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カテゴリー「法律」の50件の記事

2015年11月 1日 (日)

マイナンバー 何のメリットもないし、要らない 特定個人識別番号

特定個人識別番号制度、週刊現代2105年11月7日号が、ようやくにしてみんなが知りたいことをきちんと書いてくれました。
民間利用で丸裸にされるかどうかはまだまだ先に決まる話。
個人番号カードを持つ人が多くなるかどうかで全てが決まります。


そのため官民挙げての必死のマインドコントロールPR『マイナンバー大作戦』が展開中。
ご丁寧にも、総務省は、転出入の届け出に来た人に、個人番号カードを持つようにセールスするように総務省令まで作る始末ww
涙ぐましい努力は、天下り先開拓作戦でしょうかね。

「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の規定による通知カード及び個人番号カード並びに情報提供ネットワークシステムによる特定個人情報の提供等に関する省令」
第10条1項2号  (転出入届けがあったときには、市町村役場は)個人番号カードの交付の手続に関する情報の提供を行うこと。


しかし、個人番号カードを持つ人が少なければ、官民利権の野望を打ち砕くことは十分に可能です。(^^)v


その第一弾は、通知カードを受け取らないことです。


個人番号カード申請書と一体になった通知カード
Tuuticard_2
あくどいですww


以下、Livedoor News から転載。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

何のメリットもないし、いらない 知ってましたか、マイナンバー 実は「受け取り拒否」できます

12ケタの番号が手元に届き、不安になっている人もいるだろう。こんな番号は欲しくないが、なにか準備しないと面倒が起きるのでは、と。だが、こんな制度は無視していい。その理由を徹底解説する。

■会社に提出しなくていい

「番号が届いたけど、これ、いったいどうすりゃいいの?」

10月20日から12ケタのマイナンバーが記載された「通知カード」の交付が始まったが、日本全国でそんな疑問の声があがっている。

来年1月からは「個人番号カード」の交付も始まり、制度の本格的な運用が開始されると喧伝されているだけに、不安になるのも無理はない。

だが、まったく気にする必要はない。実はマイナンバーは、「受け取り拒否」、つまり無視をしても問題のない制度なのだ。

そもそも、現在配られている「通知カード」自体、受け取らなくても何ら罰則はない。

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律、通称「マイナンバー法」に詳しい、弁護士の水永誠二氏が語る。

「通知カードの受け取りを拒否することは可能です。簡易書留で送られてくるだけですから、配達員が来ても出なければいい。受け取らないまま1週間が経過すれば、通知カードは市区町村に戻る。それらの自治体から『受け取ってください』と督促が来ますが、それも無視すれば、3ヵ月で通知カードは破棄されます。

すでに受け取った人は、転居などで記載事項に変更が生じたときにその旨を行政に届けないといけません。ただ届けなくても、特に罰則があるわけではありません」

受け取りを拒否すれば、当然、自分の番号がわからない、ということになる。

そうなれば、政府が宣伝する「利便性」は享受できなくなる。だが、彼らが言うメリットとは、様々な申請の手続きが楽になる、という程度だ。たとえ自分の番号を知らなくても、何らデメリットはない。

マイナンバーの活用・提示が想定されているケースごとにそれを検証していこう。

【会社に番号提出を求められたら】

サラリーマンなら、すでに人事や経理から番号の提出を求められている人も多いだろう。だが実は、応じなくても罰則規定はない。

社会保険労務士の北見昌朗氏が解説する。

「提出を拒否すれば、『出してください』と、経理や人事から督促を受けます。しかしそれでも嫌だといえば、『督促をした旨』を記載した上で、人事は税務署に提出する。税務署はそれを受理してくれます。企業にも提出しなかった社員にも、現状では何ら罰則規定はありません。今後も、提出しないからペナルティを科す、ということはできないと思います」

ただ、あえていえば、国税からマークされるケースはあるかもしれないと語るのは、前杉並区長で一般社団法人国家経営研究会代表理事の山田宏氏だ。

「私はかつて杉並区長として住基ネットに反対しましたが、その後、税務署が頻繁に調査に来るようになりました。もちろん向こうは『関係ない』と言いますが、私からすればそうは思えない」

とはいえ、番号を出さなかった人を一人ひとり調査するとなれば、膨大なコストと手間がかかる。きちんと納税をしていれば、ほとんど心配はいらないということだ。

■口座との紐付けは不可能

【番号なしで銀行口座は開設できるのか】

預金口座との紐付けは、「公正な徴税」を目的とする、マイナンバー制度の肝。'18年からは任意による紐付けが開始され、その3年後の'21年からは義務化が検討されている。

だが、やはり心配はいらない。前出の水永氏が断言する。

「義務化される可能性があるのは、あくまで新規口座。しかも、これも検討段階にすぎない話です。そして、いま使っている口座を強制的に番号と紐付けをさせるのは事実上不可能。紐付けしなければ口座を凍結するなどという措置は、財産権の侵害にあたり、憲法違反になるからです」

口座との紐付けについては、他にもできない理由がある。『大事なことだけすぐにわかるマイナンバー制度』を監修した税理士の青木丈氏が語る。

「紐付けについては、金融機関もあまり乗り気じゃありません。番号がないと口座が作れないなどと言えば、口座を開設してくれない人が出てくるかもしれませんからね。

番号を提出した際のメリット、しなかった場合のデメリット、共に特にありませんし、預金との紐付けは現実味がありません」

金融機関へ番号を提出する必要がないのだから、当然、従来通りの手続きで、融資を受けられるし、ローンも問題なく組める。

【株の配当や保険金は、番号がなくても支払われるのか】

株取引をしている人は配当を受け取る際に、証券会社などからマイナンバーの提出を求められることになる。だが、これも企業のケースと同じで、提出したくない、と言えばそれまで。証券会社が支払報告書に「マイナンバーを受け取れなかった旨」を記載すれば、税務署は受理してくれる。

保険の場合も、株の配当と同様。保険金の支払いの際に番号を求められるが、提出しなくても何ら問題はない。

【マイナンバーカードがなくても病院の受診や入院はできるのか】

マイナンバー制度の導入が決まって以来、再三にわたって議論されている医療分野。実はこの分野における番号の活用については、まだ何も決まっていないというのが実情だ。

決まっていないのだから、当然、番号は必要ない。ある日本医師会職員が証言する。

「政府としては、医療分野での活用を考えているようですが、医師会から猛烈な反発を受け、制度設計はまったく進んでいません。医師会は、患者の病歴という極めて機密性の高い情報を他の情報と一緒にすることを危険視しているんです。

そのため、厚生労働省は医療分野だけマイナンバー制度から独立させ、『医療等ID』という別の番号を発行する予定です。こんな状況ですから、病院を訪れたときに番号がわからなくて困る、ということはありえない」

■無視していればいい

【番号なしで年金はきちんと支払われるのか】

医療や保険以上に、多くの人が気にしているのが、年金とマイナンバー制度の連係だろう。年金についても、マイナンバーは必要ない。

むしろ年金の場合は、現状、連係はないほうがいいとされているくらいだ。というのも、今年5月に日本年金機構が起こした、125万件もの個人情報流出事件により、マイナンバー制度とつなげる作業は完全にストップしているからだ。

事実、日本年金機構は現在、年金請求の際に住民票を提出するときは、「番号を記載しないように」と呼びかけている。

来年1月からマイナンバー制度と連係するはずだったが、1年5ヵ月の延期が決定。そして今後も、番号が必要な状況にはならないと語るのは、「共通番号いらないネット」代表の白石孝氏だ。

