は、平壌の風景が確実に近代化していることにばつが悪いのだそうだ。

そりゃそうだろう。
90年代より庶民が貧しくなっている、我が祖国の方が世界的に見れば異常だ。



2017年9月 4日 (月)

ミサイル、水爆事件、関東大震災朝鮮人虐殺追悼とりやめ等

赤旗が、8月30日付と31日付で「危機の三菱重工」と題して、長崎造船所の元労働者錦戸淑宏氏のインタビュー記事を掲載している。

   『危機の三菱重工 上』

   『危機の三菱重工 下』


ミサイル不安を扇動することについては、米朝日の政権の利害が一致していることはいうまでもなく、また日刊ゲンダイが指摘するようにミサイル防衛に乗じて米国軍事産業が言い値で政府に武器を売りつける恰好のネタとなることも疑いがない。

『過去最大5.2兆円 防衛予算は“ムダ兵器”爆買いで青天井』
(日刊ゲンダイ2017年9月1日)

「SM3ブロック2Aの射程は高度500~750キロで、1発20億~30億円の高額兵器です。最高高度550キロを飛行した29日発射のミサイルにも対応できる可能性が高まりますが、米国領を標的としたミサイル全てを撃ち落とそうとでもいうのでしょうか。安倍首相の再登板以降、防衛費がプラスに転じたのは、米国の言い値で高額兵器を爆買いしている側面がある。ミサイル防衛、島嶼防衛を出せば、どんな予算でもスイスイ通る。それに、概算要求は形式に過ぎず、防衛省は必要とあれば補正予算でどんどん買い込んでいます」

■増額分は米企業丸儲け

 対中牽制の要衝である南西諸島の防衛にも大盤振る舞い。

 南西警備部隊の施設整備に552億円、最新鋭ステルス戦闘機「F35」の6機買い増しに881億円、国内でも事故を多発させている“未亡人製造機”のオスプレイも4機457億円で買い上げ。宇宙部隊創設に向け、取得断念に傾いていた無人偵察機「グローバルホーク」も144億円で購入するという。みーんな米国製だ。


濡れ手に粟は米国企業だけではない。
赤旗記事によれば、「SM3ブロック2A」も、F35も三菱重工が共同生産しており、三菱重工にとってもミサイル特需は、恰好の商機という訳だ。

 安倍政権は北朝鮮のミサイル発射に備えるとして、迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」の量産体制を整えることを17年度予算で決めています。
 「SM3ブロック2A」は海上自衛隊のイージス艦に搭載されているミサイル「SM3ブロック1A」の改良型で、米国レイセオン社と三菱重工が共同開発してきたものです。ミサイル垂直発射装置(VLS)はすでに長崎で製作されています。北朝鮮問題を利用したミサイル防衛の拡大を、三菱重工は大きな商機ととらえています。
 迎撃ミサイルは、相手側がミサイルを発射したことをいち早く探知しなければ役に立ちません。そのためには人工衛星で宇宙から常に相手の動向を監視しておくことが必要です。その人工衛星を打ち上げるロケットは三菱重工製です。


 三菱重工の名古屋航空宇宙システム製作所ではF15戦闘機やF35戦闘機などを生産しています。政府はF35戦闘機42機を導入する計画ですが、そのうち38機は小牧南工場(愛知県豊山町)で最終組み立てを行う予定です。

船は沈み、飛行機(MRJ)は飛ばず、原発では放射能漏れで巨額の賠償を迫られ、技術劣化が著しい三菱重工は、どこか東芝と似ている。
東芝との違いは、最後は国家そのものに寄生する軍需産業を本籍とすることなのだろう。
軍需部門も技術劣化していないと、誰が保障するのか。


金正恩なぞてんから信用していないだろうに、核兵器をめぐっては、無条件に全面的に信用できるということになってしまうのは不思議でならない。
放射性物質が漏れ出さない核実験場などができれば、北朝鮮は人類未到の最高度の技術レベルに達したことになるわけだが(それこそ福島原発に技術移転してもらいたいものだ)、水爆実験の成功という金正恩の主張が放射性物質も検出されないまま一人歩きしている。
過去の「核実験」なるものの検証もなされないまま(検索する限り、ごく初期の実験を除いては放射性物質が検出されていないらしい)、勝手に「危機」がエスカレートしていくのにはついて行けない。


我が国の支配者が「日本に向けて撃った」というミサイルは、かの国の支配者によれば「朝鮮併合の日に残虐な日本人を震え上がらせた」そうだが、その「残虐」を我が国の首都の知事は認めないことにしたようだ。
朝鮮人虐殺の犠牲者を追悼する集会に対する知事の追悼文送付を取りやめた措置が、残虐行為がなかったと受け止められるおそれはないかという記者の質問に対する答えは相変わらず、コイケらしく、とらえどころのないものだ。
石原慎太郎ですら寄せていた追悼文の送付を取りやめるというのだから、歴史修正主義は今や歴史ねつ造主義、歴史抹消主義と呼ぶのが相応しい。


