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カテゴリー「TPP」の343件の記事

2019年4月12日 (金)

WTO 日本は世界と戦って敗れた  安倍政権の国際感覚の欠如と失政

韓国が採った福島県を中心とした東北・関東地方産の水産物の輸入制限措置を、日本政府が2015820日、WTOの紛争解決機関に対して、提訴したケースについて、411日、WTOの上級委員会は、韓国の措置を違法とした一審パネルが下した判断を覆し、日本の請求を斥け、日本の敗訴が確定した。

 

 

私はこの決定を歓迎する。

WTOもたまにはまともな判断をするという印象である。

このことは日韓の立場を逆にして考えてみれば、容易に理解できるはずだ。日韓の立場が逆だったら、日本政府が韓国の原発事故の甚大さとその後の措置の拙劣さを踏まえて国民の生命、健康、食の安全を守るために採った措置が違法とされることに多くの日本人は納得できないだろう。

 

現時点では判断理由は報道されていないが、この決定は、WTOの基本的ルールであるSPSルール(食の安全より貿易の自由を優先させ、輸入制限措置を採るためには有害であることの「十分な科学的証拠を示す」ことを求める)に風穴を開ける可能性があるように感じている。

そうであれば、有害性が「十分な科学的証拠」をもって明らかにはされていない遺伝子組換え食品に対しても、しかるべき政府は、WTO紛争に巻き込まれることを恐れず、国民の不安に応えて、輸入禁止措置を採ることが可能になるだろう。

 

 

理由の詳細は報道されておらず、内容を検討する時間的ゆとりがないので、内容にわたる部分については印象を述べるにとどめておく。

とくにブログを更新する必要を感じたのは、このケースがまるで日本と韓国の間でのみ争われ、日本が敗訴したかのように報じられている点に強い懸念を覚えるからだ。

ひどい偏向である。

この偏向は、WTOで争われた問題の本質の理解にも関わるだろう。

 

 

WTOの紛争解決制度には、第三国の参加制度があり、利害関係を有する第三国は、他国間の紛争解決手続に参加することができる。

紛争解決手続で争われているのと同様の規制をしている国は、他の国の間の紛争であっても、自国の規制の適法性を認めさせるべく、他国間の紛争解決手続に参加できるようになっているのである。

 

 

韓国と同様に日本の水産物について放射性物質のおそれから輸入制限をかけている国は、日本経済新聞の記事によれば、現在22カ国であるとのことである。

輸入規制をかけている地域、魚種などはそれぞれ広狭があるが、たとえば米国などは、韓国とほぼ同範囲の広範囲の輸入規制をかけている。

したがって、米国は第三国として、この手続に参加している。

 

 

米国と同様に、このケースに参加した第三国には、次のようなメンバーが並んでいる。

 

 

EU、中国、ロシア、インド、台湾、カナダ、ブラジル、ニュージーランド、グアテマラ、ノルウェー。

 

 

米国、EU、中国、ロシア、インドと並べてみれば、日本は、「世界と戦った」と言ってよい。

しかも、日本は、食の安全を守るために放射性物質を含む懸念がある水産物の輸入を制限した他国政府の措置を解除させて、安全が懸念される食品を輸入するように求めて戦ったのである。

そして、日本は世界と戦って、敗れたのである。
世界のために歓迎すべきだろう。

 

 

マスコミはこの事実を徹底して無視するようだ。まるで国家機密並みである。

 

 

安倍政権下の国際裁判で日本は敗訴を重ねている。

国民は、あたかも日本の敗北であるかのように受け止め、安倍政権が国際感覚からかけ離れた独善的な政府であることに責任を求めようとしない。

 

 

確認しておきたい。

今回のWTO紛争解決制度における敗訴は、安倍政権の傲慢がもたらした失政であり、安倍政権の敗訴なのである。

 

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2019年1月30日 (水)

なぜ韓国は日本の言うことを聞かないのか

総統は相当にお腹立ちだ。

「国際法上あり得ない判断」「暴挙」と高圧的に威嚇すれば、当然に言うことを聞くはずの韓国政府が言うことを聞かない。

あまつさえ、「日本政府はもう少し謙虚になるべきだ」等と余裕の上から目線でカウンターを食らわされた。

そもそも、大統領は、年頭会見で徴用工判決について、触れるつもりすらなかった。

無理矢理、NHK記者の質問を割り込ませた末の、このざまだ。

 

 

年末には「レーダー照射事件」も起きた。

竹島の帰属を棚上げにして暫定水域を設けた日韓漁業協定が2016年に失効している。従来の暫定水域は双方にとって排他的経済水域となった。

双方にとって排他的経済水域となったこの海域とおぼしき場所で、あろうことか「火器管制レーダー」が自衛隊の哨戒機に照射されたと断固、抗議したにも拘わらず、韓国政府はこの「明白な事実」を認めず、このため日本政府として実務者協議をした上で、直ちに協議の打ち切りをしてせっかく問題をうやむやにしてやろうとした。
にも拘わらず、今度は東シナ海で自衛隊機による威嚇飛行がなされたと韓国政府が抗議してくる有様だ。
どうかしている。

 

 

これまでであれば、日韓の対立がここまで激化することはあり得なかった。

5年前には、徴用工に関する差戻上告審にあたる大法院判決をするなと圧力を加えれば、直ぐ出てもおかしくない大法院判決をいくらでも遅らせることができたではないか。

3年前には、10億円くれてやることで、最大の懸案である「慰安婦」問題にも「不可逆的に」けりを付けることができたではないか。

文政権はおかしい。

というのが島国における、もっぱらの世評である。

 

 

日本は、韓国非難の嵐で、世論沸騰であるが、韓国は冷静なものである。

これまでであれば、日韓で、仮に感情的対立が生じたとしても、米国が無理矢理でも収めた筈が、トランプの米国は日韓対立には、ほとんど関心がないようで、コリアハンドラーもジャパンハンドラーも力量を発揮できない。

かくして、受け流し、場合によっては公然と刃向かう韓国に対して日本政府は手を焼いている。

 

 

あろうことか、IMFまで反日な資料を発表している。

世界経済ネタ帳からデータを拝借して現在の日本の宗主国である米国、かつての日本の植民地である台湾、韓国の1人当たりGDP(購買力平価)をグラフ化してみたら、世界に冠たる日本が、とうの昔に、植民地台湾に追い抜かれている(台湾は寛大にも日本車両のフェイルセーフの設計ミスも原因となった新幹線事故を、台湾鉄道の車両検査ミスにすり替えてくれたらしい)。

5年後にはあの植民地韓国にも追い抜かれると予測している。

怪しからん事態である。

Gdpkoubairyokuheika

 

日本は、史上最長の景気拡大が続いている。

総統は、2016年末に、GDPデータを1994年に遡って、算定方法を変え、第二次安倍政権以降の2103年以降のGDPデータ算定基礎に、③「その他」「等」の項目を加えさせて大幅にかさ上げさせた(明石順平『アベノミクスによろしく』集英社インターナショナル。IWJインタビュー)。
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そこまでして、史上最長の景気拡大を実現したにも拘わらず、すでに国民の生活レベルは台湾のはるか後塵を拝し、5年後には韓国にすら抜かれるという。

このようなデータねつ造をするIMFは反日組織以外の何物でもあり得ない。

日本はIWCだけでなく、粉飾データで韓国の肩を持つIMFからも脱退すべきだ。

 

 

韓国の最低賃金が日本を上回っている?
最低賃金法も反日である。

Saiteitinginkokusaihikaku

デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論』東洋経済新報社

 