「連係が始まれば番号は勝手に割り振られ、我々の年金は政府によって一元管理されます。それ自体が気持ち悪いという意見があるかもしれませんが、一般市民が何かしなければならない、ということはありません。もちろん、番号の提示が必要な場面もない。

個人番号カードを作れば自宅から年金の支給額を確認できるようになると言われていますが、それも毎年来る『年金振込通知書』を見ればわかることですからね」

給与所得、口座開設、社会保障分野……様々な分野でマイナンバー制度の活用を見てきたが、番号が必要になる場面はない、ということがわかっただろう。マイナンバーは「受け取り拒否」をしても問題はないのだ。

しかしそれでも、来年1月から個人番号カードによる制度運用が始まれば、面倒なことになるのではと、不安が拭い切れない人もいるだろう。

心配はいらない。マイナンバー制度推進を統括する、内閣官房社会保障改革担当室参事官補佐の浅岡孝充氏が保証する。

「端的に言えば、個人番号カードというのは、本人確認書類に過ぎません。そもそも、持ちたくないという人は作らなくても問題はありません。持っていなくても、行政サービスから除外されるということはありません。従来どおりの手続きをふめば、変わらない生活を送っていただけます」

国民の理解を得るために、政府は必死に「利便性」を主張し続けている。だが、マイナンバー制度のそもそもの目的は、あくまで「行政の効率化」と「徴税強化」。つまり、国民ではなく、政府のための制度だ。

「通知カード」が届いたからといって焦る必要はない。無視していれば、それでいいのだ

「週刊現代」2015年11月7日号より

 

2015年10月23日 (金)

マイナンバー  退職しても7年残る?マイナンバー

当ブログの10月14日付の記事のシェアが1万2000に達した。
常と2桁も違う、記録的な数字である。

 

いわゆる「マイナンバー」について、いかに正確な情報が知らされていないかを示している。

 

当ブログは、何も特別なことをしたわけではない。
「行政における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」
を普通に眺めたら、通知カードの受領義務などどこにも書かれていないし、逆に通知カードを受け取ると義務が生じる(罰則こそないが)構造になっていることを確認したに過ぎない。
条文そのままの話である。

 

マスコミも、ネット空間の情報も、一次資料である法律そっちのけで、政府作成のパンフレットに頼って、情報を垂れ流しているからこのような有様になるのである。

 

簡単におさらいすると、
通知カードを受け取ると、
●紛失したときは、直ちに役場に届け出をしなければならない。
●転出・
転入手続には、個人番号通知カードを提示しなければならない。
●通知カードに記載された事項に変更がある場合は、14日以内に役場に届け出なければならない。
等の義務が生じる。

 

一方で、何らかの手続で必要となるのは、通知カードではない。
必要となるのは、特定個人識別番号そのものである。

 

そして、特定個人識別番号は、個人番号付の住民票の交付を求めれば、いつでもわかるので、どうしても必要になったときには、個人番号付の住民票の交付を求めればすむ。

 

本人確認のために通知カードが必要になるとする情報もある。
NHKのサイトにもそのような記載が見られる。
しかし、誤りである。
通知カードは必要ではない。
本人確認についても、個人番号付の住民票で足りる(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行令12条1項1号)。
むしろ、そちらが本筋であろう。
NHKは正確な情報を知らせるべきで、恰も、通知カードが必要であるかのような間違ったコマーシャルはすべきではないだろう。

 

その上、特定個人識別番号法は、「何人も…特定個人情報の提供をしてはならない」と規定している。
特定個人情報とは要するに個人番号のことである。
法律は、本人が自分の個人番号を提供することも禁じている。
(但し、本人の違反については制裁規定はないようであるが)

 

通知カードを受け取らず、自分の個人番号を知らなければ、「特定個人情報」を提供しようにもできないのであるから、事実上、義務を負わずにすむ。
逆にいえば、通知カードを受け取ってしまうと、適切に自分の個人番号を管理しなければならなくなるのである。

 

どう考えても、通知カードを受け取る理由はないだろう。

Akuyouhuan

 

おさらいのその2は、従業員と勤務先の関係である。
勤務先の会社や事業所は、源泉徴収票を税務当局に提出する際、従業員の個人番号を記載する書式で提出しなければならないことにされた(行政手続における特定の個人を識別する番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)。

 

会社は確かに義務を負っているが、従業員は会社に対して個人番号を教えなければならない義務を課された訳ではない。
会社は、従業員に対して個人番号の提供を求める権利を持たない。

したがって、会社が義務を果たすために従業員の個人番号の提供を求めるのは、権利の行使ではなく、会社都合による従業員に対するお願いに過ぎない。

 

この構造がわかっている専門家の中には、従業員に対して義務づけを行うには、就業規則に義務付け規定を置くべきとする見解も散見される。
少なくともそのような措置を執らなければ、従業員に対して、会社が個人番号の提供を求めることができないのは確実である。
しかし、仮に就業規則に義務付け規定を置いた場合でも、就業規則の有効性ははなはだ疑わしい。

 

たとえば、(指紋認証を入館に使っているわけでもないのに)就業規則で指紋の提供を義務づけた場合と対比してみよう。
指紋の提供それ自体、違和感を覚えないだろうか。
特定個人識別番号は、生涯不変であり、同一番号の個人は他に存在しない点から、指紋と同じである。

それだけではない。
指紋から得られる情報は、限られているが、特定個人識別番号は、将来的に、あらゆる情報が番号によって串刺しにされる可能性が高い。
しかも、指紋は、任意に本人が提供する分には構わないが、特定個人識別番号は本人といえども、法令の定めがなければ提供してはならないとされる、これまでに例のない秘密性の高い「個人情報?」である。

 

このように秘密性が高く、しかも高度にプライベートな情報の提供義務を、就業規則で従業員に課することができるか、甚だ疑問である。
従業員は、会社に人生を預けてしまっているわけではない。
雇用契約を結んでいるに過ぎない第三者に個人番号を提供することを義務づけることが可能か、たとえ就業規則に義務付け規定を置いたとしても、根本的な問題が残る。

 

Kusizasinozu
(特定個人識別番号で串刺しの将来想定図。民間利用はこんなものでは止まらない)

 

さて、勤務先との関係では、まだ問題がある。
法律を読んでいるだけでは、必ずしもそうなるとは納得しがたいのであるが、
従業員が勤務先に提供した特定個人識別番号を、勤務先は、在籍中はむろんのこと、退職後も、少なくとも7年間、保存する義務があるとするのが、定説になっているように見受けられる。
こんなことは、法律のどこにも書いていないはずである。
特定個人情報保護委員会が作成した「特定個人情報の適正な取扱に関するガイドライン」が、源泉徴収票作成事務のために、勤務先が継続的に特定個人情報を保管することができると解されるとした上で、
「所管法令で定められている保存期間を経過した場合には原則として、個人番号をできるだけ速やかに廃棄又は削除しなければならない」としていることから、これまで源泉徴収票の保管義務と考えられてきた7年間をそのままスライドさせたもののようだ。

 

この説の怪しさはともかく、企業法務に関わる税理士や弁護士などがこぞって、退職後7年間勤務先は保存すべしの説を流布して定説化しているので、恐るべき結論に至ってしまう。
(そもそも、源泉徴収票作成という年に一回の事務の便宜のために、本人すら自由にできない、極めて秘密性の高い個人番号を保管できると解することが、法律の解釈として怪しい)