関東大震災時の朝鮮人虐殺に関して、文学者たちが残した文章が「関東大震災と文豪 成蹊大学図書館の展示から」と題する論文の中にまとめられている。
(該当部分は、はてな匿名日記「芥川龍之介ら文豪たちが記録した関東大震災朝鮮人虐殺」にまとめられている)


幾人かは、流言自体を信用しなかった。


 広津和郎は、デマに批判的な態度を取った一人であった。

 あの震災に関聯して、今思い出しても日本人として堪らない気持ちのするのは、各地に起った例の鮮人騒ぎである。…とにかく鮮人に対して、あの時日本人の行ったことは、これは何とも弁解のしようのない野蛮至極のものであった。
ああ云う場合、この国の人間には、野蛮人の血が流れているのではないかという気がする。…

(朝鮮人が来ますと言われて)私は、「そんな莫迦な話があるものか。鮮人が地震を予知していたわけではあるまいし、何処で勢揃いし、何処からやって来るというのだ。…そんなことは絶対に考えられないよ。僕はこれから寝るから、ほんとうに鮮人が来たら起こしてくれ。」…と云って、人々を安心させるために、畳の上にひっくり返ったら、実際に眠ってしまった。


寺田寅彦もこの流言をまるで信じなかったようだ。

 井戸に毒を入れるとか、爆弾を投げるとかさまざまな浮説が聞こえてくる。
こんな場末の町へまでも荒らして歩くためには一体何千キロの毒薬、何万キロの爆弾が入るであろうか、そういう目の子勘定だけからでもじぶんにはその話は信ぜられなかった。


おおかたは、流言に恐怖を覚えたようだが、そうした自身に対する批判精神を持っていた。


菊池は、このデマに関しても良識を見せている。そのことを芥川が迂遠な言い回しで褒めている。(言論統制のため、この時期の多くの文章と同様に、「不逞朝鮮人」などの言葉が伏字で○○となっている。)

僕は善良なる市民である。しかし僕の所見によれば、菊池寛はこの資格に乏しい。…菊池と雑談を交換してゐた。…その内に僕は大火の原因は○○○○○○○○さうだと云つた。すると菊池は眉を挙げながら、「嘘だよ、君」と一喝した。…しかし次手にもう一度、何でも○○○○はボルシェヴィツキの手先ださうだと云つた。菊池は今度も眉を挙げると、「嘘さ、君、そんなことは」と叱りつけた。…

 再び僕の所見によれば、善良なる市民と云ふものはボルシェヴィツキと○○○○との陰謀の存在を信ずるものである。もし萬一信じられぬ場合は、少くとも信じてゐるらしい顔つきを装はねばならぬものである。けれども野蛮なる菊池寛は信じもしなければ信じる真似もしない。これは完全に善良なる市民の資格を放棄したと見るべきである。善良なる市民たると同時に勇敢なる自警団の一員たる僕は菊池の為に惜まざるを得ない。

 分かりづらい文章であるが、「善良なる市民」とはいい意味ではなく、デマに踊らされる無知蒙昧な民衆なのであろう。


 志賀直哉は震災時京都にいたようで、家族を心配して上京してくる。東京に向かう汽車の中で朝鮮人騒ぎの噂を聞く。

 東京では朝鮮人が暴れ廻つてゐるといふやうな噂を聞く。が自分は信じなかつた。
 松井田で、警官二三人に弥次馬十人余りで一人の朝鮮人を追ひかけるのを見た。
 「殺した」直ぐ引返して来た一人が車窓の下でこんなにいつたが、余りに簡単すぎた。今もそれは半信半疑だ。…

丁度自分の前で、自転車で来た若者と刺子を着た若者とが落ち合ひ、二人は友達らしく立話を始めた。…
「―鮮人が裏へ廻つたてんで、直ぐ日本刀を持つて追ひかけると、それが鮮人でねえんだ」…「然しかう云ふ時でもなけりやあ、人間は殺せねえと思つたから、到頭やつちやつたよ」二人は笑つてゐる。


政府が不安を煽れば、落ちてくるはずもないミサイルにおびえる現代の日本人は、警察に不安を煽られれば、関東大震災当時の振る舞いを繰り返さない保障はないだろう。


大正期の文学者たちほどの批判精神が今の日本にあるだろうか。
甚だ怪しく思われてならない。

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