米国は何もしてくれない。

日本は、TPP11にかこつけて、米国がお望みの著作権保護期間を50年から70年に延長するTPP11関連法を成立させた。

米国が離脱したTPPでは、著作権保護期間の延長は、甚だ不評で、残った11カ国では延長条項は凍結された。

そもそも、著作権の専門家で、変化のめまぐるしい現代において、著作権保護期間を延長する等ということに賛成する意見は皆無に等しい。

だから、関連法で、著作権保護期間を延長する必要など毛頭なかった。

だけれども、にも拘わらず、米国のかねてからの対日要求であったので、TPP11の関連法で、恰もTPP11に必要な法律の振りをして著作権保護期間を延長してやった。

何より、外国投資家(米国投資家)の意見を規制改革推進会議に諮って、同会議の決定に政府は従うとする日米二国間合意も、米国のTPP離脱にも拘わらず、日本政府自らの政策であるから有効だと、政府のコントロール権も米国資本に与えてやっている。

にも拘わらず、米国は何もしてくれない。

 

 

そもそもが、米朝会談などというくだらないパフォーマンスは、寝耳に水で、何の相談もなく勝手に決めたことだ。

文在寅は、これ幸いに北朝鮮との親密ぶりをアピールし続けている。

北朝鮮には豊富な天然資源があるという。

資本の自由な行き来が制限されている地域は、もはや地球上、ほとんどない。
北朝鮮は残された数少ない資本のフロンティアである。

このまま南北宥和が進めば、段階的に朝鮮半島の経済一体化を進めることは可能だ。

EUのような形態の国家連合(但し、人権規定はない)は容易だろう。

ということはつまり、IMFは、韓国のGDPをさらに上方に改ざんする可能性すらあるということだ。

IMFも米国も反日である。

 

 

日本経済界は、ただひたすら賃金を下げて、利益を上げて配当率を高め外資のご機嫌を取り、内部留保を貯め込むことを基本的経営戦略としている。
GDPを伸ばすことが出来ないので、賃金を下げることで利益を拡大しようとする、愛国企業家にふさわしい優れた経営戦略だ。
Keieisenryaku
前掲『新・生産性立国論』

何十年もより安価な労働力を求めて賃下げを続けた結果、低賃金で働く労働者が不足するようになった。
よって、安価な使い捨て労働力のアジアからの移入拡大を官邸に計らわせた。

官邸の顔を立てるために、韓国に対して、断固たる姿勢を貫く官邸と緊密に連携しながら、徴用工判決に対処するのである。

結果、傀儡国家満州の経営をルーツとする総統と、朝鮮人徴用工の血と汗で儲けた鉱山を経営した「成功体験」をルーツに持つ副総統の支配する「大日本帝国」のメンツを立てて、朝鮮半島の経済的利益を捨てるのである。

これこそが正しい愛国のあり方であり、反日に対する決然たる対応である。
戦前版技能実習生で儲けた日本の愛国企業家のあるべき姿がここにある。

 

 

むろん、日本政府には、中国排除条項による中国と米国の二者択一を迫る日米貿易協定を拒否する選択肢はない。

なぜなら反日の米国の意を先回りしてでも、実現するのが、日本の支配者たる不可欠の要件であり、愛国を貫くための最低限の前提条件だからだ。

 

超絶反日の韓国、北朝鮮、中国などの意向に構っていては、正しい愛国とは言えないのである。

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米国覇権が後退し、朝鮮半島の冷戦構造が崩壊すれば、朝鮮半島における民族統一が促進されるのは当然である。
他方、米国覇権の後退は、日本では、大日本帝国支配勢力による支配が公然と復活する結果をもたらした。
GHQが対米服従を条件に使い慣らしてきた連中が米国覇権が後退する中、言いたい放題、やりたい放題の有様だ。
国民自身による戦争責任の断罪をしなかった付けを払わされているなどつゆほども思わず、国民は植民地主義丸出しで、韓国を非難して溜飲を下げている。
植民主義の噴出と、対米隷属の深化・内面化が、とりあえず、米国覇権の後退が日本にもたらしているものだ。
韓国には希望があるが、日本には「停滞の四半世紀」が「凋落の世紀」の序章となる予感しかない。

2018年12月 8日 (土)

外国人労務者本土移入の件 可決成立  オワコンジャパンを乗り越えて、新たな構想を持とう

77年目の太平洋戦争開戦の日、国会は死んだ。
この日、未明、外国労働者移入の件、小規模漁業者排斥法が成立し、国会は息の根を止められた。
森ゆうこ議員の参議院農林水産委員会 堂故 茂 委員長 解任決議案に関する趣旨説明は、国会がお亡くなりなる経緯を語ってあまりある。歴史に刻まれる名演説である。

「自民党のみなさんにひとつ言いたいよ。主要農作物種子法や農協改革法や今回の漁業法、入管法改正、みんなね、ほんとうは私も反対だと、酷い法案だと、言ってくるんですよ。今回の漁業法だって『ほんとうは反対だ』って言ってきた人、いるでしょう? 
 だったら反対しなさいよ! だったらこんなでたらめな法案、出させるな! いままでの自由民主党なら、今回の漁業法や入管法改正案なんていう、こんなでたらめな法案を、自民党が出させませんでしたよ! どうしちゃったんだ自民党!」
Moriyuuko

「「今だけ、金だけ、自分だけ、安倍総理のお友達だけ」。強欲の市場原理万能主義の荒波に国民を放り込む法案が問答無用で次々に成立する中、本院農林水産委員会では、70年ぶりの大改正となる漁業法改正案の審議が臨時国会の最終盤である今週から始まりました。漁業を生業として、浜で暮らしながら、資源を守り、我が国の水産業の発展と食料安全保障に貢献するだけではなく、3万3,889kmに及ぶ海岸線に存在する集落を維持することで、国境を監視するという重要な役割を担う漁業者と水産業を支えてきた漁業法を、全く別の新しい法律に作り変える法案であり、全国の漁業共同組合や現場の漁師さんたちから、現場を視察して漁業者の意見を聞いてほしい、少なくとも地方公聴会を開くべきだ、臨時国会での拙速な改正に反対などの意見書が次々に送られて来ています。 この短い臨時国会で成立させようなどということは、そもそも無理な話であり、その無理を押し通そうとしたために、誰が見ても瑕疵があるといわざるを得ない委員会運営が昨日行われたのです。」

わすれてはならないのは、9条の改憲を先取りした安倍政権は、緊急事態条項の先取りもしたということだ。
外国労働者移入拡大法 15時間
水道法改正          8時間
日本EU経済連携協定承認 4時間
という衆議院通過までの「審議時間」は、審議の内容を問うまでもなく、安倍政権においては、「閣議決定」すなわち法律制定を意味することをあますことなく示している。
法律と同等の効力を有する政令を制定できるとする緊急事態条項がすでに適用されていると言ってよい。

少なくとも、存在自体に意味がない与党議員からは、歳費請求権を剥奪すべきである。

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「華人労務者内地移入の件」が閣議決定されたのは1942年11月27日。
事実上、太平洋戦争の敗北が決定したミッドウェー海戦から半年、時期から見てもとうの昔に日本は破綻していた。

閣議決定では「衣食住及び賃金、家族送金、持ち帰りの金等の給与待遇等についても万全を期するごとく考慮せり」と美辞麗句を並べて言い訳をしていた。
よく似ている。

経済界の著しい凋落、敗退の様子は当時の日本とそっくりに見える。
到底、オリンピックなんかまともにできる状態ではない。
要するに「日本は凄い」オワコン状態なんだ。

  だから、もう次の時代の構想を我々は持つべきなんだ。


欲望をむき出しにして低賃金を求めて、人権を蹂躙する資本に対する答えは、とりあえず、法人税減税の原資となってきた、消費税廃止、富裕層増税の開始である。
欲望むき出しで金儲けしたい者には、とっとと日本から出て行ってもらえばよい。
20年にわたりゼロ成長などという世界に例のない破綻経済を運営してきた無能な財界もとっとと失せればよい。