 

あなたが、退職しても、少なくとも7年間は、勤務先は個人番号を保管しているのです。

 

喧嘩別れで退職しようが、アルバイトやパートであろうが、退職してから7年間は、元の勤務先に個人番号が保管されるとするのが、定説になっているのです。

 

退職後、7年間、その会社は存続しているかどうかもわかりません。
廃業したり、倒産したときの保管体制は保証の限りではありません。

最も正式な法的手続である破産手続を踏んだとして、破産管財人が7年間もこれを厳重に管理し続ける手続など到底考えられませんし、想定もされていません。

 

まして、事実上の廃業であれば、個人番号が7年間も厳重に管理される可能性はありません。

 

アルバイトやパートで仕事を転職すれば、転職する都度、個人番号をばらまくのと同じで、あちこちの職場に、あなたの個人番号が7年間、残されていきます。


 

退職から、7年も先には、個人番号にどれほどの情報が串刺しにされているかも、見当がつかないにもかかわらず、です。

 

勤務先だって、そんな厄介なものを保管したいとは思わないでしょう。

 

それでも、勤務先は、特定個人識別番号を従業員から聞き出すべきで、従業員は勤務先に特定個人識別番号を提供すべきなのでしょうか。

従業員にとっても会社にとっても、個人番号を提供せずにすませるに越したことはありません。

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2015年10月16日 (金)

マイナンバー  自ら法律違反を勧めるマイナンバー担当大臣補佐官

『マイナンバー』を担当するとされる内閣府福田峰之大臣補佐官の「私は自分の番号が入ったTシャツを作ろうと思っている。番号を知られても問題がないということを、自ら実践する」とのエコノミスト9月15日号の発言が、話題になっている。
『自治体情報政策研究所のブログ』サイト10月13日付記事のいうとおり、これはもっと大問題になってよい発言である。

 

Hukudamineyuki

福田峰之氏は、同趣旨の発言を、2015年10月2日にも繰り返している。

[マイナンバーが来る!](上)/個人情報漏えいの懸念/国民にリスク説明を
沖縄タイムス2015.10.07 

 「番号だけ知られたところで悪用されない」。マイナンバーの通知カード発送作業開始を3日後に控えた2日、内閣府の福田峰之大臣補佐官は報道陣を集め、強調した。「番号を書いたTシャツで街を歩いても何もない」と冗談も飛び出した。


 どこか1カ所で番号が漏れたら、個人情報が「芋づる式」に漏えいするのではないか-。こんな国民の不安を払拭(ふっしょく)するのが狙いだった。


沖縄タイムス社の記事から転載したが、共同通信の配信記事で秋田魁新報、東奥日報社も同じ記事を掲載している。

 

 

 

自治体情報政策研究所のブログは、同ブログが取り上げた記事では、街中を歩くとの発言がなかったので、慎重に断定を避けているようだが、福田峰之大臣補佐官は、10月2日には、「番号を書いたTシャツで街を歩いても何もない」とまで踏み込んでいる。

 

 

 

これは、完全に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」19条違反だろう。

 

(特定個人情報の提供の制限)
第十九条  何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報の提供をしてはならない。

ここで提供してはならないとされている、特定個人情報は「個人番号をその内容に含む個人情報」 とされている(2条8項)。

 

「個人情報」とは、「行政機関個人情報保護法第二条第二項に規定する個人情報であって行政機関が保有するもの、独立行政法人等個人情報保護法第二条第二項に規定する個人情報であって独立行政法人等が保有するもの又は個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)第二条第一項に規定する個人情報であって行政機関及び独立行政法人等以外の者が保有するものをいう。 」(2条3項)

 

これらの法律にいう「個人情報」とは、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」である。

 

結局、平たく言ってしまえば、個人を特定できる情報で個人番号を含むものは、「何人も提供してはならない」ということになる。
(全然、平たくないというお叱りはご尤もである)

 

問題は、この19条が、本人が自分の特定個人情報を提供する場合まで禁止したものであるのかである。
福田大臣補佐官は、本人が提供する場合には問題が無いと、自信を持っているようだが、同条3号には次の記載がある。

 

 本人又はその代理人が個人番号利用事務等実施者に対し、当該本人の個人番号を含む特定個人情報を提供するとき。


これは、特定個人情報の提供の一般的な禁止を解除する条項である。
つまり、本人といえども、特定個人情報(個人識別番号)は、個人番号利用事務等実施者に対して提供する場合を除いて、提供してはならないということである

 

これまでの個人情報保護法体系は、あくまでも他人の個人情報の提供を禁止していたのだが、なんと「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」は、本人が自らする場合についても、個人番号の提供を一般的に禁止しているのである。
(その意味では、国民一般に対する義務づけがない、としていた従前のわがブログはやや正確性を欠くかもしれない)

 

これは、全く新しい範疇の個人情報の創出である。
本人すら思うように扱うことが許されない、個人情報を「特定個人識別番号法」は、作り出している。
(こんなものを「マイナンバー」とはよく言ったものである)
いったい、どのような思惑によってそのようなものが作られるのか。
この「秘密」の保有主体は、政府なのか、グローバル企業になるのか、法律自体から見通すことは困難である。
おそらく政府とグローバル企業の醜悪な結合体が、国民本人も自由にできない個人情報を保有し、管理するということになるのだろう。
いずれにしろ、国民は一種の隷属状態に置かれる。

 

マイナンバー法担当の大臣補佐官ですら、法律を理解せず、自ら法律に違反することを公言する有様である。

こんな法律、守る必要があるのか。
守れ守れと騒いでいるのは、特需に湧く、IT関係、企業法務関係者、人材派遣事業者なんぞであろう。

Hukudamineyuki3

 

担当するトップクラスの人物すら、その本質を理解できない法律が施行されてしまっているのである。
マイナンバー法の廃止の一点でも、野党には、臨時国会の召集を求める理由がある。
(「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。 」(憲法53条第2文)

 

僕の立場は、社会的な共同関係の崩壊を促進した個人情報保護法の段階から、こうした法制度には反対である。
日弁連が煮え切らぬ声明を出しているのは、多分、利権グループの影響下にあるからだろう。

当連合会は、現行のマイナンバー制度自体が、プライバシー等に対する高い危険性を有しているものであるとして強く反対してきたところである。現状での施行には大きな危惧があるため、本来ならば施行を延期すべきであるが、施行する以上は、上記の諸問題点について速やかに対策を取り、プライバシー等に対する懸念や実務上の問題点の早急な解消を求めるものである。

2015年(平成27年)9月9日
日本弁護士連合会
会長 村 越   進

弁護士業界では、悪法だろうが、何だろうが、飯のタネになればよいと考えるグループの影響が増大している。
TPPなど最たるものである。

 

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2015年10月15日 (木)

マイナンバー  事業者も従業員の個人番号を取得すると過大な義務を負うことになる

巷間、事業者は従業員の「特定個人識別番号」を取得して源泉徴収票や支払調書に記載しなければならないのが当然の前提とされている。
その対策ゼミやら出版物やら、関連業界はマイナンバーブームである。

 

 

その根拠は、「行政手続における特定の個人を識別をするための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」第11条の次の記載が根拠である。

 (国税通則法の一部改正)

第十一条 国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)の一部を次のように改正する。

  第百二十四条の見出しを「(書類提出者の氏名、住所及び番号の記載等)」に改め、同条第一項中「届出書」の下に「、調書」を加え、「)及び住所又は居所」を「)、住所又は居所及び番号(番号を有しない者にあつては、その氏名及び住所又は居所)」に改め、同条に次の一項を加える。

 3 第一項に規定する番号とは、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第五項(定義)に規定する個人番号又は同条第十五項に規定する法人番号をいう。

括弧がおかしかったり、2項に「2」とあるべき数字が抜けていたりするのは、全て引用元がこうなっているからで、当方としてこれに手を加えるわけにはいかない。
なおこの法律は、いわゆるマイナンバー法ではなく、「マイナンバー法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」で、「マイナンバー法」とは別の法律である。
この法律で各行政手続に串刺し番号を使うことが定められている。

 

改正される国税通則法124条は次の通りである。

国税通則法
124条
(書類提出者の氏名及び住所の記載等)

第百二十四条   国税に関する法律に基づき税務署長その他の行政機関の長又はその職員に申告書、申請書、届出書その他の書類を提出する者は、当該書類にその氏名(法人については、名称。以下この項において同じ。)及び住所又は居所を記載しなければならない。

 

要するにこれまで源泉徴収票や給与の支払調書等の記入欄に氏名、住所の記載欄があったが、これに特定の個人を識別する「番号」欄を加えるというだけのことである。
だけのことではあるが、「住所又は居所及び番号(番号を有しない者にあつては、その氏名及び住所又は居所)を記載しなければならない」となるので、義務づけではある。
しかし、義務に反しても制裁(罰則)規定はないし、後に述べるように番号欄空欄でも国税当局は受け付けることを明言している。

 

これに素直に従うとすると、従業員から特定個人識別番号の提供を受けなければならない。
ところが、特定個人識別番号の提供を従業員に対して提供を求める権利が事業者にあるかというと、無い。

 

行政における特定の個人を識別する番号の利用等に関する法律には

(提供の要求)
第十四条  個人番号利用事務実施者は、個人番号利用事務を処理するために必要があるときは、本人又は他の個人番号利用事務実施者に対し個人番号の提供を求めることができる。

 

とあり、事業者はこの「個人番号利用事務実施者」に含まれ、「提供を求めることができる」とあると、あたかも権利があるかのように読む人もいるかもしれないが、これは、公法上、一般的に個人番号の提供を求めることが禁止されているが、「個人番号利用事務等を処理するために必要があるとき」に限って、公法上の禁止を解除するという意味に過ぎない。
つまり、「必要があるとき」に個人番号の提供を従業員に求めても、公法違反にはならないということを言っているだけのことである。

(「個人番号利用事務等実施者」の定義は、本来、2条の定義規定の中ですべきであるが、この法律では、12条で、「個人番号利用事務実施者及び個人番号関係事務実施者(以下「個人番号利用事務実施者」という。)」と他の条文の括弧書きの中で定義しており、不細工な作りになっている)

 

他方、前回書いたように国民に個人番号の提供や使用を一般的に義務づける規定は存在しない。
むしろ特定個人識別番号法では、国民はむしろ番号が付されるので、その有する番号を保護されるべき主体として想定されているといえる。
源泉徴収票や支払調書に記入する場合でも、従業員が雇用主に対して、個人番号を提供すべき義務はまったくないのである。

 

そこで事業者としては、困ってしまう訳である。
国税当局は、提出書類に従業員の個人番号を記載せよという、
ところが、個人番号をめぐる雇用主と従業員の間の権利義務関係について法律は、何の定めもしていないのである。
雇用主には提供を求める権利はなく、従業員には個人番号を提供する義務はない。
国は、事業者に記載義務を負わせておきながら、事業者がどうやって従業員の個人番号を取得するかについては知らぬ顔なのである。

 

 

雇用主が可能なのは、従業員に対して、「何とか、貴重な個人番号を、お教えいただけないでしょうか」と、お願いすることだけなのである。
これは、あくまでも雇用主都合によるお願い事である。
従業員が応じる必要は寸分もないし、応じないからといって、勤務上の不利益を課すことはできない。

国税も提供が受けられないことがあることはわかっているので、別に個人番号が記載されていない源泉徴収票や支払い調書を受け付けないとは言っていない。
番号欄空欄でもちゃんと受け付けるのである。

 

ここら当たりのことは、別の角度から、「税理士俣野剛の税金ブログ」が、2015年7月18日付記事「マイナンバーを記載せずに法定調書・源泉徴収票を提出できるか」に書いてある。

 

本題は、ここからであるが、さて、何とか従業員に頭を下げて、伏してお願いして貴重な特定個人識別番号の提供をいただいたとしよう。

 

 

 

 

提供していただいてしまうと、雇用主は他人の個人番号の提供を受けたが故に、一挙にどっさりと義務が拡大する構造になっている。

(特定個人情報の提供の制限)
第十九条  何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報の提供をしてはならない。
 個人番号利用事務実施者が個人番号利用事務を処理するために必要な限度で本人若しくはその代理人又は個人番号関係事務実施者に対し特定個人情報を提供するとき。
 個人番号関係事務実施者が個人番号関係事務を処理するために必要な限度で特定個人情報を提供するとき(第十号に規定する場合を除く。)。
 本人又はその代理人が個人番号利用事務等実施者に対し、当該本人の個人番号を含む特定個人情報を提供するとき。
 機構が第十四条第二項の規定により個人番号利用事務実施者に機構保存本人確認情報を提供するとき。
 特定個人情報の取扱いの全部若しくは一部の委託又は合併その他の事由による事業の承継に伴い特定個人情報を提供するとき。
 住民基本台帳法第三十条の六第一項の規定その他政令で定める同法の規定により特定個人情報を提供するとき。
 別表第二の第一欄に掲げる者(法令の規定により同表の第二欄に掲げる事務の全部又は一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を含む。以下「情報照会者」という。)が、政令で定めるところにより、同表の第三欄に掲げる者(法令の規定により同表の第四欄に掲げる特定個人情報の利用又は提供に関する事務の全部又は一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を含む。以下「情報提供者」という。)に対し、同表の第二欄に掲げる事務を処理するために必要な同表の第四欄に掲げる特定個人情報(情報提供者の保有する特定個人情報ファイルに記録されたものに限る。)の提供を求めた場合において、当該情報提供者が情報提供ネットワークシステムを使用して当該特定個人情報を提供するとき。
 国税庁長官が都道府県知事若しくは市町村長に又は都道府県知事若しくは市町村長が国税庁長官若しくは他の都道府県知事若しくは市町村長に、地方税法第四十六条第四項若しくは第五項、第四十八条第七項、第七十二条の五十八、第三百十七条又は第三百二十五条の規定その他政令で定める同法又は国税(国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二条第一号に規定する国税をいう。以下同じ。)に関する法律の規定により国税又は地方税に関する特定個人情報を提供する場合において、当該特定個人情報の安全を確保するために必要な措置として政令で定める措置を講じているとき。
 地方公共団体の機関が、条例で定めるところにより、当該地方公共団体の他の機関に、その事務を処理するために必要な限度で特定個人情報を提供するとき。
 社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第二条第五項に規定する振替機関等(以下この号において単に「振替機関等」という。)が同条第一項に規定する社債等(以下この号において単に「社債等」という。)の発行者(これに準ずる者として政令で定めるものを含む。)又は他の振替機関等に対し、これらの者の使用に係る電子計算機を相互に電気通信回線で接続した電子情報処理組織であって、社債等の振替を行うための口座が記録されるものを利用して、同法又は同法に基づく命令の規定により、社債等の振替を行うための口座の開設を受ける者が第九条第三項に規定する書面(所得税法第二百二十五条第一項(第一号、第二号、第八号又は第十号から第十二号までに係る部分に限る。)の規定により税務署長に提出されるものに限る。)に記載されるべき個人番号として当該口座を開設する振替機関等に告知した個人番号を含む特定個人情報を提供する場合において、当該特定個人情報の安全を確保するために必要な措置として政令で定める措置を講じているとき。
十一  第五十二条第一項の規定により求められた特定個人情報を特定個人情報保護委員会に提供するとき。
十二  各議院若しくは各議院の委員会若しくは参議院の調査会が国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第百四条第一項(同法第五十四条の四第一項において準用する場合を含む。)若しくは議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(昭和二十二年法律第二百二十五号)第一条の規定により行う審査若しくは調査、訴訟手続その他の裁判所における手続、裁判の執行、刑事事件の捜査、租税に関する法律の規定に基づく犯則事件の調査又は会計検査院の検査(第五十三条において「各議院審査等」という。)が行われるとき、その他政令で定める公益上の必要があるとき。
十三  人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合において、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるとき。
十四  その他これらに準ずるものとして特定個人情報保護委員会規則で定めるとき。