Meimokugdpsuiihikaku

はただ、の丈に合った幸せな生活がほしいだけだ。


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フランスではすでに次の構想への民衆のたたかいが始まっている。
http://www.labornetjp.org/news/2018/1207pariE5fe5264691242faa1c569a6e9d45f5a

最初に「ホームレス0人」を掲げ、富裕税の復活、所得税の累進性を高める、最低賃金を手取り1300€(現在のレートで約167000円)に引き上げ(現在1154€)、年金増額、公共サービスの充実化(ガス・電力は公共サービスに戻す)、緊縮政策反対、正規雇用の増加など、後退した社会政策を復活・強化させる内容が多く、「屈服しないフランス」の政策綱領「共通の未来」と重なるものも多い。また、極右の要素がメディアで強調されたのに反して、この綱領には亡命志願者の待遇改善が記され、環境政策として住居の保温改善、除草剤グリフォサート禁止などもあげられている。運動参加者には自営業や零細企業の経営者も含まれるため、雇用者の社会保障分担金の削減、小売業保護などもある。そして、民主主義に関するものでは国民・住民投票をもっと取り入れる、元老院の廃止、比例制の導入、議員の報酬を所得中央値にするなど。その他にもさまざまな要求が、フランス大革命のときの陳述書のように発せられた。

前回のコラムで、この運動が国粋的な極右のポピュリズム(国民連合)にとりこまれる懸念を表明する人々がいると書いたが、メディアなどで意見を言う「黄色いベスト」たちはみな、政党や組合などの組織やカリスマ的リーダーに指導されない自主独立性を強調する。「マクロン、きみはもう終わりだ。民衆は路上に出た」などのスローガンをとおして、自らを民衆と位置づける人々の政治意識が、運動が続く中で形成されていくのが見てとれる。

2018年11月20日 (火)

日本製造業の敗北  技能実習生問題から始まる連続ツイートが恐ろしすぎる件((((;゜Д゜)))))))

Gongitune

日産カルロス・ゴーン事件が世間を揺るがす中、多分、外国労働者移入法は、強い批判を浴びることなく成立していくという仕組みなのだろう。さらに影になった水道法改悪も、市場法の改悪も、漁業法の改悪も滞りなく成立していくのだろう。

日本車両の設計ミスが事故原因ではないかが疑われている台湾新幹線事故は明日で1ヶ月を迎える。

日産事件を幸い、日本メーカーによるこの世紀の大事故も、日本人の頭から都合よく消え去るに違いない。

悲劇の局面では、「三歩歩けば忘れる」メンタリティほど強靱なものはあるまい。

 

などと嘆きながら、こんなツイートを見つけた。

 

 

引用されているのはこの記事だ。

 

 

「後輩のための犠牲なら光栄」日立が解雇の実習生、帰国

前川浩之、嶋田圭一郎

朝日新聞201811181905

 

 日立製作所笠戸事業所(山口県下松市)に実習途中で解雇されたフィリピン人技能実習生99人のうち20人が18日、帰国した。「単純作業ばかりで、本来の技能を学べない」と国の監督機関や日立に訴えたが、国側から実習が適正かどうかの判断が示される前に、在留期限を迎えた。外国人労働者受け入れ拡大の議論が熱を帯びる中、実習生は「私たちの権利が認められる制度で働きたい」と注文をつける。

 

 実習生「技能学べぬ」工場、日立会長「とりあえず解雇」

 実習生たちは18日午後、福岡空港(福岡市)を発った。見送る支援者らに、笑顔で手を振った。

 帰国した20人は配電盤や制御盤を作る「電気機器組み立て」を学ぶために来日した。しかし、ある実習生(24)は仕事の内容を、鉄道車両に使うワイヤや電線をひたすら引っ張る単純作業だったと話す。

 

 

技能を取得できるとの契約で来日して日立の事業所で働いたが、単純労働ばかりで技能は身につかず、技能実習法違反で国が処分を検討している中、日立は実習生から出された実習更新の申出を拒絶したため、在留期限が来て在留資格を喪失し、日立に解雇されて帰国を強いられる。

 

 

ひどい話だ。

5年期限の外国出身労働者移入策の元、日本の企業(大企業だけではない、中小の企業ですら)が外国人労働者に、どういう仕打ちをしようとしているのかを見せつける事件だ。

 

 

しかし、実は、問題はさらに記事が触れない闇の奥にあると、実習生問題に詳しいK・S氏は語る(マチベン独自取材だよ~ん)。

 

 

技能実習法では、実習生が希望する場合は新たな受け入れ先を探すことになっており、その間の待遇も保障されるはずだとのこと。
となれば、日立は法の無知に乗じて『物言う外国人』である実習生を厄介払いしたことになるだろう。

さらに、日立ほどの大企業が人材仲介業者を介して実習生を受け入れていることがおかしい。トヨタの例では、海外現地法人を通じて直接、実習生を受け入れる。日立ほどの大企業が、現地法人ではなく、わざわざ技能実習法違反を疑われるような仲介業者を介していること自体に疑念がある、と。
となれば、どこかに汚れたお金のやりとりが絡んでいるような、ものすごくいやなにおいが立ちこめてるってことか。

 

 

寄り道であった。

本題は、この連続ツイートの先にある。

 

 

ひどい実習生の待遇を告発する連続ツイートに、途中から経営コンサルタントの別の男性のツイートが絡む。

 

 

労働力人口の減少と企業の海外移転が、日本国内の技術の空洞化を招いている。
技能を教えることができるような労働者が定年かリストラでいなくなっている。既に日本には、技能を学ぶような環境がなくなっている、とショッキングな話が出る。

日立の当該事業所は、鉄道車両の生産拠点だが、鉄道車両の受注は減少している。川重も撤退を検討、三菱はリニアモーターの生産を断念。そして日本車両は台湾新幹線の大事故。

 

さらに話は続く。

 

 

海外では、鉄道・車両製造業者が桁違いに大きな合併を計画し、日本企業は5社もあり、ブランド力、技術力で太刀打ちできない、このままでは日本の鉄道製造業は立ちゆかない、と。

 

 

最後には、線路の規格統一の話が出てくる。中国の広大な鉄道網は、統一規格によって成功している、と。標準軌と狭軌がある日本は統一できるのか、と。

(ちなみに中国の時速300キロの高速鉄道網の長さは、世界の高速鉄道の総延長に匹敵すると先日、岩上安身さんから教えてもらった。日本企業など、太刀打ちできる相手ではない)

最後の話は、VHSとベータ、iモードとiPhone等、規格競争でことごとく負けた歴史につながる話だから、別に今に始まった話ではないが、それ以前の話は、衝撃的だ。

(ちなみに、北はサハリンから南は朝鮮半島から通じて日本をユーラシア大陸に結ぶ鉄道構想を前提にすれば、リニアなどという現実性も有効性もなく有害な代物に金をかけるより、標準軌への統一を急げというのは多分、一理ある)

日本製造業は、すでに人材が蒸発し、技術を喪失しているという指摘は極めて重大だ。

すでに日本製造業は敗北過程に入っている、というか、「お前は、死んでいる」のかもしれない。

 

 

再建日産がどれほどの従業員と下請け企業に苦渋を味わわせ、犠牲を強いたか、人を人として扱わない、その反人道的とすらいえる行いを、我々は経営者の手腕として讃えたか(「コストカッター」等という呼称は経済に疎いマチベンは初めて聞いた)。
そして、なお、人壊しは続く。海外から騙して移入してでも労働者を壊そうとする。
徴用工の昔とあまりにも酷似した時代に我々はいる。

 

 

かつて日本企業は、「人は城」と、働く労働者を強みにしたのではなかったか。
やがて、多分、バブルの末期頃から、そして竹中平蔵が派遣拡大を国策として勧め出した、そんな頃から。
グローバル化の波に飲まれた日本企業は、人をモノとしか扱わなくなった。
その果てに隠蔽される台湾新幹線事故と、日産カルロス・ゴーン事件はある。