 

読む気も起きない。
何だか頭が痛い。(´Д`;≡;´Д`)アワアワ

 

その上、個人情報取扱事業者となると、次のような義務も発生する。

(地方公共団体等が保有する特定個人情報の保護)
第三十一条  地方公共団体は、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法、個人情報保護法及びこの法律の規定により行政機関の長、独立行政法人等及び個人番号取扱事業者(特定個人情報ファイルを事業の用に供している個人番号利用事務等実施者であって、国の機関、地方公共団体の機関、独立行政法人等及び地方独立行政法人以外のものをいう。以下この節において同じ。)が講ずることとされている措置の趣旨を踏まえ、当該地方公共団体及びその設立に係る地方独立行政法人が保有する特定個人情報の適正な取扱いが確保され、並びに当該地方公共団体及びその設立に係る地方独立行政法人が保有する特定個人情報の開示、訂正、利用の停止、消去及び提供の停止(第二十三条第一項及び第二項に規定する記録に記録された特定個人情報にあっては、その開示及び訂正)を実施するために必要な措置を講ずるものとする

(個人情報取扱事業者でない個人番号取扱事業者が保有する特定個人情報の保護)
第三十二条  個人番号取扱事業者(個人情報保護法第二条第三項に規定する個人情報取扱事業者を除く。以下この節において同じ。)は、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合において本人の同意があり又は本人の同意を得ることが困難であるとき、及び第九条第四項の規定に基づく場合を除き、個人番号利用事務等を処理するために必要な範囲を超えて、特定個人情報を取り扱ってはならない。

第三十三条  個人番号取扱事業者は、その取り扱う特定個人情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の特定個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。

第三十四条  個人番号取扱事業者は、その従業者に特定個人情報を取り扱わせるに当たっては、当該特定個人情報の安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。

 

ま、読んでもよくわからない。
どうすればよいか、わからないからこそ、現在、企業法務の売りになっていて、セミナーだとか書籍出版だとかが花盛りとなっているわけである。

 

とにかく、
●漏えい、滅失又は毀損の防止その他の特定個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。

●従業者に特定個人情報を取り扱わせるに当たっては、当該特定個人情報の安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。
ことだけは確かなようだ。

 

番号空欄でも受け付けるのに、わざわざ番号記入のために頑張ると、もっと頑張れと過大な義務が事業者を襲う仕掛けである。

これは大変だというわけで、取手市のように外部事業者に委託したとしても、漏出すれば、管理不行き届きとして、社会的責任が重くのしかかる仕組みである。

 

大体、小規模零細事業者にとって、外部委託して新たな費用が発生すれば、たださえ苦しい経営をさらに圧迫することになる。

 

コンビニ経営者のように、従業員の出入りが激しい業態では、とてもではないが、経営者が、特定個人識別番号を管理する負担は耐えがたいだろう。
そこで派遣会社がマイナンバー管理込みで市場化できるチャンスにもなり、派遣会社が儲かるかも知れないが、コンビニ経営の費用は確実に増大して経営は悪化することになる。

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もともと、特定個人識別番号は、お上が勝手に企て、お上が事務を効率化するために導入した制度である。
お上ご都合の制度なのであるから、お上が個人番号を照合すればよいのであって、これを中小零細事業者に転嫁しようとか、IT企業や派遣会社に儲けさせようなどというのは、完全にお門違いである。

 

 

ばからしくてやってられないというのが、マイナンバー騒動の真相である。

 

という訳で、最も合理的な経営は、個人番号欄を空欄にして法定調書を提出することである。
そうすれば、従業員に頭を垂れて、貴重な特定個人識別番号をお教えいただけませんかとお伺いお願いしなくてもよい。
国税当局は、個人番号空欄でも税金処理上、法定調書を受け付けざるを得ないのである。

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2015年10月14日 (水)

マイナンバー 通知カードを受け取ると義務が発生します

『マイナンバー』は政府筋が実体とは不似合いな命名をしたもので、不適切である。
以下、法律通り、特定個人識別番号、ないし個人番号と呼ぶ。

 

特定個人識別番号法のうたい文句は、行政の効率化、負担と給付の公正、そして国民の負担軽減及び利便性の向上である(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第1条)。

 

個人番号法では、国民一般には何の義務づけもしていない。
負担軽減を謳う法律が、国民に負担を押しつけるのでは筋違いであるから当然である。

 

したがって、個人番号通知カードを受け取る義務がないことはむろんである。

 

したがって、不在中に届いていれば、取りに行かなくてもよいし、受取拒絶もできる。

受け取らないという選択が賢明かであるが、将来どうしても個人番号が必要になったときには、個人番号の記載のある住民票を取り寄せればよいだけのことであることは、取手市役所が周知してくれた。
受け取らないことによる不利益は何もない。

 

一方で、個人番号通知カードを受け取ってしまうと、次のような義務が発生する。

 

紛失したときは、直ちに役場に届け出をしなければならない。(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律7条6項)

移転転入手続には、個人番号通知カードを提示しなければならない。(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律7条4項)

通知カードに記載された事項に変更がある場合は、14日以内に役場に届け出なければならない。(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律
7条5項)

 

テレビを見ていると、自分の番号の管理は自己責任であるかのような解説もある。
勝手に番号を割り振っておいて、国民に管理責任を負わせるかのような話は、そもそも国民の負担軽減を趣旨とする「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」の精神に反している。

 

前記した規定の違反には、制裁(罰則)規定こそないが、通知カードを受け取ると、義務が生じる構造になっているのであるから受け取らないに越したことはない。

行政は勝手に個人番号を付して、勝手に個人番号を活用するというのであるから、行政が自分で個人番号を確認すればよいだけの話であって、国民がわざわざ行政のお手伝いをしなければならない筋はない。

 

通知カードを受け取らない人が多いと、行政事務が増えるかもしれないが、特定個人識別番号導入で、確実に行政の事務は増える。
行政の事務が増えることを行政が自分からしようとしているのであるから、国民がこれに協力しなければならない筋合いはないのである。

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追記
個人番号制で、IT関連に限らず、随所に巨大な利権が生まれる。
経済動機こそ第二次安倍政権の個人番号制導入の理由だと思っている。
取手市にしろ、厚労省職員の汚職にしろ、企業の実名が出ないのは、不思議である。

マイナンバー汚職 1兆円市場、群がるIT業者 警視庁、続発警戒「癒着断つ」

産経新聞 10月14日(水)7時55分配信

来年1月の運用開始に向けて準備が進むマイナンバー制度をめぐる汚職事件が13日、明らかになった。制度では情報処理システムの大規模な改修や新設が必要で、発注総額は「1兆円規模」とされる。激しい受注合戦が繰り広げられる中、生まれた官業の癒着。新たな“巨大市場”に警視庁の捜査のメスが入った。

 「IT業界にとってのマイナンバーは、建設業界にとっての東京五輪と同じ。巨大な需要をめぐり業界は沸いている」

 政府関係者はそう指摘する。政府は制度導入に絡み、平成29年度までに3千億円弱を情報処理システム関連に投入する見込みだ。民間側のシステム更新も含めると、市場規模は1兆円以上ともいわれる。

 国税庁や総務省などの省庁で、税金などの処理システムがマイナンバーに対応。厚労省では、年金▽ハローワーク▽労災▽医療保険-の4分野がマイナンバーに関与する予定だ。収賄容疑で逮捕された厚労省情報政策担当参事官室室長補佐、中安一幸容疑者(45)は省内で制度への対応を主導していた。

 ただ、特需は業界全体を潤すわけではなく、事業受注は過去のシステムを運用してきた既存の大手業者が有利とされる。「中小企業が中央省庁の大規模案件に参入するのは難しい」と政府関係者は話す。

 ◆官公庁が業績左右

 “中小受難”ともいえる逆風に贈賄側のIT関連会社は挑んで、事業を獲得していた。

 信用調査会社などによると、IT関連会社は資本金3千万円、従業員15人の中小企業だが、医療関係のシステム開発を中心に最盛期の22年9月期には計8億9800万円の事業を受注した。仕事の中心は官公庁。23年は立件対象となった11月の2件の応札だけで売り上げの3割を占めた。27年9月期には2億4100万円を受注したが、発注元は全て官公庁。「官との関係が会社の業績を左右していた」(捜査関係者)

 事件の舞台となった企画競争入札では、業者の出した企画書を発注元が審査して委託先を決める。コストだけでなく、政府の意図に響く提案が求められる。捜査関係者は「政府の意図を知っていれば大手でなくても受注できる。そこに中安容疑者と業者の間に癒着が生まれる素地があった」と指摘する。

 ◆贈賄側の時効成立

 今回の事件は、現金のやり取りから既に4年が経過しており、IT関連会社側は贈賄罪の公訴時効(3年)が成立している。

 供述が重要な証拠となる贈収賄事件では、贈賄側が時効となるケースは立件は困難とされてきた。贈賄側は立件の心配がなく、供述が得やすい半面、供述の信用性は薄れるためだ。

 それでも警視庁が収賄側立件にこだわったのは、今後も多額の発注が見込まれるマイナンバー制度が利権と化し、不正が続発することを牽制(けんせい)するためだ。

 マイナンバー制度は民主党政権が「税と社会保障の一体改革」を掲げたことで正式に始動し、来年1月の導入に向けた準備が進んでいる。捜査関係者は「一罰百戒というわけではないが、新たな制度が新たな不正の温床になることはあってはならない」と話している。

2013年9月24日 (火)

秘密保護法ではなく『国家機密法』と呼ぶべきである 運動のネーミングセンスを問う

なんかしらんけど、これまで『秘密保全法』の反対運動をしてきた方々が最近は、『秘密保護法』あるいは『特定秘密保護法』に反対しているみたいだ。


これでは、私のようなしもじもの者は、『秘密保全法』の他に新しく『秘密保護法』が問題になっているように混乱をきたす。


『秘密保全』という呼称は、プライバシー保護と勘違いされやすく、どちらかと言えば、プラスイメージを喚起しかねなかった。
まして、『特定秘密』の『保護』ともなれば、全くもってプラスイメージである。


どうせ、呼び直すのであれば、この際、ストレートに『国家機密法』ないし『国家秘密法』と呼び直すべきである。


かつて『国民総背番号制』と呼んだものを『マイナンバー制』と呼びなおしたり、どうもこのところ運動が専門分化して、市民に対する工夫を欠いているように思えてならない。
わかったもの同士のサークルである。
内輪の運動になっているから、法案概要が発表されると『保全』を『保護』と言い直すのではないか。


お前はどうかと言われれば、TPPはTPPであって、最もわかりにくい呼称をそのまま使っている。
TPP反対運動こそ、WTOだのNAFTAだの、やれISDだのSPSだのTBTだの、そもそもFTAだのEPAだのからして、浸透しようもない呼称を使い続けている。
TPAだのファーストトラックだの言い出せば、これはマニアの世界であって、専門分化の最たるものである。
顧みて、『秘密保護法』の運動をしている方々は、上記のアルファベットを全部理解してくれているだろうか。
運動をしている人がわかっているほど、世間は分かっていないのである。


だから、お願いである。
せっかく法案の名前を呼び直すであれば、『国家機密法』と呼び直すべきではないか。
たかが名称と思うなかれ。
一般にわかりやすい名称を付けるかどうかは、運動にとって決定的に重要である。

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2013年3月 5日 (火)

ISD条項の罠8,9 要約

それ(投資家対国家訴訟私設裁判所)はあるかもしれないし、ないかもしれない。
それはだれかかもしれないし、だれでもないかもしれない。
それはいつ開かれたかもしれないし、開かれていないかも知れない。
それは命じたかもしれないし、命じないことにしたかもしれない。
それは命じたことに責任を持たないし、命じなかったことに責任を持たない。


それは国に命じるかもしれないし、命じないかもしれない。
それが何を禁じているかは、とても漠然としている。
誇りある国は命令されるのを屈辱的だと考える。
訴えられ、被告とされること自体が屈辱的だと考える。
国はこうして行動指針とする本を持ち変える。
これまで使っていた「けんぽう」という名の本を置き、「かんたいへいようけいざいれんけいきょうてい(てぃーぴーぴー)」という本に。
「けんぽう」には「国民の、国民による、国民のための」と書いてあった。
「かんたいへいようけいざいれんけいきょうてい」には「投資家の、投資家による、投資家のための」と書かれていた。


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ISD条項に基づく裁判を裁く裁判所は、原告である外国投資家と被告である国家が合意した裁判官(通常3人)で構成される私設裁判所である。


裁判は非公開であり、どこで、いつ行われたか基本的にわからず、裁判結果は当事者の同意がなければ公表されない。


私設裁判所は事件ごとに作られ、裁定を出せば職務は完了する。


私設裁判所の裁定は、直接に強執行が可能である。
外国の公式な裁判所の判決は、国内裁判所が承認しなければ、強制執行できないのに比べて、私設裁判所の裁定の効力は極めて強力である。