しかしそれでもなお、まだ戦い続ける労働者がいる限りは、弁護士という者は、その闘いとともにいなければならないのだと、T弁護士は語った。メモメモ

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なお、カルロス・ゴーンが違憲の疑いが指摘されてきた司法取引の恰好の餌食になったことに注意したい。日本の司法取引は、米国のような自身の罪を認める代わりに刑を軽くしてもらうというものとは異なる。他の者の罪を告白することによって自らの罪を免責、軽減する世界的に見ても珍しいものだ。
カルロス・ゴーン事件は、司法取引に対する抵抗感を一掃するのに恰好の材料なのだ。

裏側に隠れた、司法取引制度の本来の狙いは、いうまでもなく権力に不都合なさまざまな集団における内部通報奨励制度だ。市民運動を監視し、密告を奨励し、さまざまな団体の中に疑心暗鬼を蔓延させて、さまざまな主体的組織を自己崩壊に導く。
そうした効果をまざまざと見せつけられるのもそう遠くない将来に思わせる。

2018年10月31日 (水)

11月2日にIWJに出演予定です(^.^)

11月2日(金)午後1時30分から午後5時30分の予定でIWJで岩上安身さんのインタビューを受けることになりました。
平日の昼間で、申し訳ありませんが、存分に語らせて頂きますので、よろしくお願い申し上げますm(__)m
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2018年10月30日 (火)

【訂正記事】 USMCA(新NAFTA) 32・20条4項の読み方の間違い

10月22日付「日米FTAの『毒薬条項』 米国が迫る究極の二者択一」の記事に誤りがありましたので、訂正してお詫びいたします。
標題の条項の読み方は、下記のとおりです。

誤(当初記事)
中国と貿易協定を結んだ国は、他の加盟国からの通知によりUSMCAから離脱させられる。
いわば、米国によるUSMCA協定からの除名処分である(4項)。

正(現在記事)
カナダ、メキシコの一カ国でも中国と貿易協定を結んだ場合、米国はUSMCAから離脱するというのだ(4項)。
これは、中国との貿易協定に対してはUSMCAの特典を剥奪する、つまり経済制裁をかけると脅しているのに等しい。
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2018年10月29日 (月)

前門の虎、後門の狼 トラの尾を踏む振りをする安倍晋三

 

 

毒薬条項を盛り込んだ日米FTAを締結して中国を排除することにしたとの共同声明を発して早々に、安倍晋三は、訪中した。

マスコミはその危うさを全く報じていない。

危うい曲芸を披露しているのに、それが伝わらないのは、安倍晋三にしても、不本意なのではなかろうか。

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にしても、マスコミが中国が歓迎一色であるかのように報道しているのは、違うらしい。

習近平はにこりともしていないというのだ。

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BSTBSの「サンデーニュースBizスクエア」が1028日の放送で、テレビとしては、初めて日米FTATAG)の毒薬条項を取り上げた。
文春WEBで毒薬条項を紹介していた、春名幹男氏がゲストである。

春名幹男氏は、知らなかったが、元共同通信社ワシントン支局長、元共同通信社論説副委員長という立派な経歴をお持ちの米国政治通である。

いや、こんな人がBSニュースのゲストで、くすぶってちゃおかしいでしょう、と立場を超えて突っ込みたくもなる。

いかに何でも、もうそろそろ、地上波や新聞も毒薬条項を取り上げなきゃおかしいでしょう。

日刊ゲンダイ当たりが大々的に報道しない限り、隠蔽してすませるつもりなのか。

 

 

で、マスコミは、日中友好新時代などと仰々しく報道するが、これが危ういことは春名氏も感じておられたことがわかった。(大体、中国排除を宣言した直後に日中友好新時代など頭がいかれているとしかいいようがない)
もうお一方中国事情に詳しい専門家がゲストとして招かれていたが(お名前をメモし忘れてしまった)、この方も共通の認識のようだった。

とにかく、日本が米国の中国排除政策に取り込まれたことを、当然に知っている習近平は、にこりともしていない。
(そういえば、笑顔で外国首脳と握手するプーチンは見た事がないが、習近平はプーチンよりは賓客を笑って迎えるそうである)

調べてみたら、中国はすでに10月11日にUSMCAの「毒薬条項」に対して、報道官が「自由貿易協定(FTA)の目的はメンバー間の貿易に便宜を図ることにあり、メンバー国の対外関係を制約すべきではなく…」と批判し、強く反発している。

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そりゃ習近平としては、にこりともするわけがない。
「俺は中国排除の仲間だ」と言いながら訪ねてきた安倍晋三をどうして笑顔で迎えられようか。
「北方領土には米軍基地を置くぞ」と言いながら、北方領土を返還せよと迫る安倍晋三をプーチンが邪険に扱うのと同じだ。
日本の近隣外交は、外交された側から見れば、頭がおかしいのではないかと疑われても仕方がないほどに矛盾している。

さて、で、マチベンは、今回の訪中劇をどう思うか。

わからないのである。

訪中についてはワシントンの許可を得ている(ワシントンと調整した)という報道もあるが、そういう報道が、米国の中国排除戦略との絡みが一体どうなっているのかを説明してくれる訳もない。

 

 

訪中したには、経済界が後押しした可能性はある。

表だって、米国に反対できないポチ経済界が、安倍晋三に無理矢理、訪中を勧めた可能性は排除できない。

 

 

時期的には、トランプが中間選挙終盤で、選挙に夢中モードで、極東の小国(後でいつでもひっくり返せる)のことなどに構っている暇がない時期を狙っている。

とりあえず、一帯一路への賛同ではなく、一定条件を付した第三国支援という枠組みも評価に値するだろう。

 

 

訪中報道のおかげで、一帯一路が、支援先国家を借金漬けにして返済不能に追いやり、国家を乗っ取るという、商工ローン並の悪質なものであることを初めて知った。
なるほど、経済侵略主義というのはそういう意味か。なにやらIMFとそっくりである。
スリランカが借金のかたに港湾を乗っ取られたのを見て、マレーシアのマハティールが計画を返上したり、他の国でも縮小や見直しにかかっているそうである。

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日米FTAの交渉入り後に、中国排除の精神に反したことをすると、即、自動車関税の引き上げが待っているので(日米共同声明6項、7項)、交渉が始まる前の今しか、日中接近のチャンスがなかったこともあるかもしれない。

 

 

安倍晋三の訪中の成果の存否については、今後を見守るしかない。

11月2日(金)午後1時30分から2年振りにIWJでインタビューを受けることになったので、岩上安身さんにも評価を聞いてみたいところだ。

 

 

なお、米国の中国敵視がトランプ政権の外交戦略の要になっていることは、ペンス副大統領のハドソン研究所での演説(104日)で思い知らされる。この演説は、中国に対する非難に終始している。
中国国内の宗教的差別や政治的な不自由、IT監視による社会・世論支配、知的財産の剽窃、多額の補助金による産業育成、他国に対する過酷な介入、米国の内政に対する干渉など、40分以上にわたって演説したというが、読めば読むほどに「それって全部、米国の手口と一緒じゃん」と突っ込みたくなるほど粘着質な演説である。

海外ニュース翻訳情報局のサイトに下記の標題で全文が掲載されている。

【ペンス副大統領演説:全文翻訳】「中国は米国の民主主義に介入している」:ハドソン研究所にて

 

 

とりあえず極東の国民としては、新冷戦の前線をどこに引くつもりかが気になるところだったが、次のように述べている。
それって、一帯一路と完全にガチンコしてるやん。

このペンス演説は、冷戦の幕開けとなったチャーチルの鉄のカーテン演説(19463月)に比する向きもあるという。

 

 