にも拘わらず、裁判官は誰にも責任を負わない。

国家は提訴されることをおそれるから、出来る限り提訴リスクを回避するために、外国投資家の利益を害さないことを第一に考えて政策決定するようになる。


投資家の私設裁判所は、統治の権原と権威を国民に求める自己統治を意味する国民主権原理とは相容れない制度である。
投資家による統治を認めるもので、国民主権から外国投資家主権に国家を組み替えるものである。

2013年3月 3日 (日)

ISD条項の罠9 根拠なき楽観論を垂れ流す朝日・メディア

3月1日付ブログで述べたとおり、投資家対国家訴訟の私設裁判所の仕組みは、あまりにも不備である。
非公開秘密裁判では、投資家利益を優先する国家が、外国投資家となれ合い裁判するのを防ぐ仕組みもないだろう。
にも拘わらず、私設裁判所の裁定には強制執行ができるという国内法的効力がストレートに認められており、国家の抵抗を許さない極めて強力な法的効果が付与されている。


朝日は、これまで日本は13の自由貿易協定を結びフィリピンを除く自由貿易協定にはISD条項が入っているが、日本は訴えられたことはない、また仮に訴えられたとしても投資家が勝訴するためには高いハードルがあるとし、恰もISD条項は恐れる必要がないかのように解説している。

ISD条項は投資協定にも含まれるから、我が国は合計約30件のISD条項を締結している。訴えられたことがないのも事実だ。
しかし、過去の実績が参考にならないのは米韓FTAの締結交渉に際して、日本よりはるかに多くの自由貿易協定・投資協定を締結してきた韓国法務部(以下、「法務省」という)が米韓FTAに限っては、ISD条項の弊害について真剣に検討した形跡を見ても明らかだろう。
投資家の勝訴率が必ずしも高くないというのもその通りだが、だからと言って、ISD条項が無害であるかのように解説するのは、報道機関としての良心が問われる。


韓国法務省が米韓FTAの交渉過程において、ISD条項の危険性について、極めて詳細で真剣な検討を行い、ISD条項が立法、行政、司法にかかるあらゆる政府の作為・不作為を提訴の対象とするものであり、超憲法的な事態を引き起こす極めて危険なものであると結論したことはこれまで何度も紹介してきたとおりだ。
韓国政府が、ISD条項の適用を回避するために必死の努力を傾け、にも拘わらず、敗北的な結果に終わったことはすでに何度も紹介したとおりだ。


韓国政府は、米韓FTAの交渉過程において、米豪FTAにはISD条項が含まれていないことを理由に先進国間の米韓FTAには、ISD条項を採用しないことを求めた。しかし、アメリカから、韓国は英米法圏の国ではないとして一蹴された経過も明らかになっている(韓国は日本と同じく大陸法圏の国である)。


TPPを推進する立場であると思われる小寺彰東京大学大学院教授も、先進国間のISD条項については否定的であり、先進国との間でISD条項を締結することについて強い警鐘を発している(「投資協定仲裁の新たな展開とその意義」22頁)。


長く投資協定のほとんどが先進国・途上国間で結ばれた。投資はおもに先進国から途上国に流れるために、先進国がこの手続で訴えられることはなく、本稿のような問題はあまり意識されなかった。しかし、米国・カナダという先進国関係にも適用されるNAFTAや、日韓投資協定のような先進国間の投資協定が生まれ、また途上国から先進国への投資も行われるようになると- Mazzini 事件ではチリの投資家のスペインへの投資が問題化した-、先進国に対して投資協定仲裁が発動され、投資協定仲裁の隠れた問題が浮かび上がってきたのである。

投資協定中に投資協定仲裁を置くか否かは、上記の諸要因や自国投資家の態度(正式の紛争処理を好むか否か等)や自国の事情(投資協定仲裁への対応可能性等)を総合的に考慮して決定するほかないと言えよう。投資協定である以上、投資協定仲裁は置かなければならないと考えるような、教条的かつ短絡的な態度だけは取るべきではない。


韓国法務省は、朝日新聞に勝るとも劣らぬエリート集団である。その集団が組織を上げて検討した結果が、ISD条項は国家のあり方に重大な影響を及ぼすと結論した。


現実にも韓国版エコカー支援制度が、米韓FTAによる訴訟を懸念した結果、先送りされた。アメリカ車は概して排ガスが多いので、エコカー支援制度は、アメリカ車を不利に扱うものだとの訴訟を念頭に置いて、延期を決めたのだ。


すでに明らかになっていることを朝日は、なぜ無視して、根拠なき楽観をばらまくのか。
マチベンの言うことが信じられなければ、韓国政府に取材すればいいではないか。


小寺氏も指摘するとおり、NAFTAで先進国間で初めてISD条項が結ばれた結果、ISD訴訟は激増の一途をたどった。
アメリカとのISD条項が、濫訴を招くことは必至だ。
訴訟を起こされて気持ちがいいものでないのは、国家も同じだろう。
被告にされるということ自体が屈辱的な思いを抱かせることもある。まして、億ドル単位の巨額訴訟が相次いで起こされている。
勢い、国家は、訴訟リスクをできるだけ軽減しようと努力することになる。
韓国法務省が萎縮効果と呼ぶ事態は避けることができない。
韓国版エコカー支援制度も、裁判になっても勝訴するかもしれない。
しかし、提訴されること自体で、莫大な費用と労力を強いられる。
国家にしてみれば、訴訟リスクを回避するのが賢明な選択である。


しかも、投資家対国家紛争を裁く私設裁判所制度は、極めて不備である。途上国の司法制度が「不備」であるという以上に「不備」であると言ってよいだろう。一国の法制度のあり方に致命的な影響を及ぼすにも拘わらず、制度設計は驚くほど杜撰だ。


なぜ、投資家対国家紛争の私設裁判所はこれほどに不備なのか。


最も大きな理由は、投資家対国家紛争解決手続が、もともと先進国と途上国の間の協定を前提として、作られたという由来にあると思われる。


韓国法務部の検討結果が示す通り、実際上、途上国が先進国に投資し、投資が害されたことを理由に先進国を理由に賠償を求めることはまず考えられなかった。
先進国と途上国との間のISD条項は、形式上、両者に相互的に適用される形式ではあるが、実際上、途上国政府に対してのみに適用される制度として設計されてきた。
NAFTAでも45件の訴訟中、メキシコ企業が提訴したのは1件にとどまり、その他の提訴はすべてアメリカとカナダの企業によって提訴されている。
90件に及ぶ投資協定を有する韓国も、米韓FTAを締結するまで提訴されたことはなかった(但し、韓国政府が提訴された最初の例である2012年ローンスター事件は、韓-ベルギー投資協定に基づくものであることに注意が必要だ)。


要するに、これまでISD条項は、もっぱら先進国企業が途上国政府を訴えるための道具だったということだ。訴えられる側の立場でものを考えるということがなかったから、訴える側の便宜性や機動性のみを考慮した杜撰な制度になっているのだ。
その他にも理由はあるが、これが最も大きな理由だと考えられる。
もっぱら足を踏む側に立って考えていたから、足を踏まれる側の痛みを考慮しなかった、これが、私設裁判所制度の不備が長く問題にされなかった理由だ。


践まれる立場に立てば、たまらないのが、杜撰な投資家対国家紛争の私設裁判所制度(ISD条項)なのである。

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2013年3月 1日 (金)