自由で開かれたインド太平洋というビジョンを前進させるために、インドからサモアに至るまで、地域全体で価値観を共有する国々との間に、新たなより強固な絆を築いています。我々の関係は支配ではなく、パートナーシップの上に築かれた尊敬の精神から生まれています。

 

先週トランプ大統領が韓国との貿易協定の改善に署名したように、我々は二国間ベースで新たな貿易協定を締結しています。日本との自由貿易協定の歴史的な交渉をまもなく開始します。(拍手)

 

また、国際開発・金融プログラムの合理化を進めていることを報告します。我々は、中国の借金漬け外交に代わる公正で透明な選択肢を外国に与えるでしょう。実際、トランプ大統領は今週、BUILD Act (建設法) に署名する予定です。

 

来月、シンガポールとASEANAPECのパプアニューギニアで米国を代表することを名誉に思います。そこで私たちは、インド太平洋地域を支援するための自由でオープンな新しい対策とプログラムを発表する予定です。そして大統領の代理として、インド太平洋へのアメリカのコミットメントがこれまでにないくらい強いものであったというメッセージを伝えます。(拍手)

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2018年10月23日 (火)

「『毒薬条項』 悪魔は細部に宿る」    深夜、早朝にひっそりと…  君よ「天上の葦」となれかし

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わかります。
NHKの職員の皆さま、重大な事態が迫っていることが、わかっているのに報道できない苦しさ、辛さ…

「天上の葦」で、太田愛さんが描いた、あの大戦中に良心のあるジャーナリストが、どうしたら、たとえ破片であろうが、かけらであろうが、事実の片鱗でも伝えて子どもたちを救いたいと、苦悶した様子を思い起こさせます。

「『毒薬条項』悪魔は細部に宿る!?」
(ここに注目!)

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髙橋 祐介 解説委員

アメリカがメキシコやカナダと合意した新たな自由貿易協定に、中国との自由貿易協定を厳しく制限する条項が盛り込まれ、今後の日米交渉にも影響が出かねないとして、注目を集めています。髙橋解説委員です。

Q1)
毒薬条項って、恐ろしい響きのタイトルですが、いったい何のこと?
A1)
ハロウィンも近いのでイラストもコスチュームにしてみました。毒リンゴを食べたら死んでしまいます。同じように毒薬条項とは、その条項を発動すれば、契約そのものをご破算にすることが出来るというものです。主に企業の敵対的な買収を防ぐための対抗策などにも使われてきた言葉です。
アメリカは、NAFTA=北米自由貿易協定の見直しを求めて交渉した結果、今月までにメキシコやカナダと新たな合意を結びました。アメリカ通商代表部が公表したその条文案の中に、こんな文言が盛り込まれていました。3か国のうち1か国が「市場経済でない国と自由貿易協定を発効させれば」他の2か国は「この協定を打ち切ることも出来る」というのです。

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Q2)
市場経済でない国って、中国のこと?
A2)
ずばり中国です。現に、ロス商務長官は、中国による知的財産権の侵害など、不公正な慣行を正当化するような抜け道を塞ぐのが目的だと言っています。要は「アメリカの知らないところでアメリカの意に反する合意を中国と結ぶな!」そう釘を刺したかたちです。当然中国は反発しています。そして問題は、これから日本と交渉する貿易協定にも同じような条項を取り入れたいと、トランプ政権が考えていることです。

Q3)
仮に日米協定にも、こうした毒薬条項が盛り込まれたら、どうなる?
A3)
いま日本が中国を含めて交渉している日中韓FTA=自由貿易協定やRCEP=東アジア包括的経済連携協定にも影響が出かねません。最悪の場合、日本企業は、アメリカ市場をとるか?それとも中国市場をとるか?いわば二者択一を迫られてしまうかも知れません。
そうした厳しい事態に追い込まれないためにも、悪魔は細部に宿るそうアメリカの格言に言うとおり、今後の日米交渉には、細心の注意が必要となるでしょう。

(髙橋 祐介 解説委員)

 

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2018年10月22日 (月)

日米FTAの毒薬条項   米国が迫る究極の二者択一

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日米FTAには、TPP等のこれまでの貿易協定と質の異なる深刻な問題がある。

経済界から日米FTA反対が叫ばれないのが不思議なほどに、決定的に重大な根本問題である。

(経済界も、それほどに劣化したということなのかもしれない)

分かっているなら、真っ先に取り上げろよといわれても仕方がない問題点であるが、僕の力量では、どう取り上げたらいいのか未だに戸惑うほどの大きな問題だ。

 

 

 

 日本との協定に対中貿易けん制の条項、盛り込む可能性=米商務長官

 

 

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 10月5日、ロス米商務長官は、新たな米国・メキシコ・カナダ協定に盛り込まれた中国との貿易協定締結を阻止する毒薬条項について、米国が今後締結を見込む日本や欧州連合などとの貿易協定にも取り入れる可能性があるとの認識を示した(2018年 ロイター/MARY F. CALVERT

 

 

 ロス米商務長官は5日、新たな米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に盛り込まれた中国との貿易協定締結を阻止する「毒薬条項(ポイズンピル)」について、米国が今後締結を見込む日本や欧州連合(EU)などとの貿易協定にも取り入れる可能性があるとの認識を示した。

 

 

 ロス長官はロイターとのインタビューで、毒薬条項は中国の知的財産権侵害や助成金供与などの慣行を「正当化する」貿易協定の「抜け穴をふさぐ」ことが目的と説明した。

 

 

 同条項が、他国と将来締結する貿易協定にも盛り込まれる可能性はあるかとの質問には「状況を見守ろう」としつつも、USMCAが先例となり、他の貿易協定に盛り込むことは容易になるとし、条項が「貿易協定締結の必須要件になるとの考えが理解されることになるだろう」と語った。

 

 

 長官はまた、11月6日の米中間選挙まで米中通商協議に大きな展開があることは想定していないと語った。

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新NAFTA(USMCA)には中国の通商協定を阻止する毒薬条項が盛り込まれており、日米FTAにもこれを盛り込むという。

協定締結に際して、中国と通商協定を締結しないことを約束させ、通商協定を通じて、中国敵視政策を強制するというのだ。

 

 

 

法的情報の精確さで定評がある「方谷先生に学ぶ」の「USMCA協定及び日米TAG協定、中国との通商交渉制限」(10月3日)を踏まえて、法的に跡づけておく。

新NAFTA(USMCA)協定には、次の規定が盛り込まれた。

 

 

32条 例外と一般規定

 

32.10条 非市場国とのFTA

 

1.USMCA締約国の一ヶ国が非市場国とのFTAを交渉する場合、交渉開始の3ヶ月前に、他の締約国に通知しなければならない。非市場国とは、本協定の署名日前に締約国が決定した国である。

 

 

2.非市場国とFTA交渉を行おうとする締約国は、他の締約国から請求があれば、可能な限りの情報を提供すること。

 

 

3.締約国は、他の締約国がFTA協定と潜在的な影響を調査するため。署名日の30日前に他の締約国がFTA協定の条文、附属書、サイドレターなど見直す機会を与えること。締約国が機密扱いを要求する場合、他国は機密保持を行うこと。

 

 

4.締約国が非市場国とFTAを締結する場合、他国は6ヶ月前の通知により、本協定(USMCA)を終了し、残りの二国間協定とする。

 

 

5.二国間協定は、上記締約国との規定を除き、本協定(USMCA)の構成を維持。

 

 

6.6ヶ月の通知期間を利用して、二国間協定を見直し、協定の修正が必要か決定する。

 

 

7.二国間協定は、それぞれの法的手続を完了したと通知してから60日後に発効する。

 

 

ロス商務長官はこの非市場国が中国であることを当然の前提としている。
米中貿易戦争の展開からも、非市場国が中国を指すことは明らかである。

中国と貿易交渉を行う国は、予め他の2カ国に通告し、交渉に関する情報を提供しなければならない(1~3項)。

カナダ、メキシコの一カ国でも中国と貿易協定を結んだ場合、米国はUSMCAから離脱するというのだ(4項)。
これは、中国との貿易協定に対してはUSMCAの特典を剥奪する、つまり経済制裁をかけると脅しているのに等しい。

 

 

そして、「日米共同声明」を読み解けば、この条項が、日米FTA協定にも盛り込まれることは容易に理解できる。

 

「日米共同声明」926日日米首脳会談

 

1.2018年9月26日のニューヨークにおける日米首脳会談の機会に、我々、安倍晋三内閣総理大臣とドナルド・J・トランプ大統領は、両国経済が合わせて世界のGDPの約3割を占めることを認識しつつ、日米間の強力かつ安定的で互恵的な貿易・経済関係の重要性を確認した。大統領は、相互的な貿易の重要性、また、日本や他の国々との貿易赤字を削減することの重要性を強調した。総理大臣は、自由で公正なルールに基づく貿易の重要性を強調した。

 

 

2.この背景のもと、我々は、更なる具体的手段をとることも含め、日米間の貿易・投資を更に拡大すること、また、世界経済の自由で公正かつ開かれた発展を実現することへの決意を再確認した。

 

 

3.日米両国は、所要の国内調整を経た後に、日米物品貿易協定(TAG)について、また、他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても、交渉を開始する。

 

 

4.日米両国はまた、上記の協定の議論の完了の後に、他の貿易・投資の事項についても交渉を行うこととする。

 

 

5.上記協定は、双方の利益となることを目指すものであり、交渉を行うに当たっては、日米両国は以下の他方の政府の立場を尊重する。

 

 -日本としては農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であること。

 

 -米国としては自動車について、市場アクセスの交渉結果が米国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指すものであること。

 

 

6.日米両国は、第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する。したがって我々は、WTO改革、電子商取引の議論を促進するとともに、知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため、日米、また日米欧三極の協力を通じて、緊密に作業していく

 

 

7.日米両国は上記について信頼関係に基づき議論を行うこととし、その協議が行われている間、本共同声明の精神に反する行動を取らない。また、他の関税関連問題の早期解決に努める。

 

 

「知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行」を有する「非市場志向型」「第三国」が中国を指すことは明らかである。
そして、中国対策について緊密に作業していかなければならないことが合意されている

 

 

日米FTAに中国との通商協定を禁止する条項が入ることは不可避である。
むしろ、ロス商務長官の発言から示唆されるように、これが現在及び将来の米国の通商政策の肝となるのである。

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防衛戦士-補助電源起動さんのツイートから
 

 

日米FTAは、日本に対して、お前は敵なのか、味方なのかという、単純で、かつてなく重大な二者択一を突きつける。

中国と貿易戦争を続ける米国は、単純な敵味方論を日米FTAを通して突きつけるのだ。

これが1970年代であれば、この選択は、これほどの重大さは持たなかっただろう。

しかし、現在の世界経済の中で、巨大な経済力を有する隣国であり、さらに巨大なポテンシャルを持つ中国を経済的に敵とみなせというのは、あまりにも影響が甚大で、日本が深刻な凋落をたどることは目に見えている。
いや、即刻、没落するかもしれない。

 

 

この問題を、「田中宇の国際ニュース解説」の「中国でなく同盟諸国を痛める米中新冷戦」(2018年10月16日)は総合的に分析している。

 

 

トランプは、このような同盟諸国のお得な状況を破壊している。トランプは、自由貿易体制が米国に不利益を招いていると言って、同盟諸国が無関税で米国に輸出したり、同盟諸国が中国と自由貿易協定を結ぶことに反対している。先日、米カナダメキシコの自由貿易協定であるNAFTAが改定されてUSMCAになったが、今回の重要な改定点は、カナダやメキシコが中国と自由貿易協定を結ぶことに、米国が拒否権を発動できる新体制を作ったことだ。この新体制は、今後もし日本が米国と2国間貿易協定を結ぶと、そこにも盛り込まれる。USMCAは、今後米国が世界各国と結ぶ貿易協定のモデルとなる。米国と貿易協定を結ぶ国は、米国が敵視する国との自由貿易ができなくなる。The balance of China, Japan, and Trump’s America Joseph S Nye

 

このUSMCAの新体制と、今回のトランプ政権の米中新冷戦の体制とをつなげると、同盟諸国を困窮させる未来像が見えてくる。米国との同盟関係を維持したければ、中国との貿易をあきらめろ、という二者択一の未来像だ。同盟諸国は、中国との貿易をあきらめても、米国に自由に輸出できるわけでない。対米輸出には、すでに懲罰的な関税がかけられている。メキシコとカナダは、米国とUSMCAを結ぶ際、メキシコの最低賃金上昇、カナダの乳製品輸入など、新たな対米譲歩を強いられた。Japan's Abe pursues China thaw as U.S-Beijing ties in deep freeze 

 

 

改定後のUSMCAは、改定前のNAFTAに比べて「米国主導」の色彩が強い。米国が北米の地域覇権国であり、中国が東アジアの地域覇権国であるという、きたるべき多極型の世界体制を先取りしているのがUSMCAだ。USMCAの東アジア版が、中国主導の貿易協定であるRCEPだ。カナダやメキシコに対する米国の支配強化が許されるのなら、東南アジアや朝鮮半島に対する中国の支配強化も許される。それがきたるべき多極型世界のおきてだ。 (China Has Already Lost This War...

 

 

加えて今後、米国から同盟諸国への安全保障の「値上がり」も続く。日本は米国から「在日米軍に駐留し続けてほしければ、貿易で譲歩しろ」と言われ続ける。日本の官僚独裁機構(とくに外務省など)は、対米従属(「お上」との関係を担当する権限)を使って国内権力を維持し続けているので、米国からの安保値上げ要求を無限に飲んでいきそうだ。

 

日本では以前、対米従属と経済発展が一致していた。米国は世界最大の市場で、日本製品を自由に輸出できたし、日米安保は安上がりな軍事策だった。日本において、財界と官僚機構の利益が一致していた。だが今は、もはやそうでない。日本企業にとって最大の取引相手は中国になっている。財界は、中国と仲良くしたい。だが、官僚機構は対米従属を維持しないと権力を維持できない。米国がトランプになって、覇権放棄や日米安保の「値上げ」を言ってくるようになると、財界は安倍政権を動かして中国に擦り寄らせた。 (トランプに売られた喧嘩を受け流す日本)

 

安倍政権の日本は、対米従属と中国擦り寄りの間で何とかバランスをとってきたが、今後は、このバランス取りがさらに難しくなる。対米従属を維持するため、米国との2国間貿易協定を結び、トランプの新冷戦につき合って中国との関係を断ち切るのか、それとも米国との貿易協定の交渉が決裂していくのを容認し、在日米軍の撤退を看過しつつ、中国との関係を親密化していくのか、という2者択一だ。トランプは安倍に2者択一を迫る。玉虫色の曖昧な「両方取り」は許されなくなる。 America's Iran Policy is Helping China Advance Its Vision of a Multipolar World

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10月18日のIWJの孫崎享さんのインタビューでは、岩上安身さんと孫崎さんが、中国経済がこの数年で一変する勢いであることを語っていた。

  • 購買力平価に換算したGDPでは、中国はすでに米国を抜いた
  • 米国が20世紀の100年で使ったコンクリートを中国は僅か20年で消費した
  • 中国の時速300キロの高速鉄道の総延長は世界の高速鉄道の総延長に匹敵する
  • 米国が?年かけて作る大橋を中国は43日(?)で完成してしまう
  • 特許の取得件数(だったかなあ)も米国を凌駕している