ISD条項の罠8 朝日の解説に寄せて1

2月27日付朝日新聞が「アベノミクス」シリーズの第33回でISD条項を採り上げている。


この程度の知識しかないのにTPPを推進しているのか、知っていて、この程度のことしか明らかにしないのかわからないが、著しく浅薄な記事である。議論の密度は、やや薄くなるが、誤った認識を放置することには害が多いので、急ぎ2回に分けて朝日の解説の問題点を指摘する。



何と言っても、間違いがあるのは解せない

これを見ると、国連の機関にも訴えることができるという趣旨の記載がある。
ISD条項に基づく訴えを受理する国連の機関などは存在しない。
国連は仲裁手続のルールを決めているだけである(ルールを決定した国連の国際商取引法委員会の頭文字をとってUNCITRALルールと呼ばれる)。


朝日が国連の機関に提訴できるように説明しているのは間違いだ。


UNCITRALルールによる提訴の場合は、当事者がこのルールに則って、個別に裁判官を決めて、裁判を進める。


国連は何ら裁判に関与しない。


最も誤解を招きやすいのは、この記事を読むと、ISD訴訟について、あたかも常設の国際裁判所が存在するかのように読めることだろう。
この点は、根本的に違う。


仲裁というのは、予め、第三者が示す判断にしたがう合意に基づき、その第三者の判断に拘束力を持たせる制度である。


常設の仲裁制度もあり得るが、ISDは違う。
事件ごとに原告である外国投資家と被告国家が合意して、第三者(仲裁委員。「裁判官」と考えた方がわかりやすい)を選任する。
個別事件ごとに設けられる裁判所があるだけである。


わかりやすいイメージで言えば、両当事者が裁判官を決めて、その裁判官の下で、裁判を行い、その結果にしたがうというものだ。
私設裁判所、民間法廷といった方がわかりやすいだろう。
英語では、Private Tribunal(民間法廷)等と表記されるので、常設の公的な裁判所があるかのような誤解を招く可能性はないが、朝日の解説は誤訳に近い説明の仕方である。


世界銀行傘下の投資紛争解決国際センターに提訴する場合も同じである。
紛争当事者が合意でどの都度、裁判官を決める。

国際センターは、事務的な手助けをするだけであり、内容には関与しない。


要するに、当事者がその事件限りの判断を求めるために、特別に裁判所を作って、そこで裁判をするというものだ。

裁判官は非常勤である。

審理は非公開である。


結果を公開するかどうかも当事者の意思にしたがう。

非公開の上、一審限りの手続である。不服申立は基本的にできない。


裁決をくだしてしまえば、それで裁判所の任務は終了する。


責任の所在は甚だしく不分明である。
普通に考える限り、極めて頼りない制度である。


また、ISDS条項は、国際法の常識から考えれば、信じられないほど強力な効果を持つ。
「ISD条項の罠2」で述べたとおり、この民間法廷が下した裁決は、強制力がある。
通常、外国の裁判所が下した判決を国内で強制執行しようとすると、再度、国内法秩序との整合性等の観点から当該国の裁判所が判決の効力を審理する。
外国判決の効力を国内裁判所が承認することによって、自国と矛盾する法原理の侵入を排除する仕組みになっている。
ISDによる民間法廷の裁決には、このような手続はなく、強制執行が可能になる。
民間法廷の判断が、国内法秩序を飛び越えて、直ちに国内法的な強制力を持つ。
極めて特異な制度といわなければならない。


民間法廷の裁判官が、どうしてそのような強大な権力を有することになるのか。


何より、民間法廷の裁判官は、国民に対して何らの責任も負わず、たまたまその事件について選任された一個人(通常3人の合議になる)に過ぎない。
それなのに、一国の規制の合法、違法を判断し、規制を左右しかねない権力を持つのである。
こうした事態は、近現代憲法の民主主義原理や国民主権の原理からは到底説明できない。


ISD条項が体現するのは、端的に外国投資家主権と説明するしかないものである。

ISD条項は、国民主権国家を外国投資家主権に書き変えてしまうのである。

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2013年2月25日 (月)

TPPと自動車安全基準

安倍首相は、底なし沼に踏み込みつつある。
コメ関税と引き換えに、日本を丸ごと外資に売り渡すTPPへの参加を表明する段取りという。


例によって、大手メディアは歓迎一色だ。


しかし、提灯持ち記事を書くメディアの中でも見逃せない情報はある。
アメリカは、コメ関税と引き換えに、自動車の安全基準の緩和を求めているという。


日本政府が義務づけている自動車の安全基準について、米国などからの輸入車に対しては基準をゆるめるよう求めた。(2月24日朝日新聞)


自動車の安全基準・環境基準の緩和は、アメリカが年来、日本に突きつけている課題で、日本側が珍しく持ちこたえてきた課題だ。
日本は、「一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束することを求められるものではない」(米韓FTAでもコメ関税は維持されている)というおまじないのような一言と引き換えに何とか守ってきた安全基準やおそらく環境基準をアメ車並みにすることを認めるように釘をさされた。出足早々の失態である。
メディアは当然、この交渉は大失態だったことを知っているが、それを覆い隠す「歓迎」を演出してごまかしている。


まず、TPPが多国間交渉だということが、認識されていない。
アメリカ車だけに輸入の特例を設けて優遇するということが許されないのは多国間交渉の当然の前提である。
したがって、少なくとも、日本は、これを受け入れることによって、TPP加盟国からの輸入車の安全基準・環境基準を全体としてアメリカ車並みに緩和することを認めざるを得なくなる。


これは、自由貿易協定では、最恵国待遇が大原則となっているからだ。
最恵国待遇とは、相手国を現在及び将来にわたって、最も有利に待遇される第3国と同等の待遇を与えるという原則である。


TPPという同一協定の中で参加国を差別するのは論外であるのはむろん、TPPで輸入車の基準を緩和すれば、日本がこれまで締結してきた自由貿易協定各国に対しても、アメリカ自動車並みの安全基準・環境基準緩和を承認しなければならない。
国内メーカーだけに厳しい基準を適用するわけにはいかないから、結局、国内の自動車安全基準・環境基準をアメリカ自動車に合わせたものに緩和しなければならなくなる。
結果として、国際的にも国内的にも日本車の優位性は失われることになろう。


従来、国土交通省は、日本の安全・環境基準を国際標準化することを成長戦略の重要な柱の一つとしていたようである(国土交通省平成22年11月「自動車環境・安全基準にの国際標準化に係る現状と方向性」)。


環境分野や製品安全問題等にかかる日本の技術や規制・基準・規格を、アジア諸国等とも共同で国際標準化する作業を行い、国際社会へ発信・提案することなどにより、アジア諸国の成長と「安全・安心」の普及を実現しつつ、日本企業がより活動しやすい環境を作り出す。また、スマートグリッド、燃料電池、電気自動車など日本が技術的優位性を有している分野においては、特に戦略的な国際標準化作業を早急に進める。 


アメリカの要求にしたがえば、日本車の環境・安全基準を国際標準化するなどという目論見は、不可能になる。
安倍政権は、TPP交渉の鳥羽口にも立たない間に、すでに、自国の国家戦略の一つを失う可能性を犯すという大失態を演じている。


国民を騙すために「聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPPには参加しない」等として、TPPの最大の問題がコメの関税の問題であるかのように主張して問題をすり替え、ことの本質が、自国の国内規制の撤廃にあることを覆い隠すから、このようなことが生まれる。


メディアの罪もあまりにも大きい。
何度でも繰り返すが、TPPについて、正確な情報の提供に基づく国民的議論が必要である。


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