等々、僕の要約は正確さを欠くので、是非視聴して頂きたいが、日本で知らされている中国の姿とは大幅に異なる内容だった。

 

 

一方で、ウラジオストックを中心としてアジアを志向するロシアの構想もすでに動き始めている。

中ロは連携しているので、中国主導の一帯一路構想と、ロシア主導のユーラシア経済連合が融合していく可能性が大きい

極東地域の経済的ポテンシャルは歴史上かつてなく高まっている。

 

経済の極は欧米からアジアへと完全に移行しつつあるのである。

絶好の好立地にある極東の島国として、米国が迫る二者択一に対する回答は、『中国を選ぶ』と答えるほかあり得ない。

よって、日米FTAの締結など、断じてあってはらない。

 

 

今のところ、米国がちらつかせているのは、自動車関税だけである。

しかし、仮に日米FTAが締結されれば、米国の要求を際限なく呑み続けるほかなくなる。

米国は、日本に対して、米国に倣って中国を制裁するよう次々と求めてくるだろう。

日本は、中国制裁(対中貿易の削減・停止)のために凋落しきるまで余力を使い果たすだろう。

恐ろしい未来図である。

 

 

今なら、自動車関税ごときは、どうにでもなる。

トヨタを初め日本の自動車産業は、ほぼ同時期に相次いだ、東日本大震災による供給工場の停止、タイの洪水によるタイ工場の操業停止でも余裕でこれを乗り切ったように見える。

トヨタに至っては、真偽不明なリコール騒動により、同時期に米国で、裁判所、州政府、連邦政府から合計一兆円近い賠償や制裁を科されても、びくともしなかったように見える。

自動車関税に対しては、自動車産業は、巨額な内部留保を取り崩せばいいだけのことだ。

 

 

在日米軍には、さっさとお引き取りいただこう。

というか、半占領状態から逃れ、独立を勝ち取る絶好の機会である。

 

 

経済界こそ、真っ先に日米FTAに対する反対を叫ばなければならない。

米国に隷従することに存在意義を見いだす、ごく一部を除いて、誰が見ても、日米FTAを結ばないという選択以外に正解はあり得ない。

 

 

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この問題については、さすがのNHKも無視できない。
10月18日(木)の朝6時台のニュース解説で取り上げていた。
文字通り「毒薬条項」と呼んでいたのには驚いた。

現に進行中の日中韓FTAやRCEP交渉にも直接の影響が出ると憂慮する内容だった。

RCEPは東南アジア諸国連合10カ国に、中国、インド、韓国、日本、オーストラリア、ニュージーランドの6カ国が加わった経済連携交渉である。ジェネリック医薬品等内容上の問題があるが、これに参加しないという選択もまた、アジアの国としてはあり得ない。

中国と貿易交渉をするなということは、日本に対して、アジアの国であることをやめて、遠く太平洋を隔てた米国の、アジアの最前線の捨て石になれということである。
恰も、本土が沖縄を捨て石とし続けるように、日本を捨て石としようということである。

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トランプの米ロ中距離核戦力全廃条約(INF)破棄の表明によって、一気にきな臭くなっている。
米中貿易戦争に加えてロシアとの核戦力拡大競争へと転換しようというのだ。

ロシアをますます中国との連携へとおしやるように見える。

米国主導でWTO改革をすると言っている。
大泥棒(理由はこちら)が改革するなど、盗っ人猛々しいというほかない。
WTO協定の改定は、当然、全参加国の一致が必要である。
中ロが飲むはずのない条件を突きつけるトランプのいうWTO改革は、多分WTOの分割である。
いや、それはそれで、教条的なグローバリストどもが慌てふためく様子が見えて面白いのではあるが、日米FTAに至っては、他人事ではいられないのである。

米国が、世界の警察官であることができないことを熟知しているトランプは、世界の市場が二分されていた冷戦時代に世界を巻き戻そうとしているように見える。

付記 10月30日
春名幹男氏の文春WEB掲載記事を踏まえ、USMCAの32・10条4項の読み方が誤っていたことがわかり、訂正しました。


中国と貿易協定を結んだ国は、他の加盟国からの通知によりUSMCAから離脱させられる。
いわば、米国によるUSMCA協定からの除名処分である(4項)。


カナダ、メキシコの一カ国でも中国と貿易協定を結んだ場合、米国はUSMCAから離脱するというのだ(4項)。
これは、中国との貿易協定に対してはUSMCAの特典を剥奪する、つまり経済制裁をかけると脅しているのに等しい。

2018年10月18日 (木)

第4回東方経済フォーラムでプー様(プーチン)を退屈させた日本政府

第4回東方経済フォーラム全体会合で日本政府は、ロシアと共同して取り組まれている事業を紹介するビデオを上映した。
その前振りとその直後の安倍総理の演説内容。
以下、首相官邸「東方経済フォーラム全体会合 安倍総理スピーチ」から
2016年12月、プーチン大統領を私の故郷(ふるさと)、長門(ながと)にお迎えし、2人で日露関係の将来についてじっくりと話し合い、北方四島において共同経済活動を行うための特別な制度に関する協議の開始、元島民の方々による自由な墓参の実現について約束しました。そして、長門の地で平和条約問題の解決に向けた真摯な決意を共有しました。聴衆の皆さん、この長門での約束は、着実に実施されつつあります。日露関係は今、かつてない加速度で前進し始めています。プーチン大統領と私が約束した両国協力のプランは、150以上に上ります。うち半数以上が、もう現実に動いているか、今正に動こうとしています。お見せするビデオが、そこを雄弁に教えてくれます。ではビデオを御覧いただきます。
(ビデオ上映)
 いかがでしょうか。一本貫く太い流れをお感じいただけたでしょうか。8項目の協力プランの実現を通じて、ロシア住民の生活の質の向上が、皆様にも実感できるようになるのではないでしょうか。ロシアと日本は、今、ロシアの人々に向かって、ひいては世界に対して、確かな証拠を示しつつあります。ロシアと日本が力を合わせる時、ロシアの人々は健康になるのだというエビデンスです。ロシアの都市は快適になります。ロシアの中小企業はぐっと効率を良くします。ロシアの地下資源は、日本との協力によってなお一層効率よく世界市場に届きます。ここウラジオストクを始め、極東各地は、日露の協力によって、ヒト、モノ、資金が集まるゲートウェーになります。デジタル・ロシアの夢は、なお一層、早く果実を結ぶという、そんな証拠の数々を、今正に、日本とロシアは生み出しつつあります。
ビデオ上映中のプーチンの姿を首相官邸のカメラはとらえている。
ビデオ上映開始。
ビデオは主宰者であるロシアに向けてロシア語で制作されている。
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カメラはその後、いったんビデオ上映画面に集中するが、やがて再び引いて、他の4首脳(中国・ロシア・韓国・モンゴル)の姿を写し出す。
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やおら肘掛け脇のペン台に手を伸ばしてペンを持ち上げたプーチン。
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カメラは次第にプーチンにズームしていく。
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なにやらペンを見つめるプーチン
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ペンをもてあそんでいるように見える。
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ペンにキャップをしようとしている。
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ああ。だめだ、こりゃプー様は明らかに退屈している。
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当日の模様をの『マスコミに載らない海外記事」9月15日付「ロシア東方経済フォーラムで大恥をかいた安倍首相」から引用しておこう。
Gilbert Doctorow
2018年9月15日 土曜
Russia Insider
 最初に、安倍首相は仲間外れだったことを指摘せねばならない。彼は全体会議での演説を主に、この世代のうちに、彼自身とウラジーミル・プーチンの任期中に、ロシアとの平和条約を締結しようという嘆願に割いた。対照的に、他の外国指導者全員が、彼らのロシアと極東地域における、進行中および計画中の大規模投資活動を生き生きと語った。安倍には、ロシアとの他の国々の協力に匹敵するようなものがほとんどなく、ロシアにおける取るに足らない日本の取り組みに人間的な顔をかぶせるはずのビデオを上映して補おうとした。映画は、二年前に、全て、二国間関係を新たな高みへと導くため、安倍が提示し、ロシアが受け入れ、日本がロシアで実施している150のプロジェクト中の様々な医療関連やハイテク関係のプロジェクト(交通管理、廃棄物処理)の概要だ。

 日本のプロジェクトは皆安上がりだ。全てが規模の上で実にささやかで、東京が言う通りにロシアが平和条約を調印さえすれば、つまり南千島四島の日本主権への返還に同意すれば、人々の生活向上のため日本がロシアに授けることができる偉大な支援を示唆するよう仕組まれている。

 ロシアにおける日本の協力プロジェクトにまつわるビデオと詳説の効果は、安倍が意図していたであろうものと真逆だ。だが、それは現在のロシアと日本の交渉上の相対的立場に対する彼の全く時代後れの理解と完全に一致している。映画編集上の偏向は全く一方的だ。豊かで技術的に優れた日本が、感謝に満ちたロシアに手を差し伸べるのだ。これは、全ての参加国が、いかに開発計画の緊密な協調や、相互の貿易と投資でお互いに助け合うかと言って、フォーラムで語る他の外国指導者たちの全体的主題と矛盾する。

 液化天然ガス輸出用のロシア向けの高度な船舶の主要輸出国でありながら、ウラジオストック近くのロシア最大の造船複合体建設(ズヴェズダ)への韓国の参加に触れた韓国首相のプレゼンは、このバランスのとれた、双方共に利益を得られる取り組み方に見える。北朝鮮との関係が正常化され次第、トランス-シベリア経由、更にはヨーロッパへの鉄道輸送を実施したいという韓国の熱意だ。スエズ運河経由、あるいは海上輸送で、アフリカの角を周回する航路の代替としてロシアが開発したがっている北海航路インフラへの韓国参加もそうだ。

 ロシアとの共同エネルギー・プロジェクト、ロシアの鉄道と港湾インフラ経由での石炭出荷拡大の既存と計画中両方の計画/希望を説明するモンゴル大統領の演説でもこれを見た。

 ロシアに対する安倍晋三の手法は、日本が力強いアジアの虎として、世界的尊敬と羨望を享受し、アメリカ合州国の不動産をあちこちで買い占めており、ソ連が、景気衰退ではないにせよ、深刻な景気停滞にあり、エネルギー資源の新たな買い手と新たな投資家を探している時期の1970年代と1980年代にさかのぼる。

 現在中国は、日本が40年前に、そう装っていた戦略的パートナーの地位を占めている。中国はロシアの主要な融資家で、投資家で、顧客だ。中国は日本が昔そうであり、今もそうであるような、ハイテク供給者として、高い位置にはないかも知れないが、民間航空分野などのハイテク共同開発で、中国はロシアと対等のパートナーだ。

 現在の中国貿易と投資の重要性は、フォーラムで目立つメッセージの一つだった。二国間交渉後の記者会見で、ウラジーミル・プーチンは、中国との二国間貿易は今年20%以上伸びて、1000億ドルを上回ることを認めた。一方、全体会議での演説で、1000億ドルという数値が再び現れた。今度は、極東やバイカル地域に対する中国-ロシア共同投資プロジェクトの価値の数値化だ。

 

 この背景に対し、日本の投資規模と安倍の150の協力プロジェクト全体は二桁小さい。こうした“ニンジン”で、日本の条件に同意し、平和条約締結するようロシアを動かせるという考えは全く非現実的だ。

 

 安倍は、主権放棄にロシアが抵抗している点を意図的に無視して、南千島の共同統治のための鼻薬を提案した。本当の問題点を、全体会議中のウラジーミル・プーチンへの質問で、セルゲイ・ブリリョフが直接提起した。北方諸島が、もし日本主権になれば、アメリカ軍事基地の更なる駐留基地、特に弾道弾迎撃ミサイル装置配備地になるというロシアの懸念を二人の指導者は話し合わなかったのか。プーチンは話したと言ったが、安倍は平和条約締結への障害として、無視することを選んだ。

 求められている平和条約を実現するための“ふとおもいついた”提案だと言って、プーチンは演壇で、二国は“前提条件無しに”年末までに平和条約調印を進めようと提案した。そこで、友人となってから、両国はより強い相互信頼で、北方諸島のような厄介な問題に取り組むことができるだろう。この提案を、後に安倍は始めて聞いたと認めたが、後で同席していた日本人外交官が実行不能だと切り捨てた。

 言い換えれば、ロシアが日本を、アメリカ合州国とペンタゴンの「隠れ馬」と見なしている限り、ロシアは主権の譲渡に同意しない。しかも、フォーラムでの彼の振る舞いで、またしても安倍は、ロシアといかなる協定を結ぶよりも、核の傘のため、ワシントンのご主人への服従が、彼にとって、より重要であることを示したのだ。演壇の5人の指導者中で彼だけ、ドナルド・トランプの名を挙げた。斬新かつ大胆に北朝鮮に手を差し伸べ、金正恩とサミット会談をしたと、度を超したトランプ称賛をした。最初に、更に再度、南北朝鮮間や、アメリカと北朝鮮間の会談を建設的大団円に導いた韓国指導者文在寅の取り組みに、彼は全く触れなかった。

 フォーラムで明らかになった、そしてそれを更に遥かに超える地域の戦略的、大規模経済統合の地図のどこにも日本の姿はない。他の結束力は、中国の一帯一路構想とユーラシア経済連合だ。安倍晋三の日本は、北東アジアにおける日本の地理的、事業的環境からほとんど切り離された、アメリカ前哨基地のままだ。日本は地域全体を活性化している活力に満ちた過程を見逃している。フォーラムで、中国は2,000人を超える実業家と政府の代表団を擁する最大の参加国だった。フォーラムで明らかになった安倍晋三のような生気がなく、小心なリーダーシップの下、日本は日の沈む国となる運命にある。

10年内外で、中国のGDPが、米国のGDPを上回ることが確実視されている。
ロシアのユーラシア経済連合と中国の一帯一路構想の融合の先に、アジアに途方もない経済圏が立ち上がるだろう。
たとえば、ロシアが持っている鉄道輸送路のイメージはこんな姿だ(カレイドスコープ2018年9月18日)。
 
もし、一帯一路が実現すれば、ロシアの鉄道網とジョイントする。
ユーラシアの経済圏はモノ凄いことになる。

下は、「L'Arctique : Les enjeux géopolitiques - De Pékin à Montréal… en train」(北極圏: - 北京からモントリオールへつながる鉄道計画の地政学的問題)というフランスのウェブサイトの記事である。
Kareidosukoopu_201809014

この巨大な鉄道計画図には、サハリンから日本を縦断して、福岡当たりから朝鮮半島釜山への鉄道が描かれている。南北朝鮮を縦断した鉄道は、そのまま中国を経由してウラジオストクでシベリア鉄道に結ばれる。

長大な鉄道網を擁するロシアだけにただの妄想と決めつけるわけにもいくまい。
マスコミに載らない海外記事サイトの記事は、日本の周辺諸国からの孤立を強調していた。
いやだから、前提を付けない平和条約でもよいから、平和条約を結ぼうというプー様の提案は、悪くないって。
仮にこの構想が具体化していくとき、日本だけが結ばれない可能性を想像してみる。
今後、世界経済の中心となる極東地域にありながら、取り残される日本。
何のために。
遠く太平洋を隔てた、米国の防波堤となるために。
本土が沖縄を捨て石とするように、米国が日本を捨て石にするのだ、
この文章は、今朝(10月18日)のNHKニュースが毒薬条項と呼んでいた日米FTAの本質的問題について触れるための前振りである。
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